iNaturalistも優秀でおすすめですが、iNaturalistにはない様々なオープンデータを利用して独自の解析をしたい、植生図や標高値、気候データ、GPSルートを地図上で重ねたいならQGISがオススメです。GBIFデータやMAXENT用解析データの作成、また時系列・カテゴリ別の分類やホットスポットの解析などもできます。
このページの上バナーは発生状況を時系列でアニメーションにしたもので、青が担子菌、赤が子嚢菌、黄色が変形菌と凡例分けしてあります。ここでは菌類を例にした観察記録の作り方を忘備録として載せておきます。
QGISは無料のGISソフトです。GISとはGeographic Information System(地理情報システム)の略語で、電子地図上に情報を重ね、編集・検索・分析・管理などを行えるシステムのことをいいます。ハザードマップやGoogle MapなどもGISです。QGISは無料ながら、3Dや横断地形、WEBへの出力、様々なオープンデータを扱える汎用性と、高度な機能が揃っているGISソフトです。はじめはとっつきにくいかもしれないけど、案外簡単に扱えるソフトです。
リンクから該当のOSバージョンをインストール QGISのダウンロード
インストールの詳細は検索すればたくさん記載があります。
まずはじめに多くの人が躓くのは座標参照系(CSR)の設定です。座標系が合っていないと位置がずれたり、表示されなかったりする原因になります。
座標系は、「地理座標系」と「投影座標系」の2種類があり、よく使う投影座標系は、「平面直角座標系」と「UTM座標系」の二つがあります。地理座標系は位置を緯度経度で表し、投影座標系は位置を一定エリアごとに設定した原点からの距離(メートルなど)で表します。
他に座標系と別に「測地系」という定義があります。現在日本でよく利用される測地系は、「日本測地系2000(JGD2000)」と「日本測地系2011(JGD2011)」の二つです(両者の違いは東日本大震災の前後で座標が数十センチずれていること)。
「WGS84」はアメリカで構築・維持されている世界測地系で、日本測地系2011とWGS84の値には現在ほとんど誤差がないため、この2つはほぼ同じです。
「EPSGコード」は世界中の空間座標系に割り振られた番号です(GPSで使用されている座標系)。
詳しく知る必要はないので、ここではざっくりとした説明しかしてませんが、正確にはどういうデータを扱うかで座標系を決めます。
何を使ったらいいかわからんときは、いつも使う座標系をはじめから決めておきましょう。
うちで使ってる座標系は「日本測地系2011(JGD2011)」です。島根県松江市なのでIII系の「JGD2011/Japan Plane Rectangular CS III , EPSG:6671」、または「JGD2000,EPSG:4946」「WGS84」を使うようにしています。
地域別の座標系コードは「座標系一覧」や「EPSGコード検索」で検索すると確認できます。
QGISではレイヤを構成するファイルと、プロジェクトを構成するファイルを作ります。これらは全て一つのフォルダにまとめるようにします。はじめに任意の場所に新規フォルダを作っておきます。
作成するフォルダやファイル名はすべて英数字にします。これは日本語文字によるバグを防ぐためです。
では左上の「プロジェクト」から「新規」を選択してプロジェクト作成(fig,1-新規プロジェクト)したら、まず「プロジェクトのプロパティ」を開き、左側タブから「座標参照系」を選び、地域に合ったCSRを選び、「プロジェクトのCSR(座標系)」を設定します。(fig,2-CRSの設定)「フィルタ」で検索ができます。CSRはレイヤごとに設定する必要があり、大概はプロジェクトのCSRと同じものでまとめればOKです。
QGIS では地図タイル(XYZ tiles)を設定することで、作成したプロジェクトと地理院地図や Google map などのWeb サービスの地図を重ねて表示することができます。一度登録すると好きな時に表示できます。
左上の「ブラウザ」から「XYZ tiles」をマウスで選択し、右クリックすると表示される「新しい接続」を選択。「XYZ 接続」の設定画面が出てきます。(fig,3-新規接続)
「名前」を入力し、「URL」欄に接続先の情報を入力して「OK」を押して設定します。名前は任意に設定可能です。ズームレベルの設定が必要な場合はレベルも設定します。設定した地図が「XYZ tiles」に追加されます。(fig,4-新規接続の設定)
設定に使うURLはここからコピペして使用して下さい。このほかにも検索すれば出てきます。
「XYZ tiles」に設定した地図から表示したい地図をレイヤパネルへドラッグ&ドロップすると、地図が表示されるようになります。(fig,5-地図タイルの表示)
地図が表示できるようになったら、点、線やポリゴンを描いて地図上に調査ルートや範囲、発生個所を表示します。
点、線、ポリゴンのことを「地物」と呼びます。地物の種類ごとに別のレイヤファイルを作ります。また、レイヤを分ける場合にも別のレイヤファイルを作ります。
QGISではレイヤを構成するファイルと、プロジェクトを構成するファイルを作ります。これらは全て一つのフォルダにまとめるようにします。はじめに任意の場所に新規フォルダを作っておきます。
作成するフォルダやファイル名はすべて英数字(レイヤの表示名は日本語でOK)にして保存します。これは日本語文字によるバグを防ぐためです。
それぞれのレイヤファイルを編集したら編集の度に保存します。最後にプロジェクトファイルも保存します。
上メニューバーの「レイヤ」から「レイヤ作成」-「新規Geoackageレイヤ」を選択すると以下のダイアログが開きます。(fig,6-地物の追加ダイアログ)
データベース右横の「...」をクリックし、レイヤ名は任意で判別できる名前を付けて、保存場所を選択。ファイル名はアルファベットで付け、保存先はプロジェクトと同じ場所にしておく。
ジオメトリ型は作成したい地物タイプで違い、点ならマルチポイント、線ならラインストリングを選択する。
追加次元は「なし」でプロジェクトと同じ CRSにしておきます。
「新規属性」の名称に任意名を入力、長さは文字を入れる場合は長めにしておく(長さ=文字数)、型は文字ならテキストデータ、日付や数値など項目に合わせて選択して「属性リストに追加」を押すと属性リストに追加されます(この設定は後で追加、編集できる)。属性リストにある項目が地図上に表示されたり、解析に使うことができます(下の設定サンプルを参照)。
5. OK を押すとレイヤが追加される。
作成したレイヤに描くには 「編集モード切替」をクリックし、「地物を追加する」をクリックするとカーソルが切替わり、線やポイント等が描けるようになります。最後に「保存」して「編集モード切替」をクリックして終える。(fig,7-地物の編集)
より詳しい編集方法はこちらを参照
QGISの観察記録で使った属性リストの項目とそれぞれの設定サンプル(エクセル)はこちら
これらを属性リストとして設定します。
地物を描画するときに属性リストが入力項目となって表示されます。(ダウンロード:QGIS用のサンプル)
GPSの取り込みはログファイルを直接レイヤパネルへドラッグ&ドロップするだけです。これでトラックポイントとルートが表示されます。
ファイル形式がGPXであれば、これでOKですが、生き物屋でよく使われてるカメラのORIMPUS TGシリーズのGPSログファイルの形式はNMER形式です。これを直接取り込むと、ルートやトラックポイントは合っていますが、時刻は「協定世界時(UTC)」で記録されているようで、9時間進んで表示されます。この解決方法は次の3つ。
「カシミール3D」でNMERを取り込み、GPXに変換して取り込む(こちらを参照)
ルートやトラックポイントは合っているので、時刻は無視して、ポイント位置だけを参照する
右側「プロセッシングツール」の「ベクタ作成 - ジオタグ(位置情報)付きの写真」(fig,8)を使って取り込む
このツールを使うと撮影位置をポイントの地物として生成し、属性テーブルに時刻等も整理されます。 ただし、TG-5側のGPS設定で「写真にもGPS情報をつける」をオンにする必要があります。写真を撮る際にも、電源を入れて、撮影箇所で1分くらい待ってから撮影するようにします。すぐに撮影するとGPS情報がつきません。
植生図は地図タイルでも表示できますが、表示する凡例項目は選べません。もともと植生図には様々なデータが入っていて、必要に応じて表示するデータが選べます。そこで、環境省から公開されているファイルをダウンロードして表示させます。
生物多様性センター 自然環境調査Web-GIS の左側、レイヤ一覧から「植生調査(1/2.5万) 第6‒7回 植生図 」と「整備済みメッシュ」にチェックをして、表示させます。必要な地域を拡大表示していくと、メッシュの中に振り分けられた番号があります。その番号をメモしておきます。なんならスクリーンショットでも。
次に「植生調査(1/2.5万) 都道府県別一覧」よりファイルをダウンロードします。ダウンロードしたファイルから、先ほどメモした番号のファイルを解凍し、.shpファイルをQGISで読むと、単色の植生図が表示されます(fig,9)。座標系は世界測地系(日本測地系2000)なので、日本測地系2011(JGD2011)を使うとすると、表示位置がずれます。そこで、一度保存し直します。レイヤを右クリックして、メニューから「エクスポート」の「新規ファイルに地物を保存」を選択(fig,10新規ファイルに地物を保存)。形式を「GeoPackage」や「ESRI Shapefile」 に、ファイル名は右の「...」をクリックして保存先とファイル名を指定、CRSはプロジェクトで使うCRSを選択してOKをクリックします。参考:座標参照系の変換方法
このままでは単色植生図なので、項目ごとに色分けや表示を変えていきます。
シンボルを表示したいレイヤを右クリックして、メニューから「プロパティ」を選択します。「レイヤプロパティ」ウインドウが表示されるので、左側に並んでいる文字列から「シンボロジ」を選択しシンボルの設定画面を開きます。上部の選択メニューを「なし」から「カテゴリ値による定義」にして、「値」はダウンロードしたフォルダ内にある「Readme.txt」内の「(6)属性情報の内容」を参照して選びます。表の下にある「分類」をクリックすると、項目ごとに分類されます(fig,11シンボル設定)。「カラーランプ」を「グラデーション」にすると、項目ごとに自動色分けされます。「レイヤレンダリング」の「混合モード」で「レイヤ」を「乗算」にします。
次にラベルの項目設定をします。(fig,12ラベル設定)左側に並んでいる文字列から「ラベル」を選択しシンボルの時と同じように上部の選択メニューを「なし」から「一定定義」に変更します。「値」をシンボルと同じ項目に設定します。「フォントサイズ」などを設定してOKをクリックするとラベルやシンボルに係る設定項目が表示されます。参考: カテゴリ値による定義
このページの上バナーでは青が担子菌、赤が子嚢菌、黄色が変形菌と凡例分けしてあります。これは表示するシンボルを属性の一定条件で分類するようにしてあるからです。
前項の植生図のときと同じように「レイヤプロパティ」から「シンボロジ」を選択しシンボルの設定画面を開きます。上部の選択メニューを「なし」から「ルールによる定義」にして、ラベルの枠下「+」(追加)をクリックするとエディタルールのウィンドが開く。「フィルタ欄」右のエディタマーク(fig,13エディタマーク)をクリックして編集ウィンドを開くと、式で属性ごとに分類できるようになっている。次の画像のように設定する(fig,14フィールドと値)。
説明:このデータの場合、子嚢菌の属性データには1かNULL(何もないの意味)が入力されているので、1とある部分だけを表示したいとしたら、式では「子嚢菌=1」となって、1とあるものだけが表示される仕組み。同じように分類したい属性データを繰り返し設定していくことで分類表示ができるようになる。
QFieldとはフィールドワークのための iOS/Android/Windows対応のGISアプリで、位置情報を記録、編集することができます。https://qfield.org/
これまでPCで作ったQGISプロジェクトをGoogleドライブのようにクラウド上でスマホやタブレットと共有して、屋外に持ち出せることが最大の利点です。オフラインでGPS位置情報が取得できるので、フィールドワークに便利です。また地理院地図などをオフラインマップとして使えるので、電波の届かないような場所に行くときにも使えます(ただしPC版のQGISが必要)。
QFieldを使うには大まかに3つの手順があります。
QField Cloudにアカウント登録する
QGISのプラグインQField syncを使ってクラウドで同期する
同期したデータをQFiledで使う
QField Cloudは、Googleドライブのようなオンラインストレージで、QGISのプロジェクトを保存でき、複数のデバイスや複数のユーザーがアクセス・同期ができ、オフラインでも利用ができる。有料版と無料版があって、無料版は複数のユーザー間での同期ができないことや、利用できる容量に制限があることに注意。容量オーバーになるとプロジェクトをアップロードできなくなります。
QField syncはQGISのプラグインです。このプラグインを使用して、QFieldとQGISとの間でプロジェクトを表示、管理、同期することができます。
まずはQFieldCloudでアカウントを登録
QFieldCloud でGet startedをクリックしてアカウント登録。アカウントがあればSign-inでログインできる。
プラグインQField Syncをインストール
インストールはQGISで上メニューバーの[プラグイン]-[管理とインストール]を選択するとダイアログが表示される。左のカテゴリから [未インストール]を選択。 検索ボックスでQField Syncを探して選択、インストールを押すと完了(fig,15プラグイン)。
QField Cloudアカウントにログイン
インストールするとQField Syncのアイコン(fig,16アイコン)が2つできる。上メニューバーの[プラグイン]からも可能。画像右側のプロジェクト管理アイコンからQFieldCloudで登録したアカウントでログインする。
QGISでQField用にレイヤの設定をする
QGISでQField Cloudにアップするプロジェクトを開き、各レイヤのオプションを開く(左側のレイヤパネルにあるレイヤの上で右クリックしてプロパティを選択)。(fig,17レイヤのプロパティ)プロパティ画面の左側項目の一番下にQFieldの設定項目がある(みどりのQのアイコン)。
クラウドレイヤのアクションとケーブルレイヤのアクションの設定をして保存する。
地物レイヤ(点やポリゴン、線などのベクタレイヤ)はクラウドレイヤのアクションとケーブルレイヤのアクションどちらも Offline editing または Copy に設定してOK
地図タイルレイヤ(地理院地図など)はクラウドレイヤのアクションとケーブルレイヤのアクションどちらも Directly access data source に設定してOK(地図タイルについては「地図タイルを追加」の項を参照)
プロジェクトを保存したらQField Syncで作成したプロジェクトをQField Cloudに同期する。
QField Syncの左側のアイコンをクリックして、ウィンドウを開く左下のアイコン(fig,18新規プロジェクトを作成)新規プロジェクトを作成をクリック
現在開いている~を選択して、次へをクリック
名前を付けてQFieldCloudのプロジェクトを保存するフォルダ(プロジェクトとは別のQFieldCloud用のフォルダ)を指定して、作成をクリックしてOKをクリックして終了
スマホ、タブレットなどでQFieldをインストール
QFieldを開いてQField Cloudのアカウントでログイン
QFieldCloudプロジェクト(Fig,19Qfieldトップ)をタップすると、QField Cloudに保存されたプロジェクトが表示されるのでタップするとダウンロードされる。
「ローカルで利用可能」となったらプロジェクトをタップ。
QGISのプロジェクトが表示される。
現在位置は青い矢印マーカーで表示されています、記録は中心の十字マークの位置で記録します。記録したい場所にマーカーを合わせて、観察位置などを作成(地物登録)をしていきます(Fig,22地物登録 と 現在位置)。位置をロックをタップして記録位置を現在位置に合わせてから記録していくようにすること。
登録したら編集モードから閲覧モードに切り替えて、変更点をプッシュ(同期)する(Fig,23変更点のプッシュ)。
QGIS側での変更点をQFieldに反映するときは一番上の「同期する」をタップ
QField側での変更点をQGISに反映するときは真ん中の「変更点をプッシュ」をタップ
QField側での変更点を反映せずに取り消すときは一番下の「ローカルの変更点を取り消す」をタップ
QFieldで作成したプロジェクトを同期できたらPC側のQGISでも同期をする。同期の方法はQField Syncの右側のアイコン同期をクリックして、ファイルをダウンロードする。(Fig,24ファイルの同期)逆にQGISで編集したものをQFieldにアップロードする場合も同じようにする。
※現地で入力できなかった項目があればQGISで属性テーブルの値を編集してQFieldにアップロードする。編集方法はこちらを参照。エクセルのような感じです。