護岸や堤防などの構造物に入射する波の打ち上げ高は海岸構造物の天端高を決定する上で重要な要素となります。この打ち上げ高は波の特性、構造物の形状、海底勾配などによって複雑に変化するのですが、ミッシェは波が一様勾配の斜面上で砕波しないときの打ち上げ高の式を提案しました。
このとき、θcは限界傾斜角、H0'は換算沖波波高 [m]、Ksは浅水係数です。
θc<θのとき斜面上で砕波するのですが、高田はミッシェの考え方を参考にして次の算定式を提案しました。
このとき、h0は重複波の静水面の高さ [m] です。
高田の式より、最大打ち上げ高はθ=θcのときに生じることが分かります。また、豊島らは斜面の前方で波が砕波するときの打ち上げ高の算定図を作成しました。
斜面が陸上にある場合はザビールが提案した仮想勾配法により打ち上げ高を推定することができます。仮想勾配法は砕波水深を求め砕波点と決定し、その砕波点と仮定した打ち上げ高を結びます。このようにしてできた仮想勾配と下図から打ち上げ高を算定します。この算定による打ち上げ高と仮定による打ち上げ高が一致するまで計算を繰り返します。なお、この計算方法が適用できる範囲はcotθが30より小さい場合のみです。
では、例題を1問解いていきます。
例題1:水深5 [m] の地点に法面勾配1/3の護岸を計画している。このとき、換算沖波波高が2.5 [m]、周期が9 [s] の波が入射する場合の打ち上げ高を求めよ。ただし、海底勾配は1/20とする。
まずは、斜面で砕波するのか斜面前方で砕波するのかを確認していきます。
砕波は水深が3.9 [m] のときに起きるため、斜面で砕波することが分かりました。次に、限界傾斜角を求めます。
計算の結果、法面勾配は限界傾斜角より小さいことが分かりました。では、高田の式から打ち上げ高を求めていくのですが、その前に浅水係数を計算しておきます。
では、打ち上げ高を求めていきます。
まとめとして、斜面上での砕波の有無による打ち上げ高は高田の式、斜面より前方で砕波する場合の打ち上げ高は豊島らの算定図、斜面が陸上にある場合の打ち上げ高は仮定勾配法によって求めます。