低地には構造物、道路、鉄道、トンネル、港湾施設、地下埋設物と様々なものが建設されます。載荷の場合には地盤沈下や支持力不足、掘削の場合には掘削面の崩壊、地下水対策、液状化が具体的な問題となります。内容は土質力学とかぶっているので、詳しい内容はそちらを参照してください。
①地盤沈下
地盤沈下には荷重によって起きる場合と地下水の汲み上げによって起きる場合があります。また、前者は即時沈下と圧密沈下に分かれます。
a.即時沈下
構造物や土の自重が荷重として地盤に働くと、各層が弾性変形あるいは塑性変形が生じ、沈下の原因となります。この沈下は荷重の作用とともに沈下が始まるので即時沈下と呼ばれています。荷重が小さく弾性変形にとどまっている限りは構造物の直下とその周辺にしか起きないため、問題にはなりません。しかし、荷重が大きく塑性変形が始まると、周辺地盤が持ち上がったり、側方に大きく流動するようになると、近くの構造物に被害を与えるようになります。
b.圧密沈下
砂層に荷重が作用すると即時的に水が抜けるために即時沈下でとどまりますが、粘土層に荷重が作用するとゆっくりと遅れて排水されるために圧密沈下が起きます。このような排水に伴って生じる土の体積減少を圧密といいます。圧密沈下が顕著に起こるのは主に飽和粘性土となります。
圧密沈下は一次圧密と二次圧密があります。一次圧密は荷重が作用したときに発生した間隙水が減少することによって生じる体積減少といいます。そのため、圧密現象をダルシーの法則と圧密理論によって表現することができます。一方、二次圧密は粒子表面に吸着されている水の粘性変形が大きな原因と考えられていますが、まだ分かっていないことが多いです。
低地で圧密沈下が起きる原因としては厚い粘土層の存在が挙げられます。粘土層が厚ければ厚いほど、また荷重が大きければ大きいほど、圧密沈下量は大きくなります。また、圧密層が性質的に不均一であったり、荷重が場所的に不均一であったりすると不同沈下が発生します。有名なものとしてはピサの斜塔が挙げられ、これ以上の沈下が起こらないように対策工事が継続的に行われています。
圧密沈下が起きるような地盤に杭基礎を用いる場合、杭周辺には下向きに押し下げるような力が作用します。このような力を負の周面摩擦と呼びます。負の周面摩擦は柱が本来支えなければいけない荷重以上の力が杭に作用するため、十分に注意する必要があります。
c.地下水の汲み上げ
日本では1960年代に主として工業用水に地下水を用いてきました。この地下水汲み上げにより関東平野、大阪平野、濃尾平野などでは広域地盤沈下が起こりました。また、地下水の汲み上げによって、地下水位の低下、池の水位の低下、井戸の枯渇も発生しました。最近は地下水の汲み上げを法的に規制することで広域地盤沈下を抑制しています。
②地盤の支持力
地盤に大きな力が作用し、地盤がそれに耐えきれないと地盤の破壊が起こります。一般に、地盤の破壊は地盤内部に形成されるすべり面に沿って生じます。すべり面に発生するせん断応力がせん断強さを超えると起きるため、せん断破壊と呼ばれています。地盤が支持できる最大の支持力を極限支持力といい、構造物の基礎の設計をするときは極限支持力を1以上の安全率で除した値が許容支持力として用いられます。
③掘削面の崩壊
地盤を掘削すると周辺地盤は不安定になり、重力に基づく地盤のせん断破壊に伴ってくさび形の土塊が掘削側に動いてきます。このとき、地盤が動かないように支える壁構造物を擁壁あるいは土留め壁といい、壁面に作用する力を土圧といいます。
④地下水対策
低地のように地下水の高いところでは地盤の掘削によって地下水が掘削域に浸出してきます。そこで、掘削地盤内で安全に工事を行うため、多くの場合は掘削底部からポンプによって水を汲み上げる方法が採用されます。しかし、この場合は深部から掘削底部に向かって水の流れが生じ、その浸透力によって掘削底部が不安定となります。この浸透力が過度に大きい場合は掘削底部の土が吹き上げられる現象が起きます。この現象をクイックサンドあるいはボイリングと呼びます。地盤掘削時にはこのような現象を起こさない配慮が必要となります。
⑤液状化
地震などによって地盤が振動を受けると、土の骨格楮が壊れ、地盤が液状化することがあります。液状化しやすい土の粒径は小礫からシルトまでの間であり、粘土ではほとんど発生しません。特に液状化が発生する土はゆるい状態にある細砂であり、自然堤防が存在する地域や砂で埋め立てた造成地などが当てはまります。
液状化の過程で蓄積した間隙水圧によって砂の噴射が起きることがあります。液状化そのものと噴砂現象は混同されやすいですが、基本的には両者は異なる現象です。噴射現象が起きていないからといって必ず液状化現象が起きないとはかぎりません。
まとめとして、低地の建設上の問題としては地盤沈下、支持力不足、掘削面の崩壊、地下水対策、液状化などが挙げられます。