波が深海領域から浅海領域に侵入し、水深が浅くなってくると波高は大きく、波長は小さくなります。また、波の峰は尖り、谷は平らになるため、最終的に波は前方へと砕けていきます。この現象を砕波といい、エネルギーの相当部分が消散されるために激しい現象といえます。
砕波条件は波頂部の水粒子の最大速度が波速より大きくなることであり、その結果、水粒子は波より前方に飛び出すことになります。また、砕波の形式としては崩れ波砕波、巻き波砕波、砕け寄せ波砕波の3種類ありますが、どのような条件で起きるかについてはまだ解明されていません。また、人によっては巻き砕波と砕け寄せ波砕波の中間に巻き寄せ波砕波を設けます。
①崩れ波砕波
勾配がゆるい海岸に波形勾配の大きい波が入射する場合によく見られる砕波形式です。波形は波峰に対してほぼ対称であり、波峰は尖り、白く泡立ち始めます。その白く泡立った部分が波の前面に広がるように砕波し、波のエネルギーが消散していきます。このとき、波はかなりの距離を進行します。
②巻き波砕波
崩れ波砕波の場合より急勾配な海岸に波形勾配の小さい波が入射する場合によく見られる破砕形式です。波形は波峰に対して非対称であり、波峰は前面に切り立ち始めます。その切り立った部分が巻き込まれるように砕波し、波のエネルギーが消散していきます。エネルギーの消散は崩れ砕波より急激に起こりやすく、海底の砂は巻き上げられて浮遊します。その結果、巻き砕波が発生する付近の海底面には沿岸砂州が形成されている場合が大きです。
③砕け寄せ波砕波
巻き波砕波の場合よりさらに急勾配な海岸に波形勾配の非常に小さい波が入射する場合によく見られる破砕形式です。巻き波砕波と同様、波形は波峰に対して非対称となります。波の前面が切り立つのですが、戻り流により波の下部から砕け始め、最終的に波の前面部分が非常に乱れた状態で進行していきます。
これら3種類の砕波の分類としては以下の式で行うことができるといわれています。
このとき、tanβは海底勾配です。
砕波後の波高を砕波波高、砕波後の水深を砕波水深といい、砕波条件を決める重要なパラメータとなっています。砕波波高と砕波水深を決定する方法はいくつも提案されていますが、現在は換算沖波波高を用いる方法がよく使用されています。換算沖波波高は屈折、回折、海底摩擦などを考慮した波高であり、実際の不規則な波をある程度考慮した値といえます。この換算沖波波高は次式によって表され、砕波波高と砕波水深は合田が実験的に得た図表から求めていきます。
このとき、H0'は換算沖波波高 [m]、hbは最初の破砕の砕波水深 [m]、Hbは最初の破砕の砕波波高 [m] です。
また、合田は沖波波長、海底勾配、砕波水深から砕波波高が求められる近似式も提案しています。ただし、上図の実線曲線との誤差は10%以内としています。
このとき、Aは定数であり、規則波の場合は0.17を使用します。
では、例題を1問解いていきます。
例題1:海底勾配が1/50、等深線がほぼ直線で平行な海岸に、周期8 [s]、波高5 [m] の波が入射角30°で進行するとき、砕波波高、砕波水深、砕波地点における波向角を求めよ。また、砕波形式も求めよ。
まずは、屈折係数を求めていきたいのですが、水深がなければ計算することができません。そこで、屈折係数を1.0と置き、換算沖波波高および沖波波長を計算していきます。
次に、図から砕波水深を求めていきます。
この砕波水深を水深とみなして屈折係数を求めていきます。この繰り返し計算を何度も行います。
計算の結果、砕波水深(屈折係数)は同じ値となるため、繰り返し計算はここで終了します。では、図から砕波波高を求めていきます。
また、スネルの法則から砕波地点における波向角を求めていきます。
最後に、砕波形式を求めていきます。
計算の結果、ξ0 < 0.46、ξb < 0.40なので崩れ波砕波であることが分かりました。
まとめとして、砕波には、崩れ波砕波、巻き波砕波、砕け寄せ波砕波の3種類があり、砕波波高と砕波水深は換算沖波波高から求めていきます。