シロイヌナズナの根端におけるCRWN3-YFP(緑)の局在様式。CRWN3は主に核の周縁部に局在している。マゼンタは細胞壁。
核ラミナは細胞核を力学的に支持する核膜の裏打ち構造で、動物の核ラミナの主要構成要素はラミンタンパク質である。植物においても電子顕微鏡による観察で核ラミナ様の構造の存在が報告されていたが、ゲノムにラミンのオルソログが保存されておらず、分子実体や機能は不明であった。
当研究室では植物における核ラミナ構成タンパク質の同定と核ラミナ機能の解明を目的として研究を行ってきた。シロイヌナズナ葉から生化学的に調製した核ラミナ画分を質量分析に供試し、検出された候補タンパク質をコードする遺伝子の変異体を核の形態を観察することで選抜した。その後、電子顕微鏡や超解像顕微鏡を用いた詳細な局在解析により、CROWDED NUCLEI 1-4 (CRWNs)タンパク質はシロイヌナズナにおける核ラミナ構成タンパク質であり、動物ラミンの機能的なアナログであることを示した 。
参考文献
T. Sakamoto†, Y. Sakamoto†,et al., Nature plants, Vol. 8, pp. 940-953, 2022 (†Equal contribution)
Y. Sakamoto, et al., Nature Communications, Vol. 11, No. 5914, 2020
Y. Sakamoto and Shingo Takagi, Plant and Cell Physiology, Vol. 54, pp. 622-633, 2013
iTOMEIによって透明化したゼニゴケの無性芽。細胞壁がシアンで、細胞核がマゼンタで表示されている。
下村博士がオワンクラゲからGFPを発見してから60年余り、現在では蛍光タンパク質を用いた研究が一般的になり、1細胞、1分子レベルでのイメージング解析が可能となっている。超解像顕微鏡を用いればカバーガラス直下のXY平面の理論分解能は20〜100 nmであり非常に微細な構造や分子の挙動を検出できる。一方で、カバーガラスから数十 µm以上離れている標的を観察する場合、光の屈折、反射、散乱、吸収の影響で得られる画像の分解能は理論分解能を遥かに下回る。これを解決する方法の一つが試料の透明化である。我々は、蛍光タンパク質の蛍光を保持しつつ生体組織を透明化する手法、TOMEIおよびiTOMEIを開発した。特にiTOMEIは従来の手法に比べて迅速でありながら、GFPの蛍光を明るく維持できる手法である。
参考文献
Y. Sakamoto et al., Communications biology, Vol. 5, No.12, 2022
J. Hasegawa et al., Plant and Cell Physiology, Vol. 57, pp. 462-472, 2016