[台本]「Empingao(エンピンガーオ)!」
登場人物
〇フエゴ・ラドロン
年齢不詳、男性
《HEXE》たちに力添えをしている悪漢。
飄々としていて間延びをする喋り方をしており、相手の事を値踏みする様に視線を送る。
基本的にはニヒルに穏便な対応をするが、根が悪党であり残忍で残酷。
気まぐれに朝谷家 実生ことレッドミットと手を組み、離反する。
〇レッドミット/朝谷家 実生(あさやけ みお)
23歳、男性
林檎農家の家で生まれた大学4年生の熱血漢。
正義感を見初められ、『童救戦隊ミットシューラー』のレッドの称号を背負う。
奇跡を信じ、欲に忠実な努力家。
セシリアこと《HEXE》の事が好き。
〇《HEXE》(ヘクセ)
22歳、女性
人間に絶望し、世界を憎む自身を魔女、《HEXE》と名乗る女性。
持ち前のカリスマ性を以て組織を完全に御し、人類滅亡計画《POLARLICHT APFEL》を目論む。
実生とは高校時代から、そして大学の先輩後輩の仲だった。
本名は”セシリア・優白(ましろ)・ドルンローシェン”
〇グリーンミット/理開橋 栗花落(りかいばし つゆり)
23歳、女性
普段はカフェで働いている普通の女性。
工学系統の非常に優れた知識を買われてしまい、『童救戦隊ミットシューラー』に巻き込まれてしまった。
マイペースで「~っス」という口調が特徴的。
実生とは高校時代に同級生だった。
〇リア
年齢不詳、性別不詳
《HEXE》に付き従う側近の様な存在。
セシリアの憎悪に呼応し、彼女の一助となっている。
ごりごりの武闘派だが人類滅亡計画《POLARLICHT APFEL》の要である”埒外異端技術”を扱う事が出来る。
真面目で口調も丁寧だが、いや故に、軽薄なフエゴの事がかなり嫌い。
用語解説
●『童救戦隊(どうきゅうせんたい)ミットシューラー』
朝谷家 実生や理開橋 栗花落らが所属する、五人組の戦隊。
とある天才が生み出した“埒外異端技術”の暴走によって、世界各地で発生するようになった「童話に由来する異常事件」、及び現実世界へ干渉するようになった“童話の住人”たちに関わる事件を解決するために組織された。
司令塔は、件の埒外異端技術を発明した張本人である天才、自称Dr.ラプラス。
戦隊の担い手はDr.ラプラスによって選ばれるのではなく、意思を獲得した“童話”自身から力を託された者たちの中から選出される。
フエゴ・ラドロン ♂:
レッドミット ♂:
《HEXE》 ♀:
グリーンミット ♀:
リア 不問:
───────────────────────────────────────
(真っ暗な空間に突如スポットライトが灯り、そこにフエゴが帽子を持って立っている。)
フエゴ:ご機嫌よゥ、諸君。
ワタシはフエゴ・ラドロン。
なァ~~~に、別段特に何かあるわけでもないおじさんさァ。
ま、何もない、は嘘かなァ。
実は、ワタシはキミたちの時代よりうゥ~んと先の時代の人間なんだァ。
フエゴ:「まァ、そんな事、今は良いイ。」
フエゴ:今回キミたちに拝見拝聴して頂くのは、”悪と正義”のハナシィ。
えェ?”正義と悪”、じゃアないのかッてェ?
ハハハァ~ワタシは、悪党だからねィ。
(フエゴ、銃を取り出して何も無いところに照準を合わせる。)
フエゴ:さ……ッテ……本当は諸君らとのタノシイタノシイお喋りを続けたい所だガ……
そろそろ……
(景色が突然変わり、崩壊した建物の中になる。)
(フエゴ、銃を構えている。レッドミット、ボロボロの状態で動けずにいる。)
フエゴ:「…………。」
レッド:「……くっ!!」
(《HEXE》とリア、高いところからフエゴたちを見下ろしている。)
《HEXE》:「……。」
リア:「さっさとトドメを刺してくださいフエゴ・ラドロン。」
フエゴ:「はいはィ分かってますよォ。
……たくゥ……悪党の癖にせっかちな奴だァ。」
(フエゴ、改めてレッドミットの方を見る。)
フエゴ:「さてィ……終わりだよォ『”童救戦隊(どうきゅうせんたい)”ミットシューラー』のリーダー、レッドミットォ。」
レッド:「ちくしょう……!!」
フエゴ:「ワタシは昔ながらのカタキヤク、悪党だからねェ。
引導を渡す前に今際の言葉ってヤツを聞いてやル。」
レッド:「…………ッ」
フエゴ:「……。」
レッド:「…………俺は……ッ」
リア:「……。」
レッド:「俺は……まだ……ッ!」
《HEXE》:「……。」
レッド:「俺はまだッ!セシリアとデート出来てないッ!!!!」
間。
リア:「……は?」
フエゴ:「…………セシリアってェ言うとォ、ワタシたちの頭目である”《HEXE》(ヘクセ)”サマの事かァ?」
レッド:「そうだッ!!」
(レッド、《HEXE》に向かって叫ぶ。)
レッド:「セシリア!どうしてだ!どうして人類滅亡なんて考えるッ!!
元の……いつもの優しいセシリアに戻ってくれよッ!!!そして俺とデートしてくれよ!!!」
フエゴ:「なんだァ~レッドミットと《HEXE》(ヘクセ)サマは恋仲なのかァ?」
《HEXE》:「違う。」
一拍。
《HEXE》:「私はもう、セシリアなどでは無い。
人類に絶望し、世界を憎悪する魔女、《HEXE》(ヘクセ)。
”軽々(けいけい)”に私を見上げるな、レッドミット。」
レッド:「ッ……セシ……リア……ッ」
リア:「フエゴ・ラドロン。さっさとレッドミットを葬るのです。」
間。
リア:「フエゴ・ラドロン!何をぼーっとしている!!」
フエゴ:「ククク……」
間。
フエゴ:「クハハハハハハハ!!!!」
リア:「……フエゴ・ラドロン……?」
フエゴ:「レッドミットォ!君中々に面白いじゃアないかァ!!」
レッド:「……へ?」
《HEXE》:「……ッ」
フエゴ:「良い……善い……!イイ!!
いやはやァ、青年というのはソウでなくてハなァ!!」
(フエゴ、バッと後ろを振り向く。)
フエゴ:「バァーストォ!!」
(フエゴ、《HEXE》たちに向かって何発か発砲する。)
リア:「フエゴ・ラドロン!?何をしている!!」
《HEXE》:「ッ!」
リア:「『”錬成三重障壁(ヘルメス・トリス・メギストス)”』ッ!!」
フエゴ:「レッドミットォ!後ろへ飛べェ!!」
レッド:「なっ!?もうそんな力無ェよ!!」
フエゴ:「チィ!男を担ぐ趣味は無いんだがなァ!!ィよっと!」
(フエゴ、レッドミットを担ぎ上げる。)
レッド:「どわっ」
フエゴ:「舌ァ噛むなヨォ?
──はっ!!」
(フエゴ、レッドを抱えて飛び降りる。)
レッド:「どわああああああああああああああああああああああああああッ!!!」
リア:「なっ!飛び降りただと!!?」
《HEXE》:「…………グリーンか。」
リア:「……ッ」
(視点切替)
(グリーンジェットのコックピット内)
グリーン:「ふぅー!なんとかキャッチできたっス!レッドさん!無事っスか!!」
レッド:「ぐ、グリーン!生きてたのか!!」
グリーン:「はいっス!
……でも、私を逃がすために、ブルーさんやイエローさんやピンクが……」
レッド:「そうか……」
グリーン:「……。」
フエゴ:「ン~ン。中々にイイジェット機じゃアないカ。
揺れも少なク、静音。快適快適~。」
グリーン:「……。」
レッド:「……。」
グリーン:「……れ、レッドさん……この人って私たちを分断させた張本人の敵さんっスよね……?
なんでこの人が……?」(小声)
レッド:「分からない……けど……コイツが俺の事を逃がしてくれたんだ……」(小声)
フエゴ:「なんだァ?こそこそハナシならワタシも混ぜてくれよォ『童救戦隊(どうきゅうせんたい)ミットシューラー』ァ。」
レッド:「……。」
グリーン:「……。」
(レッドとグリーン、顔を見合わせる。)
レッド:「ま、まずは、助けてくれてありがとう……。
…………その、なんで、俺を助けてくれたんだ……?」
グリーン:「そ、そうっス。貴方、私たちの敵……悪党っスよね?」
フエゴ:「確かにワタシは悪党だシ、先程までは君たちの敵だったサ。
……けどネ……レッドミットの最期の言葉が面白くてねェ。
ついつい助けちまったんダ。」
レッド:「俺の……さいごの言葉……?」
フエゴ:「ソウ。
”まだデートしていない”……クックック……イイじゃアないかァ!
ワタシは悪党だが、それ以前にスパニッシュ伊達男だからねェ。
そんなワタシがあんな言葉を聞いてしまったラ、協力してあげたくなるじゃアないかァ!!」
レッド:「……。」
グリーン:「……レッドさん……コイツ、面白さで人を裏切るタイプっス……信用ならないっス……」
フエゴ:「ウンウンその気持ちも分かる。
スパニッシュ伊達男だが悪党である事に代わりは無いモンなァ。」
間。
フエゴ:「だかラ……ワタシの”悪党側”の理由を、提示しよゥ……」
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《HEXE》:「…………。」
リア:「追いますか。」
《HEXE》:「いや、良い。
『童救戦隊(どうきゅうせんたい)ミットシューラー』の大半は眠りにつき、
彼らの司令塔”Dr.ラプラス”や”童話”たちも機能停止。
もはや残党程度では何も出来ない。」
リア:「……しかし、あちらにはフエゴ・ラドロンがつきました。」
《HEXE》:「……。」
リア:「奴は、私の”埒外異端技術”とも違う。謎の道具を使います。
そして何より、フエゴ・ラドロンは”悪党”です。
何をしでかすか分かりません。」
《HEXE》:「……。
《POLARLICHT APFEL》(ポーラリヒト・アプフェル)計画が邪魔されないように細心の注意をしろ。」
リア:「御意に。」
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~グリーンジェット内~
フエゴ:「────とまア、ワタシとしてはそんな世界じゃア”悪行(しょうばい)”が出来ない。それはまずいってェワケダ。
……っとォ、こんなモンだろゥ。
どうだァ青年。」
レッド:「……おお……身体が完全に回復した……!」
グリーン:「……凄い。折れていた足も完全治癒してるっス……。
これも、”埒外異端技術”ってやつっスか?」
フエゴ:「ンン?ちがウちがウ。こりゃア、ただの最先端の医療技術なだけだァ。
まア、ワタシはただこの注射をちくっしたダケだけドネ。」
グリーン:「《HEXE》(ヘクセ)側の技術力……恐ろしいっス……。」
レッド:「うおおおおおおおおおおお!!身体が治ったら猛烈に元気が沸いてきた!!」
フエゴ:「……っつあァ……うるっさいなァ……
元気なのは良いがァ、急に大きな声を出すなよォ青年。」
レッド:「よし!もう一度、セシリアたちの所へ行くぞ!そして皆を救う!!」
グリーン:「元気になったのは良いっスけど、現実問題として、今の私たちでどうにかなりますかね?」
レッド:「なんとかなる!なんとかならなくとも奇跡を手繰り寄せてなんとかする!」
グリーン:「こんな状況なのに、高校時代から変わんないっスねぇー……」
フエゴ:「グリーン女史の言う通りだァ。
今の君たちは、『童救戦隊(どうきゅうせんたい)』としての力、つまり”童話”たちの力を借り受ける事が出来ない。
タダの一般人でしかなイ。
そんな状態で何が出来ルってんダ?」
レッド:「…………フエゴは、何か勝算があるから、こっちについたんだろ。
正義に目覚めたわけでもない悪党が、本当に酔狂だけで不利な方についたとは思わない。」
フエゴ:「クックック……直情的なおバカさんなのかと思ったラ、結構ちゃんと頭回るじゃアないカ。
まあ、酔狂だけで不利になっちまう悪党なんざいくらでも居るが、青年の言う通り、ワタシは違ウ。」
(フエゴ、グリーンの方を見る。)
フエゴ:「鍵は、グリーン女史サ。」
グリーン:「へ!?私っスか!?
私もレッドさんと同じく”グリーンミット”としての力は使えないっスよ!!?」
フエゴ:「まァまァ、とりあえず《HEXE》(ヘクセ)サマの根城に向かうのが先さァ。」
レッド:「セシリアたちの根城って……一体どこにあるんだ?
以前、俺たちも探したけれど、見つからなかったぞ?」
フエゴ:「なァに。探し物は、案外近くにあるってェ寸法ヨ。」
(フエゴ、手を上げ、上を指す。)
グリーン:「……上……?空とか、オゾン層より上ももう調べたっスよ?」
フエゴ:「ちがウちがウ……ぽちっとナ。」
レッド:「何押したんだ?」
フエゴ:「外を見てご覧ヨ。」
レッド:「外?
……は?」
グリーン:「空にヒビ?空が、割れる……?」
レッド:「な、なんだありゃあ!!割れた空からでっかい城が出てきたぞ!?」
フエゴ:「そウ。悪の根城、空中要塞は”次元の異層”に隠れていたのさァ。」
グリーン:「これも”埒外異端技術”……!もう!なんでもアリが過ぎるっスよぉ!!」
フエゴ:「今なら空中要塞の防御機構は働いちゃアいなイ。
攻めるなら今しかないゼェ?」
レッド:「よし!行くぞ!グリーン!」
グリーン:「ああーん!あの時、お仕事サボった事を本気で後悔してるっス~~~~~!!!」
(グリーンジェット、発進する。)
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リア:「次元迷彩が……消えている……!?
……それだけでは無い……何故セキュリティが全てダウンしている!?」
《HEXE》:「……フエゴ……既に毒を仕込んでいた、ということか。」
リア:「…………チイッ!」
《HEXE》:「リア。
《POLARLICHT APFEL》(ポーラリヒト・アプフェル)の準備は。」
リア:「はい。エネルギー充填量は70%程。まだ暫く掛かるものと思われます。」
《HEXE》:「…………本当に、私は世界に嫌われているわね。」
リア:「…………。」
《HEXE》:「……良いわ。リア、迎撃の準備を。
『童救戦隊(どうきゅうせんたい)ミットシューラー』は必ずここに来るわ。
”奇跡”とやらに縋ってね。」
一拍。
《HEXE》:「”奇跡”など殺す……!」
リア:「…………御意に。」
(遠くからフエゴの笑い声が響く。)
フエゴ:『はっはっはっはァーーーーーーーーーーーーー!!!』
《HEXE》:「ッ!」
リア:「ッ!!」
フエゴ:『このままこのジェット機ごと突っ込むぜェ!!!』
グリーン:『操縦桿渡したらすーぐこれなんっスから!!ホント!!悪党って嫌いっス!!!!!!!!!!
あーーーーーーーーーーーーーーーーんお母様ーーーーーーーー!!!家出してごめんなさいっスーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!』
リア:「チィッ!!『”錬成三重障壁(ヘルメス・トリス・メギストス)”』最大展開ッ!!!!」
(リアの障壁とジェット機が衝突し、爆風が吹き荒れる。)
リア:「ハァ……ハァ……悪党が……!ふざけた真似を……!しかしこれで……!」
フエゴ:「ふざけた真似はまだ終わっちゃアいないぜェ?」
《HEXE》:「ッ!!!!」
リア:「なッ!!!フエゴ・ラドロン!!!!いつの間に私の後ろにッ!!!!!
貴様はあの戦闘機と一緒に!!!」
フエゴ:「あア、あれから聞こえていた声ェ?」
グリーン:『あーーーーーーーーーーーーーーーーんお母様ーーーーーーーー!!!家出してごめんなさいっスーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!』
フエゴ:「タダの録音だよォ。」
(フエゴ、スマートフォンをひらひらと見せる。)
リア:「小癪な事ばかりィ!!」
フエゴ:「小癪ついでだァ、《HEXE》(ヘクセ)サマァ。
ちょいとリアを借りるぜェ。」
(フエゴとリアの周りに小さい爆発が連続する。)
リア:「っ!!なんだ……!床が爆発して……ッ!何を考えている……!」
フエゴ:「あア?下に参りまァす。」
(フエゴとリア、爆発によって床が抜けて落下してく。)
リア:「うおああああああああああああああ!!」
フエゴ:「後はワカイモノ同士、ヨロシクやっておくれよォ~。」
《HEXE》:「…………。」
間。(《HEXE》、正面を見やる。)
《HEXE》:「……。」
(レッドミット、扉をバンと開く。)
レッド:「セシリア!!!」
《HEXE》:「…………実生(みお)……。」
(《HEXE》、レッドミットを睨む。)
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(グリーン、要塞内を走っている。)
グリーン:「ハァ……ハァ……ハァ……
爆発音……レッドさんとフエゴさんの方は上手くやってるっスかね……。」
一拍。
グリーン:「ハァ……ハァ……ハァ……!”童話”パワー抜きで走るの……!久しぶり過ぎて……!
私って、こんな運動苦手だったっけ……!
というか、こっちであってんのかなぁ……!」
フエゴ:『ダイジョーブ、ソノママ進んでイイよォ!』
グリーン:「うわぁ!!急にフエゴさん声?!」
フエゴ:『ご機嫌よゥ、グリーン女史。
ワタシはフエゴ・ラドロン、を模したAIだァ。』
グリーン:「フエゴさんを模したAI???」
フエゴ:『”フエゴGPT”。略して”フェッピー”って呼んでくれてイイよォ。』
グリーン:「言いづらいんでフエゴさんって呼びます。」
フエゴ:『アソウ……。とにかク、そのまま進んでくれェ。
そうすりゃア。人類全てを恒久的昏睡させるわっる~い機械。
《POLARLICHT APFEL》(ポーラリヒト・アプフェル)があるからさァ。』
グリーン:「……っ!!
それを停止させれば、ピンクやブルーさん、街の皆を元に戻せるんスね!?」
フエゴ:『そのトォリ。』
グリーン:「……頑張るっス!!」
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《HEXE》:「……今のお前に何ができる。」
レッド:「ッ」
(レッド、竹刀を構える。)
《HEXE》:「…………お前の武器”アップルソード”ですら無い、ただの竹刀で。」
レッド:「俺は、ただ俺が出来る事を出来るだけやるだけだ!
だって俺は……レッドミット!
俺たちは『童救戦隊(どうきゅうせんたい)ミットシューラー』だっ!!」
《HEXE》:「そして”奇跡”を起こす、か。」
レッド:「ああ!
そしてお前も連れ戻すッ!!はぁああああああああああっ!!」
(レッドミット、《HEXE》に向かって駆け出す。)
《HEXE》:「……忌々しい……ッ!
何するものぞ!レッドミット!!
”奇跡”は殺すッ!!”射殺せ!我が荊棘(いばら)”ッ!!」
レッド:「っとう!!」(攻撃を避ける。)
《HEXE》:「なにっ!”童話”の力が無い只人だというのに!!」
レッド:「力が無くなったって”使っていたのはこの身体”だ!!
多少は動けるさ!!
チェストォオオオオオオオオオオッ!!」
《HEXE》:「くっ!」
(視点切替)
リア:「『”錬成三重障壁(ヘルメス・トリス・メギストス)”』ッ!!」
(リア、フエゴの攻撃を全て防ぐ。)
フエゴ:「ヒュ~~~~~便利だねィ。リアサマの”童話”の力。
『童話複合”偽空想錬金術(ルンペルシュティルツヒェン)”』トカ言ったかァ?
ズルが過ぎるンじゃアねェのォ?」
リア:「お互い悪党なのだから卑怯も何も無いでしょうフエゴ・ラドロン。」
フエゴ:「そりゃソウだ。」
リア:「フエゴ・ラドロン……何故《HEXE》(ヘクセ)様を裏切った!
貴様は彼女の提示した条件を飲んだからこそ我々に力を貸したのでしょう!」
フエゴ:「エエ?悪党に理由を問うンじゃねェよォ。
大概聞いて損するようなツマラナイ事だゼェ?」
リア:「答えなさい!『黒化錬成”ニグレドの左腕”』ッ!!」
フエゴ:「ぎェ!あっぶねェ!!」
(フエゴ、ギリギリで避ける。)
フエゴ:「……うわァおォ!避けなかったらワタシも一瞬で腐敗しちまってたゼ!
そんな事したら理由なんて答えられないじゃアないかァ~!」
リア:「安心しなさい。狙っているのは手足だけです。
『黄金錬成”ミダスの右腕”』ッ!!」
フエゴ:「とぉ!!次は王道に何でも金に変えちまうかァ!!
イイじゃねェかァ!おい!リア!ワタシと商売しようゼ!!」
リア:「断わる!!
『黄金錬成────……ッ!」
フエゴ:「……?」
リア:「…………チィッ!私はおろか、《HEXE》(ヘクセ)様も足止め用のデコイか!!」
フエゴ:「アララ。セキュリティ全て切ったと思ったガァ……中枢のは手動だったかァ。」
(フエゴ、インカムに向かって。)
(視点切替)
フエゴ:『グリーン女史ィ!リアに気付かれたァ。まだ着かねェかァ。』
グリーン:「ええ?もうっスかぁ!?」
フエゴ:『もゥだァ。』
グリーン:「ですが、ちょうど今着いたところっス!」
フエゴ:『よォシ!じゃア、グリーン女史のデバイスを《POLARLICHT APFEL》(ポーラリヒト・アプフェル)に繋げろォ!』
グリーン:「繋げ……繋げるってどうやってっスか?!」
フエゴ:『イマドキあんだろ!Wi-FiとかBluetoothとかサァ!』
グリーン:「人類滅亡マシーンがそんな生活に寄り添ってくれてますかねぇ?!」
フエゴ:「とにかく繋げてくれェ!後はフェッピークンに戻すぜェ!」
グリーン:「ああ!ちょっとぉ!!」
(視点切替)
フエゴ:「おォイ!リアサマァ!ここのWi-Fiのパスワード教えてくれよォ!!」
リア:「そんなものあるわけないでしょうが!!」
フエゴ:「この物件低評価しとくぜェ!バースト!!」
リア:「チィ!いくつ爆弾を仕掛けているのですか!『”錬成三重障壁(ヘルメス・トリス・メギストス)”』ッ!!」
(視点切替)
レッド:「くぅ!!」
《HEXE》:「……ッ」
(レッドミットと《HEXE》、鍔迫り合う。)
レッド:「セシリアッ!何故街の皆を眠らせたッ!!」
《HEXE》:「私のせめてもの慈悲よ!
私は人が憎い!人間は何度も私たちを裏切ってきたッ!!
私が助けを求めても誰も手を出してくれなかったッ!!」
レッド:「……ッ!!」
《HEXE》:「この計画は、私の”慈悲”!
本当は八つ裂きしてやったって良いッ!
これは、”《HEXE》(あく)”としての慈悲ッ!!
誰も苦しまず!真っ白な夢の世界で!永久を過ごすのッ!!」
レッド:「セシリア……!」
《HEXE》:「私はもうセシリアじゃないッ!!!」
レッド:「ぐわーーーーッ!!」
間。
レッド:「……くっ……!」
《HEXE》:「…………実生(みお)だって、そうじゃない……。」
レッド:「……ッ!」
《HEXE》:「君も……私を助けてくれなかった……!!」
レッド:「…………ッ」
間。
《HEXE》:「…………。」
レッド:「…………。」
間。
レッド:「……ああ。」
間。(レッドミット、立ち上がる。)
レッド:「だから……今度こそ、お前の手を掴みに行かないといけないんだ。」
(レッドミット、構える。)
レッド:「大好きな女の子が泣きっぱなしなのは嫌だから!!」
《HEXE》:「────ッ」
レッド:「はぁああああああああああああああああ!!」
《HEXE》:「ッ!”射殺せ。我が荊棘(いばら)”ッ!!」
レッド:「はぁああああ!!」
《HEXE》:「なッ!突っ込んできただと!?
いやッ!全て”いなしている”ッ!!」
レッド:「イエローから習った”合気道”の応用だ!!」
《HEXE》:「合気道ってそういう事じゃないでしょ!!」
レッド:「出来てんだから良いだろうがッ!!
今度こそ!チェエエエエエエストォオオオオオオオオオオオオ!!!!」
(視点切替)
グリーン:「よしっ!なんとか繋がったっス!!」
(グリーン、デバイスを操作する。)
グリーン:「この言語なんなんっスか!?」
フエゴ:『グリーン女史が分かる言語系体に翻訳を試みてみよウ。』
グリーン:「助かるっス!
……って!これ1から10まで”埒外異端技術”じゃないっスか!
私の専門は機械工学っス!こういうのはブルーさんの管轄っスよ~~~~!」
フエゴ:『えエ??機械工学と何が違ウ?
結局は人間の扱う科学技術だロ??』
グリーン:「”埒外異端技術”は科学の皮を被ってるだけでやってる事は魔法みたいなモンなんっス!
”フエゴさんAI”の力でどうにかなんないんスか!?」
フエゴ:『すいません。よくわかりません。』
グリーン:「あ~~~困ったな~~~~!!」
間。(グリーンミット、頭を抱える。)
グリーン:「……はっ。」
フエゴ:『ンン?どうしたァ?』
グリーン:「所詮は人間の扱う”技術”なのはそうっス……。
ならばきっと、初歩的な部分は…………よし!ここからなら弄れるっス!」
フエゴ:『オオ?停止させられそうかァ?』
グリーン:「分かんないっスけど、分かる所からどんどんデタラメに継ぎ接ぎにしていけば、確実に不具合は起こせるっス!!」
フエゴ:『えェ?』
グリーン:「不具合の影響でどうなるかまでは未知数!
もしかしたら爆発しちゃうかもっスねぇ!!」
フエゴ:『ヤバイ、危機的状況でイカれやがっタ。』
グリーン:「うははははははははははははははははは!!!
爆発オチ上等!!!綺麗な花火打ち上げて世界救うっスよぉ~~~~~~~~~~~!!!!」
(視点切替)
リア:「『黄金錬成”ミダスの右腕”』ッ!!」
(フエゴの左腕が黄金へと変わる。)
フエゴ:「チィ!!マジかヨ!ワタシの腕がッ!!
……だぁ!!おっもッ!!」
リア:「ハァ……ハァ……本当にすばしっこかった……
が……これで貴方はまともに動けません。チェックメイトです。」
フエゴ:「リアサマはチェスのルールを知らないのカァ?
相手を”詰み”の時に言うんだぜェ?チェックメイトってェのはァ~」
リア:「では、『黒化錬成”ニグレドの左腕”』。」
フエゴ:「くおッ!おおおおおおおおおおおおッ!!」
(フエゴの右足が腐敗して腐り落ちる。)
リア:「片足だけですか。よく咄嗟に避けましたね。
左腕、右足が使い物にならなくなりました。
流石に”詰み”でしょう?」
フエゴ:「くぅ……!ハァ……ハァ……ハ、ハハハ……ど、どうだろうネェ……」
リア:「こんな状況で何故笑えるのです?」
フエゴ:「ワタシの、憧れている悪党が……言っていた”死ぬ前は笑おうかしら”ってのを倣ってんだヨ……。」
リア:「……貴方は本当にしょうもない理由ばかり並べますね……。
私は貴方の事が心底嫌悪します……が、《POLARLICHT APFEL》(ポーラリヒト・アプフェル)の完成も、計画が滞る事なくここまで来れたのも、貴方のおかげです。」
一拍。
リア:「”悪党の美学”に則って、”引導を渡す前に今際の言葉ってヤツを聞いてあげます”。」
フエゴ:「……ッ」
リア:「何故、計画の最後の最後で《HEXE》(ヘクセ)様を裏切った。答えろ。」
フエゴ:「……。」
リア:「……。」
フエゴ:「生きたいからサ。」
リア:「……は?」
フエゴ:「なア、リアサマよォ。
アンタは自分を”悪”と定義したよなァ。
それは、何故ダ?」
リア:「……。」
フエゴ:「大義を掲げる悪!可憐に華やぐ悪!世界に仇なす悪!社会を嘲笑う悪!
…………そんなモン、全て派手な装飾でしかァなイ。
悪とは、”悪党(ワタシたち)”とは、ただただ”生きたいという感情の妄執”サァ。」
リア:「……ッ」
フエゴ:「……《HEXE》(ヘクセ)サマだってソウだァ。
このままでは自分が死んじまうから他者をどうにかしちまう。自分が死なねェ為に。
自分の心が、死なねェ為に。」
リア:「………………そうですね。」
フエゴ:「大体なァ。アンタたちが作る世界じゃア……ワタシは生きてはいけないんだよォ。
ワタシは自立さえ出来ないヨチヨチ歩きの悪党でねェ。
善性溢れる社会に寄生しないと生きてられない小市民的悪党だァ。」
リア:「では何故私たちに協力していたのですか。」
フエゴ:「死にたくないからサァ。今を必死に生き抜いていただけだヨォ。
アンタだってソウだろウ?いいや、アンタの場合は”死なせたくない”カナァ?」
リア:「………………貴方はどこまでも……。
もう良いです。死になさいフエゴ・ラドロン。」
フエゴ:「……いいやァ?死なないサァ。
はぁッ!!」
(フエゴ、黄金となった左腕で殴りかかろうとする。)
リア:「ッ!無駄だ!奇跡でも起きない限りッ!!
『黒化錬成”ニグレドの左腕”』ッ!!」
(視点切替)
《HEXE》:「…………”射殺せ。我が荊棘(いばら)”。」
レッド:「ゴフッ…………」
《HEXE》:「…………実生(みお)先輩は相変わらず真っ直ぐなんですから。
ちゃんと周りを見ないとですよ。」
レッド:「…………ははっ……お前……高校の頃から……それ言うの、好き、だったよな……。」
《HEXE》:「……だから、悪い人にやられるの。」
レッド:「だから……困ってるセシリアに、気付けなかったんだもんな……」
《HEXE》:「……!」
(レッドミット、弱々しく《HEXE》の手を取る。)
レッド:「ごめんな……ケド……やっと、お前の手ぇ掴めた……。」
《HEXE》:「っ!」
(《HEXE》、たじろぐ。)
《HEXE》:「だ……だからなんなの……
このザマで何が出来るよ……。」
レッド:「……きっと……何か出来る……何か、起こる……。」
《HEXE》:「……ッ!
この期に及んでまだ奇跡が起きるだなんて思ってるの……ッ?」
レッド:「嗚呼……そうだ奇跡、だ……」
《HEXE》:「ッッッ!
奇跡なんて──」
(視点切替)
フエゴ:「──起きるワケ無いだロ。」
リア:「ッ!?」
(リアの『黒化錬成”ニグレドの左腕”』がフエゴの左腕に当たり、破壊する。)
フエゴ:「くぅッ!!だガァッ!!」
(フエゴ、すかさず残っている右腕でリアを掴む。)
リア:「何ィ!!」
フエゴ:「これでェ──」
(視点切替)
グリーン:「”チェックメイト”っス!!!!」
(グリーン、デバイスによるハックを終える!!)
フエゴ:『《POLARLICHT APFEL》(ポーラリヒト・アプフェル)に充填されていたエネルギーがどんどん減っていく。
よォくやったァグリーン女史ィ。』
グリーン:「エネルギーを溜める為の回路をめっちゃくちゃ複雑にして超々々々非効率的にしてやったっス!!」
フエゴ:『綺麗な一本線をぐちゃぐちゃにするだけなら知識が無くっても出来るってェワケかァ。』
グリーン:「効率化が人類の命題であり、効率厨の私的には、ひっじょ~~~に血涙の作業でしたっス……!」
フエゴ:『ソウ……。
でェ?この後はァどうすル。破壊かァ?』
グリーン:「フフーン。これで終わらせないのが『童救戦隊(どうきゅうせんたい)ミットシューラー』っス!」
フエゴ:『?』
グリーン:「せっかくなので、《POLARLICHT APFEL》(ポーラリヒト・アプフェル)のエネルギーをちょろまかしたんスよ。
……私たちの仕事は”童話”たちの救助っス!後は頼んましたよ!レッドミット!!」
(視点切替)
《HEXE》:「ッッッ!
奇跡なんて──」
レッド:「いいや!起こすッ!!はああああああああああああああああ!!!」
《HEXE》:「ッ!!なに!?急にレッドミットから高エネルギー反応!?なんで!!?”童話”の力を使えないハズ!!」
レッド:「だから起こすって言っただろ!
『”童話救助(フェアリーテイル・レスキュー)”』!!」
(視点切替)
フエゴ:「『”童話救助(フェアリーテイル・レスキュー)”』。」
リア:「なにッ!?何故それをお前が!!」
フエゴ:「悪党ってプライド無いからすーぐなんでも真似すんだヨ。」
(視点切替)
《HEXE》:「なッ!!!私の力が!消えて……ッ!!」
レッド:「『いばら姫』!レスキュー完了!!」
《HEXE》:「あ…………」
(視点切替)
フエゴ:「『童話複合”偽空想錬金術(ルンペルシュティルツヒェン)”』、レスキュー完了。」
リア:「く…………!」
(リア、力なく膝をつく。)
フエゴ:「……フゥ~~~~……コーユーのを、”チェックメイト”ってェ言うんだゼ。」
リア:「き……さま……
……ッ!な……!その腕と足……!!何故元に戻っているッ!!」
フエゴ:「ンン~?タダの騙しの手品ってェヤツさァ。気にするなヨォ。」
リア:「……くっ……言動どころか存在そのものがまやかしか……」
フエゴ:「言い得て妙。」
リア:「私の完全敗北という訳だな。」
フエゴ:「あア。今回は、正義マンの片棒を担いじゃアいるガ、
ワタシは悪党なんでネ、きっちりとアンタを殺すゼェ。
最後に言い残したい事はァ?」
リア:「……。」
間。
リア:「《HEXE》(ヘクセ)様の……セシリアの幸福を、私は心から祈る。」
フエゴ:「……ソウ。アンタ、”悪党”向いてねェよ。じゃあナ。」
(銃声が響く。)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(《HEXE》、倒れこむ。)
レッド:「おっとっ。」
(レッドミット、《HEXE》を受け止める。)
レッド:「大丈夫か、セシリア。」
《HEXE》:「……。」
(《HEXE》、呆然としている。)
レッド:「……セシリア?
…………《HEXE》(ヘクセ)、お前の計画は潰えたんだ。」
《HEXE》:「……フフ……フフフ……ハハハ……
私、これで終わりなのね。」
レッド:「……何言ってんだよセシリア。
俺が居る。俺が絶対にお前を見捨てないから。」
《HEXE》:「……私はセシリアではない。」
(《HEXE》、レッドミットを突き飛ばす。)
レッド:「どわっ!」
《HEXE》:「魔女だ。」
レッド:「セシリア……!」
《HEXE》:「”童話救助(フェアリーテイル・レスキュー)”ぅ?
まさか、それで私を”助けた”とでも言いたいのか?
見ろ!私の身体を!!」
(《HEXE》、自身の衣を剥ぐ。)
レッド:「っ!!」
《HEXE》:「私のこの身体は!人間たちの身勝手によって半分以上失われた!!
それを童話”いばら姫”が補って、やっと生きながらえた出来損ないなのよ!!」
レッド:「……ッ!!」
《HEXE》:「ならば……なればこそッ!!!」
グリーン:「高エネルギー反応検知!レッドさん早く逃げてくださいッ!!」
レッド:「え!?」
《HEXE》:「”誘(いざな)え!我が眠りへ”ッ!!!!」
フエゴ:「ぼさっとしてんじゃねェ!!」
(レッドミット、フエゴに抱えられる。)
レッド:「うおおっ!」
《HEXE》:「…………。」
フエゴ:「フゥー!間一髪ゥ!」
レッド:「フエゴ!」
グリーン:「大丈夫っスか!」
レッド:「グリーン!ああ、大丈夫だ!」
フエゴ:「土手っ腹に風穴作っておいてよく言うゼェ。
簡単な止血はしといてやったぞォ。」
レッド:「助かる!ありがとう!」
グリーン:「……ッ。
レッドさん、セシリアさんから強力な”童話”の力を感じるっス……!
”童話救助(フェアリーテイル・レスキュー)”は失敗したんスか?」
レッド:「いいや、確かに”いばら姫”はこっちにある……」
《HEXE》:「私に力を下賜してくれたのは”いばら姫”だけではない。
童話”白雪姫”!
私の魔女としての本質は、こちらだったのだッ!!」
フエゴ:「なるほどゥ。《POLARLICHT APFEL》(ポーラリヒト・アプフェル)は、
謂わバ、”白雪姫”の毒林檎の性質を広く伝播させる為の拡声器ってェところカ。」
グリーン:「その拡声器も使い物にならなくなったっス!
もう辞めましょう!セシリアさん!」
《HEXE》:「そうだな……今のままでは使い物にならない……
だから無理矢理にでも起動させるさ!私自身を燃料としてな!!」
(《HEXE》、《POLARLICHT APFEL》に向かって駆け出す。)
レッド:「セシリア!」
フエゴ:「ッ」(銃を構えろ。)
《HEXE》:「”氷壁よ!私を守れ”ッ!!」
(レッドミットたちを阻むように巨大な氷壁が現れる。)
フエゴ:「チィ……”白雪”姫だからっテ、氷の魔法まで使うなヨ、七面倒臭イ。」
レッド:「はぁ!でやぁ!!くそ!全然壊れない!!」
フエゴ:「……まア、良いだろウ。
”いばら姫”を抜かれて、残った”白雪姫”の力で身体をギリギリ構成していル。
だのにそれを燃料にしてるんだァ。あの調子じゃア、ほっときゃアすぐ死ヌ。」
レッド:「はぁ!?なんも良くない!」
フエゴ:「何が良くなイ?
巨悪は滅びタ、正義が居る限り悪は栄えなイ。これで万事解決ハッピーエンドだァ。」
レッド:「……!」
フエゴ:「アレを生かしておいたッテ、良い事は無いゼ。
《HEXE》(ヘクセ)サマにとっても、世界にとっても。どっちにとってもナ。」
レッド:「…………ッ」
グリーン:「そんなの関係ないっス!」
(グリーンミット、その辺の瓦礫を手に取り、氷壁を壊そうと何度も打ち付ける。)
グリーン:「もうここまで来たらッ、世界がッとか!セシリアさんがッとかッじゃないっス!
ハァハァ……レッドさんがどうしたいかっス。
レッドさんが欲しい欲張りハッピーエンドを芽吹かせてくださいよ。
そういう奇跡を掴む努力を!一緒にしましょうよっ!!」
レッド:「ッ!!」
フエゴ:「……ヘッ……グリーン女史の方が悪党向いてるぜェ。」
グリーン:「えぇえええぇ!なんスか急に!?」
フエゴ:「どけェ。」
グリーン:「火炎放射器!?そんなのどこに隠し持ってたんスか!?」
フエゴ:「オイオイ?ワタシは”フエゴ・ラドロン”だゼェ?
最高火力でッ!!!」
(フエゴ、氷壁を溶かす。)
フエゴ:「よしッ!!行けェ!!レッドミットォ!!!」
グリーン:「次は絶っっっっっ対に手を離さないでくださいっス!!」
レッド:「ああ!!」
(レッドミット、駆ける。)
レッド:「ハァッ!ハァッ!ハァッ!セシリアーーーーーーーーーーーー!!」
《HEXE》:「っ!実生(みお)……!!貴方どこまで──」
レッド:「当たり前だッ!!俺はお前の事が好きだ!大好きだッ!!」
《HEXE》:「っ!!それでどうなると言うの!!人間たちは変わるの!?世界は良くなるの!?」
レッド:「分からない!けれど!そうなる様に一緒に頑張ろう!!」
《HEXE》:「また奇跡か!!」
レッド:「そうだ!」
《HEXE》:「奇跡奇跡奇跡!そんなもの待った所で──」
レッド:「待つんじゃない!俺たち自身が走って!足掻いて!掴みに行って!起こすんだ!!」
《HEXE》:「……ッ!!下らない!下らない!!下らない!!!
そんなもの幸運な奴の!強い奴らの戯言よ!!!!!」
レッド:「そうだ!!!!!!!!!!!!!」
《HEXE》:「──ッ!!」
レッド:「だから俺は!!!!世界を良くする為に強くあろうとしているんだ!!!!!!」
間。
《HEXE》:「…………フ……フフフ……どうやら、どうあっても相容れないようね……。」
レッド:「ッ」
《HEXE》:「私は実生(みお)みたいに強くなれないよ。」
(《HEXE》、《POLARLICHT APFEL》の炉心へと落ちていく。)
レッド:「セシリア!!!」
グリーン:『レッドさん!セシリアさんが落ちた先は《POLARLICHT APFEL》(ポーラリヒト・アプフェル)の炉心っス!』
フエゴ:『そこに落ちきったら本当に燃料になっちまっテ本当に手遅れになっちまウ!!』
レッド:「セシリア!!うおおおおおおおおおおおお!!!!」
(レッド、飛び込む。)
《HEXE》:「ッ!!実生(みお)ッ!!!」
レッド:「セシリアーーーーーー!!!!!」
《HEXE》:「何考えてるの!?こんなことして!君もただじゃ済まないのよ!!?」
レッド:「絶対に!!救うッ!!!絶対に助けるッ!!!!!」
《HEXE》:「チィ!!!こんな時にまで世迷言をッ!!!
貴様の力で救われるものかッ!!!貴様などに救えるものかよォオオオオ!!!!!
《POLARLICHT APFEL》(ポーラリヒト・アプフェル)!!!!私を喰え!!!!喰らって世界に永劫の安眠をォ!!!!!!!!!」
レッド:「それでも救うッ!!!!!!
俺はァ!!!!!!!『童救戦隊(どうきゅうせんたい)ミットシューラー』だァ!!!!!!!!!!」
レッド:「”フェアリーテイルッ!!!!!!!!!!!レスキューッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!”」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
グリーン:「ッ!!《POLARLICHT APFEL》(ポーラリヒト・アプフェル)が急激なエネルギー充填により暴走状態に!!
このままでは1分もすれば半径12kmを吹っ飛ばす大爆発っス!」
フエゴ:「ッ!!」(フエゴ、駆け出す。)
グリーン:「フエゴさん!!」
フエゴ:「すぐそこに小型ジェット機がある!グリーンミットはそれに乗って退避!
”俺”はレッドの方に行くッ!!」
グリーン:「は、はいっス!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
リア:「…………。」
間。(リア、微かに意識が戻るが致命傷で朦朧としている。)
リア:「……………………は……は……」
間。
リア:「……“レスキュー完了”……だと……?
………………あの……うそ、つき…………
”童話”の力を……一時的に、だけ、…………ふっ……して…………やられ……た……」
間。
リア:「”ヘルメス”……」
リア:「”トリス”……」
リア:「”メギストス”……」
間。
リア:「《HEXE》(ヘクセ)様……申し訳、ありません……」
間。
リア:「セシリア………………生きて、くれ……」
(リア、絶命する。)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
《HEXE》:「ッ!!!!!
《POLARLICHT APFEL》(ポーラリヒト・アプフェル)への供給が止まったッ!?!?」
(《HEXE》、下を見る。)
《HEXE》:「ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
あれはッ!リアの──」
レッド:「捕まえたッ!!!!」
《HEXE》:「────っ」
(レッド、《HEXE》を抱きしめる。)
リア:直後、白色(はくしょく)の小太陽が、発生した。
夜が一瞬だけ消えた。
半径十二キロに存在したものは、熱と光に呑まれ、灰燼へと姿を変える。
遥か遠くまで空を白く染めた後、遅れて大気が轟音を上げる。
衝撃波が地表を薙ぎ、森を折り、窓を砕き、残った炎をさらに遠くへ運んでいく。
間。
グリーン:静寂が帰ってきた時、そこには何も無かった。
(グリーン、着陸したジェット機から出る。)
グリーン:「……レッドさん……。」
間。
グリーン:「っ!あれは!」
(遠くから一機のジェット機が飛んでくる。)
グリーン:「!!
お~~い!!こっちっス~~~~!!!!」
間。(ジェット機が着陸する。)
フエゴ:「フ~~~~!なんとかなったァ~~~!」
グリーン:「無事だったんスねぇ~~~~!」
フエゴ:「オウ~
ついでにレッドミットとセシリア嬢も無事ダ~」
(レッドミット、セシリアを抱えたまま顔を出す。)
グリーン:「レッドさん!」
レッド:「おう!」
グリーン:「先程ブルーさんから連絡があったっス!戦隊の皆も、街の皆も無事に目覚めたって!!」
レッド:「そうか!……けど、セシリアが……」
グリーン:「……!」
《HEXE》:「……。」
レッド:「身体の崩壊も無い。息はしてる、してるんだけど……目覚めないんだ……。」
グリーン:「最後の最後に力を喰わせた時に自分諸共眠りの世界に閉じこもってしまった……スかね……」
レッド:「…………クソ……!」
フエゴ:「……。」
レッド:「……。」
フエゴ:「だったら解決方法は決まってんだロ~
お姫サマの醒めない呪いにャ、愛しの王子サマの口づけってサァ。」
レッド:「……!」
グリーン:「キキキキキ……ッ!」
フエゴ:「但し、お姫様が再び目覚めたら、裁かれるべき魔女に戻ル。
意味分かるよナ。」
レッド:「ああ。
それでも、俺はセシリアの笑顔を目指して頑張るよ。」
間。(レッド、セシリアに口付けをする。)
《HEXE》:「………………ああ……本当に、馬鹿な人……。」
レッド:「……はは……けど、留年しない程度にはマシさ。」
《HEXE》:「そう…………私の負けなのね。」
レッド:「ああ。」
《HEXE》:「いつでも……私の事、忘れてくれて良いからね。」
レッド:「忘れない。」
《HEXE》:「いつまでも、待たなくて良いから……」
レッド:「いくらでも待たせてくれよ。
そして、一緒になろう。」
間。
レッド:「好きだ。セシリア、愛してる。」
《HEXE》:「…………ホントに……馬鹿なんだから……。」
間。
グリーン:「……ぐすっ
良かったっスぅ……」
フエゴ:「そうだナァ。
ハッピーエンドちゃんちゃんってェ感じダナ。」
グリーン:「フエゴさん、ありがとうございます。二人を助けてくれて。」
フエゴ:「何、ついでさァ。
ワタシが欲しいモンがレッドミットたちの方にあったからなァ。」
グリーン:「え?」
フエゴ:「《HEXE》(ヘクセ)サマの金庫からちょっとずつ盗んで隠していたモンがあってナ。
ほレ。札束の山ァ。」
(フエゴ、持っていた大袋の中身を見せる。)
グリーン:「うわ。」
フエゴ:「そんな顔するなよォ。
あのまま放置してたら灰だったんだゼェ?
それに、アレさァ、退職金てェヤツさァ。」
グリーン:「……まぁ。
そういうのに厳しいのはピンクの管轄なんで見なかった事にするっス……。」
フエゴ:「オオ?ハナシが分かるじゃアねェかァ。
グリーン女史も悪党の道……いやいや、そのうちワタシごと踏み潰しちまいそうダ。
そのまま正義の人で居ておくれヨ。」
グリーン:「言われずともっスよ。」
フエゴ:「……ジャ、ワタシはもう行ク。
ここは悪党の居るべき場所じゃアない。」
グリーン:「レッドさんたちに挨拶は……いらないっスよね、悪党っスから。」
フエゴ:「ご明察。」
(フエゴ、ジェット機に乗り込む。)
フエゴ:「ああ。グリーン女史。
女史のデバイスに入れといたフェッピークン返してくれ。
そのまま入っているト、悪いこといっぱいしちまうぜェ~」
グリーン:「げげ!ど、どうすればイイんスか?」
フエゴ:「とりあえず赤外線通信でェ……」
グリーン:「今の時代無いっスよ。」
(フエゴとグリーン、デバイス同士をいじいじする。)
グリーン:「よし!これで…………ん?
……アレ?エ?ソウキン?送金?エ?エ?エ??」
フエゴ:「ククク……このフェッピークンはデバイスを移動する際、金も一緒に頂戴する仕組みなんダヨ。」
グリーン:「………………は?」
(フエゴ、発進する。)
フエゴ:「じゃあナ~~~~~~Adiós(アディオス)~~~~~!!!!」
グリーン:「きゃあっ!!!」
(グリーン、突然発進したジェット機の余波で転ぶ。)
グリーン:「いってってってって……
こら~~~~!!悪党~~~~~~~~~~~~~!!!!帰って来いっス~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!」
フエゴ:「ハッハッハー!!!!!!!
儲けた儲けたァ~~~~!!!!」
フエゴ:「”最高だぜ(エンピンガーオ)”!!!!!」
───────────────────────────────────────
END