招待講演
招待講演
Abstract
月や小惑星などの小型天体や人工衛星の近傍は, 宇宙プラズマと固体表面が, 中性大気や磁気圏を介さずに接触する「プラズマ-固体境界層」を形成している。本トピックはこれまで太陽地球系物理学(STP)分野における主要研究テーマとしては取り扱われてこなかったが, 近年の世界的な有人月探査の機運の高まりに伴い, その重要性が再認識されつつある。本講演では宇宙におけるプラズマ-固体境界層で生起する荷電粒子素過程を概観しつつ, 筆者がこれまで取り組んできた数値シミュレーション研究を紹介する。続いて将来の有人宇宙探査時代に向けて, 今後どのような研究が必要になるか, 筆者の考えをお話ししたい。
Abstract
雷や雷雲に伴って, X線やガンマ線といった高エネルギー放射が発生することがわかってきた。これらは, 雷や雷雲の電場によって相対論的なエネルギーまで加速された電子からの放射と考えられている。最近になって発見されたこれらの現象を扱う分野は急速に進展し, 高エネルギー大気物理学と呼ばれるようになった。日本海沿岸の冬季雷雲からも地上に向かってガンマ線が降り注ぐことがあり, 私たちは多地点のモニタリング観測から電子加速やガンマ線放射のメカニズムを解明する「雷雲プロジェクト」を, シチズンサイエンスの手法も取り入れて金沢の周辺で進めている。これらの観測の中で, 雷放電でのガンマ線に伴って大気中の酸素や窒素の原子核で光核反応を起こすことも明らかになった。本講演では, 最近の研究成果と, それに至る研究プロジェクトの経験も交えて紹介する。