1970年(昭和45年)8月27日大阪府豊中市生まれ
1996年(平成8年)東京大学医学部医学科卒業、同年東大整形入局、以後癌研究会附属病院整形外科、焼津市立総合病院整形外科等勤務
2004年(平成16年)同大学大学院修了
その後東大病院整形外科で主に腫瘍の臨床を行う
2007年(平成19年)10月から1年半オーストラリアSt. Vincent’s Hospital Melbourne留学
2010年(平成22年)4月に自治医大附属さいたま医療センター整形外科に講師として赴任
2015年(平成27年)4月より同准教授・診療科長
2017年(平成29年)6月より同教授・診療科長
2018年(平成30年)4月より同センターリハビリテーション科教授・診療科長兼任
腫瘍整形外科医である私自身は災害医療のど真ん中で治療した経験はない。しかし、整形外科でありながら悪性腫瘍を扱う立場から見ると腫瘍整形外科と災害医療における共通点もあるように思われる。
整形外科にはカウンターパートになる整形内科は存在せず、手術ですべてを解決するのではなく、骨粗しょう症などのように薬物療法を行うことも必要である。腫瘍整形外科領域では内科的な対応も必要である。麻薬の使用や神経障害性疼痛に対する薬物療法などがその例である。
悪性腫瘍診療の場合、突然がんと告知され、精神的に追い詰められ、生活ががん診療もしくはがんのせん滅が中心軸になることが多い。そして、これまでの予定が一変し巨大な業を背負わされたようになってしまう。腫瘍整形外科からみて悩ましい問題は腫瘍切除が成功しても運動器を中心とした肉体的な障害が残存し、神経障害性疼痛などの後遺症で悩まされることである。特に神経障害性疼痛は腫瘍で精神的に追い詰められ睡眠障害が起こりやすい状況でさらに患者さんを追い詰める大きな要因となる。このとき我々は整形内科的に問題解決に関わることになる。
ある日突然自身にあって災害に罹災された方々も、ある日突然腫瘍に罹患 して治療が生活の中心に入り込んできた患者さんも同じ状況ではないかと思う。被災者の傷病を治療する際に心のケアや外傷による神経障害性疼痛、睡眠障害の問題などはやはり共通する部分があるのではないか。
神経障害性疼痛治療に関しては、私が研修医のころにはあまり良い薬剤や治療手段がなく、非常に頭の重い問題であった。しかし、仙椎離断後の神経障害性疼痛で歩行不能で夜眠ることのできなかった状態から、ミロガバリンにより新幹線を使って関西往復できるまでに改善した症例を2019年に経験した。この経験は、医学の進歩の素晴らしさを実感させるものであり、整形内科が活躍する素地が整ってきたことを意味している。神経障害性疼痛のように精神的にも追い詰める状況を改善することはがん診療だけでなく災害医療においても重要ではないであろうか。そして整形内科的問題になるのではないであろうか。
がん治療と整形外科がこれまでになく密接に絡むようになっており、整形外科では運動器障害の内、がん患者さんに発生した状態をまとめてがんロコモとして対応する動きが積極的になってきている。そのような中、神経障害性疼痛治療という切り口に気が付くと、対応できる疾患も増え、幅広く多くの患者のQOLを向上させることに繋がると思われる。災害医療においても神経障害性疼痛と言う切り口を知っていると罹災患者のQOL向上により貢献できる一助となるのではないであろうか。整形内科的な視点があることが診療の幅を広げると思う所以の一つである。
1999年(平成11年)島根医科大学医学部卒業、泌尿器科学教室入局
2005年(平成17年)島根医科大学大学院修了、医学博士号取得、日本泌尿器科学会専門医取得
2006年(平成18年)米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校泌尿器科留学
2010年(平成22年)日本泌尿器科学会指導医取得、日本がん治療認定医機構がん治療認定医取得
2014年(平成26年)埼玉県済生会川口総合病院 泌尿器科部長
2015年(平成27年)双泉会いずみホームケアクリニック
2019年(令和元年)医療法人社団 白報会 そうか在宅診療所 院長
2021年(令和3年) 菊野ホームメディカルクリニック 理事長兼院長
現在に至る。
日本における人口動態の特徴として、急速に進行している少子高齢化が挙げられます。この現象は、出生率の低下と平均寿命の延長によって引き起こされており、今後、ますます高齢者の割合が増加し、労働人口が減少することが懸念されています。
こうした社会構造の変化を背景に、高齢者の尊厳の保持と自立生活支援を目的として、地域の包括的な支援・サービス提供体制である「地域包括ケアシステム」の構築が2014年頃から推進されてきました。
これは、要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい生活を最後まで続けられるように地域内で助け合う体制のことで、それぞれの地域の実情に合った医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される体制を目指しています。
介護保険制度と医療保険制度の両分野から高齢者を地域で支えていくものであり、医療は、急性期病院、亜急性期・回復期リハビリ病院のほか、かかりつけ医や地域の連携病院を指します。病気になった際の入院などを急性期病院等が担い、日常の医療をかかりつけ医や地域の連携病院が担うという想定です。ここでいう「かかりつけ医」という枠組みの中に、在宅医療も含まれます。
在宅医療における排尿排泄ケアは、患者の生活の質に直結するだけでなく、「人の尊厳」を保つ上で重要な分野です。特に、さまざまな慢性疾患を有する高齢者において、排尿や排泄の問題は大きな身体的・心理的負担を伴うものであり、医療的側面と生活的側面の両面から包括的な排尿排泄ケアを実現させていく必要があり、そのためには、医師・看護師・薬剤師・介護職が互いに協力し合いながら、患者・家族を支えていく多職種連携が必須となります。
講義では、まず排尿排泄の基本的な生理について説明し、次に在宅医療に特化した排尿排泄の問題点、排尿障害や排泄障害の種類と原因、および排尿・排泄ケアの基本と実際について示します。
在宅患者は医療機関に頻繁に通えないため、薬剤師による継続的なサポートが不可欠です。医師が処方した薬剤の内服状況の確認や残薬調整、残薬が多い場合における服薬できていない理由のアセスメント、病院を併診している場合における複数医療機関での処方薬剤間の相互作用のチェック、処方されている薬剤の効果や副作用に関するモニタリングを行い、その結果報告や在宅環境特有のニーズに応じた薬剤使用の選定、さらには排尿排泄ケアに必要な用具選定のアドバイスを医師へフィードバックしていくなど、在宅医療における薬剤師の役割は多岐にわたります。
こうした重責を担う薬剤師に向けて、実際のケースを交えながら、在宅医療における排尿排泄ケアの重要性と薬剤師の関わり方について解説します。
Fizz-DI代表 / 薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6認定薬剤師。
2011年(平成23年)に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やX(旧Twitter)「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)等。
「処方提案」は、薬剤師が持つ知識や情報を、医師の診療判断に活かすための重要な業務のひとつです。患者さんの安全やQOLを守るためにも欠かせない取り組みですが、実際の現場では、これまでに提案を無下に却下された経験がある」、「そもそも、なにを提案すればよいのかも分からない」、「医師の機嫌を損ねそうで怖い」といった、心理・知識・コミュニケーション面のハードルの高さから、処方提案に踏み出せない薬剤師も少なくありません。
そこで本講演では、「処方提案」を“薬剤師の意見を通すこと”ではなく、“医師の判断を変えうる判断材料を提供すること”と再定義し、前向きに取り組むための視点と工夫を、具体的なケーススタディを通じてお伝えします。
実際に私自身が経験した、うまくいかなかった処方提案を題材に、なぜそれが失敗したのか、どんな視点や知識が足りなかったのか、そしてどう改善すれば通る提案につながったのかを分析・可視化していきます。
また、薬剤師がよく関わる相互作用のリスクや副作用の疑い、外用剤の使用感といった観点からの処方提案も、知識や情報不足のまま行うと“逆効果”になってしまうことを例に、薬剤師の自己研鑽の重要性にも触れます。
処方提案に「正解」はありませんが、より良い選択肢を共に考えるために、薬剤師として何ができるのか——
明日からの現場に役立てられる“考え方のヒント”を持ち帰ってもらえたらと思います。
児島先生は「国内旅行(城と地酒)」や「AI秘書を活用した業務効率化」に関心を寄せておられます。
お城巡りと地酒の旅には、地域や文化を大切にする優しさと探究心が滲み出ています。一方、AI秘書を取り入れる柔軟な発想は、薬剤師として日々直面する課題にも果敢に向き合う姿勢を映しています。
児島先生は、薬剤師を「国民にとって最も身近な科学者」と位置づけ、その視点から、科学的根拠を持った医療情報の発信を続けています。
その語り口には、単なる知識の共有にとどまらず、医療を支える一人の薬剤師としての情熱が感じられます。
今回の講演で児島先生が語ってくださる視点は、日々の業務や学びに“こういう考え方を自分も大切にしたい”と思わせてくれるはずです。
ぜひ、この大会で児島先生の想いや知恵に触れ、明日からの薬剤師としての仕事に活かしていただければ幸いです。
福島県出身。1993年、東京理科大学薬学部製薬学科卒業。同年、薬剤師資格を取得。1995年、同大学院修士課程(有機化学専攻)を修了。武田薬品工業にてMR職を務めた後、大学病院薬剤師、保険薬局薬剤師、人材紹介会社勤務などを経て、2015年より実務薬学総合研究所に所属、2020年より同研究所代表取締役を務める。
武蔵野大学薬学部講師。埼玉県より委嘱を受け、災害薬事コーディネーターを務める。埼玉県薬剤師会 災害対策委員。陸上自衛隊東部方面隊 予備自衛官(階級:三等陸佐)。
災害対策というとどうしても一歩引いてしまう方も多いかと思いますが、「特別な能力が無いと関われない」というのはちょっとした勘違いかもしれません。普段の調剤業務は災害時でも大きく地域の復興を後押しします。特にさいたま市のような大きな人口を抱えた自治体では私たちの日常を守る活動が非常に注目されていて、災害時に最も必要なことは実は救急・救命の延長ではなく患者さんの日常を支えることが薬剤師に求められています。過去の災害の事例で薬剤師同士の連携が地域を支えた事例を紹介いたします。
※eST-aid (災害時情報共有システム)とは
医師会・歯科医師会・薬剤師会・自治体が、災害時に安否情報や開閉状況を共有し、市民へ公開できるツールです。緊急医療救護所・災害対策本部でも活用されます。
さいたま市薬剤師会では、2024年5月よりeST-aidを導入しています。
2009年に明治薬科大学を卒業後、調剤薬局に勤務し薬局薬剤師としての活動を開始。2014年、薬局薬剤師としての将来に不安を感じていた折、地域で活発に活動する薬剤師会の取り組みに魅力を感じ、2015年に一般社団法人さいたま市薬剤師会に入会。2016年より広報委員会に所属し、ホームページの制作や会報誌の執筆などに携わる。2021年には保険薬局・学術委員会に配属され、委員長を拝命。現在は、委員会メンバー10名に加え、有志の病院薬剤師・薬局薬剤師の協力を得ながら、地域における薬薬連携の構築に注力している。
令和6年度調剤報酬改定にて、薬剤師が患者向けRMP資材を活用し、説明することで算定可能な「特定薬剤管理指導加算3(イ)」が新設された。これまでも資材を用いた指導は行われてきたが、今回の改定ではRMP活用に特化した点が注目される。RMP(Risk Management Plan:医薬品リスク管理計画)は、市販後に判明する副作用等に対し、早期発見・対応を図るための情報源である。薬剤師がRMPに記載されたリスク情報をあらかじめ把握しておくことで、服薬指導やフォローアップ時に副作用の有無を判断しやすくなり、患者支援における質の向上が期待される。本講演では、RMPの基本に加え、RMPを用いた活用方法について考察する。