13:30 開会
一般報告セッション
13:35~14:15
塩川博義/タイとカンボジアにおける鉄製ゴングについて
ショートトークセッション
14:15~15:15
第1報告| 松田新史/山車まつり体験者におけるナラティブ分析に向けて―山車まつりのワークショップを通して―
第2報告| 久米 隼・芝田真理子・小澤俊太郎/NPOによる小学生を対象とした地域への理解促進に関する試み―地域の大人と子どもが音の風景でつながる可能性―
第3報告| 鳴島かお里/高校における系統的なサウンド・エデュケーション
第4報告| 藤垣美南/「小さな音」を用いたサウンド・インスタレーションの意義と課題
第5報告| 足立美緒/サウンドインスタレーション制作報告―場が持つ歴史のサイトスペシフィックな表現と立体音響がもたらす体験の観点から―
第6報告| 大浦瑞樹/「musicall topophilia」とご当地系発車メロディーの関係性再考
総合討論
15:15~15:45
15:45 閉会
※一般報告は発表20分+質疑20分、ショートトークは発表5分+質疑5分です。
タイとカンボジアにおける鉄製ゴングについて
塩川博義(日本大学)
東アジアおよび東南アジアには,銅鑼(ゴング)、梵鐘、双盤(鉦)、風鈴などの金属製打楽器が広く分布している。これらは主に、青銅、真鍮(黄銅)、鉄などを材料として作られており、日常生活における合図あるいは時報としてだけでなく、宗教的儀礼や舞踊における伴奏音楽など様々な用途に使用されている。
これら金属製打楽器の製造方法は、大きく鋳造および鍛造の二つに分けられる。鋳造は鋳型に入れて製作するもので、梵鐘や鉦、そして、風鈴などがこの方法で作られる。これに対して、鍛造は金属の塊を高温に熱しながら、ハンマーで叩いて形状を整えて製作していく。また、近年では金属の板を常温のまま叩いて形状を整えて製作していく板金という方法も用いられているが、材料は主に真鍮板か鋼板が用いられる。東南アジアの音楽などで用いられる銅鑼(ゴング)が、主にこれらの方法で作られる(日本やベトナムなどには鋳造で作られる銅鑼もある)。
東南アジアの銅鑼(ゴング)は一般的に青銅か真鍮で造られるが、近年、鉄製のゴングが増えてきている。鉄製ゴングは、上記で述べたように、鋼板から叩いて製作するので、高温で熱する必要もなく、安価で、しかも軽い。そのため、インドネシア・バリ島でも、行進しながら演奏するブレガンジュールでは、最近よく使用されている。
今回、タイのバンコクとカンボジアのシェムリアップに訪れ、幾つかの寺院を回り、鉄製ゴングを調査してきたので報告する。タイのバンコクにおいて、いちばん大きいゴングは直径3mもあり、2倍音が32Hzなので、基本周波数はおそらく20Hz未満だと思われる。また、いちばん小さいゴングでも直径1mあり、基本周波数は62Hzである。カンボジアのシュムリアップにおいて、いちばん大きいゴングは直径1.2mであり、基本周波数は63Hzである。
また、発表ではゴングだけでなく、寺院にある風鈴、半鐘、梵鐘などの金属製打楽器も紹介する。
キーワード:タイ、カンボジア、鉄製ゴング、基本周波数
○第1報告
山車まつり体験者におけるナラティブ分析に向けて―山車まつりのワークショップを通して―
松田新史(青山学院大学社会情報学研究科)
本発表は2024年10月27日に愛知県安城市城南町の一画で実施した山車まつりワークショップの結果報告である。本報告は、現在山車まつりの曳き廻し等が行われなくなった地域において、過去にその山車まつりを体験された方々等にワークショップを見学していただいた後にインタビューを行い、その語りを質的に分析・考察することで見えてくる、山車まつり体験が個人に与える影響を解明することを目的とした研究の考察に向けたものである。
キーワード:山車まつり, 体験性, インタビュー, ナラティブ, サウンドスケープ
○第2報告
NPOによる小学生を対象とした地域への理解促進に関する試み
―地域の大人と子どもが音の風景でつながる可能性―
久米 隼(武蔵野短期大学)・芝田真理子(飯能サウンドスケープ研究会・神戸大学大学院修了)・小澤俊太郎(純真高等学校)
本研究は,地元住民を中心に組織されたNPOが小学生を対象とした放課後の居場所づくりの一環としてサウンドスケープに関するワークショップを実施し,小学生の地域理解を促進する試みを考察する。サウンドスケープを媒介とした取り組みは地域理解のみならず,地域の大人と子どもとのコミュニケーションに寄与する可能性も示唆された。発表では,実際のワークショップを通じた事例をもとに,サウンドスケープが地域理解を深める手法としての可能性を提示する。
キーワード:NPO サウンドスケープ 地域理解 ワークショップ コミュニケーション
○第3報告
高校における系統的なサウンド・エデュケーション
鳴島かお里(都立紅葉川高校)
勤務校において昨年度・今年度と実践したサウンド・エデュケーションと生徒の反応について紹介する。1年次では音を使ったゲーム、近隣でのサウンドマップ作成等を、続く2年次では教室の音デザイン等を行った。合唱やギター、邦楽等従来の単元を行いつつサウンドスケープを取り入れた。どんなことを、どれ位実施するのが良いのか、模索中である。
○第4報告
「小さな音」を用いたサウンド・インスタレーションの意義と課題
藤垣美南(東京藝術大学大学院)
本発表では、12月中旬に提出予定の修士論文について概説する。マックス・ニューハウスやロルフ・ユリウスといったサウンド・アーティストの作品や思想から、「小さな音」を用いたサウンド・インスタレーションの意義を、サウンドスケープとの相違にも着目しながら考察する。課題として美術館の音環境を挙げ、鑑賞体験の向上や作品表現の可能性を広げるために、音に対する配慮の向上や静謐な空間を整備する必要性について述べる。
キーワード:サウンド・インスタレーション、小さな音、サウンドスケープ、音環境、ノイズ
○第5報告
サウンドインスタレーション制作報告
―場が持つ歴史のサイトスペシフィックな表現と立体音響がもたらす体験の観点から―
足立美緒(フリーランス)
現代美術家・原千夏の個展 「開かれた窓(La Fenêtre Ouverte)」に音源を提供した新旧2作の立体音響サウンドインスタレーションについて報告する。いずれも長崎県のキリシタンにまつわる歴史を題材とする作品であり、展示会場である旧出津救助院(長崎県長崎市)も作品の録音や撮影を行った舞台の一つである。そのような場の文脈に密接に関わった展示におけるサイトスペシフィックな表現や展示の結果、また立体音響という表現手法の重要性を考察する。
キーワード:サウンドインスタレーション、サイトスペシフィック・アート、立体音響、サウンドスケープ、フィールドレコーディング
○第6報告
「musicall topophilia」とご当地系発車メロディーの関係性再考
大浦瑞樹(なし)
鈴木/五十嵐は「musical topophilia」をもとにご当地系発車メロディーとトポス(場所性)の関係を明らかにした。
しかし、2024年10月の横浜駅を皮切りに始まったJR東日本首都圏本部管内の発車メロディー総入れ替えは図らずも兼古の批判的指摘通り、「musical topophilia」がより広い適用範囲を持つことを明らかにした。
本稿は発車メロディーを理解する基礎的理論構築を目指す。
キーワード: musical topophilia , 発車メロディー ,トポス