「病気のときに有給で休める」という点は同じように見えても、通常の有給休暇を減らさずに休める人と、限られた有給休暇を病気で消費する人では、その後の安心が大きく違います。
会社員など一定の条件を満たす人には、病気やけがで働けず、給与を受けられない場合に「傷病手当金」が支給されることがあります。
ただし、給与の全額が補償されるわけではありません。
さらに、加入している健康保険組合によっては、法定の傷病手当金への上乗せや、高額療養費制度よりも自己負担を抑える独自の付加給付を設けています。
一方で、こうした上乗せ給付がない健康保険もあります。
同じ高額療養費制度を利用できる会社員でも、勤務先と加入する健康保険によって、病気になったときの経済的な安心は同じではないのです。
Aさんの「いらない」が、Bさんにも当てはまるとは限らない
Aさんには、通常の有給休暇とは別の傷病休暇があります。
健康保険にも独自の付加給付があり、医療費や生活費に使える預貯金も十分にあります。
このようなAさんが「自分には医療保険はいらない」と判断するのは、一つの合理的な選択です。
しかし、Bさんには病気専用の有給休暇がなく、健康保険の上乗せ給付もありません。休業すれば通常の有給休暇が減り、それを使い切れば収入にも影響します。預貯金にも余裕がなければ、家賃や住宅ローン、教育費などの支払いが家計を圧迫する可能性があります。
この二人に、本当に同じ答えが当てはまるでしょうか。
Aさんの「医療保険はいらない」という結論だけを見て、Bさんが「自分もいらない」と考えてしまうのは危険です。
比較すべきなのは結論ではなく、その結論を支えている条件です。
医療保険が必要かどうかを考える前に、次の点を確認してみましょう。
自由に使える年次有給休暇は何日あるか
年次有給休暇とは別に、病気専用の有給休暇があるか
有給休暇を使い切った後、給与はどうなるか
傷病手当金はいくら、いつから受け取れるか
加入している健康保険に独自の付加給付があるか
医療費と生活費に使える預貯金はいくらあるか
収入が減っても家計を維持できるか
これらを確認した結果、勤務先の制度や健康保険の給付、預貯金だけで十分に備えられるなら、医療保険を持たない選択もできます。
反対に、それだけでは不足するのであれば、その不足分を民間の医療保険で補うことも選択肢です。
大切なのは、医療保険に入ることでも、入らないことでもありません。
誰かの結論をそのまままねるのではなく、自分が利用できる制度と家計の状況を確認したうえで判断することです。
医療保険がいらない人と、いらないと思い込んでいる人は違います。