放射性元素の半減期は長いもので1万年ほどあり、その間放射性廃棄物を生物から隔離する必要があります。隔離とは放射性廃棄物が水に溶けて地盤や地下水に侵出しないことを意味します。そのため、透水性が極めて低い地層へ埋設する、地下水位が非常に低い砂漠地帯に埋設するのが適切といわれています。これら地層処分は万全を期して1万年から10万年ほど隔離しなければならず、その間に地盤変動や大地震が起きないとは考えられないため、非常に危険な状態な処理方法です。ただし、今のところ地層処分以外の現実的な選択肢はどの国も持ち合わせていません。
下図は放射性廃棄物を埋設するときの模式図であり、放射性廃棄物は4段階の遮蔽措置(バリア)が検討されています。ガラス固化体は放射性廃棄物をガラスに融解させ、ステンレス製の容器の中で固化させたものです。30〜50年間冷却するため、この状態で地上施設で管理貯蔵します。
地層処分するときはオーバーパックと呼ばれる金属製の容器に密閉されます。金属材料には炭素鋼、チタン、銅が検討されており、このオーバーパックの侵食速度は1000年間で3 [cm] といわれています。廃棄物が発する熱によってオーバーパック周辺の温度は100℃ほどになると考えられていましたが、実は150℃にまで上昇する説があります。水分蒸発の観点から温度の違いで済ますことはできないため、抜本的なやり直しをする必要があるかもしれません。
緩衝材またはバッファ材はベントナイトと花崗岩を砕いた砂を半分ずつ混合したものを充填します。ベントナイトは水と反応し、膨潤性を示すために乾燥ひび割れが生じにくく、水を通しにくい特徴があります。また、物質を吸着する性質を持っているため、放射性廃棄物を遮断するのに適した材料と考えられています。
地層処分以外の方法としては海底処分、氷床処分、宇宙処分などが挙げられます。
海底処分は廃棄物を海洋に投棄し、深海底の泥の中に埋めることで隔離する処分方法です。この方法は深海底の堆積物が放射性物質を吸着し、さらに広い海の膨大な海水により希釈されると考えられています。しかし、海底は科学的に明らかになっていないことが非常に多く、不確実性が大きいため、現在は適切な処分方法とは考えられていません。こうした状況から、海底処分はロンドン条約で国際的に禁止されています。
氷床処分は氷上に放射性廃棄物を置くと、自らが発する熱で氷が溶け、沈んでいくことで隔離する方法です。しかし、放射性廃棄物の輸送コストに非常に大きく、また南極の氷底がどのようになっているかは十分に解明されていません。さらに、地球温暖化で氷が全て溶けてしまうと放射性廃棄物が地上に露出することになります。こうした状況から、氷床処分は南極条約で国際的に禁止されています。
宇宙処分は国際的に禁止されておらず、地層処分に取って代わる方法の一つです。しかし、放射性廃棄物を宇宙に打ち上げるには莫大な費用がかかる上、ロケットが墜落してしまうと地上や海洋で甚大な被害が発生します。そのため、宇宙処分は現時点では実現可能性が認められていません。
まとめとして、放射性廃棄物を隔離する方法としては地層処分、海底処分、氷床処分、宇宙処分があります。現実案としては地層処分なのですが、長期間隔離しないといけないため、地盤変動や大地震を考慮する必要があります。