河川を横断する構造物を建設し、流れを遮断することでその上流部に貯水させる施設をダムといいます。ダムは基礎地盤から堤頂までの高さが15 [m] 以上の貯水施設と河川法に定義されており、15 [m] 未満のものは堰と呼ばれます。ダムを建設する目的としては、治水としての洪水調節、利水としての生活用水、工業用水、農業用水の確保、水力による発電などがあります。現在、日本には約2,600基ほどのダムが建設されており、そのうち多目的ダム(目的が二つ以上あるダム)は約800基となっています。
ダムの種類としては、重力式コンクリートダム、中空重力式コンクリートダム、アーチ式コンクリートダム、重力アーチ式コンクリートダム、バットレス式ダム、ロックフィルダム、アースフィルダム、複合式ダムなどがあり、以下のようにまとめられます。
①重力式コンクリートダム
重力式コンクリートダムは、コンクリートの質量を利用して、自重により水圧等の外力に抵抗するダムです。基礎岩盤はコンクリートの荷重を支えるために十分な強度を必要とします。現在は建設地点の確保や経済的なダム型式(台形CSGダムなど)の開発により、建設数は減少傾向にあります。
②中空重力式コンクリートダム
中空重力式コンクリートダムは、重力式コンクリートダムと同様に、自重により外力に抵抗するダムですが、ダム内部には中空部が設けられています。コンクリートによる材料コストや交通状況による輸送コストを抑えるために、コンクリートの使用量をできるだけ削減できるよう考案されました。また、基礎岩盤への設置面を中空の分だけ広くしないといけないため、安定性が重力式コンクリートよりも増すというメリットもあります。昭和40年頃までは人件費よりコンクリートの方が値段が高かったのですが、現在はコンクリートが安くなってきた上に、型枠に掛かるコストが増してきている事から、中空重力式コンクリートダムが建設されることはほとんどありません。
③アーチ式コンクリートダム
アーチ式コンクリートダムは、上流側にアーチ状に張り出し、両側面の岩盤に外力を分散することで抵抗するダムです。アーチ式コンクリートダムは重力式コンクリートダムより幅を薄くすることができるため、コンクリートの使用量を少量で済ませれるのですが、強固な両側基礎岩盤の存在が絶対条件であり、建設可能な地点は限定されます。アーチ式コンクリートには様々な種類が存在しており、最も多いのがドーム型アーチとなっています。他には、円筒型アーチ、マルチプル型アーチ(多連型アーチ)なども有名です。
④重力アーチ式コンクリートダム
重力アーチ式コンクリートダムは、重力式コンクリートダムとアーチ式コンクリートダム双方の利点を備えたダムです。重力式コンクリートダムのようにコンクリートを大量に必要とせず、アーチ式コンクリートダムのように強固な岩盤を必要としません。日本には12基しかないという珍しい型式となっており、1970年以降は1基も建設されていません。
⑤バットレス式ダム
バットレス式ダムは、鉄筋コンクリート製の板で水圧を受け、その板をバットレス(扶壁)と呼ばれるコンクリートの擁壁と柱で支えるダムです。このダムもコンクリートを節約できますが、耐えられる水圧には限界があります。また、普通のダムと比較して構造が複雑で頻繁なメンテナンスが必要なため、日本で現存しているのは6基だけであり、1940年以降は1基も建設されていません。
⑥アースフィルダム
アースフィルダムは粘土や土砂などを主材とするダムです。最も歴史の古いダム形式で、日本でも農業用水を目的として古くから作られました。土で出来ているために地震や洪水時の耐久性に問題があるとされており、国内では100 [m] を超えるような高いダムは存在しません。また、アースフィルダムは地盤が弱くコンクリートダムの建設が困難な場合に建設されます。ダム自体の体積が大きいことから安定性はありますが、越水には非常に弱いです。従ってアースフィルダムを設計する際は、コンクリートダムよりも洪水処理能力に余裕を持たせる必要があります。
⑦ロックフィルダム
ロックフィルダムは粘土、砂利、砂、岩石を積み上げて建設するダムであり、国内のダムのほとんどがこの型式となっています。内部は三相構造になっており、中心部の粘土質はコア材と呼ばれ、このコア材が水をせき止めます。その両面に砂や砂利からなるフィルター材が積まれ、コアが崩れないように支えます。さらにその外側に岩石を敷き詰めたロック材を幅広く積み、コアとフィルターを支えます。ロックフィルダムはアースフィルダムと同様にコンクリートダムの建設が困難な場合に建設されます。アースフィルダムよりは丈夫ですが、越水には弱いです。
⑧複合式ダム
複合式ダムは複数の形式を組み合わせて建設されるダムです。ダムを建設する際は岩盤の硬さが重要となりますが、岩盤が堅固でない場合または超巨大ダムの場合は複数の方式を組み合わせる場合があります。大抵は重力式コンクリートダムとロックフィルダムの複合であることが多いです。
ダムの堤体に作用する水圧は非常に大きなものであり、初めてダムに水を貯めるときにその影響が現れる事が多いです。そのため、ダム建設が完了してすぐに運用を開始するのではなく、試験湛水が実施されます。この試験湛水では、水位の変動による堤体の偏位、漏水量、揚圧力、貯水池周辺の斜面状況などを観測し、結果に応じて必要な対策を講じます。運用時も不測の事態に備えるために定期的に観測しており、これら観測のために監査廊と呼ばれる通路がダムの堤体内に設置されています。
まとめとして、基礎地盤から堤頂までの高さが15 [m] 以上の貯水施設をダムといい、日本には約2,600基ほどあります。ダムの種類としては重力式コンクリートダム、中空重力式コンクリートダム、アーチ式コンクリートダム、重力アーチ式コンクリートダム、バットレス式ダム、ロックフィルダム、アースフィルダム、複合式ダムなどが挙げられます。