地形は低地、台地、丘陵地、山地、火山地帯に分けることができ、その低地の中でも平らな土地を平野または平地と呼んでいます。日本に限らず、世界各国の主要都市の多くは平野に立地しており、農業や産業を行うときに都合が良いことが挙げられます。一方で、低地の地盤は軟岩なので、構造物の大型化や地下空間の開発をする際に様々な問題も発生します。日本では国土が狭いこともあって、これら問題点を克服しないといけませんでした。また、埋立地を建設することも珍しくなく、地盤と戦いながら土地拡大を行ってきました。
地盤を知るためには各地層の層序(層の順番)と形成時期を調べる必要があります。層序を調べる方法としてはボーリング調査、形成時期を調べる方法としては同位体元素量による方法と鍵層による方法があります。ここでは、形成時期を調べる方法について詳しく述べていきます。
①同位体元素量による方法
同位体元素量による方法は一般的に使用されており、例えば12Cの放射性同位体である14Cなどが使われています。14Cは生物(木片、貝殻、骨など)に含まれており、大気に触れると崩壊し14Nとなります。一方、14Nは宇宙線(宇宙から降り注ぐ高エネルギー粒子)によって14Cになります。現在この2つは平衡状態にあり、一定の割合で存在しています。
しかし、生物が死亡して地中に埋まると、宇宙線を浴びることがないため、14Cは時間経過によって減少していきます。そのため、14Cの量を調べれば間接的に地層の年代を特定することができます。この方法を炭素14法といい、現在の14Cの量を初期値として使用すればいいため、測定が非常に楽です。
ただし、人間の化石燃料の利用による二酸化炭素の増加(12Cの増加)が起き始めてからは14C濃度が低下しているので、補正を行うか別の放射性同位体を調べる必要があります。また、14Cは半減期が短く、十数万年前までしか測定することができません。地層の形成時期を調べるときに使用される主な放射性同位体と半減期を下表にまとめておきます。
炭素14法以外の方法としてはカリウム・アルゴン法があります。40Kは半減期12.5億年で崩壊して、40Arに変わります。この40Kは岩石中に多く含まれており、半減期も12.5億年と長いため、数千万年前から数十億年前という幅広い年代を測定できます。
40Arは気体で存在しており、岩石が熱せられると逸脱してしまいます。つまり、溶岩のときは40Arは存在しておらず、初期値を0と考えれば大丈夫です。そして、岩石が冷えてからは40Arは逸脱できずに岩石の中に貯まっていきます。そのため、岩石中にある40Arを測定すれば、地層の形成時期を調べることができます。また、試料を熱すると40Arは気体として逸脱するため、40Arの収集が非常に容易です。
カリウム・アルゴン法のデメリットは岩石が冷えた後に40Arが逸脱していないと証明することができないことです。実際、炭素14法やウラン・鉛法と比較すると、若い年代を出すことが多いです。
ウランはイオン半径が大きいために液体中に入りやすく、結晶化が早い鉱物の中にはあまり集まらず、結晶化が遅い鉱物の中に集まりやすい傾向があります。そのため、岩石中にはウラン濃度の高い場所と低い場所ができます。ウランは崩壊すると鉛になるため、ウラン濃度が高いところは鉛濃度も高くなります。この鉛濃度の高いところと低いところを遡れば必ずどこかで交わり、この交わったところが溶岩が冷え固まった時期といえます。
このようにして地層の形成時期を調べる方法をウラン・鉛法といい、両方とも固体なので、カリウム・アルゴン法のような心配はいりません。デメリットとしては半減期が長すぎるため、短期間の年代測定には向いていません。また、そもそもウランの含有量が少ないこと、深成岩はゆっくり冷えて固まるためにウラン濃度に差ができにくくこの方法は使用できないなどの問題もあります。
②鍵層による方法
鍵層とは地層が特徴的で容易に区別できる地層をいい、例としては富士山(静岡県と山梨県)、阿蘇山(熊本県)、大山(鳥取県)、浅間山(長野県)、有珠山(北海道)の噴火による凝灰岩などが挙げられます。一般的に鍵層は短期間に形成された同一の地層に対して使われる用語です。
しかしながら、土木工学では地層の形成時期はあまり重要ではなく、地盤の強さや硬さの方が重要視されます。そのため、地層よりも土層という考えの方が近いのですが、ここでは厳しく区別せずに地層を用いるとします。一般的に地層は新しいほど軟らかく、構造物の建設には向きません。古い地層が硬い理由としては、自然圧密とセメンテーションが挙げられます。
・自然圧密
地盤の上に新しい土が堆積すると、その重量によって地盤の土中水が排水され、土の密度が増大します。この過程を自然圧密といいます。
・セメンテーション
土粒子間の間隙水に含まれる結合物質が長年にわたり土粒子間に沈殿すると化学的に土粒子と結合してしまいます。この現象をセメンテーションまたは膠結(こうけつ)作用といい、結合物質としては炭酸塩やシリカ・鉄・アルミニウムの水酸化物などが挙げられますが、まだ詳しくは解明されていません。いずれにしても、堆積岩は自然圧密とセメンテーションにより形成されており、その効果は時間が経つほど大きくなります。
まとめとして、低地の地盤は地層の層序と形成時期が重要であり、層序はボーリング調査、形成時期は同位体元素量または鍵層によって調査されます。これら地層は古いほど硬く、その理由としては自然圧密とセメンテーションが挙げられます。