13:00 開会
第一部
13:10 一般報告、ショートトーク
第1報告|高尾美穂・塩川博義/現代における風鈴の音印象に関する研究(一般報告)
第2報告|土田義郎/金沢のまちの江戸時代の音風景(ショートトーク)
第3報告|堀 壮太/「武蔵野ランブリング」レポート〜国木田独歩の面影を辿って〜(ショートトーク)
第4報告|上野正章/敦賀市に設置されたミュージックサイレンについて(ショートトーク)
第5報告|織田光志朗/稲毛海岸のサウンドスケープ(ショートトーク)
第6報告|船場ひさお・木村直弘/誰かに聴かせたい“花巻の音風景”プロジェクトの紹介(ショートトーク)
第7報告|前田晋吾/拍手文化の変遷についての一考察(ショートトーク)
第8報告|鈴木聖子/「放浪芸」の記録における聴覚と視覚(ショートトーク)
15:00 休憩
第二部
15:10 総合討論
16:00 交流会
17:00 終了
※一般報告:発表20分+質疑20分、ショートトークセッション:発表5分+質疑5分。
□第1報告
現代における風鈴の音印象に関する研究(一般報告)
高尾美穂(日本大学)・塩川博義(日本大学)
日本の伝統的な住宅では、ふすまや障子などが多く利用されており、生活の中に外の環境が自然と入ってくるようになっている。しかし、現代の住宅は厚い壁に囲まれ、内と外の環境が遮断されてしまっている。また現在、環境共生住宅の重要性が謳われているが、風鈴を縁側に吊るし風や空気を感じることは日本の伝統住宅における環境共生の文化である。本研究では、住宅環境の一つである音に着目し、内と外を繋げる役割を持つ日本の伝統的な風鈴について令和元年度に行われた風鈴についての先行研究をもとに、単音3種(江戸風鈴、有田焼風鈴、南部風鈴)に複数音3種(サヌカイト風鈴、備長炭風鈴、ウィンドチャイム)を加えた計6種の素材や形状の異なる風鈴を使用して、新たにアンケート調査と音響解析を行った。
その結果、風鈴の素材や形によって音の特性は変わり、聴いている人の印象も変わることが分かった。うなりや粗さ(ラフネス)が見られる風鈴は好印象であり、「吊るしたい」「騒音だと思わない」と回答された風鈴が多い。吊るしたい場所の回答の特徴として単音の風鈴は縁側、複数音の風鈴は玄関に吊るしたいという回答が多いことが分かった。SD評価アンケートでは、すべての風鈴において「快適」「きれい」「上品な」「明るい」の項目で好評価である。ただ、風鈴の音を聴いたことのない人もおり、風鈴は身近な存在ではなくなってきている。今回用いた風鈴は先行研究と異なるものであるため、SD評価や周波数特性など、結果が異なるものが多く確認された。同じ種類の風鈴でも形や重さが違うと音も変わるため、さらに調査する必要があると考える。
キーワード:風鈴、うなり、粗さ、アンケート調査、音印象評価
◇第2報告
金沢のまちの江戸時代の音風景(ショートトーク)
土田義郎(金沢工業大学)
録音機器が発明される以前の音風景は、そのものが残されているのでない限り推定することは難しい。そうなると文献にもとづいて歴史学的に推測するか、遺構にもとづいて考古学的に推測するしかない。しかしながら、音を意識して残された文献は数少ない。遺構も完全なものは少ない。金沢のまちにおいて、今までに伝わる伝承や、地名から過去の音風景をたどるための方法について論じたい。
キーワード:耳の証人、歴史学、考古学、金沢、地名
◇第3報告
「武蔵野ランブリング」レポート〜国木田独歩の面影を辿って〜(ショートトーク)
堀 壮太(青山学院大学)
過度に都市化された武蔵野への問題意識から研究テーマに設定している武蔵野のサウンドスケープデザインへの一環として「武蔵野」を軸とした音の散策ツアーの企画・実施を考えている。そのため予備調査として2022年5月、加治丘陵や狭山といった場所の散策を行なった。発表はその散策についてのレポートであり、範囲を広げれば豊かに残っている事がわかった”明治30年代の武蔵野”を想起させるツアーに繋げようとするものである。
キーワード:武蔵野、ランブリング、国木田独歩
◇第4報告
敦賀市に設置されたミュージックサイレンについて(ショートトーク)
上野正章(京都市立芸術大学)
日本の20世紀後半は音楽を援用した信号音の広範囲な普及に特徴づけられる一方、個々の事例に関する調査・研究は十分に進んでいるとは言い難い状態である。初期の普及に重要な役割を果たしたミュージックサイレンについて、当時の福井県の新聞や雑誌を調査することによって1957年(昭和32年)に敦賀市に設置されたミュージックサイレンの導入当初の状況を明らかにすることができたので、これを報告したい。
キーワード:ミュージックサイレン、ヤマハ、福井県敦賀市、サウンドスケープ、時報
◇第5報告
稲毛海岸のサウンドスケープ(ショートトーク)
織田光志朗(青山学院大学)
かつて多くの人々で賑わう稲毛海岸が埋め立てによって消失したことに対する問題意識から、現在埋め立てられる以前の稲毛海岸と現在の実態を比較し、その変化について考察する卒業研究に取り組んでいる。埋め立て以前の音風景を探る手がかりとして、明治初期に稲毛海岸にアトリエを構え、稲毛海岸の風景画を残したジョルジュ・ビゴーの作品を耳の証人として用いて、彼の絵から読み取ったかつての稲毛海岸の音風景を報告する。
キーワード:稲毛海岸、ジョルジュ・ビゴー
◇第6報告
誰かに聴かせたい“花巻の音風景”プロジェクトの紹介(ショートトーク)
船場ひさお(一般社団法人こどものための音環境デザイン)・木村直弘(岩手大学)
2021年度、岩手県花巻市の事業として「誰かに聴かせたい“花巻の音風景”」プロジェクトを実施した。オンラインでのレクチャー、音とエピソードを募集するアンケート、市民と共に街歩きをしながら音をさがし集めるフィールドワークなどを行い、その成果をサイトにまとめている。活動の中で、現在も当前のように活用されている有線放送や、7:00,12:00,21:00に旧行政区域毎に異なる音楽が流れる防災無線放送など、全国的にも珍しい音風景を発見することができた。
キーワード:花巻、誰かに聴かせたい、音風景、地域
◇第7報告
拍手文化の変遷についての一考察(ショートトーク)
前田晋吾(青山学院大学)
現在取り組んでいる「コミュニーケーション手段としての拍手」をテーマとした卒業研究については主に、我が国における拍手文化の変遷を考察している。
日本では7世紀後半までは拍手が用いられた記録がありながら、以降は明治初期まで拍手の文化は見受けられなかった。しかしながら明治中期には一般的な文化として浸透したというプロセスが存在する。今回はこの変化について文献を元に報告する。
キーワード:
◇第8報告
「放浪芸」の記録における聴覚と視覚(ショートトーク)
鈴木聖子(大阪大学)
1970年代、俳優の小沢昭一は、LP『ドキュメント 日本の放浪芸』という全4巻計22枚のレコードに、近代化と高度経済成長の荒波に消えゆく音楽芸能の音の風景の物語を創出した。そして1970年代後半にビデオ時代が到来すると、『新日本の放浪芸』(1984年)と題する映像版を制作した。LP版の音の風景と、映像版の音の風景との比較を通して、音の風景の記録の実践における聴覚と視覚の関係について考察したい。
キーワード:聴覚、視覚、LP、VHD、VHS