河川は河道と流水を総称したものであり、源流から下流に下る過程で他の河川と合流または他の河川に分流することで複数の河川網を形成します。また、この河川網を水系といいます。河川の断面積や流量、河川長が最も大きいもの、あるいは政治的・経済的に重要であると考えられる河川を本川あるいは幹川といい、本川に合流するものを支川、本川から分流するものを派川といいます。
河川法では、国土保全上または経済上重要な水系を一級水系としており、その中でも国土交通大臣が指名した重要な河川が一級河川となります。現在、日本には一級水系が109あり、一級河川が14,000ほど指定されています。また、一級水系以外で公共の利害に関係がある水系を二級水系としており、その中でも都道府県知事が指名した河川が二級河川となります。
河川を流れる水はそれよりも上流部に降った雨や雪が流入したものであり、水系に集まる水の範囲を流域と呼びます。河川や流域の特性を見るとき、それらを定量的に表す諸量として以下のものがあります。
①河川長(Lm):本川の最上流端から河口までの長さをいいます。支川の場合は、最上流端から本川との合流点までの長さとなります。
②流域面積(A):流域の平面積をいいます。水系の流域面積は本川、支川、派川の流域面積を全て合わせたものになります。
③流域平均幅(B):流域面積を本川の河川長で除した値であり、河川の単位長さ当りの流域面積を表します。
④形状係数(F):流域平均幅を本川の河川長で除した値であり、実際の流域面積と本川の河川長を一辺とした正方形の面積の比を表します。
⑤流域平均勾配:流域の最高点と最低点の標高差を本川の河川長で除した値です。
⑥河川密度(D):本川および支川の総河川長を流域面積で除した値であり、流域の平面形状、地形、地質に関係します。河川密度は浸透性地盤では小さく、不浸透性地盤では大きくなります。
⑦洪水ピーク流量(Qp)と出水期間(T):いずれも流域特性を表すものであり、一洪水当りの最大流量を洪水ピーク流量、流量が増え始めてから元の流量に戻るまでの期間を出水期間といいます。
⑧河況係数(FQ):年間通しての最大流量(QH)と最小流量(QL)の比であり、日本の河川は河況係数が非常に大きいのが特徴です。
また、代表的な流域形状としては羽状流域、放射状流域、平行流域、複合流域があります。
①羽状流域
流域の形状が鳥の羽のように細長く、その中央の本川に沿って左右から小規模な支川が合流するものを羽状流域といいます。日本の河川で最も多く見られる流域であり、流域平均幅や形状係数が小さいのが特徴です。また、各支川が本川に合流する時間が違うため、洪水ピーク流量は小さく、出水期間は長くなります。
②放射状流域
比較的同じ規模の支川が河口付近で本川に合流するような流域を放射状流域といい、流域形状は円形に近く、流域平均幅や形状係数は羽状流域に比べて大きいのが特徴です。また、各支川からの洪水流量がほぼ同時刻に本川に集合するため、洪水ピーク流量は大きく、出水期間は短くなります。
③平行流域
羽状流域をもつ2本の河川が並行して流れ、河口付近で合流するものを平行流域といいます。流域特性は合流前は羽状流域、合流後は放射状流域に近くなります。
④複合流域
羽状流域、放射状流域、平行流域が組み合わさり、明確に分類できないものを複合流域といいます。
河川数、河川長、流域面積、縦断勾配などの流域特性と位数(水系を構成する河川を数値化したもの)の間に存在する関係を定量的に評価しようとするものを位数理論といいます。位数理論はホートンによって提唱された後、ストレーラーによって改良されたものであり、流域特性を予測するときによく用いられます。
位数理論は末端河川の位数を1とし、同じ位数の河川が合流するごとに位数を1つ大きくしていきます。ただし、より小さい位数の河川が合流しても、この影響は考慮せず、合流前と同じ位数の河川として取り扱います。そのため、本川の位数は最大位数となります。また、河川の分岐比を一定するにすると各位数の河川数は次式によって表されます。この式を河川数則といいます。
このとき、Niは各位数の河川数、RNは分岐比、iは位数、kは最大位数です。
ちなみに、上図では次のようになります。
日本の水系では分岐比は一般的に3〜5の間にあります。河川長、河川勾配、流域面積も同様の式で表すことができます。
このとき、RLは河川長比、RIは河川勾配比、RAは流域面積比です。
また、河川長比、河川勾配比、流域面積比は経験則によって下表のようにある程度の値が定まっています。さらに精度を上げるのであれば、各水系による実測値を用いる必要があります。
まとめとして、河川の合分流によってできた河川網を水系といいます。また、政治的・経済的に重要であると考えられる河川を本川、本川に合流するものを支川、本川から分流するものを派川といい、水系に集まる水の範囲を流域と呼びます。代表的な流域としては羽状流域、放射状流域、平行流域、複合流域があります。さらに、流域特性を予測するときに用いられる理論として位数理論があります。流域特性を求めるときに必要な分岐比、河川長比、河川勾配比、流域面積比は経験則によってある程度の値が定まっています。