下伊那農業高校

(農業)

アグリサービス科 生産流通コース(作物専攻)

ミニトマトの生育環境を変えた栽培試験

研究の概要

1区(通常)、2区(砂地)、3区(遮光)、4区(節水)、5区(空中)と5つの異なる栽培条件下で、ミニトマト栽培を行い、収穫したミニトマトの糖度を測定し基準となる1区と比較する。

結果は1区(通常)より糖度が高くなったのは、4区(節水)と5区(空中)であった。また糖度が一番高かったのは4区(節水)であった。収穫数は、2区(砂地)が一番多かった。一個あたりの平均重量も2区(砂地)が一番重かった。

4区(節水)は糖度が一番高く、一個あたりの平均重量は最も軽かった。反対に糖度が一番低い3区(遮光)は一個あたりの平均重量も重かった。このことから水分を与えないことで、果実に水分が行き届かず、果実内の甘み成分が水分によって薄まらないため、糖度が上がると考えられる。ミニトマトの糖度には水分が大きく関係していることがわかった。

アグリサービス科 生産流通コース(畜産専攻)

和牛の売上げと利益について ~下農にできること~

研究の概要

下農で飼育している牛について、利益が出ているか、今回は飼料代のみ出費を計算してみた。また農家等から情報を収集し、今後の飼育の資料としてまとめてみた。 

出荷時期が近い和牛3頭を研究対象として、生まれてからかかる飼料代を事務室へ提出する資料等を、担当の先生から提供してもらい計算した。また、JAが管理している「夢ファーム」を見学して、担当者から具体的な飼育方法等を聞き取り調査した。 

子牛3頭の売上金2,162,600円、餌代296,927円、差引1,865,673円となった。月々の売上げに換算すると、約233,000円となった。見学では、本校で出荷された牛は、粗飼料をえり好みせずによく食べるので肉付きがいいということだった。また、飼育環境の整備、農場HACCPの導入で、作業の効率化が図られるとのことだった。 

本校では、粗飼料のワラ・牧草栽培、農業廃棄物を餌として与えているので、餌代が抑えられている。子牛1頭あたりの餌代が約10万円だった。時間と手間をかければ、市場でも高値となり利益が出て、牛にとってもよい成育環境となることがわかった。

アグリサービス科 食農科学コース(食物専攻)

牛乳を活用したレシピ考案

研究の概要

新型コロナウイルス感染症による休校の影響で、学校給食に提供される予定であった牛乳が余っているという問題を解決するため、牛乳を活用したレシピ考案を行い、牛乳の消費拡大を目指した。

酪農家から聞き取り調査を行い、搾乳体験などを通して牛乳への理解を深めた。また、10代~60代の男女100名、保育園児66名を対象に牛乳の嗜好調査を行った。牛乳を全く飲まない、牛乳が苦手、料理のレパートリーがないなどの意見が聞かれた。

アンケート結果から、①地域食材を使用する、②子どもが喜ぶ料理といったテーマを設定し、「チョコオレンジミルクレープ」、「さつまいもドーナツ」などの料理を考案した。チョコオレンジミルクレープは東海酪農業協同組合連合会主催のミルク料理レシピコンテストに応募。さつまいもドーナツは食味アンケートを実施し、「甘さが控えめでいい」、「丸くて子どもでも食べやすい」、「子どもと丸める作業を一緒にできそう」などの評価を得た。

牛乳が余っていることを知り、消費に協力的な人が多かったことから、聞き取り調査を行った酪農家では大きな影響はなかったが、牛乳の魅力を知り、それを広めるための取り組みとなった。今後も牛乳の消費拡大に向けてレシピ考案やレシピの配布など活動を行っていく。

アグリサービス科 食農科学コース(保育専攻)

食育紙芝居

研究の概要

近年、食品ロスや生活習慣病患者の増加により「食育」が重要視されている。子どもたちが「食育」に親しめるような内容の紙芝居を制作し、食育活動を行うことを目的に研究をはじめた。

はじめに、「食育」に関連して保育士の方々が普段どのようなことを課題と感じているか、生の声を調査するため保育園でアンケートを実施。コロナ禍で直接の訪問が難しかったためGoogleフォームを用いた。結果、課題として最も多く挙げられた「食事マナー」の改善をテーマに据え、自らが農業高校で学んだ「食の大切さ」も伝えられるような紙芝居の制作を行った。制作にあたっては子どもたちに伝わりやすいよう「物語型にする」「主人公を動物にする」「絵を分かりやすく大きく描く」などの工夫を重ねた。

完成した紙芝居「やぎさんのごはんのじかん」は、実際に保育園に足を運び、園児たちの前で実演した。保育士さんからのアドバイスをもとに読み方や表情も工夫し、終演後多くの子どもたちから「紙芝居が面白かった」との感想を聞くことができた。保育士の先生方からも「教材にしたいくらいだ」との評価を得ることができ、「食育」に親しみやすい紙芝居を制作することができたと考える。

感染状況を鑑み保育園での実演が1度だけになってしまったが、紙芝居を観た子どもたちの食事マナーへの影響、食に対する意識の変化などを調査し、内容を改善して次の実演につなげ、より食育効果のある紙芝居の制作を目指すことができればと考える。

アグリサービス科 生産流通コース

「下農レザー」~皮の地産地消!~

研究の概要

教科「グリーンライフ」では、飯田下伊那地域の地域資源の発掘と活用について学習している。地域の課題を知り課題解決に向け自分たちができることを考え、実践。H29年より鳥獣被害対策で捕獲駆除された鹿の有効活用をテーマにした研究活動「下農レザー」に取り組んでいる。今年は、下伊那地域で捕獲された鹿皮を100%使用したレザークラフトの製作と販売に挑戦。デザイン・型紙作り・製作・販売企画をし、自分たちの研究成果を情報発信した。例年のような集客型のイベントは実施できないため、非対面でどのように販売するかが課題であった。下農レザーの売り上げはすべて寄付し社会貢献に寄与している。また、SDGsの学習とも関連させ、自分たちの取り組みが持続可能な開発目標に当てはまることにも気づきより学習が深まった。

農業機械科

ホバークラフトの製作

研究の概要

ホバークラフトは水面あるいは地面に高圧の空気を送り込んで、わずかに船体を宙に浮かせることで、水上や陸上を走行できるもので、農業用として利用する試みも始まっています。

研究の目的はホバークラフトの原理を学び、人が乗って浮くことができるホバークラフトを自分たちで製作することで、今回は体重70キロの人が浮いたら成功と判断するとしました。

 設計図の段階では、人が乗っても浮くように全体の大きさ、ホースの位置を決め、方眼紙に寸法を入れていきました。切断した角材をボンドや釘で骨組みを作りました。べニヤ板や高速気流を流す排水ホース、スカートの素材の一輪車のチューブ、高速気流を発生させるブロワーを組み付けました。ブロワーから風を送ることで、ホバークラフトが浮上しました。今回製作したホバークラフトは推進用の装置が無いため、手で押したり、引いたりして動かしました。

最終的には目標だった70㎏を10㎏超える80㎏の人を浮かせることができました。軽量化のためになるべく余分な部分を省いたので骨組みやホースなどが露出してしまい見栄えはあまり良くありませんでした。

園芸クリエイト科 草花科学コース

ダリアの栽培と鮮度保持について調査・研究

研究の概要

1目的

飯田下伊那地区の代表的な切花であるダリアについてその基本的な栽培方法と新品種の栽培を行い、その評価を行う。さらに、収穫したダリアの鮮度保持についても実験を行う。

2方法

新しい品種である「影ぼうし」と「ピンクダイヤモンド」の摘心仕立てを行い、わき芽数を変え栽培した。収穫した切花に対し、条件を変えた保存液を作り保存の違いを観察する。

3結果

わき芽数が少ない方が太く、丈夫に育つが、少なすぎると大きく育ち過ぎてしまう。わき芽数違いが、生育の違いにはっきりと現れることがわかった。わき芽数が多すぎると真っ直ぐに育ちにくい。

わき芽数は4本がバランス良く生育する。水道水とグラニュー糖水溶液の保存性が良かった。

4考察

切花の水の温度や室温にも左右されることもあったと考えられる。

ダリアの切り口の腐敗も保存に影響していると考えられる

夏場のハウス内の温度が高すぎたためか、ダリアの花色が悪いことがあった。


園芸クリエイト科 野菜科学コース

摘果数を変えたトマトの調査

研究の概要

試験区として1果房あたり2果、摘果しない、対照区として1果房あたり4果に摘果、を設定し比較調査した。

・1果房あたり2果の区は奇形率、一個あたりの重量の結果は良かったがその他の結果が悪く収量も少なかった。

・摘果しない区は摘果管理をしないことにより実が多く付きすぎてしまい生育の妨げとなり廃棄するトマトが多くなってしまった。

・対照とした区は糖度平均、収量、個数が一番良かった。

摘果作業を行うことによりトマトの選別ができ、収穫できるような品質のトマトができることが分かった。

園芸クリエイト科 果樹科学コース

ブドウ「シャインマスカット」品種における省力化栽培と植物成長調整剤の利用法の改善に関する研究

研究の概要

ブドウ「シャインマスカット」品種は大人気である。一般には短梢せん定仕立てであるが、リンゴトリレスを利用した簡易ブドウ棚栽培や、棚上部に主枝を放射状に仕立てる仕立て方の改善による増産をめざした。またブドウは数種類の植物成長調整剤を用いて栽培されているが、ブドウ主産県である山梨県の栽培法を取り入れ、品質向上をめざした。特にジベレリン処理の際に加用される商品名フルメット液剤(有効成分:ホルクロルフェニュロン0.1%含有)の加用の濃度別試験にて果房重の増加と品質向上をはかることができた。

食品化学科 食品製造専攻

遊休農地の活用と地域交流

研究の概要

飯田市内には、高齢化や農業従事者の減少により遊休地が増加している。鼎公民館と一緒に、遊休農地の活用と地域交流について活動した。

活動の目的は、①遊休農地の活用(鼎地区内にある遊休農地をお借りし作付する)、②地域の方との交流の機会(かかわった方々:高校生、小中学生とその保護者、鼎公民館、地元農家、自元区民、ボランティアなど多くの方の関わりで運営を支えていただいた)、③そばやダイズの利用拡大をめざした。収穫した大豆やそばをみんなで調理して試食。

そばと大豆の栽培は、課題研究の時間に地域の方と一緒に行った。

12月に、大豆のおからで、高校生と小学生とその保護者で調理を行った。そばは、学校でクッキーを作りお土産に持っていっていただいた。

調理に参加した方からの感想では、「大豆を種まきから収穫までできて、料理を高校生と一緒にできてよかった。」「大豆の栽培を家でもできそうです。みんなで料理するって楽しい。」「大豆からいろいろな料理ができて楽しかった。栽培が初めてで貴重な体験になった。」「身近な大豆の栽培法知ることでできてよかった。」「おからで作ったハンバーグとドーナッツがうまくできてよかった。」と好評だった。今後も遊休農地活用を目指した活動を行っていきたい。


食品化学科 食品化学専攻

エナジードリンクの成分分析

研究の概要

エナジードリンクの成分を調べ、健康への影響を考察する。

エナジードリンク各種を供試し、有機酸(中和滴定法)、還元糖(ソモギー法)、糖度(屈折糖度計)を測定した。睡眠時間や疲労度と甘味の感じ方の関係、エナジードリンクのイメージ調査を実施した。

成分分析の結果、試料によって成分に違いがあった。アンケートの結果、睡眠時間が短いほど、また疲労度が高いほど甘味を強く感じる傾向が見られた。

カフェインなどの成分について分析できず、健康への影響について考察するためのデータを得ることはできなかった。官能検査の結果から、エナジードリンクはCMにおけるイメージのとおり、睡眠時間が短く疲労度が高い人に向けた飲料であることが示唆された。

食品化学科 微生物専攻

酵素洗剤の作成

研究の概要

洗剤は、汚れが落ちやすくなるよう開発される一方、漂白剤や界面活性剤の影響により、人体や環境に影響を与えている。そこで、コウジカビが生産する酵素に着目し、酵素洗剤の作成を目指した。酵素の能力試験結果から、デンプン、タンパク質を分解できることが分かり、作成した酵素液を用いて汚れ分解試験を行った。作成した酵素液は、市販洗剤には及ばないが、汚れを分解する力があることが分かった。酵素の作用は温度による影響が大きいため、温度を変えての実験や、汚れの種類を変えて実験を行うことで酵素洗剤の有効性を高めたい。

アグリ研究班地域交流部

アグリ研究班地域交流部の取り組み

研究の概要

①南信州飯田焼肉ビビンバーガーの開発 ハンバーガーのパテ(お肉)は、飯田焼き肉文化の象徴である「マトン」をメインに、牛肉も使用し、ナムルや卵を使ってビビンバをイメージ。お肉もミンチにはせず、焼き肉を彷彿させる厚切りで挟んだ。またお肉の味付けには、味噌をつかいここでも飯田の食文化である発酵食品を意識した味付けとした。8月末から10月末までお店で提供し、焼き肉を食べているような感覚を持つハンバーガーとして好評であった。

②食品・デザイン企業2社と産学連携で名物商品リニューアル。「みそだれ漬ガール・ドレみそボーイ」のパッケージをオリジナルデザインでリニューアル

(株)マルマンと2014年から共同開発し販売してきた2商品を6年ぶりにリニューアルした取り組み。今回は、デザインの変更がメインのため、パッケージの制作元である(株)中村のデザイン室の方と直接デザイン制作のやりとりを行った。普段の授業では体験できない、マーケティングに始まり、デザインの作り込みまで体験させて頂き大変勉強になった。また、アグリ研究班のマスコットキャラクターも新たに作製し、それを商品パッケージのメインとした。また、QRコードもつけ、そこから「クックパッド 下農アグリ研究班」が検索できこれらの商品を使った料理のレシピを公開している。日々新たな使い道を試作し、レシピをアップしている。

アグリ研究班畜産班

信州黄金シャモプロジェクト~南信州の救世主~

研究の概要

飯田下伊那地域は全体の87%が森林という中山間地域である。近年は高齢化率も高くなり、急傾斜地にある畑では農業機械の利用も難しく、離農者も多くなってきている。そのことから耕作放棄地が増加し、野生鳥獣害の増加にも繋がっている。「生まれ育った農村の風景を守りたい。」「農業をあきらめてほしくない。」と考え、畜産で地域を元気にする方法として、小型家畜で飼育の手間が少なく、長野県のブランド地鳥として付加価値が高い「信州黄金シャモ」の普及活動を行っている。自ら信州黄金シャモを飼育し、飼育に関しての良い面・悪い面を知り、飼育希望者に向けて地域懇談会や研究発表を実施した。また実際に耕作放棄地での飼育に向けて、整地作業なども取り組んだ。現在は飼育者が安心して出荷出来るように、販路の確保に力を注ぎ、地元企業とのラーメンの開発・販売、駒ヶ岳サービスエリアでの取扱い等が決まっている。

果樹班

果物の鮮度保持と貯蔵法の改善

研究の概要

本校果樹班は端境期においしい果物の提供と地域の果樹産業活性化をめざして継続研究を実施している。今年度はモモ、ブドウ、ナシを中心にMA包装による氷温貯蔵を実施した。特にブドウ「シャインマスカット」品種は、すでに氷温協会より氷温食品として認証されており、11月中旬から2ヶ月余り、地元の菓子店5店舗への提供にて、ブドウ大福やブドウタルト、ショートケーキの材料として利用していただき評判がとても良かった。日本ナシ「南水」品種、晩生ナシ品種群の果実は鮮度保持剤1-MCP処理にてMA包装による貯蔵、販売を展開している。

食品科学班

茶の栽培と消費拡大を目指して

研究の概要

茶の栽培方法を学ぶ中で、覆いをする被せ茶の栽培も実施した。被せ茶にすることで苦みが少ない玉露のような品質の良い茶が出来る。限られた量のため機械で製茶出来ず手もみ保存会の方に指導を受け荒茶に仕上げた。また、急須が無い人や手軽に飲むためにティーバッグ方式を考えた。1袋3g入りのティーバッグ5個入りの個包装にした。包装にこだわりデザイナーの寺沢さんに指導を受け下農煎茶とわかるアレンジしたシーモくんを載せ、手にとってもらいやすいデザインになった。紅茶も同じく個包装のデザインを一新した。

生活研究班

南信州の食材で健康に!ひとくち朝ご飯プレート

(「信州らしい朝食をつくろう!甲子園」への参加)

研究の概要

生活研究班は、地域の食材を用いた調理実習を通して地元の地域食材を広めることを目的として活動している。

活動の一環として2019年度、県農政部主催の「信州らしい朝食をつくろう!甲子園」に参加した。「県外の観光客が信州をイメージできる『おもてなし朝ごはん』」「長野県産きのこを使用」等の条件のもと、県内4校7グループの高校生が朝食レシピを考案。生活研究班では「長寿県らしく、朝から健康に過ごせる朝食」をコンセプトに掲げ、南信州産の野菜や伝統野菜を使用し、栄養バランスに配慮した朝食を目指して試作を繰り返した。南信州で近年栽培が始まり活用方法を模索している「リゾット米」と、独特の食感が楽しめ栄養価も高い南信州産「ハナビラタケ」を使用したおこわ、地元産の大豆を使った豆腐のハンバーグを始め、計6品を盛り付けた「南信州の食材で健康に!ひとくち朝ごはんプレート」を完成させ、ホテルメルパルク長野で行われたメニュー発表会では銀賞を受賞した。

今年度は同イベントが実施されず、また考案した朝食の外部への提案も難しい状況であったが、今後1,2年生に引き継ぎメニューを改善しながら校外へ発信できる機会を作り、南信州産食材の消費拡大につなげることができればと考えている。