有限振幅波理論は波高を考慮した非線形理論であり、代表的なものとしてはストークス波とクノイド波があります。ストークス波は波形勾配が小さく、相対水深が大きいときに適応できる有限振幅波であり、水面波形はマクローリン展開により求められます。一般的に相対水深は1/10より大きければ適用可能となっています。
このとき、βは係数です。
現在使用されているストークス波による深海波は上式をもとに式を立てています。
また、定数項を無視し、βをαの式に置き換えると、次のように式変形ができます。また、そのときの波高、波速は次式によって表されます。
ストークス波による浅海波は多くの人によって取り扱われていますが、その中でも代表的なものであるスケルブレアによる第三次近似式を示しておきます。
微小振幅波の水粒子の運動軌跡は楕円運動でしたが、ストークス波は微小振幅波よりも腹で尖り、節で平らになるため、楕円軌道を描きません。例えば、海面に浮かんだ小さなゴミは波によって岸に運ばれてきます。これは実際の水粒子がらせん状の軌道を描き、一周期ごとに少しずつ波の進行方向へ移動しているからです。この現象をドリフト現象または質量輸送といい、水粒子が運ばれる平均速度(質量輸送速度)は次式によって表されます。
このとき、Uは質量輸送速度 [m/s]、z0は水粒子の平均位置の高さ [m] です。
一方、クノイド波はコルトヴェーグとド・フリースが誘導した方程式(K-dV方程式)の第一次近似解として求められる有限振幅波です。この第一次近似解はヤコビの楕円関数で表されます。相対水深が1/50〜1/10のときに適用可能とされています。
また、母数k→1とした極限を考えると、1つの峰を持った非周期的な有限振幅波を得ることができます。これが孤立波です。
まとめとして、有限振幅波理論は波高を考慮した非線形理論であり、代表的なものとしてはストークス波とクノイド波があります。また、クノイド波に極限をとると孤立波が導けます。