量子ウォークセミナーアブストラクト(過去ログ)


2023年6月8日 16:30--18:00 立命館大学量子ウォークセミナー

講演者: 小山翔平(横浜国立大)

講演タイトル: 量子ウォークにもとづく一変数関数のグラフの線形的外挿

Abstract:  本講演では、量子ウォークにもとづく一変数関数のグラフの線形的外挿を扱う。

先行研究には以下2つがある。

Konnoは2019年、1次元の「離散時間」・「離散空間」量子ウォークにもとづいた時系列モデルを導入した。

続いて、今野は2020年の著書『量子ウォークによる時系列解析』にて、離散時間量子ウォークの確率測度を用いる代わりに、同じ1次元「離散時間」・「離散空間」ランダムウォークである離散時間ランダムウォークや離散時間相関付ランダムウォークの確率測度を重みとして用いる場合のモデルについても計算している。

これら先行研究では「離散時間」・「離散空間」のウォークにもとづいていたが、これを「連続時間」・「連続空間」にできないかと研究した内容が本講演内容である。

まず、パラメータの入った1次元の「連続時間または離散時間」・「離散空間」量子ウォークの弱収束極限測度やそれを重みとして用いた評価関数の定義を紹介する。

そして、それらの量子ウォークの弱収束極限測度を用いた評価関数の表示を求め、このモデルが機能しているか確かめる。その後、本モデルによるグラフの線形的外挿の手法を導入し、離散時間からの拡張になっているかを確認する。

2023年6月8日 18:00--19:30 立命館大学量子ウォークセミナー

講演者: 森田英章(室蘭工業大学)

講演タイトル: 組合せ論的ゼータ函数の「三種の表示」について

Abstract:  グラフゼータ函数は伊原康隆氏の 1966 年の論文に源流をもち、我が国がその主な発展を担ってきた研究対象である。グラフゼータ函数は、一般に「指数表示」「オイラー(積)表示」「橋本表示」「伊原表示」とよばれる四種の表示をもつことが知られているが、近年になり「今野-佐藤の定理」によって、「橋本表示」と「伊原表示」の二種類の行列式表示の等価性が、グラフ上の量子ウォークに対する「スペクトル写像定理」に対応することが指摘され、さらなる展開を見せている。この講演では、グラフゼータ函数を含むより広いクラスである「組合せ論的ゼータ函数」に対し、「指数表示」「オイラー表示」「橋本表示」の三種の表示が同値であることを紹介する。これは、「今野-佐藤の定理」をさらに一般的に展開するための基盤をなすものである。

2023年6月22日 16:30--18:00 立命館大学量子ウォークセミナー

講演者: 佐藤巌(小山高専 名誉教授)

講演タイトル: 伊原ゼータ関数とその一般化

Abstract:  先ず、グラフの伊原ゼータ関数の定義と行列式表示について解説する。

次に、伊原ゼータ関数の一般化の一つであるweightedゼータ関数について、定義とそれらの行列式表示を与える。

その応用として、離散時間量子ウォークの一つであるGrover walkの時間発展行列(Grover行列)に関する今野-佐藤の定理を導き、今野-佐藤の定理の応用として、Grover/Zeta対応について述べる。

最後に、伊原ゼータ関数の別の一般化であるalternatingゼータ関数を定式化して、その行列式表示を用いて、Alternating Walk/Zeta対応について触れる。

2023年7月6日 16:30--18:00 立命館大学量子ウォークセミナー

講演者: 宮崎慈生(立命館大学)

講演タイトル: 量子測定のエンタングルメント

Abstract:  エンタングルメントは量子状態が持つ相関として古くから知られているが、量子状態以外の対象についても考えることができる。本講演では量子測定のエンタングルメントについて解説する。

量子測定は量子情報処理に使われる基本的な操作の一つであり、特に量子状態を推定する際には欠かせない。多体量子系においてエンタングルした測定を実装するには非局所的なリソースが必要になるが、状態の推定効率を上昇させることがある。

状態推定のための最適測定は、量子系の反ユニタリ対称性から決まることがある。多体量子系の最適測定がエンタングルしているか判定するため、反ユニタリ対称性を分類する。

2023年12月7日 立命館大学量子ウォークセミナー&ディスカッション

セミナー: 16:30--18:00, ディスカッション: 18:00--21:00

講演者: 井手勇介(日大文理)

講演タイトル: 固有解析から眺める連続時間量子ウォーク

Abstract:  連続時間量子ウォークは、グラフに付随するエルミート行列から

定まるユニタリ行列によって駆動される連続時間の量子系である。

連続時間量子ウォークの挙動を調べるためには、その時間発展を

定義するエルミート行列の固有値・固有ベクトルを調べることが

本質的であり、舞台となるグラフの性質が固有値・固有ベクトル

を通じて連続時間量子ウォークの挙動に反映される。本講演では、

連続時間量子ウォークの定義と良く知られた結果について述べた

のちに、隣接行列・グラフラプラシアンなどから定まる典型的な

連続時間量子ウォークの挙動について、固有値・固有ベクトルの

解析から見えてくる諸性質をご紹介したい。

2024年1月18日 立命館大学量子ウォークセミナー&ディスカッション

セミナー: 16:30--18:00, ディスカッション: 18:00--21:00

講演者: 成松明廣(福知山公立大)

講演タイトル: 量子ウォークの局所的挙動から考える固有値問題と局在化

Abstract:  量子ウォークは、ランダムウォークを量子化したモデルとして注目を集めており、特徴的な性質として線形的拡散と局在化が知られている。

このうち局在化現象について、その状態は、数式的には量子ウォークの時間発展作用素の特定(一つとは限らない)の固有関数で記述されるが、ウォーカーが出発点付近にとどまり続ける現象として説明されることも多い。

本講演では、空間的に一様な一般の次元の正方格子上の量子ウォークに対し、局在化の起こる状態の「とどまり続ける」と説明される特徴について、拡散する範囲が有限である固有関数が存在することとして解釈できることを示し、局所的な挙動に注目することでその必要条件を考察する。

2024年4月25日 立命館大学量子ウォークセミナー&ディスカッション

セミナー: 16:30--18:00, ディスカッション: 18:00--22:30 (参加者には軽食が提供されます)

講演者: 楯 辰哉 (東北大)

講演タイトル: 1 次元 2 状態量子ウォークの一般固有関数展開

Abstract:  一般固有関数展開定理とは,元々Sturm-Liouville型作用素に対する定理で,フーリエ変換やフーリエ級数展開の一般化に相当する。古典的には Weyl,Stone,Titchmarsh,小平らにより構築された理論であるが,CMV行列の文脈においては,2000年代に Gesztesy-Zinchenkoにより確立された。本セミナーでは,1次元2状態の量子ウォークに対して,CMV行列を経由しない形で講演者が独立に得た一般固有関数展開定理について紹介する。ここで取り扱う量子ウォークはCMV行列の特殊な場合であるため,

すでに得られていたものの量子ウォークに対する別証明に他ならないが,量子ウォークに対してはむしろ直接的にSturm-Liouville型作用素の場合の類似を考察することで,展開定理を得ることができる。

本セミナーでは量子ウォークに対する展開定理をはじめ,その導出において同時に得られたグリーン関数の具体的な公式や計算のための性質についても言及する。


2024年5月23日 立命館大学量子ウォークセミナー&ディスカッション

セミナー: 16:30--18:00, ディスカッション: 18:00--22:30 (参加者には軽食が提供されます)

講演者: 船川大樹(北海学園大)

講演タイトル: 量子ウォークにおけるスペクトル写像定理とこれを用いた展望

Abstract:  量子ウォークはデバイスにレーザーを透過・偏極させることで実装される数理モデルであり,量子探索アルゴリズムやトポロジカル絶縁体などへの応用が期待されている。量子ウォークの記述する時間発展作用素の性質を調べる際,そのスペクトルを計算し関数解析学の観点から研究することができる。さて,スペクトル写像定理は量子ウォークのスペクトルとランダムウォークとユニタリ同値なdiscriminant作用素のスペクトルとの対応を述べた定理であり,これを用いてSplit-Step量子ウォークなどのスペクトルも調べられている。このスペクトル写像定理は量子ウォークが閉鎖系でカイラル対称な場合,2019年に一般論として瀬川らによって証明されている。さらに2023年には,浅原らによって一部の開放系量子ウォークのための拡張が行われた。本講演ではこれらの定理や応用などを紹介しつつ,更なる拡張についてお話する。