■「未来人材奨学金制度」創設のきっかけ
当クラブでは1985(昭和60)年から38年間、「公益信託 佐賀ロータリークラブ奨学基金」を通じて、進学する意志はあるのに、経済的な事情で困難だった179人の高校生を支援してきました。卒業時には進路など報告を兼ねてロータリアンと高校生の交流の場も設けてきました。その中で「弁護士になりたい」と夢を持ち、国立大学法学部に進学を実現した生徒もいて、当クラブが子どもの夢の実現に役に立っていることを実感しています。
振り返ってみると、いつの時代にも貧困問題は存在しました。しかし、私たちは「個人の責任」と考え、自助努力して解決する問題として、子どもの貧困には目が向いていなかったように思います。これまでは、頑張ればなんとかなった時代かもしれませんが、社会的構造の変化や経済の低成長期が続き、貧困からの脱却が難しい時代になってきました。
そんな状況の中、佐賀県には相対的な貧困の子どもたちが1万6千人もいると言われています。貧富の差は、佐賀の将来を担う子どもたちの教育や健康にも影響を及ぼします。私たちは当クラブの役割として、子どもたちに希望を与えることができるように、貧困を顕在化してしっかりと目を向けていくことが大事だと考えました。
そこで、2022(令和4)年度で「公益信託佐賀ロータリークラブ奨学基金」に一区切りつけ、佐賀ロータリークラブ70周年記念事業として、「子どもたちは、地域で支え育てていこう」という共助の考えに立ち、新たに「佐賀ロータリークラブ未来人財奨学金制度」を創設しました。
福岡桂会長は「ロータリーは奉仕をする人を作る場。金銭的なサポートだけでなく、子どもの貧困の現状を知って、会員が自社でもできることはないかと考えていけば、自然に企業や個人から社会全体へと広がっていくはず。この制度がその第一歩になれば」と期待を込めます。
■共助の精神や目的が一致する団体とともに
同奨学金制度の内容は、佐賀市内の公立・私立高校に在籍している高校3年の生徒5人に、2023年から10年間、毎年12万円ずつ奨学金を給付します。人格・学業ともに優れ、経済的な理由により修学が困難な生徒が対象です。奨学金は全額、会員の皆さまの善意が集まったスマイルボックス(ニコニコ箱)から拠出し、地元・佐賀の「公益財団法人佐賀未来創造基金」に委託しました。
同基金から、年度初めに佐賀市内の全高校に奨学生募集の案内を送付します。募集締め切り後、ロータリアンを含めた助成選考委員会を開き、学校長を通じて本人に結果をお知らせして贈呈式を行います。
同基金に委託した理由は、地域や社会の課題解決や活性化に取り組み、冠(かんむり)基金に対する実績があり信頼がおけることです。地元・佐賀の団体なので、私たちも顔を合わせての意見交換がしやすく、「子どもたちを支える」という同基金の目的と共助の精神が、当クラブとも一致する団体ということで決定しました。
■子どもの未来に希望与える奨学金制度
同基金の山田健一郎代表理事は「ここ数年、コロナ禍の影響で経済活動が停滞して困窮している家庭が増え、同基金の関係団体に数多くの相談がある」と言います。地域とのつながりが希薄な今、社会的に孤立している家庭も少なくありません。小さな団体が集まっての支援も対症療法に過ぎないのが現状だそうです。
そんな中で、当クラブのような経済団体が子どもの貧困に目を向けることは「金銭的な助けになるだけでなく、社会に与えるインパクトが大きい。経済界が子どもたちのために動いているというだけで、子どもたちは希望が持てる」と、歓迎しています。「月1万円の奨学金で新しい教材を手にし、部活動も諦めることなく未来への可能性が広がることにつながる」と、山田代表理事は、奨学金制度の意義を語ってくれました。
■100周年に向けて青少年奉仕を継続
ロータリークラブの活動の基本は、5つの奉仕。その中の「青少年奉仕」は、次世代を担う人材を育てていこうと、全国のロータリークラブが力を入れて支援していることの一つです。
楠田俊明次期会長は「佐賀ロータリークラブが創設した奨学金制度には、他県のロータリーからも関心が寄せられている。ロータリーの輪がつながれば、社会全体に子どもたちの支援の輪が広がり、子どもたちの未来につながる。制度を通じてご縁ができた生徒たちと、卒業後も当クラブとの関係が続いていくことが理想だ。将来、彼らがどこかのロータリーに加入するような人材に育ってもらえれば」と、奨学金制度に期待しています。また、「38年前の『公益信託 佐賀ロータリークラブ奨学基金』の創立時も先輩方は私たちと同じ思いだったのではないか」と当時に思いをはせ、「先輩方の思いを引き継いで、子どもたちが安心して進学できるように、青少年奉仕の理念で制度を100周年まで継続させたい」と願っています。
佐賀ロータリークラブ
未来人財奨学金制度創設
目的
佐賀市内の高等学校に在籍している人格・学業共に優れた生徒で、 経済的理由により修学困難な生徒に奨学金を給付し社会有用の人材を育成することを目的としています。
内容
基金は全額スマイルボックス (ニコニコ箱)から拠出して、 公益財団 法人佐賀未来創造基金に委託し、2023年度より10年間、毎年5名 の生徒に対し奨学金を給付するものです。
これまでの経緯
昭和60年度に公益信託佐賀ロータリークラブ奨学金制度を創設 し、これまで38年間で176名の高校生に奨学金を給付してきました が、2022年度末をもってこれを終了し新たな奨学金制度を創設す ることとなりました。