捨石を用いた防波堤は日本以外では一般的に使用されているのですが、捨石斜面で砕波などによりエネルギーが減少すると捨石間の間隙内に負圧が生じ、結果として捨石に揚力が作用することになります。そのため、断面を構成している捨石が波力によって移動しないように重量を決定する必要があります。まずは、揚力から求めていきます。
このとき、FLは揚力 [N]、Wは捨石の重量 [N]、ωrは捨石の単位体積重量 [N/m3]、ω0は海水の単位体積重量 [N/m3]、kは比例定数です。
また、斜面の釣り合い条件から次式のように表すことができます。
このとき、fは捨石間の摩擦係数、Kは実験によって決定される係数です。
上式はイリーバーレンの式と呼ばれ、係数Kは斜面勾配と相対水深(h/L)によって変化します。また、イリーバーレンの式よりも適用性の高い式としてハドソンの式があり、次式によって表されます。
このとき、KDは安定係数です。
安定係数は実験によって決定される係数なのですが、およその目安として被害率から安定係数を求めることができます。被害率は斜面全体を構成している捨石の数に対して移動した数の割合を意味します。
このとき、Dは被害率 [%]、HD=0は被害率が0のときの波高 [m] です。
安定係数は捨石堤についての係数ですが、コンクリートブロックの重量算定時にも使用されます。日本ではコンクリートブロックを用いることが多く、このブロックを消波ブロックと呼びます。消波ブロックの中でも一番有名なのがテトラポッドであり、テトラポッドの安定係数は8.3となっています。
では、例題を1問解いていきます。
例題1:法面勾配1:2の捨石堤で設計波高を3.0 [m] としたとき、被害率が0となるときの重量を求めよ。また、重量を80%に減らしたときの被害率も求めよ。ただし、安定係数は4.0、海水の単位体積重量は10.1 [kN/m3]、捨石の単位体積重量と海水の単位体積重量の比は2.6とする。
まずは、被害率が0となるときの重量を求めていきます。
次に、重量を80%にしたときの被害率を求めていきます。
計算の結果、上表から被害率は2〜3%程度となります。
まとめとして、捨石を用いた防波堤に砕波などが生じると捨石に揚力が作用します。この揚力を求める式としてはイリーバーレンの式とハドソンの式があり、一般的にハドソンの式が用いられています。