セミナー: 16:30--18:30 (ダブルヘッダー), ディスカッション: 18:30--22:30 (参加者には軽食が提供されます)
講演者1: 町田拓也(日大生産工)
講演タイトル1: 量子ウォークの長時間極限分布からわかる量子ウォークの奇妙な性質
Abstract: ランダムウォークの量子類似物である量子ウォークには、離散時間モデルと連続時間モデルがある。物理学的には、離散時間モデルはディラック方程式の時空間離散版、連続時間モデルはシュレディンガー方程式の空間離散版である。量子ウォークは、それ自体を量子アルゴリズムとみなすことができ、量子コンピュータの基礎理論構築に応用されている。
数学における量子ウォークの研究目標の1つは、長時間極限定理の導出である。長時間時間発展後のウォーカーの空間分布を漸近的に記述する長時間極限分布は、量子ウォークの性質を明らかにするために必要とされている。本講演では、1次元量子ウォークの極限分布を通じて、量子ウォークの興味深い性質を紹介する。講演内容は、Machida and Konno [1]、Grunbaum and Machida [2]、Machida [3]に基づく。
[1] Takuya Machida, Norio Konno, "Limit theorem for a time-dependent coined
quantum walk on the line", F. Peper et al. (Eds.): IWNC 2009, Proceedings in
Information and Communications Technology, Vol.2, pp.226-235 (2010).
[2] F. Alberto Grunbaum, Takuya Machida, "A limit theorem for a 3-period
time-dependent quantum walk", Quantum Information and Computation, Vol.15
No.1&2, pp.50-60 (2015).
[3] Takuya Machida, "Limit distribution of a continuous-time quantum walk
with a spatially 2-periodic Hamiltonian", Quantum Information Processing,
Vol.22, 332 (2023).
講演者2: 鈴木章斗(公立小松大)
講演タイトル2: Title: Dynamics of Non-Unitary Quantum Walks
セミナー: 16:30--18:00, ディスカッション: 18:00--22:30 (参加者には軽食が提供されます)
セミナー: 16:30--18:00, ディスカッション: 18:00--22:30 (参加者には軽食が提供されます)
セミナー: 16:30--18:40 (ダブルヘッダー), ディスカッション: 18:50--22:30 (参加者には軽食が提供されます)
講演者1: 久保田匠(愛知教育大学 ) 16:30--17:30
講演タイトル1: Grover walk の周期性に関する最近の研究
講演要旨 1: 量子ウォークはランダムウォークの量子版として導入された数理モデルであり、確率論の枠を超えてグラフ理論、関数解析学、量子情報理論など幅広い分野と密接に関連して研究されている。周期性は量子状態がいくらかの時刻を経て初期状態に戻るという現象であり、特定のグラフにおいてのみ発生する珍しい現象である。本講演では、まず量子について物理的な背景を簡単に説明したうえで離散時間の1次元量子ウォークを導入する。次に、グラフ上の量子ウォークでは定番の Grover walk と、その周期性に関する基本的な結果を紹介する。最後に Grover walk の周期性に関する最近の研究成果や未解決問題を紹介する。
講演者 2: 渡邉 扇之介 (福知山公立大学) 17:40--18:40
講演タイトル2: 高階多値多近傍セルオートマトンとその応用
セミナー: 16:30--18:40, ディスカッション: 18:50--22:30 (参加者には『軽食』が提供されます)
講演者1: 高橋 佐良人 (テンソル・コンサルティング株式会社) 16:30-17:30
講演タイトル1: 量子ウォークとサポートの関係ーConnecting the Dotsー
講演要旨1: 量子ウォークは,ランダムウォークの量子版として紹介されることが多いが,その挙動はランダムウォークとは大きく異なる.ランダムウォークでは確認できない量子ウォークの主な特徴として,線形的拡散と局在化(十分な時間が経過しても出発点に留まる性質) がよく知られているが,量子ウォークでは,有限なサポートが存在することも,大きな違いの一つとして認識されている.本講演では,量子ウォークにおけるサポート,赤堀研と今野研の関係などを,「Connecting the Dots」というキーワードをもとに説明することを試みる.
講演者2: 松岡雷士 (広島工業大学) 17:40-18:40
講演タイトル2: 量子ウォーク迷路解法の理論と実装
講演要旨2: 吸収ノードのある量子ウォークを利用して、迷路状ネットワークの最短経路を導出する手法について紹介する。スタートとゴールのノードにセルフループを設置してグローバーウォークを時間発展させると、
迷路内のスタートとゴールをつなぐルート上のノードにのみ振幅が残留し、最短経路が浮かび上がる。
本講演では手法の詳細と瀬川・大野による数学的な記述について紹介しつつ、
本アルゴリズムを古典計算機上で高速実装するための経過について紹介する。
セミナー: 16:30--18:40, ディスカッション: 18:50--22:30 (参加者には『軽食』が提供されます)
講演者1: 鹿野豊 (筑波大学) 16:30-17:30
講演タイトル1: 量子計算機システム構築と数理モデルの意義
講演要旨1: 昨今、クラウド上の量子計算機を用いて、量子計算機を所有しなくても何かしらのものを計算できるようになってきた。ただ、量子計算機が世界中でありふれたように使われている時代でもなく、どのような計算機になりそうなのか?ということはあまり理解されていないことのように思う。そこで、量子計算機を計算機システムの一部として捉えるためにも、どのような立ち位置の計算機となりそうなのか?そして、どういうことが現状問題なのか?ということについて、講演者の知りうる範囲で解説を行う。その上で、数理モデル(特に量子ウォーク)がどのように量子計算機システムを構築する上で重要なのかということについて議論を行う。
講演者2: 西郷甲矢人(長浜バイオ大学) 17:40-18:40
講演タイトル2: 圏構造と非可換確率論:量子ウォークの一般理論に向けて
講演要旨2: 「〇〇とは何か?」という問いが常に実り豊かというわけではない。しかし、様々な面白い具体例や類に関する研究が一定の期間その名のもとに行われてきた分野においては、そうした問いにしばしば大きな意味が出てくる。そこで、「量子ウォークとは何か?」と問うことにしよう。おそらく誰もが認めるであろうことは、それが(離散もしくは連続な、一般化された意味での)「時空」の上での「量子的」な動力学であるということである。本講演では、「時空」とは「圏」であり、「量子的」とは「非可換確率的」であるという立場から、圏上のたたみ込み代数である「圏代数」とその上の線型汎関数としての「状態」の概念を導入し、その動力学としての量子ウォークの概念を、一般の「ダガー圏」上において定式化することを提案する。かくも多様に発展している量子ウォークについての一般論の枠組みを提案することで、量子ウォーク研究やその応用の展開に役立つ「意識の拡大」を試みたい。
セミナー: 16:30--18:40, ディスカッション: 18:50--22:30 (参加者には『軽食』が提供されます)
講演者1: 富田昌(明治安田生命) 16:30-17:30
講演タイトル1: 破産理論におけるCramér-Lundberg modelの一般化とその数学的性質
講演要旨1: 破産理論は損害保険数理の一分野で、保険会社の純資産(サープラス)の変動を確率過程としてモデル化し、そのリスクを分析する。本講演では発生頻度の不確実性と保険料の改定に着目して、古典的なCramér-Lundbergモデルの一般化を提案し、その数学的性質について述べる。提案するモデルは、クレーム発生は混合ポアソン過程に従い、保険料率はベイズ推定により設定され、被保険者は複数である。このモデルにおいて、破産確率がクレーム強度の分布や被保険者数に依存しないことを示し、またクレーム強度で条件づけた場合の破産確率の単調性について述べる。本講演の内容は高岡浩一郎氏(中央大)、石坂元一氏(中央大)との共同研究に基づく。
講演者2: 小澤知己(東北大学) 17:40-18:40
講演タイトル2: トポロジカル量子ウォーク:平均カイラル変位を例として
講演要旨2: 物性物理学でトポロジカル絶縁体という物質が発見された。これは、電子状態が適切な意味でトポロジカルに非自明になっているような物質であり、物質の表面・端において観測可能な現象につながることが知られている。物質の電子状態はハミルトニアンと呼ばれる自己共役演算子の固有ベクトルの性質と密接に関係する。つまり、適切な意味でハミルトニアンのトポロジーが非自明であるような物質がトポロジカル絶縁体である。電子状態の時間発展はハミルトニアンを含む微分方程式であるシュレディンガー方程式で記述されるが、電子状態の時間発展を量子ウォークととらえるとき、トポロジカルに非自明なハミルトニアンに従う時間発展に対応する量子ウォークがトポロジカル量子ウォークである。本講演ではトポロジカル絶縁体の説明から始めてトポロジカル量子ウォークの基礎的な部分を紹介し、トポロジカル量子ウォーク由来の非自明な現象の例として平均カイラル変位(mean chiral displacement)を解説することを目標とする。講演者は物理学者であり、トポロジカル絶縁体の専門家ではあるが量子ウォークの、特に数学的な側面は専門としていない。講演を通じて異なる分野の科学者による有意義な交流ができることを期待している。
セミナー: 16:30--18:40, ディスカッション: 18:50--22:30 (参加者には『軽食』が提供されます)
講演者1: 長谷川武博 (滋賀大学) 16:30-17:30
講演タイトル1: Transcendence of special values of log-type hypergeometric functions attached to Carlitz modules
講演要旨1: 講演者は 2022 年に Carlitz 加群に付随する対数型超幾何関数を定義し,2024 年にその関数について代数点での特 殊値の代数性・超越性を調べた.関数を motivic 化することで,2024 年の結果が進展したので,本講演ではそのことをご紹介します.
講演者2: 篠原雅史 (滋賀大学)17:40-18:40
講演タイトル2: Erdős distinct distances problem に関係する固有値問題と格子予想
講演要旨2: 平面上の n 点集合に現れる距離の個数の最小値に関する Erdős(1946) の予想がある.
本講演ではこの予想に関係する格子予想を紹介し,小さいところでの考察を行う.
また,この予想に関する幾つかのアプローチについて提案する.
セミナー: 18:00--19:30, ディスカッション: 19:40--22:30 (参加者には『軽食』が提供されます)
講演者: 横山啓一(日本原子力研究開発機構) 18:00--19:30
講演タイトル: 量子ウォークを利用した同位体分離法の研究ーー社会実装へ向けた技術上の問題点と現状についてーー
講演要旨: 放射性廃棄物の処理処分に同位体分離を組み込むことができれば、長寿命放射性核種の短寿命化や地層処分の大幅な負担軽減につながることがわかっている。しかし、現状よりもはるかに効率の良い同位体分離原理が必要であり、解決の目処はまったく立っていない。その中で、量子ウォークを用いることでこの問題を克服できる可能性が出てきた。理論上は、現状よりも数桁高い分離係数も可能であることが示された。これを受けて、社会実装のためにどのような技術的課題があるのか、検討が続いている。本セミナーにおいて、どのような課題があり、現在どのような状態にあるのか紹介する。