空気中に含まれている水蒸気が微細な水滴となって光を反射(ミー散乱)し、目視できるようになったものを雲といいます。また、微細な粒子が大きくなると空中にとどまっていることができずに地上に落下してきます。これを雨といいます。
空気の温度が下がると飽和水蒸気量は減少し、露点(水蒸気の量と飽和水蒸気量が一致する温度)まで温度が下がると水蒸気は水になります。つまり、雲から雨が降るためには水蒸気を含んだ空気の温度が露点以下まで下がることが条件となります。
露点以下まで温度を下げ、雨を降らせるためには、水蒸気を含んだ空気が上昇する他ありません。空気が上昇すると、周りの気圧が低くなるために空気は膨張し始めます。この現象を断熱膨張というのですが、膨張するためにはエネルギーが必要となります。このエネルギーは自身の熱エネルギー(内部エネルギー)からとってくるため、空気自らの温度は低下します。このことは熱力学第一法則を考えると簡単に理解することができます。話をまとめると、水蒸気を含んだ空気が上昇できれば断熱膨張により温度が下がり、露点に達した結果、雨が降るといえます。空気の上昇理由については3.2 日本の降水の特徴を参照して下さい。
このとき、⊿Uは内部エネルギー [J]、Qは熱量 [J]、Wは仕事 [J] です。
しかし、実際は空気中の水蒸気が水滴になるためには、微細な塵に付着しないといけません。核となる微細な塵がない状態では飽和状態になっても水蒸気のまま存在します。このような状態を過飽和状態といいます。昔は人工的に雨を降らせるために過飽和状態にある大気に微細な物質をばらまいていましたが、現在はあまり行われていません。
なお、降水量の単位は通常 [mm] が用いられます。降水量は雨量計によって測定されており、雨量計には貯水型雨量計と転倒ます型雨量計の2種類があります。ちなみに、雪の場合は雨量計についているヒーターで雪を溶かしてから降水量を測定しています。
①貯水型雨量計
貯水型雨量計は受水器によって降水を雨量ますに集め、降水量を求める方法です。降水量は目視により観測する方法と、降水の重さから体積を算出し、雨量ますの底面積で割ることにより求める方法があります。
②転倒ます型雨量計
転倒ます型雨量計は受水器が集めた降水を雨量ますに注ぎ込み、降水量が0.5 [mm] 貯まると、その重さによってシーソーが転倒し、もう一方の雨量ますに注ぎ込むようになります。そのため、降水量は転倒する回数を数えれば求めることができます。
河川流域の平均降水量は雨量計のデータを用います。一番簡単な方法としては流域内の観測所で観測されたデータの平均をとることです。しかし、実際はある範囲は観測所が密に存在し、ある範囲は観測所がまばらに存在する場合が多いです。そのような場合に平均をとると、密な範囲の重みが強くなってしまいます。そこで、観測所が均等でない場合はティーセン法により流域の平均降水量が求められます。
このとき、Rは流域の平均降水量 [mm]、Aは流域面積 [km2]、aiはi番目の観測点が代表する流域面積 [km2]、Riはi番目の降水量 [mm] です。
観測点が密に存在しているときはaiが小さくなり、流域の平均降水量に占める重みも小さくなります。反対に、観測所がまばらに存在しているときは流域の平均降水量に占める重みが大きくなります。
また、雨の強さを表すものとして降雨強度もよく用いられます。降雨強度はその強さの雨が一時間降り続いたときの降水量を表しており、単位は [mm/h] となります。例えば、降雨強度20 [mm/h] の雨が15分降ったときの降水量は5 [mm] となります。
まとめとして、雨は、水蒸気を含んだ空気が上昇し、断熱膨張により温度が下がり、露点に達した後に微細な塵と水蒸気が結合し、水滴となって地上に落下してきたものです。雨の強さを表すものとしては降水量と降雨強度があります。