水理学の分野では、河川や海岸の解析をするときに模型実験がよく行われます。模型実験とは、現地の状況を縮小した模型を作製し、模型による測定値から原型の真値を求める実験のことです。このとき、原型と模型の寸法の比がすべて等しい相似を幾何学的相似といい、流速や粘性力などの作用する力の比がすべて等しい相似を力学的相似といいます。
水力学で力学的相似を行うとき、流速や流量、水圧、粘性力など作用する力の比をすべて等しくしようとすると多大な労力と時間が必要になります。そこで、開水路の模型ではフルード数、管水路の模型ではレイノルズ数がよく用いられます。フルードの相似則は重力が影響しているときに慣性力と重量の比を一定にしたものであり、レイノルズの相似則は粘性力が作用しているときに慣性力と粘性力の比を一定にしたものとなります。式にすると次のようになります。
このとき、Lは代表長さ [m]、Vは代表速度 [m/s] です。
上式は覚えなくても大丈夫です。フルード数、レイノルズ数の式は、4.2 流れの分類で書いた方を覚えて下さい。では、例題を2問解いてみましょう。
例題1:縮尺1/100のダムの模型を作製し、越流の流速を測定したところ0.5 [m/s] であった。では、原型の流速はいくらか。
ダムの越流は壁に触れておらず粘性力がほとんど働いていないため、重力の影響が大きいと仮定できます。そのため、フルード数を使って流速を求めます。模型の添字はm、原型の添字はpを使用し、比により流速を求めていきます。
例題2:縮尺1/25の河川の模型を作製した。原型の流量を測定したところ、60 [m3/s] であった。では、模型の流量はいくらにすればよいか。
河川の場合もフルード数を使って求めていきます。
相似則として使える無次元量は、フルード数、レイノルズ数の他にウェーバー数というのが存在します。ウェーバー数は慣性力と表面張力の比で表わされた無次元量です。式にすると次のようになります。
まとめとして、フルード数、レイノルズ数は流れの分類だけでなく、模型の力学的相似を行うときにも使用されます。