鉄筋コンクリートが曲げによって破壊する形態は2種類に分けることができます。1つは引張鉄筋が降伏し、上縁コンクリートが圧壊する場合です。もう1つは引張鉄筋が降伏する前に、上縁コンクリートが圧壊する場合です。どちらの破壊形態が先に起きるかは、引張鉄筋の降伏と上縁コンクリートの圧壊が同時に起きるときの鉄筋比(釣合鉄筋比)から求めることができます。
このとき、pbは釣合鉄筋比 [単位なし]、fcdは設計圧縮強度 [N/mm2]、fydは設計引張強度 [N/mm2]、εcuは圧縮終局ひずみ [単位なし] です。
部材の引張鉄筋比が釣合鉄筋比より大きいときは上縁コンクリートの圧壊より鉄筋の降伏が先行します。また、上縁コンクリートの圧壊ははりの急激な破壊を招くため、曲げモーメントの影響が支配的な場合は0.75pb以下にすることを規定しています。
引張鉄筋の降伏が先行するときの単鉄筋長方形断面の設計曲げ耐力を求めていきます。まずは、引張合力と圧縮合力を算出します。
次に、力の釣り合い条件から設計曲げ耐力を求めていきます。
このとき、Muは曲げ耐力 [kN・m]、Mudは設計曲げ耐力 [kN・m] です。
また、上縁コンクリートの圧壊が先行するときの単鉄筋長方形断面の設計曲げ耐力は次式によって表わされます。
このとき、mpは塑性係数比 [単位なし] です。
さらに、単鉄筋T形断面が圧壊をしないための式と設計曲げ耐力は次式によって表わされます。
このとき、Asfはフランジに作用する圧縮力に釣り合うために必要な鉄筋断面積 [mm2] です。
中立軸の位置がフランジにあるときは長方形断面の式から設計曲げ耐力を求めていきます。では、例題を2問解いていきます。
例題1:幅900 [mm]、有効高さ350 [mm]、引張鉄筋の断面積1,940 [mm2] の単鉄筋長方形断面に設計曲げモーメント200 [kN・m] が作用しているとき、設計曲げ耐力を求め、安全性を照査せよ。ただし、コンクリートの設計基準強度は24 [N/mm2]、鉄筋はSD295B、鉄筋の弾性係数は200 [kN/mm2]、コンクリートの材料係数は1.3、鉄筋の材料係数は1.0、部材係数は1.1、構造物係数は1.15とする。
まずは、引張鉄筋比と釣合鉄筋比を求めていきます。
計算の結果、引張鉄筋比より釣合鉄筋比が大きかったので、引張鉄筋の降伏が先行することが分かりました。では、設計曲げ耐力を求めていきます。
最後に、構造物の安全性を照査します。
従って、この構造物は危険であることが分かりました。
例題2:フランジ幅1,100 [mm]、フランジ高さ150 [mm]、ウェブ幅500 [mm]、有効高さ550 [mm]、鉄筋10-D35 (34.9) の単鉄筋T形断面に設計曲げモーメント1,200 [kN・m] が作用しているとき、設計曲げ耐力を求め、安全性を照査せよ。ただし、コンクリートの設計基準強度は30 [N/mm2]、鉄筋はSD390、鉄筋の弾性係数は200 [kN/mm2]、コンクリートの材料係数は1.3、鉄筋の材料係数は1.0、部材係数は1.1、構造物係数は1.15とする。
まずは、中立軸の位置を求めていきます。
中立軸の位置がウェブにあることが分かったので、次に釣合鉄筋比を求めていきます。
計算の結果、引張鉄筋比より釣合鉄筋比が大きかったので、急激に破壊しないことが分かりました。では、T形断面の式から設計曲げ耐力を求めていきます。
最後に、構造物の安全性を照査します。
従って、この構造物は安全であることが分かりました。
まとめとして、単鉄筋の設計曲げ耐力を求めるときは、釣合鉄筋比から引張鉄筋の降伏と上縁コンクリートの圧壊どちらが先に起きるかを確認する必要があります。