講演要旨
みなさんこんにちは。私の専門は生物物理学です。
私の研究者としての活動は、モジュール置換ヘム蛋白質の設計に始まり、その後、タンパク質のサブミリ秒フォールディングに関する実験研究と装置開発、放射光X線をもちいた散乱研究などを経て、今は主にシアノバクテリアの概日時計を研究しています。
私の研究者としてのこれまでとこれから、そしてシアノバクテリアの概日時計研究のこれまでとこれからについてお話したいと思います。
講演要旨
自分が大学院生であった頃、日々の研究生活における小さな発見を楽しみながらも、大学院を卒業して5年、10年後、自分がどこでどういった仕事をしながら、どんな家庭を築き、生活をしているのだろうかと、漠然と悩んでいたのを思い出します。
『生物が好き』という情熱のままに専門性を磨いたけれども、現実的な課題『職業に何を求めるか』に直面した時期でした。当時の僕は、卒業した社会人の先輩方は、人生の投資対象を決めて、こんな迷いも無くていいな、と羨ましく思っていました。
その後、社会に出て分かったことは、現実はそんなに格好の良いものではなく、みな、その場で、その都度、悩み続けている。そして、時間の経過は、自分の専門性の向上とひきかえに、選択できる職業を制限することが分かってきました。
自分が取り得る職業の選択肢には、時間生物学があったのです。
今回の講演では、博士取得後、製薬企業の研究所で創薬を行ない、本社でビジネス戦略企画を担当した後、一念発起して体内時計の基礎研究に戻ってきた博士の一例をご紹介します。
講演要旨
私は非線形動力学を専門に、「概日リズム」、「脳神経系の発火活動」、「音声生成における声帯振動」、「歩行のリズム」など、生体における多様なリズム現象について研究してきました。
これらはそれぞれがかなり異なった話題に見えますが、非線形振動という観点からは、振動が重要な枠割を果たすという点で、共通しています。
この講演では、私の最近の話題として、「声帯膜の存在とそれがヒト言語の進化にもたらす意味」と「植物概日リズムの時空間数理モデルの構築」についてお話しします。
生物の問題に関して理論研究を行うには、実験研究者との共同研究が必要不可欠です。
そのような共同研究のエッセンスを紹介し、数理モデルがどのように構成され、実験研究と融合していくのかについてお話しします。また、海外との共同研究を継続的に行うことで、先端技法をキャッチアップし、新しいことに挑戦し続けることについても触れたいと思います。
講演要旨
学振と言えば研究者にとってほぼ初めて書く申請書です。申請書を書くというプロセスには、文章の書き方と研究計画の立て方を学ぶ、自分の研究の重要性を再認識する(逆もしかり)などたくさんのことが含まれます。私自身、学振を書いて学んだことは3年間の生活費と奨励金以上の価値があり、のちに大きな糧になったと思っています。私の体験、考えていることが若い皆さんの今後に少しでも活きると良いです。