地盤上に人口構造物を建設すると、構造物の重量を外力として地盤内に応力が発生してきます。この応力は、地盤が均質かつ等方性体かつ半無限弾性体と仮定することで解析的に求めることができます。しかし、得られる結果はごく限られた場合の荷重条件のみであり、任意の荷重条件に対する解は有限要素法がよく用いられます。
地盤内の応力は鉛直応力と水平応力およびせん断応力に分けて考える必要があり、地盤沈下や安定計算など目的に応じて求める必要があります。
鉛直応力は圧密沈下の原因となる応力、水平応力は土圧の計算に関係する応力です。また、せん断応力は基礎や斜面のすべり破壊の安定性を検討する上で必要となります。上載荷重による鉛直応力は構造物から離れるに従って小さくなります。このとき、鉛直応力の大きさが等しいところを結んだ曲線を応力球根といいます。例として下図を見ておいて下さい。
支持力や沈下に大きく影響を及ぼす範囲は、地盤内の応力が0.2q程度までといわれています。そのため、0.2qの応力球根が軟弱地盤を横切る場合は、その土層を詳しく調べる必要が出てきます。
それでは、上載荷重による鉛直応力を求めていきましょう。ここでは、集中荷重、等分布荷重、台形分布荷重(盛土荷重)、円形等分布荷重が載荷したときの鉛直応力について述べるとします。まずは、集中荷重です。
①集中荷重
下図に示すように地表面で集中荷重が作用するとき、載荷点から距離rの深さにある微小要素の応力は次の式で求まります。この式をブーシネスクの式といい、19世紀のフランスの数学者ジョセフ・バレンティン・ブーシネスクが見つけた公式です。
このとき、νはポアソン比 [単位なし] です。
ポアソン比とは微小要素の縦ひずみと横ひずみの比によって表わされたものであり、土木工学ではよく出てくる言葉ですので名前だけでも覚えておいて下さい。地盤を構成する土のポアソン比は、0.25〜0.50の範囲にあると推定されており、砂地盤では小さく、粘土地盤では大きくなります。ちなみに、ポアソン比νが0.5のときは、体積変化がない非圧縮性を意味しています。ポアソン比を式にすると次のようになります。
このとき、εtは横ひずみ [単位なし]、εlは縦ひずみ [単位なし] です。
②等分布荷重
地表面に等分布荷重が作用した場合の鉛直応力を求める方法はいくつか提案されていますが、最も一般的なのがブーシネスクの式を積分することで求める方法です。
長方形の長さと深さ、分布荷重の値を代入すれば鉛直応力を求めることができるのですが、計算が非常に面倒です。そこで、あらかじめ計算した結果を図表化し、簡単に鉛直応力を計算できる方法が提案されました。この図表をニューマークの図といい、下図のようになります。
この図から影響値を読み取り、鉛直応力を求めます。
このとき、Izは影響値 [単位なし] です。
③台形分布荷重(盛土荷重)
盛土とは平坦な地表面や周囲より高い地表面を作るときに盛られた土のことであり、河川堤防や道路を作るときに使用されます。盛土はほとんど場合に台形分布荷重となり、イメージは下図のような感じになります。
台形分布荷重の式も計算が面倒なので、等分布荷重と同様にあらかじめ応力を計算した図表があります。この図表をオスターバーグの図といい、図および式は次のようになります。
④円形等分布荷重
半径aの円形等分布荷重qが作用する場合の鉛直応力の理論解はあるのですが、解が複雑なため円の中心における鉛直応力を次式に示しておきます。
まとめとして、上載荷重による鉛直応力は限られた場合において公式から求めることができます。任意条件における鉛直応力を求める場合は有限要素法を勉強する必要があります。