ここでは定常流における運動量方程式を誘導していきます。まずは、ニュートンの運動方程式から式変形をしていきます。
細字で書かれたアルファベットはスカラー量、太字で書かれたアルファベットはベクトル量を表しています。スカラー量は物理量の大きさだけを表現しており、質量や時間、温度が例として挙げられます、一方、ベクトル量は物理量の大きさと方向をもった物理量であり、力、速度、加速度などがあります。ベクトル量は方向の情報も持っているため、負の値も存在します。
上式のmdvは運動量といい、物体の運動の激しさを示す量です。また、dvやdtは微小範囲における変化量を示しています。今、2個の質点と仮定すると、さらに式変形が行えます。
この式を運動量方程式といい、運動量の変化を表しています。また、外力が作用していないときは運動量保存の法則が成り立ちます。一般的に、運動量方程式を適応させる境界面を検査面といい、この検査面に囲まれた領域を検査領域といいます。では、運動量方程式を使った例題を3問解いてみましょう。
例題1:下図のような内径からある流速で水が噴出されたとき、壁面はどのくらいの力を受けているか求めよ。
図の破線は検査領域を示しています。検査領域の最も左を断面①、検査領域の最も右を断面②として運動量方程式を立てます。断面①の力は大気圧しか作用していないので0になります。また、断面②の流速は壁にぶつかっているので0になります。流量Qを連続の式で求め、式に代入すると外力が算出できます。
例題2:下図のように水の噴出が角度30°の平板に衝突するときの反力を求めよ。また、平板上で摩擦抵抗を考慮しないときの流量Q2、Q3を求めよ。ただし、流量Q1=0.2 [m3]、v1=50 [m/s] とする。
この問題は、壁面に直角なx軸方向と、壁面に沿うy軸方向に分けると問題が簡単になります。まずは、x軸方向の運動量方程式を立て、外力を求めます。
次に、y軸方向の運動量方程式を立てます。このとき、摩擦抵抗を考慮しないのであれば速度はv1=v2=v3となります。宇宙空間を想像してもらえれば理解しやすいと思います。宇宙空間では摩擦抵抗や加速度が働いていないために、一度進み続けた物体は等速直進運動をし続けます。それと同じような感じです。
この連立方程式からQ2を消去することにより流量を求めます。
例題3:下図のように堰を超える流れにおいて、単位幅流量がq=1.7 [m3/s] のとき、堰幅1 [m] 当たりにかかる力を求めよ。
単位幅流量とは幅1 [m] あたりの流量をいいます。まずは、全水圧と速度を求めます。
次に運動量方程式から外力を求めます。
まとめとして、運動量方程式は運動量の変化量を表しています。また、方程式を適応させる領域を検査領域といいます。運動量方程式は水理学の三大公式ですので、連続の式、ベルヌーイの定理と一緒に覚えて下さい。