地球規模で見ると、赤道付近の降水量が最も多く、緯度が高くなるにつれて降水量は減少していきます。世界の年間降水量の平均が約950 [mm] であるのに対し、日本の年間降水量の平均は約1,700 [mm] と2倍近くなります。同緯度に位置する他国と比較しても日本の降水量は多く、周囲が海で囲まれていること、台風の進路に位置すること、国土の真ん中を山脈がはしっていることなどの地理的・地形的要因が大きいです。さらに、日本の降水量は地域差もかなり見られ、ここでは主な日本の降水の特徴について述べていきます。
日本の年間降水量は2,800 [mm] を超す地域もあれば、1,000 [mm] を下回る地域もあります。2,800 [mm] を超す地域としては、九州南部、四国の太平洋側、紀伊半島南部、北陸地方が挙げられます。太平洋側では6月から9月にかけて月降水量が最大となります。これは夏の季節風(モンスーン)が原因であり、南東から水分を多く含んだ風が吹き、その風が日本の山脈にあたり雨を降らせるからです。また、北陸地方では12月から1月にかけて月降水量が最大となります。これは冬の季節風(モンスーン)が原因であり、北西から水分を多く含んだ風が吹き、その風が日本の山脈にあたり雪を降らせるからです。
季節風について少し解説をしておきます。夏場は太陽によってユーラシア大陸が暖められ、空気が上昇し、ユーラシア大陸で低気圧が発生します。圧力は高いところから低いところに行くため、海上の気圧は大陸の低気圧に向けて進みます。これが、夏の季節風です。一方、冬の季節風はユーラシア大陸で高気圧(この高気圧をシベリア高気圧という)が発生するために起きる現象といえます。
年間降水量が1,600 [mm] 未満となる地域は東北の太平洋側、瀬戸内海、1,000 [mm] 未満となる地域は北海道東部です。降水量の少ない地域は年間を通して変動がないのが特徴です。また、瀬戸内海で降水量が少ない理由としては南北が陸地で挟まれていることが挙げられます。
降水は3.1 雨の仕組みで述べたとおり水蒸気を含んだ空気が上昇することに起因します。日本における上昇気流の原因としては、地形による上昇気流、前線による上昇気流、低気圧による上昇気流、不安定状態解消による上昇気流の4種類あります。
①地形による上昇気流
山脈に風が当たると山肌に沿って上昇気流が発生します。そのため、山肌の背後にある地域では雨や雪が降ることになります。雨や雪が降った後の乾燥した空気は反対側の山肌に沿って下降していきます。
乾燥した空気は湿った空気より断熱膨張による気温変化が大きくため、反対側の山肌に沿って下降するときに元の温度よりも大きくなります。この現象をフェーン現象といいます。
②前線による上昇気流
暖かい空気と冷たい空気がぶつかったとき、両者が簡単に混ざることはありません。この両者がぶつかる面を前線といい、暖かい空気が冷たい空気より上方に進入する場合を温暖前線、冷たい空気が暖かい空気の下に潜り込むように進入する場合を寒冷前線といいます。一般に、寒冷前線の方が空気の上昇が急激に起きるため、激しい雨が降りやすいです。
暖かい空気と冷たい空気の勢力が拮抗しているとき、前線は移動することなくその位置にとどまります。その状態の前線を停滞前線といいます。梅雨はこの停滞前線が影響しており、オホーツク海高気圧を中心とした冷たい空気と太平洋高気圧を中心とした暖かい空気によってできた停滞前線によって雨が降り続ける現象です。
③低気圧による上昇気流
低気圧は気圧の低い場所の中心に渦の形で空気が流れ込む現象であり、流れ込んだ空気は行き場をなくし渦の中で上昇していきます。そのため、低気圧付近では雨が振りやすくなります。また、低気圧は発生する地域によって温帯低気圧と熱帯低気圧に分けられます。
気象庁は北太平洋南部または南シナ海で発生した熱帯低気圧で、最大風速が17 [m/s] 以上のものを台風と定義しています。台風は巨大な低気圧であり、海面が吸い上げられることにより高潮も引き起こします。そのため、台風が通過すると洪水と高潮が同時に発生し、特に河口部では十分な注意を要します。
④不安定状態解消による上昇気流
夏季などに地表面が暖められると、地表面付近には暖かい空気の固まりができます。周囲が冷たい空気で囲まれているとき、暖かい空気は非常に不安定な状態であり、この状態を解消するために暖かい空気は急上昇します。その結果、降水が発生します。代表的なものとしては、雷雨、スコール、夕立などがあります。
まとめとして、日本の年間降水量は世界平均と比べると2倍近くあります。また、日本の降水は地域差が大きいのも特徴の一つであり、季節風、梅雨、台風などが大きく影響しています。日本の降水の原因としては、地形による上昇気流、前線による上昇気流、低気圧による上昇気流、不安定状態解消による上昇気流の4種類あります。