新年のご挨拶

 地球沸騰・気候危機について、広く市民の共通認識とし、その打開へ共同の輪を広げよう

NPO法人埼玉自然エネルギー協会 代表理事 吉村文則


2024年、新年おめでとうございます。

 みなさま、どのように新年を迎えられましたでしょうか。元日に発生した能登半島地震、羽田空港での航空機の衝突事故など、激動の2024年を予感させる年明けとなりました。

 昨年は、世界の平均気温は観測史上最高の気温となり、各地で干ばつと洪水、災害が多発しました。この原因が、産業革命以来の二酸化炭素の排出という人為的要因によるものだということがいよいよ明確になり、脱炭素へ知恵と力を集めて真剣な取り組みをすることが人類的な課題となっています。

 こうしたとき、世界では、武力によって国境を変更しようというロシアのウクライナ侵攻や、積年の抑圧への反抗に無防備な市民を巻き込んだガザでの虐殺行為等が横行し、これをやめさせる国際世論の力の不足があらわとなっています。しかし、私たちはこの事態に負けているわけにはいきません。

 気候危機、私たちをめぐる情勢

 昨年末の12月、COP28(第28回気候変動枠組条約締約国会議)では、曲折を経ながらも、化石燃料からの脱却と、2030年までの自然エネルギー電力の3倍化が合意されました。ところが、COPには、気候対策が避けられない国際的課題となっているなかで、これを「商売のタネ」にしようという動きが出てきています。ドバイで開催されたCOP28の3日目、アメリカや日本を含む有志

国23か国が、「2050年までに世界の原発の発電容量を3倍にする」との宣言を発表したのです。これは正式なCOPの文書ではありません。原発は計画から稼働までの期間の長さを考えれば気候対策に有効でも現実的でもありません。ウラン採掘から燃料加工、稼働、廃炉、核廃棄物の処分に至るまで、生命を傷つける放射能を生み、環境汚染や人権侵害がつきまとうことを考えれば、原発は、グリーンでもクリーンでもなく「気候正義」からはほど遠いものです(国際環境NGO FoE Japan)。

 日本政府は、COPでは、原発推進を掲げるとともに、アンモニア混焼による石炭火力発電にしがみつき、またもや化石賞をうけるという恥ずかしい姿をさらけ出しました。

 能登大地震は、志賀原発の外部電源の喪失、変圧器油漏れなどを引き起こしましたが、運転停止中でとりあえず大事に至りませんでした。能登半島では1975年に珠洲市に原発建設計画がもちあがり、反対運動などもあり、計画は凍結されてきたという経過があります。日本海側には、本州だけでも柏崎刈羽をはじめ24の原発(うち廃炉決定が6)がならんでいます。志賀原発には活断層があるという指摘を原子力規制委員会が否定し再稼働にすすむ判断が出されていました。原発は推進ではなく、やめる以外ありません。

 昨年来、あらためて、企業献金・裏ガネが横行する自民党政治の腐敗ぶりが国民的指弾を受けています。そこには、日本の大企業主導の経済体制のゆきづまり―「今だけ良ければ後は知らぬ」「カネをもらえれば道義も法も曲げて構わぬ」「国民が苦しもうがオレさえよければOK」との資本主義の本性があらわとなっています。口先ではSDGsなどというくせに、カーボンプライシング(炭素税)などの温暖化対策は、先延ばし、急いで取り組まなければならない課題ではないというわけです。世界では、こういう態度をグリーンウォッシュ(環境配慮をしているように装いごまかすこと)といいます。


NPO法人埼玉自然エネルギー協会の役割

 温暖化対策の大道は、自然エネルギーの活用と省エネ、エネルギー使用の削減・断熱化などを進めることです。さらに運輸、製鉄などの産業界での脱炭素の推進です。これまでのやり方で利益を上げてきたエネルギー業界、産業界、官僚、自公政治などは、既存のやり方を温存することにしがみついています。

 この流れを変える力となるのは、市民の自覚の高まりと共同の拡大です。

 この道を切り拓くために、NPO法人埼玉自然エネルギー協会も、志を同じくする多くの仲間ととともに、役割を果たすことが求められています。

 今年はまったなし、次の諸点について、合意を広げていきましょう。

(1)気候危機をストップさせることは緊急の人類的課題であること

(2)温暖化をストップさせるのは、脱炭素・二酸化炭素の排出をやめること、メタンなどの温室効果ガスの排出をやめること

(3)そのためには、最大のCO2排出源である石炭火力発電や脱炭素に反する施策の温存をあらためること、原発の推進はまちがいであることを国民に知らせ、合意を広げること

(4)二酸化炭素の排出源は、エネルギー由来が9割、このうち電力由来が4割です。日本でのエネルギー、電気をめぐる問題点が何かを明らかにし、自ら使う電気、地域で使う電気を地域でつくる地産地消の推進に、市民に何ができるか、何をしなければならないのかを問題提起し、討論し、合意を得るようにすること

(5)埼玉県レベル、市町村・地域レベルで仲間、グループをひろげ、住んでいる自治体の現状と施策を調べ、対策を提言、行動すること

(6)このため、NPO法人埼玉自然エネルギー協会の会員、賛助会員、友人を増やし、地域での活動をスタートさせ、広げ、学び合い交流していくこと

(7)「株式会社彩の国でんき」は、脱炭素を推進するための重要で公的な事業体です。この発展に協力

すること

 

 逆流はありますが、これにめげずに、2024年をおおきな前進の年としましょう。