シアノバクテリア
シアノバクテリアは、酸素発生型の光合成をする原核生物です。ラン藻(藍藻)ともよばれ、約27億年前にはすでに地球上に存在したといわれています。シアノバクテリアは地球に酸素をもたらし、その後の生命の進化に大きな影響を与えました。シアノバクテリアは長い年月をかけ様々な環境に適応して生き延びる戦略を身につけています。現在の植物がもつ葉緑体の祖先は、シアノバクテリアであるといわれています。
形質転換が容易で全ゲノム配列が決定されているシアノバクテリアが研究の現場ではよく用いられます。光合成研究などには Synechocystis sp. PCC 6803が、概日時計の研究にはSynechococcus elongatus PCC 7942が使われることが多いです。
Synechocystis sp. PCC 6803
単細胞性シアノバクテリア
モデル種として広く研究に用いられている
Leptolyngbya boryana
糸状性シアノバクテリア
非ヘテロシスト型窒素固定性
暗所従属栄養で生育可
4種のシアノバクテリア
Anabaena PCC 7120 (ヘテロシスト型糸状性)
Leptolyngbya boryana(非ヘテロシスト型糸状性)
Synechocystis sp. PCC 6803 (単細胞性 球菌)
Synechococcus elongatus PCC 7942(単細胞性 桿菌)
概日時計
シアノバクテリアは、概日時計(体内時計)をもつ最も単純な生き物として知られています。昔はバクテリアに体内時計があるとは考えられていませんでしたが、研究が進むにつれ、その精緻な時計の仕組みには驚くべき発見がなされてきました。
3つの時計遺伝子kaiA、kaiB、kaiCが1998年に発見されました。kaiは回転の「回」から命名されています。さらに、2005年には試験管内での時計再構成系が発見されました。これは、3つの時計タンパク質とATPを試験管の中で混ぜるだけで、24時間のリズムが発生するという驚くべき事象です。このリズムは、細胞がもつ時計としての基本性質を備えていて、体内時計研究分野のみならず、広く生命科学、化学・物理分野からも注目されています。
当研究室では、シアノバクテリアの3つの時計タンパク質KaiA、KaiB、KaiCによる試験管内の概日時計再構成系を用いて、体内時計のしくみを明らかにすることを目指しています。試験管の中で、24時間のリズムを発生するタンパク質はKaiタンパク質の他に知られておらず、このユニークな実験系を使って研究を進めています。
中心振動体であるKaiCは、2つのATP分解酵素(ATPase)からなります。ATP依存的な六量体を形成し、2つのリングが重なったような構造をしています。時計であるKaiCもATPをエネルギーとして働いていますが、時計が使うエネルギーは驚くほど小さいことがわかりました。さらにKaiCのATPase活性が24時間という周期長を決めています。この温度補償された極めて弱いATPase活性が時計の速さに比例することは、概日リズムの発生機構の基盤がATPaseにあることを意味しています。