流量を制御するために水槽の底や側面に設けた小孔をオリフィスと言います。オリフィスには、小型オリフィス、長方形大型オリフィス、円形大型オリフィス、三角形大型オリフィス、潜りオリフィスと様々な種類があります。ここでは、これらオリフィスによる流量の式の誘導を行います。数式が多くなりますが少し辛抱して下さい。
①小型オリフィス
始めは、小型オリフィスについてです。小型オリフィスの速度を求めた後に流量を求めるのですが、実は小型オリフィスの速度については既に求めています。それは、4.5 ベルヌーイの定理の例題2のところです。小型オリフィスの流出速度はトリチェリの定理に従います。しかし、トリチェリの定理は理論値であるため、実測値に近づけるために損失水頭を考える必要があります。
このとき、fは摩擦損失係数 [単位なし]、Cvは流速係数 [単位なし] です。
摩擦損失係数は摩擦によるエネルギーの損失を表した係数であり、流速係数は理論値を実測値に近づける係数です。また、流速係数は一般的に0.95〜0.99の値をとります。次に連続の式を使って流量を導出していきます。小型オリフィスを出たあとの水はそのまま拡散していくイメージがありますが、流出した直後の流積は一度収縮します。この収縮した流積をベナコントラクタと呼びます。さらに、このベナコントラクタの断面とオリフィスの断面の比を収縮係数といい、式で表すと次のようになります。ちなみに、収縮係数の値は0.6〜0.7程度となります。
このとき、Ccは収縮係数 [単位なし]、Cは流量係数 [単位なし] です。
流量係数は収縮係数と流速係数を掛ければ求めることができ、0.6程度の値をとります。
②長方形大型オリフィス
次に、長方形大型オリフィスについてです。長方形大型オリフィスの上縁と下縁は流速差が大きくなってくるため、流速を一様と考えることはできません。また、長方形大型オリフィスであるため水面の下降速度も無視できないとすると、ベルヌーイの定理を立て直す必要があります。
水面の速度水頭をhaと置き換え、式変形を続けます。
このとき、vaは接近流速 [m/s]、haは接近流速水頭 [m] です。
水面の降下速度を接近流速、水面の速度水頭を接近流速水頭と呼ぶのですが、覚える必要はありません。次に、流量を求めていくのですが、連続の式を使って深さ方向に積分する必要があります。
さらに、接近流速水頭を考慮しない場合を考えます。すると式は次のように簡単になります。
このとき、水深h1とh2のちょうど半分の位置をhとします。そのときの水深h1、h2の式を上式に代入し、級数展開をすると、さらに式変形をすることができます。
③円形大型オリフィス
円形大型オリフィスは真円で出来ていると仮定し、円の中心位置まで深さを水深hと置きます。
まずは、円の幅、深さ、微小深さの式を三角関数を使って求めます。
これらの式を連続の式に代入し、積分します。また、計算を簡単にするために接近流速は考えないとします。
このとき、積分の部分にのみ注目し、二項定理を使います。すると、流量を求めることが出来ます。
④三角形大型オリフィス
三角形大型オリフィスは、まず幅b(z)を比を使って求めます。ちなみに、今回も接近流速は考慮しません。
次に連続の式を立てます。すると、流量が求まります。
⑤潜りオリフィス
潜りオリフィスは完全潜りオリフィスと不完全潜りオリフィスの2つに分類することが出来ます。完全潜りオリフィスは出口の全断面が水中にある場合を指し、不完全潜りオリフィスは断面の一部が水中にある場合をいいます。始めに、完全オリフィスについて考えていきます。まずは、これまでと同様ベルヌーイの定理から速度を求めます。
完全潜りオリフィス
不完全潜りオリフィス
その後、連続の式から流量を求めます。
また、接近流速を考慮しない場合は次のようになります。
最後は不完全潜りオリフィスです。不完全潜りオリフィスは流量を2つに分けて式を作ります。流量Q1とQ2はこれまでのオリフィスの式を流用し、それらを合計することで流量が求まります。また、実験値から流量係数C1は0.62、C2は0.53程度の値になります。
まとめとして、オリフィスは、ベルヌーイの定理を使って流速を求め、連続の式を使って流量を求めます。流量の式自体は覚えなくて大丈夫です。