クーロンの土圧論や試行くさび法での壁面摩擦角は経験則から与えられており、適切でない値の場合もあります。また、下図のようなかかと版が長い擁壁などの土圧を求めることもできません。そこで、これらの問題を解決した手法として修正試行くさび法があります。修正試行くさび法は、壁面摩擦角を理論的に求めることが可能であり、すべり角を2つ考慮する必要があります。まずは、反力の式を釣り合い式から求めていきます。
修正試行くさび法は2つのすべり角の値を変化させて、最大となる反力を求める必要があります。そのため、計算が少し難しくなります。次に、仮想背面での主働土圧合力と壁面摩擦角を求めていきます。仮想背面は単に土圧を算定するための基準線であり、任意に設定することが可能です。
このように、修正試行くさび法は機械的に主働土圧合力を算定することができ、地表面の形状によって壁面摩擦角をどのようにとるべきか頭を悩ませる必要が全くありません。上式はかかと版が長い擁壁の土圧式ですので、かかと版が短い擁壁の土圧式も求めていきます。
このとき、θ0は地震合成角 [rad]、khは水平震度 [単位なし] です。
かかと版が短い場合はすべり面と擁壁が一体的に挙動する部分が出てきます。この部分の反力はクーロンの土圧論で求めます。また、主働土圧合力は地震時の慣性力も考慮しています。一般的に、かかと版が短くなると土圧は小さくなるのですが、かかと版の長さを考慮すると解析が著しく複雑になります。そのため、実務では、かかと版が十分に長いとみなして土圧を計算しても安全側になるため問題はありません。
まとめとして、修正試行くさび法は、かかと版のある擁壁などの土圧を求めることができます。ランキンの土圧論、クーロンの土圧論、試行くさび法、修正試行くさび法の適応範囲をベン図で整理すれば下図のようになります。手計算の場合には、適用条件に応じて簡単な土圧計算法を採用するのが賢明です。