鉄筋コンクリートの設計せん断耐力は引張鉄筋比や有効高さによって異なってきます。腹鉄筋を用いないときの設計せん断耐力は次式よって表わされます。
このとき、Qcdは腹鉄筋を用いないときの設計せん断力 [kN]、M0は下図のように軸力によって発生する応力を打ち消すために必要な曲げモーメント [kN・m] です。
また、腹鉄筋を用いるときのせん断耐力は次式によって表わされます。
このとき、Qydは腹鉄筋を用いるときの設計せん断力 [kN]、Qsdは腹鉄筋が受け持つ設計せん断耐力 [kN]、Qpedは軸方向緊張材のせん断耐力 [kN] です。
Awはss区間のせん断補強鉄筋の総断面積 [mm2]、fwydはせん断補強鉄筋の設計降伏強度 [N/mm2]、αsはせん断補強鉄筋と部材軸の角度 [rad]、ssはせん断補強鉄筋の配置間隔 [mm] です。
Apwはsp区間のせん断補強用緊張材の総断面積 [mm2]、σpwはせん断補強鉄筋降伏時のせん断補強用緊張材の引張応力度 [N/mm2]、αpはせん断補強用緊張材と部材軸の角度 [rad]、spはせん断補強用緊張材の配置間隔 [mm]
zはアーム長 [mm]、Pedは軸方向緊張材の引張力 [kN] です。
腹鉄筋を多くし設計せん断耐力を大きくしても、鉄筋の降伏よりコンクリートの圧壊が先行すると何の意味もありません。そのため、腹鉄筋を用いた設計せん断耐力とコンクリートの設計斜め圧縮耐力の二つについて検討し、小さい方を部材の設計せん断耐力として使用します。設計斜め圧縮耐力は次式によって求めることができます。
このとき、Qwcdは設計斜め圧縮耐力 [kN]、fwcdはコンクリートの斜め圧縮強度 [N/mm2] です。
では、例題を1問解いていきます。
例題1:下図のような単鉄筋長方形断面に設計せん断力300 [kN] が作用するとき、腹鉄筋が必要か照査せよ。ただし、コンクリートの設計基準強度は24 [N/mm2]、鉄筋は10-D19 (19.1)、スターラップはD13 (12.7)、スターラップの配置間隔は100 [mm]、スターラップの降伏強度は300 [N/mm2]、コンクリートの材料係数は1.3、鉄筋の材料係数は1.0、構造物係数は1.15とする。
まずは、腹鉄筋が必要かどうかの確認を行っていきます。
腹鉄筋がないとせん断破壊してしまうことが分かったので、腹鉄筋を用いたときのせん断耐力を求めていきます。
計算の結果、安全であることが分かりました。また、コンクリートの設計斜め圧縮耐力も求めていきます。
こちらも安全であることが分かりました。腹鉄筋を用いた設計せん断耐力とコンクリートの設計斜め圧縮耐力では前者のほうが小さかったため、前者を設計せん断耐力として使用します。
まとめとして、設計せん断耐力を求めるときは、腹鉄筋を用いないときのせん断耐力、腹鉄筋を用いるときのせん断耐力、コンクリートの設計斜め圧縮耐力の順番で求めていきます。