3.3 主応力とモールの応力円

微小要素を回転させたとき、任意のせん断応力τθが0になる面(位置)が必ずでてきます。そのときの垂直応力(鉛直応力と水平応力)を主応力といい、主応力は垂直応力が最大または最小となるときの値を示しています。まずは、力の釣り合い式から任意の垂直応力σθとτθを求めていきます。下図は微小要素を任意の角度で切ったときを考えています。

x軸の式にsinθを掛け、z軸の式にcosθを掛けます。そして、2つの式を引くと、任意の垂直応力σθが求まります。

今度はx軸の式にcosθを掛け、z軸の式にsinθを掛けます。そして、2つの式を足すと、任意のせん断応力τθが求まります。

これで、任意の垂直応力、せん断応力の式を導出することができました。一旦、まとめてみます。

このとき、任意の垂直応力をθで微分してみます。すると、次式が得られます。

上式は任意の垂直応力が極値のときの角度、すなわち、主応力となるときの角度を表しています。tan(2θ)はtan(2θ+π)のときも同じ値をとるため、上式から主応力が2つ存在していることが分かります。2つの主応力のうち、大きい方の主応力を最大主応力σ1と呼び、小さい方の主応力を最小主応力σ3と呼びます。

勘の良い人は気づいているかもしれませんが、σ2は地盤を3次元で考えたときに出てくる主応力であり、中間主応力といいます。ここでは、地盤を2次元で考えているので中間主応力は出てきません。最大主応力、最小主応力が求められる式は次のようになります。

例題を2問解いてみましょう。

例題1:下図に示すように微小要素が地表面に対して垂直かつ水平のとき、角度θ=30°における任意の垂直応力を求めよ。また、このときの最大主応力、最小主応力も求めよ。

任意の垂直応力の式にτxz=0を代入すると次のようになります。

次に、最大主応力と最小主応力を求めていきたいのですが、まずは主応力が発生する角度を求めます。

主応力は角度θ=0°,180°のときの垂直応力であることがわかりました。それでは、角度θ=0°,180°を任意の垂直応力の式に代入します。

このことから、せん断力が0の微小要素は角度が変化しないため、σzが最大主応力、σxが最小主応力となります。また、あたりまえですが、せん断力が0のときは垂直応力が主応力となるため、任意のせん断応力も0となります。念のために、別の方法でも最大主応力、最小主応力を求めておきます。

例題2:下図に示すような微小要素のときの任意の垂直応力、最大主応力、最小主応力を求めよ。

この問題も解き方は例題1と同じですが、角度の回転方向にだけ注意して下さい。まずは、任意の垂直応力を求めていきます。

次に、主応力と主応力になる角度を求めていきます

昔は関数電卓やコンピュータがないので任意の垂直応力や任意のせん断応力、主応力を求めるのがとても面倒でした。そこで、せん断応力が0であると仮定することで、任意の垂直応力、せん断応力の式から円の方程式を作りました。この円の方程式をモールの応力円といいます。円であれば誰でも作図が可能なため、昔の人は図から任意の垂直応力、せん断応力を求めていました。

では、モールの応力円の式を導出してみましょう。まずは、任意の垂直応力、せん断応力を式変形します。このとき、せん断応力には0を代入します。また、土質力学では鉛直応力の方が水平応力より大きくなるため、σz1、σx3とします。

次に、任意の垂直応力、せん断応力の式を2乗します。

最後に、2つの式を足し合わせると、モールの応力円が完成します。

この式を横軸σθ、縦軸τθとした座標で作図すると次のようになります。

モールの応力円は、最大主応力σ1と最小主応力σ3が与えられると、任意の垂直応力σθ、せん断応力τθを簡単に求めることができます。逆に、任意の垂直応力、せん断応力が分かると、最大主応力と最小主応力を図から算出することができます。さらに、任意のせん断応力が最大となる角度は2θが90°のときなので、最大せん断応力は角度45°のときに生じることがわかります。

まとめとして、せん断応力が0となるときの垂直応力を主応力といいます。地盤を2次元で考えるとき、主応力は最大主応力と最小主応力の2つ存在しています。また、モールの応力円を使えば、任意の垂直応力、せん断応力から主応力を、主応力から任意の垂直応力、せん断応力を求めることが可能となります。