治水対策は一定の計画に基づき合理的に進めないと効果が得られません。河川の上流と下流、左岸と右岸、本川と支川との間で整合性のとれた対策を行わなければ、逆にマイナスの影響をもたらしたり、最悪な場合は地域対立を生む恐れもあります。そのため、水系一貫した治水計画を策定する必要があり、その手順は以下のようになります。
①浚渫(しゅんせつ)
通常、河川の流過能力を大きくするために河川の断面拡幅が行われ、その方法の一つに浚渫があります。浚渫とは河川の底砂を浚う(さらう)ことで水深を深くする工事のことであり、普通は浚渫船(ドレッジャー)によって行われます。浚渫船には、強力なポンプで吸込管から土砂と水をともに吸い上げるポンプ浚渫船、パワーショベルに似た柄杓型のディッパーで大量の土砂をかき上げるディッパー浚渫船、浚渫能力は小さいが、小回りがきくために狭い場所、土砂が不均質な場所、水深の変化が多い場合によく利用されるグラブ浚渫船、船を走らせながら水底の土砂を吸い上げるドラグ・サクション浚渫船の四種類があります。
②遊水地
洪水の防止軽減を図るには断面拡幅の他に、洪水流量を減らす方法もあります。その一つに遊水地があります。遊水地は洪水時の河川流量を一時的に氾濫させる土地のことをいい、近年は洪水調節のみの目的で遊水地が建設されることはほぼありません。遊水地として有名なのは渡良瀬遊水地であり、足尾銅山鉱毒事件による鉱毒を沈殿させ、無害化することを目的に作られました。都市部では地下に貯水池を建設するケースが多く、有名なものとして首都圏外郭放水路があります。
③捷水路(しょうすいろ)
蛇行した河川は流路が大きく湾曲すると流れの疎通が悪くなり、湾曲部外岸は水衝部であるために侵食されていきます。そのため、湾曲部は氾濫の原因になりやすく、水害の危険性が非常に高い状態です。このような水害を防ぐために屈曲部を直線的に開削した人工水路を捷水路といいます。本来、河川は蛇行するものなので、捷水路を設ける場合はその河川の蛇行特性を考慮してルートを決める必要があります。
④分水路(放水路)
洪水流量に対する河川の流過能力が十分でない場合で、近くに海や流過能力の高い河川がある場合は新川を開削して海や他の河川へ放流します。この新川を分水路(放水路)といいます。以前は盛んに建設が行われていましたが、住宅の移転に莫大な時間と費用がかかるため、現在は平野部で建設されることはほとんどありません。また、環境保護の面から断念されたケースもあります。近年では首都圏外郭放水路のように、地下に大規模な貯水池を建設しそこに放水するタイプの地下放水路があり、大都市の中小河川治水対策に応用されています。ちなみに、首都圏外郭放水路は江戸川(利根川水系)として一級河川に指定されています。
まとめとして、治水計画は水系一貫した計画を策定する必要があり、その中でも重要な洪水対策の方法としては堤防、浚渫、遊水池、ダム、捷水路、分水路(放水路)などが挙げられます。