※発表順を変更しました。(2026/5/17)
13:30 開会
一般報告セッション
13:35 第1報告|坂本 菫/音資源アーカイブ構築に向けた地域環境音収集の基礎的検討― 稚内市での実践と飯地町での準備状況を通して ―
14:15 第2報告|狹間 瑞喜・鷲野 宏・三浦 詩乃/築地川区間周辺における音環境が歩行者の回遊意欲に与える影響
14:55 休憩(10分)
ショートトークセッション
15:05 第1報告|久米 隼・芝田 真理子/博物館における地域理解を目的とした体験型講座の試行的実施と今後の展開 -音を入り口に自然・文化・歴史への関心につなげる-
15:10 第2報告|足立 美緒/個人的体感の記録と共有―能登でのフィールドレコーディングを事例に―
総合討論
15:20~16:00
16:00 閉会
※一般報告は発表20分+質疑20分、ショートトークは発表5分+質疑5分です。
音資源アーカイブ構築に向けた地域環境音収集の基礎的検討 ― 稚内市での実践と飯地町での準備状況を通して ―
坂本 菫(中部大学大学院)
近年、地域文化の記録と保存において、写真・映像・文書資料の整備は進みつつある。一方で、地域の空間特性や生活実態、季節変化を反映する環境音については、継続的収集と再利用を前提とした蓄積手法が十分に確立していない。とりわけ、特定の演出目的や商用利用を前提に加工・選別された音素材ではなく、その場に生起した音響現象を継続的に記録する「非恣意的環境音」は、地域理解や将来的利活用の観点から重要な資料群となる。本発表では、図書館情報学およびデジタルアーカイブ研究の立場から、地域環境音を音資源として収集・記述・保存するための基礎的検討を報告する。
対象地域は北海道稚内市および岐阜県恵那市飯地町である。稚内市では、積雪寒冷地における環境条件のもと、風音、海鳥、港湾設備音、交通音、観光地周辺音などを中心に現地収録を進めている。低温・積雪・強風といった条件が録音環境そのものに影響を与える点も特徴である。飯地町は中山間地域であり、鳥類音、河川音、生活音、静穏環境などの収録を計画しており、現在は調査準備を進めている。両地域は自然条件、人口密度、産業構造が大きく異なり、比較対象として有効である。
収録データには、地点情報、日時、天候、録音条件、対象音の概要等のメタデータ付与を想定している。これは図書館情報学における資料組織化・検索可能性の考え方を環境音へ応用する試みでもある。蓄積した音資源は、地域再現型VR空間、ゲーム・映像制作における環境音素材、AIによる音環境認識や生成モデル学習用データセットなどへの展開可能性を有する。
本発表では、現時点での収録実践と設計構想を示しつつ、既存のサウンドスケープ研究・音アーカイブ研究との接続方法、非恣意的環境音の収集単位、公開手法、活用範囲について、参加者各位より助言・意見をいただき、今後の研究計画の精緻化につなげたい。
キーワード:環境音、デジタルアーカイブ、地域記録、フィールドレコーディング
築地川区間周辺における音環境が歩行者の回遊意欲に与える影響
狹間 瑞喜(西日本高速道路株式会社)・鷲野 宏(鷲野宏デザイン事務所)・三浦 詩乃(中央大学准教授)
本研究は,首都高速道路都心環状線築地川区間周辺を対象に,音環境の違いが歩行者の回遊意欲に与える影響を明らかにすることを目的とした.築地川区間では更新事業にあわせた覆蓋化と上部空間活用が検討されており,歩行者空間としての質を評価する視点が求められているが,従来は騒音レベルのような量的指標による把握が中心であり,音の内容と歩行体験の関係は十分に検討されていない.対象ルートは旧KK線高架下から築地川公園へ至る歩行ルートとし,予備調査に基づいて11地点を設定した.各地点において平均音量(dB)の測定,AI音源分類による交通音・人の話し声の割合の算出,現地での主観評価,および無音映像を用いた主観評価を行い,「音あり-音なし」の差を整理した.その際,平日・休日の結果を平均化し,平均dB,音源構成,印象評価を同一地点で対応づけることで,歩行に伴う連続的な音環境変化を把握した.その結果,平均dBは約59.88~68.15dBの範囲で分布し,地点間で音量差が確認された一方,快適さの評価は音量の大小のみでは説明できず,交通音や人の話し声といった音の構成によって左右される傾向がみられた.とくに公園区間に相当する地点9~11では「音あり-音なし」の差が全項目で大きく負となり,映像のみで想定される評価に比べて現地の音環境が評価を大きく下げる地点群が確認された.また,人の話し声の割合が相対的に高い地点では快適さが高くなる傾向もみられ,人の賑わいが快適さに寄与する可能性が示唆された.以上より,築地川区間周辺の歩行者空間を検討するうえでは,交通音の低減に加え,人の交流が生まれる音環境を含めた質的設計が重要であることが示された.
キーワード:サウンドスケープ、回遊意欲、交通音、話し声、築地川区間
博物館における地域理解を目的とした体験型講座の試行的実施と今後の展開 -音を入り口に自然・文化・歴史への関心につなげる-
久米 隼(武蔵野短期大学)・芝田 真理子(飯能サウンドスケープ研究会)
本報告は,地域博物館におけるサウンドスケープに関する体験型講座の試行的実施を通して,音を手がかりに自然・文化・歴史への関心を高める可能性について検討したものである。
筆者らはこれまで,先行研究のレビュー調査や小学校等における実践研究を通じて,地域の大人と子どもが音を通じてつながる取り組みに着目してきた。その成果を踏まえて地域博物館において講座を試行実施した結果,地域への関心や世代間交流を促す手がかりとしての効果が期待できることが確認された。
キーワード:地域理解、体験型講座、博物館、世代間交流
個人的体感の記録と共有―能登でのフィールドレコーディングを事例に―
足立 美緒(フリーランス)
東京から能登を応援するコミュニティ「のと部」にて、能登でフィールドレコーディングを行うプロジェクトと、特に2026年3月の展示について報告する。これは様々なバックグラウンドを持つ「のと部」メンバーが参加する企画であり、フィールドレコーディングを行うことでその場所・時間の音を記録するだけでなく、録音者自身が音への意識を開き、その時その場にいた記憶をも記録する可能性が、プロジェクトの過程で自然と浮かび上がった。このプロジェクトの可能性をサウンドスケープとの関わりから考察する。
キーワード:フィールドレコーディング、サウンドインスタレーション、サウンドスケープ、災害支援、立体音響