[台本]極れ道(はずれみち)
・登場人物
〇垓(さかい)
年齢不詳、男性?
10年以上見た目が変わらない人物で、
耳が悪く右目が見えない、杖をついてないと長く立っていられないと言う。
温厚そうにいつも笑っているが、目の前のヤクザをどうぶっ殺そうかずっと考えている。
綺麗ぶっているヤクザを嫌っており、そういう奴相手だとあからさまに態度に出す。
何故かエセ関西弁を話す。
〇シオン
17歳、女性
一年前から垓の付き人として隣にいる少女。
とても端正な顔立ちの美少女だが、寡黙で何を考えているか分からない。
戦闘能力において最強に迫る程の力と技術を持つ。
何かを避けながら喋る動作と言葉の区切り方を何故かする。
〇権藤 栄一郎(ごんどう えいいちろう)
58歳、男性
力で現在の地位を勝ち取り築き上げた奸鍋会四代目会長。
自身の組織を家族の様に扱う豪放磊落でありながら、逆らう奴らには容赦しない冷酷残忍な広島弁で喋る人物。
奸鍋会のトップに上り詰める前は、刀一本と身一つで敵を殲滅してきた事から“奸鍋の鬼人”と呼ばれていた。
今は垓が“奸鍋の鬼人”と呼ばれ、自身を先代と称する。
蒲郡 鳳輦と兼ね役。
〇鷹宮 知宏(たかみや ともひろ)
43歳、男性
ここ一年の内にたった一人となった奸鍋会幹部。
垓や栄一郎の様な武闘派では無い、所謂インテリヤクザ。
基本的には温和で落ち着いており、声を荒げる事は滅多に無い。
奸鍋会会長である栄一郎を親以上に慕っており、垓や下の者たちと親しくしている、つもり。
結城 晋哉と兼ね役。
〇義誠 千景(ぎせい ちかげ)
38歳、女性
代々血筋により継がれてきた義誠組で、兄弟達から頭の座を勝ち取った十七代目組長の女性。
正義感が強いながら、極道であるという自身の立場から、清濁併せ呑む気概のある女傑。
組の者たちを信頼し、仲間として対等である事を望んでいる。
薙刀使いで、並みでは到達し得ない領域に達している。
〇蒲郡 鳳輦(がまごおり ほうれん)
45歳、男性
先代から義誠組に仕えてきた千景の側近で用心棒。
丁寧な口調で喋る物静かな人物。
千景の意思を義誠組の構成員に伝達する役目もやっており、
義誠組の中には鳳輦が組長だと思っている構成員も居る。
2m30cmの体躯を持つゴリゴリマッチョの巨漢でムエタイを使う。
権藤 栄一郎と兼ね役。
〇結城 晋哉(ゆうき しんや)
24歳、男性
千景に憧れて義誠組に入った義誠組の若手構成員。
世界線が違えば主人公でもやってそうな真面目で溌剌とした人物で、千景や鳳輦の事を慕っており、
彼らの言う事が正しいと信じて疑わない。
相手が撃ったのを見て撃ち落とす、という“後出しの早撃ち”という離れ業を持つ。
鷹宮 知宏と兼ね役。
垓 不問:
シオン ♀:
①権藤 栄一郎/蒲郡 鳳輦/構成員C ♂:
②鷹宮 知宏/結城 晋哉 /構成員B♂:
③義誠 千景 /構成員A♀:
※兼ね役は、①、②、③を追うとやりやすいかもです。
↓これより下が台本本編です。
───────────────────────────────────────
~どこかの山の奥~
垓:「~♪」(なんか鼻歌)
(垓、深く掘った穴を綺麗に整える。)
③構成員A:「すいません兄貴ィ!!!」
②構成員B:「許してください垓(さかい)さァん!!!反省してますからァ!!!!」
(裏切り者たち、血塗れで手足を縛られドラム缶に詰められて穴の中に居る。)
垓:「~♪」(なんか鼻歌)
シオン:「……。」(遠くから見ている。)
③構成員A:「兄貴ィ!!!!!!」
②構成員B:「サカイさァん!!!!」
垓:「あ~~~~もう、やかましなぁ。
……タナカぁ、アイバぁ。」
③構成員A:「……ッ」
②構成員B:「……ッ」
垓:「…………ボクが聾(つんぼ)やから、そんな大声張ってくれてはるん?」
③構成員A:「……。」
②構成員B:「……。」
垓:「逆や逆。まあ、逆でもあらへんけど。
小っちゃい声も聞き取りづらいしなぁ……。
ボクな?この稼業でドンパチやってて耳いわしてもうてん。
せやから、大声出されると言葉の輪郭ぼやけて余計わからへんのよ。」
③構成員A:「……。」
②構成員B:「……。」
垓:「伝えたい事があるんやったら、普通の声量で、丁寧に。な?
別にお前たちも好き好んで裏切ったわけちゃうやろ?
事情があるんやったら正直に言うてみ。
……ちょっとくらい不都合な事は聞こえへんかったことにしたるさかい……。サカイだけに。」
(裏切り者たち、表情が柔らかくなる。)
③構成員A:「じ、実は……」
間。
垓:「ほぉ~金。」
③構成員A:「そうなんです!それだけなんです!」
②構成員B:「ただ、金に目が眩んじまったんだ!本当にサカイさんにも!組長にも!申し訳ないと思ってます!!」
垓:「うんうんうんうん。眩んでまう気持ちは分からんでもないわ。
ボクもキラキラしたもん好きやし。
ほら見て。ボクの歯、ほぼほぼ金歯やで。ニッ。」
③構成員A:「あ、兄貴……!」
②構成員B:「サカイさん……!」
垓:「でな、ボクが今一番眩んどるキラキラは──……」
(垓、マッチに火をつける。)
垓:「──火。」
③構成員A:「兄貴……?」
②構成員B:「サカイさん……?」
垓:「キラキラして、メラメラとよう燃えて……綺麗やろ?……ほな。」
(垓、2人の入っているドラム缶に火を投げる。)
③構成員A:「兄貴?!?!」
②構成員B:「サカイさん?!?!?!」
(ドラム缶から勢い良く火柱が上がる。)
垓:「うわっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!!!凄いの凄いの~!!よう燃えとるやん!!!!!!」
③構成員A:「ぎゃあああああああああああああ兄貴ーーーーーー!!!!!!」
②構成員B:「サカイさぁあああああああああああああああああん!!!!!!」
垓:「あ~不都合やなぁ~……なぁんも聞こえへんわ。」
間。
シオン:「……。」
垓:「お待たせっシオンちゃん♪」
シオン:「……。」
垓:「ささ、帰ろうや。車乗り。あ!ファミレス寄る?」
シオン:「寄らない。」
垓:「さよか……。」
間。
シオン:「貴方。」
垓:「ん?」
シオン:「アタシは、貴方を一年間見ていた。
あの二人とはかなり仲が良かった、様に、思う。」
垓:「……。」
シオン:「だのに、何故、ああも簡単に殺せる、のだ。」
間。
垓:「当然やろ?だって、アイツらヤクザやもん。」
シオン:「……。」
垓:「嘘つきなクズかバカは、死ねばええんよ。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~奸鍋会~
(知宏、ノックして扉を開く。)
②知宏:「失礼します。
お。もう帰ってきたんかサカイクン。シオンチャン。」
(垓とシオン、ソファに座っている。垓、新しくなった机をコンココンコンコ コンコンコンしている。)
シオン:「ん。」
垓:「新しい机、えらい分厚ぅて頑丈やないですかぁ組長~。」
①栄一郎:「テメェがわしの気に入りのガラス机ぶち壊したけぇじゃろうが!!
毎度毎度、事務所のモン壊しさらしやがってェ!!!」
垓:「堪忍してくださいよぉ。
あと1コンココンコンコ コンコンコン遅れてたら組長ってばタナカにタマ取られてたんすよぉ?」
①栄一郎:「1コンココンコンコ コンコンコンって何なんなら!!!
ったく!テメェは耳も悪けりゃ右目も見えん。その上頭まで湧いとるんか。」
②知宏:「まあまあ親父。
サカイクンも親父守る為に必死やったんやろ。なあ?サカイクン。」
垓:「ボクは裏切り者がいっちゃん嫌いやねん。」
シオン:「……。」
①栄一郎:「その裏切り者じゃがの。義誠(ぎせい)組の回し者じゃと分かった。」
垓:「ギセイ組?うちの幹部のナカジマさんぶっ殺したって言う?」
②知宏:「せや。
南の方で幅を効かせとる組やな。
なんでも、“極道の浄化”を目指してるらしいわ。」
シオン:「……要はヤクザ潰しのヤクザって、事?」
②知宏:「そういう事や。シオンチャンはほんまに賢いなあ。」
①栄一郎:「ギセイ組の本部に、うちの若い衆を送り込んどる。」
②知宏:「数にして200。今は膠着状態や。」
垓:「へぇー抗争ですかぁ。なんや、久しぶりやなぁ。」
①栄一郎:「このまま数で押しゃあ、わしら奸鍋(かんなべ)会が勝つじゃろう。
……が。」
垓:「が?」
②知宏:「ギセイ組の若いのは雑魚や。問題は上や。トップの二人。
組長の義誠 千景(ぎせい ちかげ)と蒲郡 鳳輦(がまごおり ほうれん)が異常に強い。
奴らが抗争に参加したら、一気にこっちが不利になる。」
垓:「ほな、その二人が出張ってくる前に、ボクが始末しとけっちゅう話やな?」
①栄一郎:「知宏(ともひろ)。あれを渡しとけ。」
②知宏:「はい。
サカイクン。」
(知宏、垓とシオンに資料を渡す。)
垓:「……なんですこれ?」
②知宏:「ギセイ組の構成員のリストと、これから乗り込む建物の見取り図や。」
シオン:「……昨日今日で裏切りが分かった、のに、
用意周到、だな。」
②知宏:「間者を送ってるのは相手だけやないって事や。」
垓:「まあまあーとりあえずボクがやる事は、#サカイさん抗争止めてくるわ!!!ってこと、ですよねぇ?」
①栄一郎:「そういうことじゃ。……やれるんじゃろうの?」
シオン:「……。」
(垓、ゆっくり立ち上がる。)
垓:「勿論ですよぉ。
……と、言うことで──」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(垓、扉を蹴り破る。)
垓:「心チャカチャカの時間だ!コラァ!!!」
③千景:「!?」
①鳳輦:「!?」
②晋哉:「なっ……!?」
(垓、血まみれで不敵に立っている。その隣で無傷のシオンも佇む。)
垓:「カンナベ会から来ましたぁサカイですぅ!コラボレーションお願いしまァす!!」
シオン:「……。」
①鳳輦:「カンナベ会のサカイ……。」
③千景:「奸鍋の鬼人・垓(さかい)か……。
まさか、アンタまで出てくるとはね……。」
垓:「どうもぉ。」
②晋哉:「チカゲさん……!俺の後ろへ……!」
(晋哉、垓を睨む。)
垓:「えぇ?なにー?ボク悪もんみたいやん。」
シオン:「その風貌はかなり悪者、だ。」
③千景:「何の用だ、奸鍋の鬼人。」
垓:「おかしな事言うなぁ。今ボクんとこと、ここが抗争中なんやで?
当然、お命ちょうだいしに来たに決まってますやん。」
②晋哉:「……ッ!」
①鳳輦:「……。」
③千景:「……生憎、あたしはこの国を良くしないといけないんでね。
まだ死ぬわけにはいかない。ここで死ぬのはアンタだ。」
シオン:「……。」
(シオン、ちらっと垓の顔を見る。)
垓:「……へぇ~~~……この国を良くする。立派やねぇ。」
(垓、持っていた鈍器で近くにあった花瓶を割る。)
②晋哉:「っ!」
垓:「そない立派なこと言うてはるのに、なんでヤクザなんかやってはるん?」
③千景:「…………。言っている意味が分からないな。
極道であろうと、国を良くしようと思っても良いだろ。」
垓:「ああ。うん。ええと思うで?
だけど、ほんまに国のこと憂いてはるんやったら、正規の手ぇ踏んで、堂々とやらはったらどうどす?」
①鳳輦:「フン。政治家にでもなれと言うのか。」
垓:「政治家!それや!議員先生のギセイさん!せっかくやし“組”っての辞めて政党にしよや。
ええや~ん。義誠(ぎせい)党。任侠マニフェスト。仁義予算案。
裏切ったら指詰め内閣や。
……案外、投票率上がるかもしれへんなぁ。」
③千景:「ハッ!戯れ言だな。
政治家では国をすぐに良くは出来ない!
国は、民は!今ッ!!救済を求めているのだ!
正道では導けぬ!ならば邪道であれど!悪道であれど!
“極道”こそ国を救うのだ!!」
垓:「おぉおぉ、卑怯な手ぇしか使えへんのを、えらい綺麗に包みはったなぁ!
まあまあ時間もあらへんしサッサとぶっ壊したろかッ!!
私たちはハピハピハッピー党の活動を応援してますゥ!!」
(垓、千景に襲いかかる。)
③千景:「そんな政党無ェーだろうがッ!!ホウレンッ!!」
(鳳輦、垓の前に立ち塞がる。)
①鳳輦:「御意に。」
垓:「ッ」
①鳳輦:「はあッ!!!」
(鳳輦、垓のみぞおちに強烈な膝蹴りを入れる。)
垓:「ごはァッ!!!」
(垓、吹き飛ばされる。)
垓:「…………ぐっ……」
シオン:「……。」
③千景:「……。」
②晋哉:「……ッ」
①鳳輦:「……。」
垓:「…………ガッ……カハッ……そ、そんなフィジギフやったんかオッサン……。」
①鳳輦:「……驚きました。肺を破裂させた筈ですが……よく喋れますね。」
垓:「ダボ。ギリギリで避けたわ……ゴフッ……肋骨何本かグシャグシャやけど……」
①鳳輦:「では、残りもグシャグシャにしてあげましょう。」
垓:「タイムやタイム!」
①鳳輦:「?」
垓:「シオンちゃん先生様……!バトンタッチ……!オネガイっ♥」
シオン:「…………。」
(シオン、垓の前に立つ。)
②晋哉:「女の子……?」
③千景:「若い子を盾にするとは、極道の名折れだな。」
(シオン、構える。)
シオン:「────絶技、」
①鳳輦:「ッ!!結城(ゆうき)ッ!!!お嬢を連れて部屋から出ろッ!!早くッ!!!!」
②晋哉:「ッ!はいッ!!姐さん!!」
③千景:「……ッ。」
垓:「スタコラサッサー」
(垓と千景と晋哉、部屋から退避する。)
シオン:「『“四枚華(しまいばな)”』。」
①鳳輦:「────ッ!!!!」
(部屋にあるもの全体の物体が四等分に切断される。)
シオン:「驚い、た。全てを切り裂いたつもり、だったが、
安全位置が生まれていた、か。」
①鳳輦:「…………間一髪ッ!直感で退いて良かった……ッ!!」
シオン:「さて、申し訳ないが、貴方を斬る。」
①鳳輦:「申し訳ないと思うなら刃を納めて欲しい物ですね。」
シオン:「残念ながらそうも行かない。ッ!」(斬りかかる。)
①鳳輦:「フンッ!!」
(鳳輦の篭手とシオンの刀が鍔迫り合う。)
シオン:「へぇ。ムエタイなのに篭手とか使うん、だ。」
①鳳輦:「これが無いと、貴女の剣戟から自分を守れないものでね。」
(シオン、連撃を繰り出す。)
シオン:「謙遜、しなくて、良い。アタシの斬撃をズラして斬られずに受け止める、或いは躱す、なんて、普通出来な、い。」
①鳳輦:「寸分でも選択を誤れば、必死。少しは手加減を願いたい。」
シオン:「無理、な願いだ。アタシはお前たちを殺す。」
①鳳輦:「何故だ?仕事だからか?我々が敵だからか?」
シオン:「全て、だ。」
①鳳輦:「ほう。」
シオン:「だが、一番、は──」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(千景と晋哉、走っている。)
③千景:「……。」
②晋哉:「ハァ……ハァ……ハァ……!」
②晋哉:「ッ!!姐さん!伏せて!!」
③千景:「ッ!!」
(垓、壁を破壊して現れる。)
垓:「ダイナミック・エントリー!!」
②晋哉:「ッ」
③千景:「ッ」
垓:「なんや。避けられたわ。勘がエエなぁ兄ちゃん。」
②晋哉:「ッ!なんで俺たちを襲う!仕事だからか!敵だからか!」
垓:「どっちもや。そしてなにより……」
(垓、睨む。)
垓:「──“悪(ヤクザ)”やからや。」
②晋哉:「……!」
垓:「悪人は黙って死にはったらよろしおすッ!!」
(垓、襲いかかる。)
③千景:「──ッ」
垓:「ッ!!」
(垓、後ろに退く。)
垓:「チィ!!アンタ、シオンちゃんみたいな事出来るんやね。恐ろしいわ。」
③千景:「右目も耳も右半身も悪いと聞いていたが、えらく鋭く俊敏だな。」
垓:「…………ほう。薙刀使いか。そんなモン何処に隠し持ってたんや。」
③千景:「あたしから半径4m。これが射程範囲だ。簡単に近付けると思うなよ。」
垓:「接近戦は不利か。けどなぁ、ボクもあんま動くのは得意じゃないんや。
つーか、これが限界……せやから!!遠距離戦のチャカや!チャカ!!」
(垓、目にも止まらぬ速さで発砲する。)
②晋哉:「させない!!」
(銃弾が空で弾け飛ぶ。)
垓:「…………ああ~?」
②晋哉:「どうやら、アンタは銃の早撃ちに自信がある様だが、それなら俺も負けない。」
垓:「ッ!ッ!」
(垓、更に発砲する。)
②晋哉:「無駄だ!!」
(銃弾が空で弾け飛ぶ。)
垓:「ボクが撃つのを見てから弾を弾いとる……兄ちゃん無茶苦茶やな。」
②晋哉:「姐さんは近接で寄せ付けず、俺が遠距離からの攻撃を全て弾く。
アンタに勝ち目は無い!!」
垓:「……下らんわ……。そないけったいな技持ってんねやったら曲芸師やっとけやガキィ!!!」
②晋哉:「何発撃ったって無駄だッ!!!」
垓:「チィ……!」
③千景:「奸鍋の鬼人。今なら赦す。手を引け。」
垓:「赦すゥ???何を正義ぶっとんのや。」
③千景:「ぶっているのでは無い。事実だ。」
②晋哉:「そうだ!姐さんはそこらのヤクザがやっている様な悪い事をしていない!
任侠!仁義を重んじ、弱きを助け悪を挫く!これを理念に極道を貫いている!!
薬や武器や人の売買、詐欺、恐喝とか!そういうあくどい事してきた奴らを潰してきた!!!」
③千景:「……お前は言ったな。本当に国を良くしたいなら政治家にでもなれ、と。」
垓:「……。」
③千景:「だがな……現実を見てみろ。今の政治家に何が出来る?何が出来ている?
政治家が集まって何をやっている?
民の何ら得にもならない足の引っ張り合いばかり!!
何もかも遅いんだよ、表の人間どもは!!」
(千景、武器を構える。)
③千景:「故に!あたしは動く!!人々の為にッ!!」
垓:「ッ!!」
③千景:「あたし達は!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
シオン:「悪だから、だ。」
①鳳輦:「……。」
シオン:「違法賭博の運営。海外への人身輸出。武器と薬の製造、栽培、そして売買。
義誠(ぎせい)組の主な収入らしい、な。
だが、ここの組長の言い草、まるで、それらを一切やっていない、様な喋り。」
①鳳輦:「……。」
シオン:「“あの言葉たちに嘘が無かった。”
……ならば、ギセイ組の真の首魁は、お前、だな。」
①鳳輦:「よく調べられていますね。我々が潰してきた組織たちに擦り付けて来たというのに。」
シオン:「ここに来るまでに倒してきた、構成員も、半分はチカゲという女。
半分は……いいや、本当は8割、お前の部下、か。」
①鳳輦:「……そこまで……。」
シオン:「何故、あの女を正義として、祭り上げてい、る。」
①鳳輦:「当然です。お嬢の理念は素晴らしい物だ。
お嬢の思想の下。人々は集い。そしていつかは……理想は現実へと置き換わる。」
シオン:「だが、お前のやっている、事は、その“お嬢の理想”の真逆、だ。」
①鳳輦:「仕様が無いのです。
理想の実現には、力が必要なのですから。
しかし、普通にやっていては、理想は遥か未来。時間が掛かる。
故に、汚濁を飲み、莫大な力を手に入れ、理想に近付くのです。」
シオン:「…………。
詭弁で本末転倒、だな。
人々の救世を実現すると宣い、人々に汚泥を振りまく。
“汚濁を飲み”と、さも自分たちが被害者の様に振る舞い、他者を“犠牲”に自身の懐を肥やす。」
(シオン、構える。)
シオン:「醜い。死ね。」
①鳳輦:「────ッ」
シオン:「『絶技・“紅紫乱星(こうしらんしょう)”』。」
(須臾。無数の剣戟の軌跡を幻視する。軌跡が一点に集中し、残影は実像を宿す。その軌跡は──)
①鳳輦:「──────……ぐふ……」
(鳳輦、胸部を一突き、貫かれている。)
①鳳輦:「…………一瞬……いや……もっと短い間に私の両腕と両足を……その上で心臓を破壊……勝てるわけがない……」
シオン:「お前たちが、時間が掛かると色々と省いた結果がこれだ。
普通の人たちは、自身の理想の為に、省かずに頑張ってるんだよ。」
①鳳輦:「…………いやはや……お嬢……申し訳……ございません……。」
間。
シオン:「……ん?通信。
……。
ん。分かった。即押すから皆はすぐに退避、を。
……さて、ぽちっとな。」
(義誠組の縄張りの至る所で爆破が起こる。)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(千景、爆破に巻き込まれて気絶していたが、倒れたまま意識を取り戻す。)
③千景:「……………………な……何が……起きたの……
この匂い……ガソリン……?」
間。(千景、瓦礫に巻き込まれてぼろぼろの状態の晋哉が目に入る。)
③千景:「ッ!!し……晋哉(しんや)……!!」
垓:「おう。生きとったんか。」
③千景:「ッ!奸鍋(かんなべ)の鬼人……!!一体何をしたッ!!」
垓:「ボクはなーんもしとらんよ?おどれらがぺちゃくちゃ語ってる間に、うちのモンが仕掛けた爆弾が炸裂した。それだけや。」
③千景:「爆弾……だと……!!卑怯者……!!」
垓:「ヤクザに向かって何を言っとんのや。
抗争やで?仁義なき戦いや。使えるもんは使わんと。」
(垓、真顔になる。)
垓:「これがおどれらの結果や。
遅い遅い言うて即物的で後先考えとらん事ばっかやって。
正規の手順を踏まん奴らの末路や。」
③千景:「黙れ……!では人々は誰が助ける!!あたし達がいなければ──」
垓:「本人たちや。」
③千景:「…………は?」
垓:「表の人間である、本人たちの力で助かるんや。
ボクたちはみ出しもんがお節介するんはお門違いやで?」
③千景:「それでも救えぬ命は……!」
垓:「“それでも”を減らしていくのが、政治家の仕事や。
政治が悪い思うんやったら、やっぱ政治家になるべきやったな。
……ほな。」
(垓、銃を構える。)
②晋哉:「やめろ……!」
垓:「……。」
②晋哉:「姐さんは……ここで死んでいい人じゃない……!辞めてくれ……!」
垓:「…………。」
②晋哉:「俺を……貧乏で死ぬしかなかった俺たちを助けてくれたのは、姐さんだ……!
だから、絶対に────………………かはっ……」
(晋哉、垓に心臓を打ち抜かれる。)
③千景:「シンヤ!!」
垓:「おどれの所為やで。」
③千景:「…………え……?」
垓:「おどれがあのガキを裏の世界に引き込まんければ、
あの早撃ちの技を活かして何か出来たかもしれん。
あの性格や正義感やったら良い警察官なれたかもしれん。
何より、ここで死ぬことは無かったやろうな。」
③千景:「………………。」
②晋哉:「姐……さん……」
垓:「まだ意識あるんか。」
②晋哉:「俺……は、義誠(ぎせい)組に入った、事を、後悔してません……、」
③千景:「シンヤ……」
②晋哉:「しな……ないで…………」
垓:「うざいわ。」
②晋哉:「ッ!っ!っ………………」
(垓、もう何発か撃つ。晋哉、事切れる。)
垓:「……さて、次はおどれや。
おどれは……別嬪さんやし、火炙りやな。」
(垓、火を灯しながら千景の方を向く。)
③千景:「…………あたしは……死ぬわけには行かない……!」
垓:「諦めろや。」
③千景:「…………すまない……!娘たち……!」
垓:「────ッ!!!」
(垓、火を点ける。)
③千景:「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
垓:「…………ヤクザの癖に家族作んなや。せめて足洗ってから作らんと迷惑や。
ほんに……ヤクザは生きとるだけで周りを不幸にするわ……。」
③千景:「があああああああああ……!!!ああああああああああ……」
間。
シオン:「あ。サカイ、生きてた。」
垓:「シオンちゃーん♥
お疲れ様やでー!急に爆発して怖かった~」
シオン:「それは、すまない。が、とりあえずアタシたちの仕事、は、終わった。」
垓:「そやねー♥
こっちの被害はどんなもん?」
シオン:「3割くらい、かな。
ギセイ組の人たちは、ほぼ全滅。」
垓:「そかそか。ならボクらの組長もご満悦やろな。」
シオン:「さっさ、と、帰ろう。」
垓:「そやねー
あ!ファミレス寄る?」
シオン:「寄らない。」
垓:「さよか……。」
③千景:「…………。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~奸鍋会~
垓:「……ちゅう訳で、義誠(ぎせい)組は無事に壊滅しはりました。」
②知宏:「おう、おつかれさんやサカイクン。」
①栄一郎:「……しかしまぁ、えれぇボロボロになっとるのぉ。」
垓:「そりゃあ、潰してすぐ来ましたからねぇ。
シャワーでも浴びたいですわ。」
①栄一郎:「サカイはよう働いてくれたけぇのぉ。
たんまり浴びてもらおうや。」
(部屋内に居た奸鍋会の構成員が全員、垓に銃口を向ける。)
①栄一郎:「弾ァのシャワーじゃあ!!浴びさらせぇ!!」
(無数の弾丸が垓に向かって来る。)
垓:「ッ!!」
(垓、畳返しの要領で中央の机を盾にする。)
②知宏:「なあッ!!?机を盾にしおった!!」
①栄一郎:「チィッ!!」
垓:「はえ~分厚い机で助かったわ~
おどれらボクのタマ狙うんやったらど頭かち割ったるわ!!オラオラオラオラァ!!!」
(垓、縦横無尽に動く。)
垓:「ナカイ!ハシグチ!シミズ!タケナカァ!!」
(垓、次々と構成員たちを鉄パイプで殺していく。)
②知宏:「抗争から帰ってすぐにこの元気なんおかしいやろ……」
①栄一郎:「……。」
②知宏:「ホンマに右半身イカれとるんか……?」
垓:「ヨシカワァ!!!!」
(銃声が止む。)
垓:「ふぅー………………で?なんでボクのタマ狙うんですー?」
②知宏:「…………ここ一年で奸鍋(かんなべ)会の幹部、僕以外全員いなくなったやろ?
あれ、全部サカイクンの仕業やろ。」
垓:「そんなことありませんよぉ。
ナカジマさんとかボクなーんもしとりませんもん。」
②知宏:「それ以外は認めるんやね。」
垓:「…………概ね?」
①栄一郎:「やっぱりなぁ。
サカイ。お前は危険じゃ。ワシと同じ目をしちょる。」
垓:「……。」
(構成員A、刀を構えてゆっくりと垓の右後ろに忍び寄る。ちなみにシミズ。)
③構成員A:「うおおおおおおおおおおおおおッ!!」
垓:「フン。」(振り返らずに構成員Aの頭をカチ割る。)
③構成員A:「ギエ────」
②知宏:「なッ!?」
(垓、構成員Aが持ってた刀を拾う。)
垓:「……ほー……中々エエ匕首持たせてはりますねぇ。」
②知宏:「右後ろが完全な死角の筈やのに……」
垓:「えぇ?もしかしてシオンちゃんから聞きましたー?」
②知宏:「聞かんでも普通に分かるやろ!
そんな身体で!なんでそない機敏に動けるッ!!」
垓:「なんで?なんで。なんで……
右目見えへんのも耳が聞こえへんのも右半身がよう動かんのも……」
(垓、白目向いてた右目を元に戻す。)
②知宏:「ッ!!」
垓:「ぜぇーぶ嘘やからや。」
①栄一郎:「……。」
②知宏:「やっぱり……!何故そない意味の分からん事を!」
垓:「そりゃ敵を騙す為やろ。」
②知宏:「……ッ」
垓:「さ~あ~て~残りは二人~♪」
②知宏:「チィ!!他の奴らはどうした!!オイ!応答せえ!!!」
垓:「無駄やと思うで~?」
②知宏:「なに?」
垓:「あーそーそー
タカミヤさん、シオンちゃんが何者かずーっと気になってたやろ?」
②知宏:「……。」
垓:「あの子ねー」
一拍。
垓:「カンナベ会を潰しに来た怪物や。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
②構成員B:「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!」
①構成員C:「ぐわああああああああああああああああああああ!!!!」
③構成員A:「なんでこんなこと?!シオンちゃあああああああああああん!!!!」
シオン:「…………。」
間。
シオン:「すまない、な。これは、一年前からの、決定事項、だ。
それを、サカイのワガママで先延ばしにしていた、だけ。」
間。
シオン:「あと残り、三割。」
一拍。
シオン:「────ッ!!!」
③千景:「ッ」
(千景、シオンに恐ろしい速度で、薙刀で突進してくる。シオン、寸での所で千景の攻撃を防ぐ。)
シオン:「義誠 千景(ぎせい ちかげ)?!」
③千景:「…………ッ」
(シオンと千景、離れる。)
シオン:「…………。何故ここに……そもそも、そんなに焼け爛れて、どうやって生きている……!」
③千景:「…………サカイは……どこだ……」
シオン:「サカイ……?まさか、高潔なお前が復讐か?」
③千景:「……そうだ……讐いだッ!!ハァッ!!!」
シオン:「ッ!!『絶技・“四枚華(しまいばな)”』!!」
③千景:「妙な技を使うッ!!テヤァアッ!!!」
シオン:「只人でッ!……いや、この感覚……!焼かれて脳のリミッターが外れた、かッ!」
③千景:「うらぁああッ!!」
シオン:「くっ!『絶技・“紅紫乱星(こうしらんしょう)”』!!」
③千景:「邪魔をするなァ!!!!」
シオン:「ッ!!炭化した腕で防いだ?!炭の様なものでどうやっ──くああああッ!!!」
(シオン、蹴りで吹き飛ばされる。)
③千景:「サカイ……殺す……サカイ殺す……サカイ殺すゥウウウウウウッ!!!」
(シオン、体勢を立て直す。)
シオン:「…………これでは、悪鬼羅刹の類、だな……。
こういうのはアタシじゃなくて、姉弟子や師匠の管轄、なんだがな……。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
垓:「……──っちゅーワケで、一年前にシオンちゃんと結託したんや。
ボクが奸鍋(かんなべ)会を潰したくってなぁ。」
②知宏:「なん…やて……」
垓:「理由はなあッ!!」
(垓、匕首を構えて知宏に飛び掛る。)
②知宏:「チィッ!!!」
①栄一郎:「フンッ!!」
垓:「ッ!!」
(栄一郎、知宏の前へ出て垓と鍔迫り合う。)
①栄一郎:「“ヤクザは嘘つきなクズかバカしかおらんから”、じゃろ?」
②知宏:「親父……!!」
①栄一郎:「たあッ!!」
垓:「チィッ!!折れてもおたッ!!」
(垓、距離を取って鉄パイプを拾う。)
①栄一郎:「クックック……拾うた頃から何も変わっとらんのぉ。
正義でも憎悪でもない。
生まれつきのケダモンみてぇな暴力性じゃ。
じゃけぇ他所の組を潰す時は、必ずお前を鉄砲玉にしたんよ。
一人でも止まらん狂犬じゃけぇの。」
②知宏:「……。」
①栄一郎:「まあ、狂犬と言うにゃあ、ちとばかし小賢しすぎるがのう。」
垓:「……前線を退いて長いっちゅーのに、力は健在ですねぇ組長。
先代“奸鍋の鬼人”は伊達じゃないですわ。」
①栄一郎:「当たり前じゃろうが。
あと十年はガキ共に負ける訳にゃいかんけぇの。
……ほれ。」
(栄一郎、自身の持ってる刀を垓に渡すように投げる。)
垓:「っ。」
①栄一郎:「シミズの匕首なんぞより、上等な刀じゃ。」
②知宏:「なッ!!?親父!?なんでサカイクンに刀渡してもうとるんですか!?」
(栄一郎、壁に掛けていた刀を手に取る。)
①栄一郎:「ガキの反抗期みてぇなもんじゃ。
親のワシが本気で相手してやらにゃあ、筋が通らんじゃろ。」
②知宏:「が、ガキって!アイツは僕らを殺そうとしてるんですよ?!」
①栄一郎:「じゃけぇ親がケジメつけちゃらにゃいけんのじゃ。」
(栄一郎、楽しそうに口の端を歪める。)
②知宏:「親父……」
垓:「……。」
(垓、刀を捨て、鉄パイプを構える。)
①栄一郎:「何をしよるんじゃ。
“奸鍋の鬼人”の本気は刀じゃろうが。
そんな鉄パイプやのうて刀握らんかい。」
垓:「ボクは“奸鍋の鬼人”やない。
ただの垓(さかい)や。」
①栄一郎:「……まあ、ええじゃろ。
────いざッ!!!」
(垓と栄一郎による殺陣。)
垓:「はぁッ!!」
①栄一郎:「りゃあァッ!!」
垓:「くッ!!」
①栄一郎:「どうしたどうしたァ!!当代の“奸鍋の鬼人”いうんはこの程度かァ!!!」
垓:「そんなだっさい呼び名で呼ぶなやァ!!!」
①栄一郎:「ただの野犬でしかなかったお前が人間の恐怖をかき集めて呼ばれるようになった忌名じゃ!!力の証明じゃア!!!何を恥じるッ!!」
垓:「どうでもええわそんなモン!!!とにかく死ねやクソジジィ!!!」
①栄一郎:「クハハハハハハハハ!!!!
クソジジィとは!!!随分とえろぅなったのォ!!サカイ!!!!」
垓:「隙、ミッケや。」
(垓、栄一郎の剣戟、制空圏を掻い潜り、右目を貫く。)
①栄一郎:「────ッ!!!ぐああああああああああああああああッ!!!!!!!!」
②知宏:「親父!!!!」
垓:「右目くり抜いたったわ。」
①栄一郎:「さ……サカイぃいいいい……!!」
垓:「あーあー出会った頃の組長やったら、絶対避けられたのに。
耄碌しましたなぁ。まあ、これから盲目になるんやけど、ねッ!!」
①栄一郎:「くおッ!!」
垓:「避けおった。けどッ!!!」
(垓、突きで放った鉄パイプをそのまま思いっきり振り下ろす。)
①栄一郎:「くううううううううううううううッ!!」
垓:「左肩、頂きましたァ。
これでもう動かせへんで。」
①栄一郎:「一撃で左肩甲骨ぶち砕くたァ、イカれた膂力しとるのォ……!!
じゃがなァッ!!」
(栄一郎、刀を薙ぎる。)
垓:「おっとォ!危ない!」
①栄一郎:「お前みてぇなモン、右腕一本で十分じゃァ!!!」
間。
垓:「…………あ?銃声?」
①栄一郎:「………………グフッ……
どういうつもりじゃァ……トモヒロォ……」
②知宏:「……すんません。親父。
でも、ここまでや。」
(知宏、栄一郎の頭と胸に向かって3発ずつ撃つ。)
①栄一郎:「ぐあ……ッ!」
(栄一郎、倒れる。)
②知宏:「……ホンマに、すんません。」
間。
垓:「……どういうつもりや。」
②知宏:「……正直、親父に勝てそうやったやろ、サカイクン。」
垓:「……。」
②知宏:「僕はねぇ。それが耐えられん。
親父が負ける姿なんて見とうない。」
垓:「……。」
②知宏:「せやから僕が卑怯な横槍をした。
親父はサカイクンに負けたんやない。途中で死んでもうて勝敗はつかんかった。」
垓:「……なんやそれ。」
②知宏:「親父は最強で居て欲しいんや。
せやけど人間は老いる。弱なる。いつかは最強では無くなってまう。」
間。(知宏、垓を真っ直ぐ見据える。)
②知宏:「そこで君や、サカイクン。
君は強い。サカイクンが表で恐怖を振りまく、君のやりたいヤクザ潰しも好きにしたらええ。
親父は完全な裏の暗躍者として生き続ける。
……なあ、僕と一緒に、親父を、カンナベ会を未来永劫、最強の象徴にしようや。」
垓:「……。」
間。
垓:「嫌や。」
②知宏:「……。」
垓:「ボクねぇ。裏切り者がいっちゃん嫌いやねん。
そして何より──」
(垓、構える。)
垓:「インテリヤクザがなお嫌いや。」
②知宏:「…………そか。」
垓:「カタギの人らより頭エエ訳やない。
シワ無いツルッツルな脳足りんの中で多少雑草生えた程度の奴が、“知識人(インテリ)”振るなや。」
②知宏:「……。」
垓:「ボクとカンナベ会を未来永劫最強の象徴にする?組長は“権藤(ごんどう)さん”のまま?
せやけどゴンドウさんを殺した。
……破綻しとる。
ゴンドウさんの背中でこそこそ隠れながらフィクサー気取っとる頭も力も無い卑怯もんなだけやろ?」
②知宏:「そうや。」
垓:「っ。」
②知宏:「僕は親父に隠れてへんと生きていけへん。そんな生き方しか知らんのや。
知恵も力も無い卑怯者や。それが僕の生存戦略や。
だから──」
垓:「ッ!!!!!!!!!!!!!!!」
(垓の腕が爆発し、筋肉が露わになる。)
垓:「な……!?ハァ……?!」
②知宏:「びっくりしたやろー?」
垓:「……何したんや。」
②知宏:「何年か前に“トウメイ先生”っちゅー爆弾に詳しい人と仕事した事あったやろ。」
垓:「あー……妄想癖強めの人おったな……。」
②知宏:「その人と仲良くなって爆弾の技術をちょっと教えてもろたんよ。
そんで、肉眼でも見えへん爆弾を作ったんや。
この部屋に入った時点で、爆弾はサカイクンの身体ん中、血管の中に侵入して巡っとる。」
垓:「急に埒外な科学技術出すなや……」
②知宏:「サカイクンやシオンチャンのファンタジックを許容してんねんで?
やったらこっちのファンタジックも受け入れてくれんと。」
垓:「…………で?いつでも炸裂させられる、と。」
②知宏:「そうや。
せやから、ちゅーわけやないんやけど。
僕は本当にサカイクンと一緒にカンナベ会を強くしたいんや。
……改めて聞くわ。」
一拍。
②知宏:「一緒に手を組もや、サカイクン。」
垓:「嫌や!!」
②知宏:「しゃーないなぁ。
じゃったら身体中爆発して死ねや!!!」
垓:「起爆する前に殺してやらァなァ!!!!」
(垓、知宏に向かって駆け出す。)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(千景とシオン、シオンが防戦に立ち回った殺陣を繰り広げる。)
③千景:「どけぇ!!!」
シオン:「く……!
まさか、アタシが防戦を強いられる、とは……!」
③千景:「サカイがいなければあたしは正義を貫けた!!
サカイがいなければホウレンもシンヤも死ななかった!!」
シオン:「関係無い……!義誠(ぎせい)組のやり方では、時間の問題、だッ!」
③千景:「ッ!!!貴様もサカイと同じ思想の持ち主かッ!!!」
シオン:「人々を救うと宣いながら何故直接救いの手を伸ばさない!!」
③千景:「何ィ!!?」
(シオンと千景、鍔迫り合う。)
シオン:「ギセイ組の活動、は、すべて確認、した。
が、やっている“良い事”はヤクザ潰しばかりで人々に何かする事は稀だった!
国だ民だと言いながら目の向いている先は常に敵!
どういう事だ!!」
③千景:「悪を滅する事が抜本的解決になるッ!!」
シオン:「抜本的解決と言うなら尚の事人々に寄り添うべきだ!!」
③千景:「黙れッ!!」
シオン:「うあああッ!」
(シオン、千景に薙ぎ払らわれて吹き飛ばされる。)
③千景:「貴様の様な子供に何が分かるッ!!」
シオン:「……。」
③千景:「極道に生まれ、育ったあたしに選択肢は少ないッ!!
民はあたし達極道を忌み嫌う!
歩み寄りをしなかったのは!してくれなかったのはッ!!アイツらだッ!!!!」
シオン:「……。
ヤクザの……極道の地位向上。そして、人々に認めてもらう。
それが“義誠 千景(ぎせい ちかげ)”の真の目的、か。」
③千景:「何が悪い。」
シオン:「怖がられる、だから直接的な支援は出来ない。
即物的な信頼が欲しい、だから他のヤクザを殺す。政治家では遅く、遠い。」
③千景:「だから!何が悪いッ!!!!!!!!!!!」
シオン:「愛する者の為、か。」
③千景:「────ッ」
シオン:「義誠 千景(ぎせい ちかげ)の夫……いや、お前の娘たちの父は、表の人間。
故に、男の家族に婚姻を認められず、現状の形にあり、双子の娘たちはお前の認知を許されて、いない。」
③千景:「何故、それを……それは──」
シオン:「蒲郡 鳳輦(がまごおり ほうれん)と自分しか知らない筈、か。
安心、しろ。これは、カンナベ会では無く、アタシ独自のルート、での情報、だ。
サカイにも話して、無い。
無論、脅しに使う魂胆、も、無い。」
③千景:「……。
何を考えている……。」
シオン:「……数度、刃を交えて、分かった。
義誠 千景(ぎせい ちかげ)、お前の身体はもう長くは保たない。」
③千景:「…………。」
(シオン、瞳に若干の怒気が混じる。)
シオン:「それなのに何故家族に会いに行かない。」
③千景:「……。」
シオン:「夫や娘たちへの情があるのなら──」
③千景:「義誠(ぎせい)組の組長だから。」
シオン:「……。」
③千景:「夫や娘たちが大事だ。愛している。当然だ。当たり前だ。
あたしだってそうしたい。」
一拍。
③千景:「それと同等に、ギセイ組が大事だ。愛している。
どちらかを選べと言われたら、ギセイ組を選ぶ。
何故ならば──」
(千景、薙刀を構え直す。)
③千景:「あたしは極道だからだ。」
シオン:「家族を見捨てるのか。」
③千景:「……。
それが、あたしへの”報い”という事だ。
……これが、あたしが“求めて歩み、極まった末路”だ。」
シオン:「……。そうか。
求道の果てと言うのならば、何も、言う事は、ない。
本気を持ってしてお前を斬る。義誠 千景(ぎせい ちかげ)。」
③千景:「……ははは。遅い。」
(千景、薙刀を落とす。)
③千景:「ぐだぐだと駄弁っている間に身体の限界が来てしまった。」
(千景の身体がぼろぼろと崩れていく。)
シオン:「ぁ……。」
③千景:「…………途中から防戦に徹していたのは……あたしを修羅で終わらせない為に家族の話をしたんだろ。
脅しでも無く、命乞いでも無く……。
じゃなきゃ、サッサと本気とやらを出して斬れば良い。」
シオン:「…………ギセイ組も、お前のやり方は良くないと、思う。
だけど……お前の志は本気だった。本気で正義を成そうとしていた。
アタシはお前を悪と見られなかった……見たくなかった。」
③千景:「……ありがとう。
だけどね…………うん。サカイに言われた通り、あたしも悪だ。」
シオン:「……。」
③千景:「家族と組、どちらも捨てられなかった。
それでも、あたしの中には、仲間を殺された、あたし自身殺されかけたという怨嗟があった。
だから、組の方を選んだのも事実だ。」
間。
③千景:「そんなあたしは、夫や娘たちに合わせる顔が無い。」
(千景、目を閉じ、安らかにだけど少し寂しそうに笑う。)
③千景:「……だけど……エリ……リオ……あなた……やっぱり……会いたかったなぁ……──────」
(千景、そのまま倒れ、絶命する。)
間。
シオン:「…………。」
間。
シオン:「……続きを。アタシの仕事を、しないと。」
(シオン、駆け出す。そして再び悲鳴が響く。)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
②知宏:「ぼかーん。」
間。
②知宏:「…………ってぇ、終わらせるつもりやったんやけどなぁ。」
垓:「……。」
②知宏:「……いやはや……」
(知宏、口から血を流す。)
②知宏:「ぐふっ……生きとったんですか……親父……。」
①栄一郎:「……。」
(知宏、後ろから栄一郎に刀で心臓を貫かれている。)
②知宏:「…………心臓を……ブスリと……ハハ……」
①栄一郎:「ワシを神様に祭り上げようなんぞ抜かすけぇ、
地獄から舞い戻ってきたんじゃい……。」
②知宏:「頭と、胸に、三発ずつ入れたのに……無茶苦茶ですやん……。」
①栄一郎:「……。」
②知宏:「はぁー……もう……
……親父、は……喫煙も、飲酒も辞めてくれへんし、
野菜もよう食わんでカロリー高いもん甘いもんばっかで、
健康診断にも行ってくれへん……
おまけに、危ない野良犬も拾う……」
間。
②知宏:「……最後の最後まで、僕の言う事、きいて、くれへんかったなぁ……」
①栄一郎:「反社が、健康なんぞ気にするかいや……」
②知宏:「反社やから気にして欲しかったんすよ……」
間。
②知宏:「でもまぁ……サカイクンやのうて、親父に地獄送りしてもらえるんやったら、本望ですわ……。」
(知宏、その場で力無く倒れ、絶命する。)
①栄一郎:「……。馬鹿息子が……。」
垓:「よろしおしたなぁ。
タカミヤさんの銃の腕がえらい悪ぅて。
ひょっとしたら、大好きな親父撃つんに、情けが出はったんかもしれまへんなぁ。」
①栄一郎:「……。」
(栄一郎、垓の方を向く。)
①栄一郎:「………………サカイィ……刀ァ取れ……。
奸鍋(かんなべ)会が潰れようがどうなろうがの……
お前だけは世に放さん……ワシが始末しちゃる……。」
垓:「……。」
(垓、刀を拾う。)
垓:「組長……ゴンドウさん。」
①栄一郎:「……なんじゃ。」
垓:「ゴンドウさんは、ヤクザになった事、後悔してはりますか。」
間。
①栄一郎:「クックック……クッハッハッハッハッハッハッハ……!」
間。
①栄一郎:「何を聞くかと思うたら……。
これは、ワシが“望み歩んだ、極まった末路”じゃ……後に悔やむ先なんぞあるかい……。」
間。
垓:「さいですか。」
間。
①栄一郎:「構えぇや、サカイ。」
垓:「……。」
(垓、刀を構える。)
間。
①栄一郎:「──勝負じゃアッ!!」
(栄一郎、駆ける。)
①栄一郎:「オォォォォォォォォッ!!!!」
間。
垓:「…………立ったまま死によった……。
……かっこいー……。」
(垓、刀を降ろす。)
垓:「……ゴンドウさん。ホンマに、お世話なりました。」
(垓、お辞儀はしないが栄一郎を真っ直ぐと見る。)
間。
(シオン、部屋に入る。)
シオン:「終わった、か。」
垓:「ん。シオンちゃーん!
終わりましたえ~~
あら!シオンちゃん!えらいボロボロやない?
ウチにそない強いやつ、おりましたやろか!?」
シオン:「サカイ、程では、無い。
お前、骨は殆ど折れてるし、筋肉もちぎれまくり、だ。」
垓:「いやん、えっち。」
シオン:「……で、一年前の約束通り。
お前以外のカンナベ会の人間全員を殺すまで、殺さないでおいた、ぞ。」
垓:「ホンマどすなぁ。
このまんまやとボクは約束通り、シオンちゃんに殺されてまう。
でも、二言は無い。約束どすさかい。」
シオン:「そうか。じゃあ……」
(シオン、刀を振り上げる。)
垓:「せやけど……命が惜しゅうなってしもうてなぁ。」
シオン:「………………はぁ?」
垓:「ボクね?この一年で思ったんやわぁ。
ボクぅ……ホ~~~~~~~~~~~~~~ンマに、ヤクザが嫌いやねん。
せやから、ヤクザがまだぎょうさんおるうちに、死にとうおまへんなぁ~って。」
シオン:「…………。」
垓:「せやさかいなぁ?シオンちゃん。
約束、ちょいと延長してもらえまへんやろか?」
シオン:「は?」
垓:「ボクを殺すのはぁ……」
(垓、楽しそうにバっと手を広げる。)
垓:「世っっっっっ界中のヤクザ、みぃんなぶっ殺すまで!!!!」
シオン:「は……はぁ????」
垓:「ぶっ殺してもかまへんやつぶっ殺しまくる旅に出たい!!!
ほんで!みぃんな殺して殺して殺し回って!そんで、世界でいっちゃん最後の、嘘つきでバカでクズなボクをシオンちゃんに殺してもろて!!!」
(垓、恍惚とした笑みを浮かべる。)
垓:「…………さいっこ~やん……!」
シオン:「…………。」
(シオン、ドン引き。)
垓:「はははははは!!!ははははははははははははははははは!!!!
あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!」
───────────────────────────────────────
END