数学ソフトウェアとして有名なMathematicaやMapleなどの内部に用いられている理論は,Computer Algebra (計算機代数)である.抽象的な理論展開をする現代数学に対し,Computer Algebraは20世紀初頭まで続いていた``構成的な数学''に『計算機のパワー』と『抽象数学の理論』が付加された現代版の構成的数学である.Computer Algebraの強みは``計算できること''であり,だからこそ具体的な問題を取り扱うことができると共に,多くの純粋数学の解析的な性質も求めることができる.そのため,Computer Algebra は理論研究のみならず,実践・応用研究も重要であり,他分野の研究者と情報交換・共有を行うことの意義は大きい.また,具体的な問題の解決のみならず,近年新たな分野として注目されている代数統計のような『新たな分野の創造』も他分野との交流で期待できる.本研究集会の1つの目的は,応用を考慮した他分野との交流の場の提供である.もう1つの目的は,Computer Algebraの強力なツールとして有名なグレブナー基底理論と限量子消去の発展に貢献することである.今まで,可換・非可換を含め,多くの環上で様々なグレブナー基底が定義されると共に,多くの計算アルゴリズムと応用が議論されており,今なお,理論・計算の両面で多くの研究結果が報告されている.同様に,グレブナー基底に並ぶ強力なツールである限量子消去も,理論・計算の両面で多くの研究結果が日本発で報告されている.グレブナー基底と限量子消去に関する新しい結果の研究発表の場とすると共に議論を交わす.