3月25日(火)
14:00-15:00 齋藤隆大
モノドロミックな混合ホッジ加群とplumbing上のホッジ超局所層
15:30-16:30 中屋敷厚
KP階層の加法定理とその応用
3月26日(水)
10:00-11:00 糟谷久矢
佐々木多様体上の非可換Hodge対応とModuli空間
11:30-12:30 名古屋創
On bilinear equations for irregular conformal blocks and quantum Painleve tau functions
14:00-15:00 社本陽太
差分加群に対するStokes構造について
15:30-16:30 望月拓郎
フーリエ変換とストークス構造
3月27日(木)
10:00-11:00 信川喬彦
q超幾何方程式の変異版とその多変数拡張 -点平等なq差分方程式-
11:30-12:30 柳田伸太郎
超対称Virasoro代数の共形ブロック
14:00-15:00 安達駿弥
不確定特異性を持つ線形Pfaff系に対するmiddle Laplace transformとmiddle convolution
15:30-16:30 桑垣樹
Betti models in difference Riemann—Hilbert correspondences
齋藤隆大
Title: モノドロミックな混合ホッジ加群とplumbing上のホッジ超局所層
混合ホッジ加群とは、構成可能層上のホッジ理論を展開するために、複素多様体上のD-加群、偏屈層、ホッジ・ウェイトフィルトレーションの組として定義される対象である。一般には与えられたホッジ加群が``どのようなものであるか?"を捉える事は難しいが、本講演ではまず、モノドロミックと呼ばれる仮定を満たす場合にはそれが線形代数的なデータで記述できる事を説明する。また、その応用として「モノドロミックな混合ホッジ加群のフーリエ変換」を自然に定義する事ができるという事実を紹介する。
他方、$A_n$-plumbing上の超局所層とは、射影空間上の構成可能層のフーリエ変換を用いて表示される対象であり、ミラー対称性の研究においてある種の深谷圏を記述する際に利用される。まず、上述の結果を用いる事で、``超局所層の混合ホッジ構造"を自然に導入できる事を説明する。そして、それによって自然に定義される「超局所摩天楼層のホッジ構造」のウェイトが、``超局所層の圏(または深谷圏)のKoszul双対性"を論じる際に登場する、ある代数のKoszul次数と呼ばれる次数を誘導するという観察を紹介する。
本研究は桑垣樹氏(京都大学)との共同研究である。
中屋敷厚
Title: KP階層の加法定理とその応用
KP階層のタウ関数が加法定理を満たすことはよく知られている。この講演では、加法定理の極限について考える。応用として、頂点作用素とダルブー変換という2つのKP階層の解の変換の間の関係を明らかにする。
糟谷久矢
Title: 佐々木多様体上の非可換Hodge対応とModuli空間
Hitchin, Corlette, Simpsonによって、コンパクトケーラー多様体上では単純平坦ベクトル束(位相的対象)とチャーン類が自明な安定Higgs束(複素幾何的対象)が調和計量(リーマン幾何的対象)を介して対応することが示された。この対応はコンパクトケーラー多様体のコホモロジーのHodge構造の非可換版と考えることができ、非可換Hodge対応と呼ばれる。佐々木多様体はケーラー多様体の奇数次元類似である。講演者とBiswas氏との共同研究によってコンパクト佐々木多様体上で非可換Hodge対応が成立することが示された(2021 Comm Math Phys)。 今回の講演ではこの対応をModuli空間のレベルで考察する。より具体的には, 単純平坦ベクトル束のModuli空間には有限なStratificationがあり, 各Strataが安定Higgs束のModuli空間と同相となることを見る. さらに,平坦ベクトル束のModuli空間における非可換Hodge対応から得られるコンパクト性(Htichinの固有性)について考察をする。
名古屋創
Title: On bilinear equations for irregular conformal blocks and quantum Painleve tau functions
Neveu-Schwartz代数を用いて得られる不確定共形ブロックに対する双線型方程式と量子パンルヴェタウ関数に対する双線型方程式との関係について説明する。
社本陽太
Titile: 差分加群に対するStokes構造について
一変数の有理型接続の茎に対するDeligne-MalgrangeによるRiemann-Hilbert対応を模範として,加法的差分加群に対して, 対応する解の「Stokes構造」を導入し, Riemann-Hilbert対応を与える試みについて説明します.
望月拓郎
Titile: フーリエ変換とストークス構造
複素直線上のホロノミックD加群Mにフーリエ変換を適用すると, 新たにホロノミックD加群F(M)が得られます. この講演では, F(M)の無限遠におけるストークス構造が, Mに付随する局所系やストークス構造によってどのように記述されるか, という問題について議論します. そのために, ストークス構造の``拡大''と``局所フーリエ変換''について説明します.
信川喬彦
Title: q超幾何方程式の変異版とその多変数拡張 -点平等なq差分方程式-
q超幾何方程式の変異版は量子可積分系を背景にもつ2階線形q差分方程式であり, Hatano-Matsunawa-Sato-Takemura (Funkcial. Ekvac., 2022) により導入された. 本講演の前半では, この方程式のEuler型積分解とvery-well-poised q超幾何級数${}_8W_7$を用いた超幾何型級数解を構成する. 後半では, q超幾何方程式の変異版のある多変数拡張を積分解の観点から与え, さらにその級数解を構成する. これらの結果は点平等な視点により得られたものである. 時間が許せばそのほかの$q$差分方程式の点平等な拡張についても議論したい.
本講演の内容は神戸大学の藤井大計氏との共同研究に基づく.
柳田伸太郎
Title: 超対称Virasoro代数の共形ブロック
場の量子論における4次元2次元対応 (AGT対応) には様々な変種があります。
この講演では2次元共形場理論が超対称性を持つ場合の4次元2次元対応についてお話しします。
安達駿弥
Title: 不確定特異性を持つ線形Pfaff系に対するmiddle Laplace transformとmiddle convolution
N. M. Katzによるmiddle convolutionの理論はFuchs型(確定特異点型)線形常微分方程式の研究に大きなインパクトをもたらした。middle convolutionとはFuchs型方程式の解に対するRiemann-Liouville変換(非整数階微分)が引き起こす方程式の変化を精密に定式化したもので,Fuchs型方程式を一般に階数の異なるFuchs型方程式に移す。このmiddle convolutionを用いたFuchs型方程式の研究(例えば解の大域解析やモノドロミー保存変形,Deligne-Simpson問題など)が大きな成功を収めるのと同時に,middle convolution自体をFuchs型方程式とは限らない方程式へ拡張・応用しようとする試みも様々行われてきた。例えば山川はLaplace変換(Harnad duality)をKatz理論の視点で捉え直すことで不確定特異点を持つ線形常微分方程式に対するmiddle convolutionを定式化し,原岡はmiddle convolutionの解析的表現(Riemann-Liouville変換)を手掛かりにして確定特異点型多変数線形Pfaff系に対するmiddle convolutionを定義した。彼らの結果はいずれも多くの興味深い研究の嚆矢となっている。このような背景を踏まえて,本講演では線形Pfaff系に対するLaplace変換をKatz理論の視点から定式化した変換としてmiddle Laplace transformを導入し,その基本的性質を紹介する。続いて,このmiddle Laplace transformを用いて,不確定特異性を持つ線形Pfaff系に対するmiddle convolutionの定義を与える。この定義の仕方は上述の山川のアイデアを多変数の場合に実現したもので,また原岡が確定特異点型の場合に定義したmiddle convolutionを不確定特異性を許した方程式に拡張するものにもなっている。もし時間が許せばmiddle Laplace transformやmiddle convolutionの具体例,また講演者が最近取り組んでいる大域解析への応用についても述べたい。
桑垣樹
Title: Betti models in difference Riemann—Hilbert correspondences
微分方程式のRiemann—Hilbert対応では、構成可能層を使った定式化が知られています。この講演では、Ramis—Sauloy—Zhang—Kontsevich—Soibelmanの乗法的差分Riemann—Hilbertや、社本の加法的Riemann—Hilbertが、構成可能層の一般化(強化版)である層量子化を用いてどう定式化されうるかを議論します。この講演は、社本陽太氏との共同研究に基づきます。
この研究集会は以下の援助を受けています
科学研究費補助金 若手研究 22K13902 (研究代表者:伊藤要平)
科学研究費補助金 基盤研究(C)19K03422 (研究代表者:稲場道明)
科学研究費補助金 基盤研究(C)20K03648 (研究代表者:廣惠一希)
科学研究費補助金 基盤研究(C)24K06695 (研究代表者:山川大亮)