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夜、酒場でタンカッドからの使者を待つ3人。
「あのならず者がおとなしく協力するとは思えんぜ、用心しないと明日の朝には俺たち三人沼の底だ。」
真面目なのか冗談なのか、ニヤニヤ笑うレゾ・メーン。
「タンカッドとて周辺の集落とはトラブルを起こしたくあるまい。何かしら交渉の余地はあるだろう。」
むっつりとした調子で答えるバーリック。
「ドワーフ船の行方を捜している人たちかい?」
陰気な声に3人が振り向くと、そこには薄汚れたローブを着た小柄な男が立っていた。
薄暗いランプの光に照らされて、表情は読み取れず、年齢もよく分からない。
「タンカッド殿からの使者かしら?」
レオーネの問いかけには答えず言葉を続ける男。
「あんたらの探しているドワーフ船の行方を知ってる。案内しよう。
タンカッドはあんたら助ける気などない。あんたらを沼に沈めて、知らんふりをするつもりだ。
気をつけろ、そこかしこに敵の目が見張ってる。静かに着いて来い。」
唐突な申し出に戸惑う一行。
はっきりしているのは、敵であれ味方であれ確かめないことには分からないということだ。
「いいでしょう、案内してください。あなたと我々に神の加護があらんことを。」
レオーネの言葉に、表情を歪ませる男。しかしそれはフードの陰に隠されたままであった。
ランタンの細々とした明かりが水面を照らしていた。
ローブの男に先導されるまま、小舟に乗って迷路のような水路を進んでゆく三人。
舟はやがて、背の低い草が生い茂る小島へとたどり着いた。
「こっちだ、仲間が待ってる。来い。」
いち早く下船し、小島へと走っていく男。
辺りに明かりは無く、薄汚れたローブ姿はすぐに夜の闇へと紛れてしまった。
「おい、何か臭わないか?これはまるで…」
バーリックは鼻頭にシワを寄せながら剣の柄を握り締める。
「ありがたい協力だな、おまけにずいぶん臭い"仲間"の登場だ!」
吐き捨てるように言いながら身構えるレゾ・メーン。
草むらからゆっくりと歩き出してきたのは、ボロ布を纏った男、女、そして背の低い人影の一団。
いずれも生気のない目、ところどころ傷つき腐り落ちた体、きつい腐臭。それはまさに生ける屍であった。
草陰から男の低い声が聞こえてくる。それは神へ祈りを捧げる言葉…レオーネははっきりと悟った。
ただし、自分の神ではない。
十数体の屍が歩み寄るその真っ只中へ、レオーネが進み出る。手にはホーリー・シンボル。
呆気に取られているドワーフと魔法使いをよそに、高く澄んだ声で神への祈りの声を上げ始めた。
足音が止んだ。一瞬の静寂の後、屍たちが一斉に膝をつき、体を地面に投げ出す音が響き渡る。
レオーネのターン・アンデッドが全ての生ける屍を呪いから開放したのだった。
「大したもんだ!俺も伯父貴から神様への祈り方を教わっときゃよかったぜ。」
軽口を叩きながら草むらを杖で突付くレゾ・メーン。男の姿は既に無かった。
「遺体の多くはドワーフだ…我々の船はここでバラされたんだ。遺体の新しさからすると、殺されて間もないな。」
横たわる屍を調べていたバーリックが、努めて平静を装いながら言う。
三人はしばらく無言で捜索を進めたが、セレナの姿も祭器も全く見つからない。
ただ一つ、草むらの中にローブの男が落としたホーリー・シンボルが落ちていた。
重苦しい雰囲気の中、酒場へと戻ることになる。東の空が白んでいた。
酒場では、タンカッドの遣いと思しき若い男が椅子の上で居眠りをしていた。
「ん?ああ、まだ生きてたか。行方を聞いたら怪しげな男にノコノコ着いてったって聞いたから、てっきりもう戻ってこないのかと。」
三人の姿を見て悪びれる様子もなく言い放つ男。
黒い髪に整えられた口髭、どことなくタンカッドを連想させる顔立ちの男だった。
レオーネが勢いよく前に進み出、男の鼻先に黒いホーリー・シンボルを突きつける。
「あの邪教徒はタンカッド殿のお仲間かしら?ご丁寧にゾンビまで用意して、関係者なら神の慈悲は期待しないことね。」
男は小さく手を上げると、はあっと大きくため息をついて話し始めた。
「仲間なんてもんじゃないんだよ。タンカッドは、親父は、ナントカ教徒だっていうクレリックの集団と取引してた。
親父も俺も宗教には疎いからよ…あいつらがライバルに呪いをかけたり、都合の悪いもんを隠したりしてくれたんで、俺たちもよくしてたんだ。
胡散臭い奴らだってのは薄々気付いてたが、あいつらが捕虜の一人や二人を欲しがったって、俺らの知ったことじゃないだろ?」
何か言いたげなレオーネを、身振りで制止するバーリック。
男は水を一杯飲むと、説明を続けた。
「だがアイツら調子に乗って、廃墟へ勝手に居城を構えやがった。
おまけにこの街へ神殿を建てさせろと迫ってくる始末だ。今度のドワーフ船の件だって、奴等が勝手にやらかしたことなんだ。
それでタンカッドの回答はこうだ、”流れが変わった”。何教徒だか知らないが、あんた方が潰すんなら協力するぜ。」
男の提案はシンプルなものだった。邪教徒の根城の場所は教える、そこまで行けるよう船も手配しよう。
そこで手に入ったものは好きにしていい。その代わり、タンカッドは邪教徒と直接関わりが無いことを信じろということだ。
タンカッドへの疑惑は消えたわけではないが、目下の問題は邪教徒の存在とセレナの行方だ。
三人は地図を手に敵の居城へと向かった。
湿地の中央から円筒形の黒い塔が突き出している。
音を立てずに小舟を近づける三人。やがて塔の入り口へとゆっくり入っていった。
円筒の内壁に沿って螺旋階段が上へと続いている。人影はなく、静まり返っている。
「敵が居るとすればこの上だ、まさか正面から入っていこうなんて馬鹿なこと考えてないだろうな?
俺がそっと行って様子を見てくるから、それから作戦を…」
レゾ・メーンの言葉が終わらないうちに、塔の上から鋭い悲鳴が響き渡った。若い女性の声。
「セレナ!」 階段を駆け上がるレオーネ。あっという間に二人を置き去りにしてしまった。
「ああなったら止められん。ドワーフの女より頑固で、ドワーフの男より力強いからな。」
バーリックはそう言って肩をすくめると、剣を抜いて階段を駆け上がり始める。
呆然とした表情のレゾ・メーンが後を追いかけた。
塔の最上階は大広間になっていた。階段からの扉を勢いよく蹴り破るレオーネ。
大広間では祈りの声が響きわたっていた。円形の部屋の中心に大きな穴。
そして祭壇の上に横たわるのはセレナ司祭その人であった。
邪教徒の行動は早かった。黒いホーリー・シンボルを高く掲げると、レオーネに向かって突き付ける。
その瞬間、レオーネの周りを静寂が包み込み、一切の音をかき消した。
レオーネは自身の神へ祈りを捧げようとしたが、声が出ない。
同時に穴の周りに居た邪教徒が一斉に短刀を抜き、レオーネに向かって殺到した。
遅れて到着したバーリックが乱戦に加わる。
歌のように呪文を口ずさみながら、階段をゆっくり上がってくるレゾ・メーン。
扉の向こうから、穴の近くに居る邪教徒へ向かって軽く指を向ける。
その瞬間、犠牲者の双眸から強い光が漏れ始め、口からは悲鳴が漏れ始める。
「目が!目が!」
目を抑えながらよろめき、つまづいて穴の中に転落する邪教徒。
大きな水音の後、何かが水面を激しく叩きつけ、噛み砕くような音と共に鋭い悲鳴が上がった。
バーリックの剣が閃き、レオーネの鉄槌が敵を粉砕する。
立ちふさがる邪教徒を蹴散らした後、祭壇の上の敵へ突進するレオーネ。
「魔法使い!眠りの魔法が使えるって言ってたな、援護してくれ!」
レゾ・メーンへ叫ぶバーリック。
「悪いな、今日は代わりに魅了の魔法を準備してんだ。代わりにこれで勘弁してくれ。」
レゾ・メーンが指を鳴らすと、頭上から輝く矢が現れて敵の胸を貫いた。
「魅了の魔法なんぞ、酒場で娘をたぶらかすときだけにしとけ!」
悪態をつきながら敵の司祭へ斬りかかるバーリック。
邪教徒はもう一度神への祈りを口にすると、その手が黒く燃え始めた。
しかしその力が発揮される前にレオーネの鉄槌が邪教徒の脳天を砕いたのだった。
「彼女に関しては言葉を奪うより、動きを封じるべきだったな。できれば、だが。」
面白そうにこぼすレゾ・メーンをよそに、祭壇の上に横たわるセレナ司祭へ駆け寄るレオーネ。
怪我はない。儀式の犠牲者にするつもりだったのか、薬で眠らされているだけだった。
三人はセレナの回復を待って、話を聞くことにした。
一行は眠りから目覚めたセレナ司祭の話を聞き、盗まれた祭器を塔から回収した。
だが一部の祭器は見つからず、セレナが言うには邪教徒たちが「イーグトンのラーム」に売るという話をしていたらしい。
イーグトンは地名だが、ラームが何者なのかはセレナも三人も聞き覚えが無かった。
その後近場のブライトパインまで戻り、宿屋で休んだ後にカラコスへの帰途につこうと準備をしていた一行。
そこへあの使者、タンカッドの息子が現れ、父親からの手紙を手渡した。
ーブライトパインを蝕んだ邪悪な教団を排除してくれたことに礼をいう。
これで、湿地を抜ける商船が襲われる事件もなくなるだろう。
ブライトパインはこれまでもこれからも、カラコス神殿とパーカスポイントのよき朋友である。
三人が手紙から目を上げたときには、タンカッドの息子はもう姿を消していた。
マウスガードをプレイしました。キャラクターはサンプルキャラクターより、ケンジー、サディ、サクソンを使用しました。
任務の通達「連絡の回復」
ロックヘイヴンと近隣の一帯を激しい嵐が襲った数日後、ケンジー率いるパトロール隊のもとにグウェンドリン総長から召集命令が届きました。
さっそく本部に出頭した3名に、新しい任務が通達されます。
「ロックヘイヴンから南東へ1.5日ほどの離れた場所にあるアンバーウッドという小さな村落との連絡が途絶えています。
アンバーウッドはその名のとおり琥珀石の産地であり、ロックヘイヴンの宝石商人たちは、嵐による村の被害と琥珀石取引の延滞を心配しています。
あなた方は直ちにアンバーウッドに向かい、村の状況を報告しなさい」。
こうしてパトロール隊は急ぎの旅に出発したのでした。
第一の障害「洪水の傷跡」
このあたりは、目の届くずっと先まで、赤茶けた泥濘に覆われています。
泥だらけの地面はひどく緩んでいて、あちこちに大岩がころがっています。
GMは、この障害を突破するのに「体力勝負の【耐久力】Ob3で判定」が必要であると指示します。
しかし、サクソンが「闇雲に直進せずに迂回しながら安全なルートを選ぶ」ことにして〈道案内人〉を使うと提案しました。
GMはこれを承諾。サディは〈偵察兵〉を使って「みんなを先導します」と援助を宣言します。
ケンジーは〈野外生存者〉で援助を申し出ました。判定はみごとに成功。
3人(3匹?)の足は泥だらけになりましたが、無事に泥んこ地帯を通過しました。
第二の障害「崩壊したアンバーウッド」
アンバーウッドは土砂崩れによって無残に破壊されていました。
倒木と瓦礫があちこちに散らばっています。サクソンが大声で呼びかけてみますが返事はありません。
GMは被害状況の調査と生存者の救出作業を「〈野外生存者〉Ob3」の障害であると指示します。
ケンジーが代表となって〈野外生存術〉で判定。大きく成功しました。
その結果、村の近くに野宿の形跡を見つけ、多数の生き残りがいることが判明しました。
しかし、村人の姿は見当たりません。
また、琥珀石の保管場所として使われていた倉庫の扉が開け放たれ、中身が空になっていることも判明しました。
謎を残したまま、パトロール隊は一時ロックヘイヴンに帰還することにしました。
プレイヤーズ・ターン
プレイヤーズ・ターンではプレイヤー側から行動を宣言し判定を要求できます。
今回は、状態のペナルティによる回復判定もなく、追加の行動もありませんでした。
GMはプレイヤーズ・ターンの終了を宣言して、各プレイヤーに幸運点(Fate)を2点と気力点(Persona)を1点、報酬として与えました。
通常なら、これでセッションは終了ですが、今回はつづけて第2のミッションに進みました。
(ちなみに、ここまで約30分のプレイ時間)
任務の通達「琥珀石」
それから数日後、またもや総長から召集命令がかかります。
3人がグウェンドリン総長の執務室に入ると、机の上には琥珀石の入った小袋が置かれていました。
総長が言います。
「ガイアル隊がこの琥珀石を川沿いのブラックバンク村で発見し持ち帰りました。
何者かがこの琥珀石を闇取引で売り捌いたそうです。
あなた方はブラックバンク村に入り、この琥珀石を売った人物を見つけ出さなければなりません。
私の直感では、その人物が村人の消えたアンバーウッドの謎を解く重要な手がかりを持っているはずです。
急ぎなさい。尚、ブラックバンクは密輸人やごろつきがたむろする危険な村です。行動には十分に気をつけるように。」
第一の障害「尋問」
ブラックバンクは、村とよぶには猥雑で、街とよぶにはみすぼらしい川沿いの宿場村でした。
夕暮れ前にブラックバンクに到着したパトロール隊は、早速「琥珀石を売りに出した人物」の捜査にとりかかります。
GMはこの障害を「非協力的な土地での聞き込み調査だから〈交渉人〉Ob4」と指示します。
プレイヤーはこれに同意して、ケンジーが判定を行うことになりました。
サクソンは「多少荒っぽい行動も辞さない」ということで〈戦士〉で援助(GMは裁定に迷いましたが、可能だと判断しました。)、サディは〈交渉人〉によって援助を申し出ます。
判定は大成功。小さな安酒場で酔っ払っている「売人」を発見します。
彼の名前ダントン。バケツの水を頭からかぶせ酔いをさましてから、厳しく問い詰めます。
正気に戻ったダントンは震えながらアンバーウッドを襲った悲劇について説明し始めました。
「嵐を逃れた村人の避難場所を1匹のイタチが襲ったんだ。イタチの名前はシューカ。
アンバーウッドの村人を人質にとっている。俺たちはイタチの言いなりになるしかなかった。
イタチは琥珀石を集め、村人をこき使ってさらに多くの琥珀石を掘り出させようとしている。
俺はシューカに命令されて蜂蜜酒を買いにきた。今はともかくこの先どうなるかわからない…」
第二の障害「はぐれ者のイタチ」
一向はイタチの待ち構える洞穴の前までやってきました。
パトロール隊の決断は断固としたもので、正面から戦いを挑むというものでした。
大声で名乗りを上げると、毛皮のひどく汚れたイタチが曲刀の鞘を鳴らしながら、のっそりと姿を現します。
シューカとの戦いは「コンフリクト判定」で解決します。
ケンジーが臨機応変にイタチを挑発、サディは防御に徹し、サクソンが自慢の長剣でイタチに斬りかかります。
イタチは刃の折れたシミターで獰猛な攻撃を繰り出します。
(ここでGMのうっかりミス。ケンジー側(サクソン主導)の優勢値(Disposition)を本来よりも低く計算してしまいます。
またコンフリクト・ゴール(Conflict Goals)を明確に決めないまま判定を開始してしまいました。)
戦いは短く激しいものでした。結果は「コンフリクトの引き分け(Tying a Conflict)」。
両者ともコンフリクト・ゴールを達成したことになります。
ルールに従うと、両者「死亡」という判断が妥当だと思われましたが、GMとプレイヤーで話し合い「イタチは生死不明の逃亡(例えば、土砂崩れがおこり両者が巻き込まれた、ことにするのはどうか?)」ということで、合意しました。
イタチの脅威から開放された村人は、パトロール隊に礼を述べます。
アンバーウッドの村人はひとまずロックヘイヴンへと避難することになりました。
(セッション2のプレイヤーターンは省略しました。)