波の進行方向に構造物があると、入射してきた波は構造物によって反射されます。このとき、構造物前面の波を入射波、反射後の波を反射波といいます。反射波は入射波と重なり合って重複波を形成するのですが、波高と波長(周期)が等しく、進行方向が逆の二つの波が重なるときを完全重複波といいます。完全重複波の水面波形は次式によって表されます。
完全重複波の式をグラフにすると次のようになります。完全重複波は0、L/2、L、3L/2、2Lの点で腹となり、振幅は最大となります。一方、L/4、3L/4、5L/4、7L/4の点で節となり、振幅は0となります。
また、水平方向・鉛直方向の速度と水平方向・鉛直方向の移動距離も同様に計算することができます。
完全重複波の全エネルギーは微小振幅波の2倍となるため、次のように表されます。
ちなみに、構造物に対して斜めから波が入射波し、形成される完全重複波を斜め完全重複波といい、その水面波形は次式によって求めることができます。
このとき、βは入射角です。
一方、波長(周期)は等しいのですが波高が異なるときで、進行方向が逆の二つの波が重なるときを部分重複波といいます。部分重複波は入射波のエネルギーの一部を反射するために波高が小さくなります。そのため、波が透過性構造物にぶつかったときなどの場合に生じます。部分重複波の水面波形は次式によって表されます。
部分重複波は(H1-H2)/2の振幅とH2の振幅が重なった波形であり、振幅はL/4間隔で増減を繰り返します。そのときの最大値と最小値は次式で求められます。
部分重複波の最大波高と最小波高が測定できれば、入射波と反射波の波高を計算から求めることができます。また、入射波の波高と反射波の波高の比を反射率といい、次式によって計算できます。
このとき、KRは反射率です。
波高は等しいのですが波長(周期)が異なるときで、進行方向が同じ二つの波が重なるときを群波といいます。群波の水面波形は次式によって表されます。
また、(k1-k2)→0、(ω1-ω2)→0の極限では、群速度は微小振幅波の波速となります。そのため、以下のように式変形が行えます。
微小振幅波の波速は角速度と波速の関係式から次のように書き換えられます。
では、上式の両辺を対数にとり、微分していきます。
得られた式を群速度の式に代入します。
まとめとして、波高と波長(周期)が等しく進行方向が逆の二つの波が重なるときを完全重複波、波高が異なり進行方向が逆の二つの波が重なるときを部分重複波、波長(周期)が異なり進行方向が同じ二つの波が重なるときを群波といいます。群波の伝搬速度は群速度と呼ばれ、エネルギー輸送量を求めるときに使用されます。