研究内容

モデル生物として分裂酵母を使用

分裂酵母(左写真)は、微生物ですが、真核生物であり、ヒトなどの高等生物が保持している細胞内システム(細胞周期、シグナル伝達経路、翻訳後修飾、タンパク質分解 など)を簡略化して保持しています。また、細胞が約3時間程度で倍加(1細胞が2細胞に分裂する)するため(ヒトの細胞は約24時間で分裂)、増殖が速く、基礎研究を行う上で、有用なモデル生物です。

1. cAMP/PKA経路

 細胞が様々なストレスに晒された際、細胞はその環境に適応して、生き延びようとします。その際、細胞内ではシグナル伝達経路が機能し、細胞が環境に適応するために、細胞内で調節を行います。真核生物では複数のシグナル伝達経路が知られています。研究の焦点としては、cAMP/PKA経路に注目して研究を行っています。この経路は、分裂酵母ではグルコースに応答する主要な経路として知られており、グルコース飢餓状態ではcAMP/PKA経路が不活性化されます。そのため、cAMP/PKA経路を解析することは、細胞がグルコース飢餓状態でどのように細胞内制御を行っているのかを明らかにすることができます。

2. リン脂質合成酵素

 ホスファチジルセリン右の図右図ようにホスファチジン酸(PA)からシチジン二リン酸‐ジアシルグリセロール(CDP−DAG)が合成され、その後ホスファチジルセリン(PS)ホスファチジルイノシトール(PI)が合成されます。PSは、分裂酵母では、ホスファチジルエタノールアミン(PE)に変換された後、3段階の反応でホスファチジルコリン(PC)になります。また、エタノールアミンからPEやコリンからPCが合成されるKennedy経路があることも明らかになっています。

 分裂酵母でグリセロリン脂質が細胞内でどのような機能があるのかを明らかにすることを目指しています。実際に、PS合成やPE合成の機能欠損株は、細胞生育と細胞形態の形成に重要であることがわかっており、その詳細を解析しています。

3.清酒酵母の開発およびビール酵母の単離

 酵母を用いた技術を活かした応用研究として、清酒酵母の開発も挑戦しています。清酒は、様々な香り(吟醸香)がしますが、その香りはアルコール発酵を行う酵母の代謝産物が由来しています。そのため、特有の香りがする清酒生産に役立つような清酒酵母の開発を行っています。

 自然界には、酵母が様々なところで生育しています。そのような酵母を単離し、ビール生産に利用してもらうことを目標に、自然界からの有用酵母の単離を実施しています。

研究のキーワード