【失格連鎖シナリオ投稿】【一般参加台本】
[台本]失格を下ろす。
〇オオバ ヨウゾウ
■■■■、■■■■
恥の多い生涯を送ってきました、と自身に人間失格の烙印を押して落ち込む。
■■ ■■■■■■■■■■■■■。■■、■■■■■■『■■■■』■■■。
大庭 葉蔵という外面で隠した慟哭。併し、その嘆きには『人間賛歌』がある。
〇天犬 大火(あまいぬ たいが)
20歳、男性
恥の多い生涯を送ってきた、が人間相応の生き方ってのは往々にそういうもんだろう。
金色に輝く眼が緋く長い前髪から覗く、皮肉屋な男性。
〇小林 みどり(こばやし みどり)
二十代前半、女性
恥の多い生涯を送ってきました、でもそれを人間成長の糧として沢山のことを学びました!
緑色の眼、快活な笑顔。見た目通りの真っ直ぐな女性。
〇プレラーティ
年齢不詳、性別不詳
恥の多い生涯を送ってきた……のか?人間、相対的な生き物だし、比べてみよう。
暗い瞳の奥に隠していた幾重もの声が形を成した存在。
オオバ ヨウゾウ 不問:
天犬 大火 ♂:
小林 みどり ♀:
プレラーティ 不問:
※最後の■■はどなたがやっても大丈夫です。
↓これより下が台本本編です。
───────────────────────────────────────
大火:「恥の多い生涯を送ってきた。」
みどり:「恥の多い人生を送ってきました!」
プレラーティ:「恥の多い生涯だった?」
オオバ:「恥の多い生涯を送ってきました……。」
間。
大火:「が、」
みどり:「でも!」
プレラーティ:「のか?」
オオバ:「と……。」
間。
オオバ:「え?」
(ヨウゾウ、周りを見る。)
大火:「……なんだ?ここ?」
プレラーティ:「君たち、誰だい?」
みどり:「はい!わたし、”小林(こばやし) みどり”と言います!」
(4人、見知らぬ部屋でテーブルを囲んで座っている。)
オオバ:「……。」
大火:「……。」
プレラーティ:「…………あー……えーっと。
コバヤシミドリさん。」
みどり:「はい!」
プレラーティ:「ここはどこ?」
みどり:「分かりません!」
プレラーティ:「君たちどういう集まりだっけ?」
みどり:「知りません!」
プレラーティ:「先刻何していた?」
みどり:「覚えてません!」
プレラーティ:「…………。」
(プレラーティと大火、顔を見合わせる。)
大火:「……。」
プレラーティ:「……あー察するに……。」
大火:「ああ、察する通りだ。
そこのアンタもか。」
オオバ:「はい……残念ながら……。」
みどり:「?」
大火:「どうやらコバヤシさんは状況を理解していないみたいだが──」
みどり:「突如覚醒した意識、直前の記憶が無い。見知らぬ密室で関係性が不透明な四人。
端的に、探偵的に言うならば、”ミステリー”!”事件”!」
みどり:「ですよね。」
オオバ:「…………。」
大火:「素晴らしく正確な認識だ。
俺はアンタの認識を改めるよ、コバヤシさん。」
プレラーティ:「うんうん、そうだね。
ファーストインプレッションで直角的な馬鹿だと決めつけていたけれど、
その決めつけこそ安直で馬鹿だと思い知らされたよ。」
みどり:「いえいえ!わたし自身、猪突猛進気味だとよく同僚や同期や社長に言われてきましたから!
それ故に恥をかくことも多かったですし!」
オオバ:「ッ!!」
プレラーティ:「恥……。」
大火:「恥……恥ねぇ……。」
みどり:「?
どうかなさいましたか?」
大火:「いや、何。
妙に”恥”って言葉に引っかかる二人が居るなぁと思ってな。」
みどり:「と言うと、わたしと貴方以外のお二方の事ですか?」
大火:「何か……と、その前に、だ。
”言(げん)”を投げ掛ける作法って奴は守らなきゃな。
俺の名前は”天犬 大火(あまいぬ たいが)”。俺が俺と認識出来る呼び方さえしてくれりゃあ、なんて呼んだって良い。」
プレラーティ:「オレは”プレラーティ”だ。
和風な名前が続く中だと異物感があるかもしれないけれど、多様性の世の中だ。
君たちの”和”の中に捩じ込ませて頂けると助かるよ。」
オオバ:「……オオバ。オオバ ヨウゾウです……。」
みどり:「ほうほう。」
大火:「そうきたか。」
プレラーティ:「ん?どうして二人はあの人の名前を聞いて納得しているんだい?」
大火:「話してやりたい所だが、念には念を入れて。」
みどり:「そうですね。探偵的に言うならば、”今はまだ語るべき時ではない”かもしれません。」
プレラーティ:「便利で卑怯な保留だこと。」
大火:「まあ、大丈夫だと分かったらすぐにでも話すさ。」
オオバ:「……やはり、私の所為なのでしょうか。」
プレラーティ:「おや、何か心当たりが?」
オオバ:「いえ……ただ漠然と、私が悪い気がして……。」
大火:「……。」
みどり:「……。」
プレラーティ:「そう。
もしも君が黒幕で、その発言が主犯首魁の罪悪感、良心の呵責であるならば、
疾くボクたちを解放して欲しいものだね。
或いは、本当にそれが漠然とした予感だとしたら……」
(プレラーティ、口角を吊り上げる。)
プレラーティ:「君は、神様みたいな良い子だねぇ。」
(ヨウゾウ、椅子を倒して立ち上がる。呼吸が乱れ、今にも自分の喉を掻き毟りそうになる。)
オオバ:「ッ!!!!!
ちがッ!!!!!!!!私は!!!!!そんなつもりではッ!!!!違う!違う!!違う!!!」
(大火とみどりとプレラーティ、ヨウゾウの突然の取り乱しに驚愕する。)
プレラーティ:「な、なに!?!?」
みどり:「落ち着いてください!ヨウゾウさん!ヨウゾウさん!」
(大火、ヨウゾウを羽交い締めにする。)
大火:「おい!オオバ!正気に戻れ!!
チッ!!コバヤシ!そこの水をコイツに掛けろ!!」
みどり:「はいッ!」
(みどり、大火の指示通りに手早くヨウゾウに水をかける。)
みどり:「失礼しますっ!」
オオバ:「っぷわ……!
…………はっ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
大火:「……落ち着いたかよ。」
(大火、ヨウゾウを離す。ヨウゾウ、その場に力無く座る。)
オオバ:「は……はい……
そ、その……すいませんでした……」
(プレラーティ、ヨウゾウに目線を合わせて申し訳なさ気に喋る。)
プレラーティ:「あまり意味を孕んだ”言(げん)”では無かったのだけれど、
君にとっては酷く取り乱してしまう程に嫌だったんだね。
……申し訳ない、ヨウゾウ。」
オオバ:「い……いえ……私こそ、急に……」
間。(無言の中、水滴が落ちる音だけがする。)
(みどり、手をパンと叩く。それに三人がハッとしてみどりの方を見る。)
みどり:「状況が状況です。
このままあやふやに事を進めていても新たな謎がポンポコするだけだと思います。
ですので、ここで一つ。確認しておきませんか。」
間。
みどり:「皆さんにとって、今回の”解決”ってなんですか?」
プレラーティ:「え?ワタシはここからの脱出が皆の共通のゴールだと思っていたけれど、
もしかして認識違いだった?」
大火:「俺もそうだ。
だが、ちゃんと明言しておくのはアリだな。
もしかしたら、”ここに閉じ込める”のが目的のヤツが居たら”ややこい”からな。」
プレラーティ:「わおーここでデスゲームやバトルロワイヤル始めちゃったり?こんな狭い場所で?
さっきも言ったけれど、自分は脱出だよ。
特別に何か予定があった記憶は無いけれど、まあ、知らない所に居る意味も無いしね。」
オオバ:「右に同じく、です……。
ここから……早く抜け出したいです。」
大火:「俺もだ。
今が何日で何時なのかも分かんねーケド、大学があるんでな。」
みどり:「わたしもです!
良かったです!”主目的”は合致しましたね!」
大火:「って、なってくると、”どうやって脱出するか”だな。」
オオバ:「……見たところ、扉とかは特に無く……。
あるのは、私たちが座っていた椅子と円形の机、机の上のコップ、水。」
プレラーティ:「っえーい!!
…………椅子を壁にぶつけてみても壊れる気配無し。」
みどり:「現状、力技での解決は見込み無し。
脱出ゲームの要領で何か謎解きがある様子も無い。」
みどり:「迷宮入りですね!」
大火:「諦めんなよ。」
プレラーティ:「分かっている情報は、オレたちという存在だけ、ってワケだ。」
大火:「こんな状況じゃあ、はっきり言っちまえばアンタが頼りだ。」
オオバ:「え?わ、私ですか?」
大火:「ああ。現状の四人の発言で、唯一先に進んでいるからな。」
オオバ:「え?え?”私の所為”という発言ですか?
ただそう思う気がするだけで、もしも関係無かったら、皆さんの時間を無駄にしてしまう事になるかもしれません……。」
みどり:「関係無かったら無かったで”関係無い”という情報が手に入ります。
それは一見、無駄無価値に思えるかもしれませんが、
わたしたち人間は、そうやって歩んできた生き物です!
やりましょう!」
プレラーティ:「” Failure teaches success(失敗は成功の母)”ってヤツだね。
うん。良いんじゃない。
ただ。」
オオバ:「?」
プレラーティ:「さっきみたいにパニックを起こされるとボクは泣いちゃうね。」
オオバ:「す、すいません……。」
プレラーティ:「ちがうちがーう、君が謝る事じゃないさ。
むしろ、タイガとみどり。君たち、探偵ごっこ組さ。
ヨウゾウを追い込む様な言い方はしないでおくれよ?」
大火:「一発で地雷踏み抜いたのアンタだろうが。」
みどり:「言われずともだ、です!
ヨウゾウさん、貴方が何故自分の所為なのではと思ったのかを教えてくれませんか?」
大火:「漠然としているのは分かっている。
が、漠然と思うだけの材料が過去にあったりするだろ。
よくこういう事に巻き込まれるだの、不運だのなんだのな。」
オオバ:「不運……。」
間。
オオバ:「ハハハ……むしろ、不運に巻き込む側、振りまく側でしたね……。
私は、どうも、人と関わるのが不得手で……
とにかく気も心も弱くて、それで流されて……
……その結果、沢山の人を道連れに不幸にしてきました……。
本当に……恥ずかしいヤツなんです……。」
(ヨウゾウ、俯く。)
みどり:「…………どう思います?」
大火:「なんとも。
少なくとも、オオバは俺たち三人の中に見知った顔は無いんだよな?」
オオバ:「はい。いない、ですけど。」
プレラーティ:「じゃあ、君が不運を巻き込むとかは関係ないんだろうねぇ。
つぎつぎージャンジャン話してってー」
オオバ:「次、ですか。」
プレラーティ:「”人と関わるのが不得手”でどうしたの?
”気も心も弱くて、流されて”でどうしたの?
その”間”があって、結果そうなったんでしょ?
他の結果は?他の”恥ずかしい”事は?」
オオバ:「…………。」
プレラーティ:「さっき二人に” 追い込む様な言い方はしないでおくれ”とは言ったけれど、
ワタシたちは”君のカウンセリング”をやっているワケじゃあ無いんだ。
すまないが勘違いしないでおくれよ?」
オオバ:「…………。」
プレラーティ:「何より、君自身、そんなもの望んでないんだろ?」
オオバ:「……はい……はい。はい……!
そうです!そうなんです!」
プレラーティ:「え、え、え、え、え、な、な、なになになに。」
オオバ:「私は生まれたその時から異物だった!人間では無かった!中身が違ったんだ!
だのに外面(そとづら)は人間で、周りは人間に囲まれて……!」
プレラーティ:「……。」
オオバ:「だのに、偽っても隠れても逃げても……!
どんなに抜け出そうとしても!”人間が付き纏ってくる”……!!」
みどり:「……。」
オオバ:「なんなんだこの檻は……!
私を人間と扱わないでくれ……!
こんな落伍者(らくごしゃ)を……恥に塗れた私を……。」
大火:「……。」
間。
みどり:「ヨウゾウさん、沢山喋って下さりありがとうございます!
ささ!喉が渇いたでしょう!落ち着くためにも、どうぞ!」
オオバ:「はぁ……はぁ……あ……ありがとうございます……。」
プレラーティ:「……あ~……オレってお口チャックしといた方が良さげ?」
大火:「いや?むしろ情報引き出し上手だ。
オオバがダメにならない程度に続けてくれ。」
プレラーティ:「程々に頑張らせていただきまーす。」
間。(プレラーティ、少しリラックスした体勢で座り直す。)
プレラーティ:「しっかし……ヨウゾウ。君、面白い視点を持ってるねぇ。」
オオバ:「……え。」
プレラーティ:「中身は異物で、外面(そとづら)は人間で、周りは人間。
嗚呼。まるで飼い猫の中に放り込まれた野良猫か。
良いね。絵とか音楽とか始めてみたら?或いはもうやってたり?」
大火:「どうだろうな。芸術ってのは”コミュニケーション”ツールでもある。
オオバの激情がダイレクトに出ちまうって事はそれだけカロリーを使っちまうって事だ。
芸術が発散になるなら良いが、オオバみたいなヤツは往々にして絵描きとして生きる力が弱っちい事があるからな。」
みどり:「なんてひどい事を言うんですかタイガさん!
ヨウゾウさんはそんな弱っちい事なんて──」
(みどりと大火とプレラーティ、ヨウゾウの方を見る。)
みどり:「……無い、とは、言えないでいるのは、そう!
ファーストインプレッションの直角的な決めつけ、だからです!」
プレラーティ:「ちょっとぉ、それボクの言い回しー」
オオバ:「ハハハ……」
(みどりと大火とプレラーティ、ヨウゾウの方を見る。)
プレラーティ:「……暫定的に、探偵的に言えば、ヨウゾウが笑ったのって初めてだよね?」
みどり:「ちょっと!それわたしの言い回しです!」
オオバ:「ハハハハ……!
フフ……すいません。プレラーティさんの言うとおり、
実は実際に絵を描いていて、美術学校に通ったりしていたので、
その、びっくりして笑ってしまいました……。」
大火:「……。」
みどり:「……。」
(大火とみどり、ヨウゾウの発言を聞き、互いに目を合わせる。)
オオバ:「そして……アマイヌさんの言う通り、あまり絵描きを続けるには……”弱っち”かったです……。
……凄いですね……皆さん。」
大火:「ま、絵描きなんて、それこそ精神性の逸脱した、異物が集まるような場所だからな。
そんな所で天下一異物大会やったって、そりゃあ……」
オオバ:「自信はあったんです。」
大火:「…………あそう。」
オオバ:「それでも、その絵を見るのは、”人間”ですから……。
やっぱり、私は人間たちに”観る”に値するものは描けなかったですね……。」
大火:「…………。
やっぱさ。オオバって、人間の事を高く見積もってるよな。」
オオバ:「え?」
大火:「なんか……自分を下げて卑屈になっているって言うか、人間が”遥か雲の上の存在”って言葉回しだなって。
だから、最初に………………あ、えー……っと……」
プレラーティ:「ワタシが” 君は、神様みたいな良い子だねぇ”って言ったら取り乱した事?」
大火:「あッ!ちょっ!おいっ!!」
オオバ:「……大丈夫ですよ。もう取り乱したりしませんから。」
大火:「……そうか。
まあ、なんだ。オオバはなんで人間をそんな高値に置いてんだ?」
オオバ:「……………………。」
間。
オオバ:「分からないから、でしょうか。」
間。
オオバ:「私がすぐ出来ない事を何気無しに出来ていて、
私が考えない様な事ばかりをやっていて、言ってきて、
私は、人間が分からない。怖い。だから触れ難いんです。」
プレラーティ:「88万の超高級アイス前にしてる人の表情だ。」
大火:「そうだな。人間なんて88万の価値は無ェ。
せいぜい税込375円くらいの認識で良いんだよ。」
プレラーティ:「それなりにプレミアムな値段だねぇ。」
みどり:「きっとタイガさんの好きなアイスがそれくらいなんですね。」
大火:「うっせーな。
アンタと張り合うつもりは無いが、俺もかなり恥塗れだし、大勢巻き込んで来た自覚はあるから、
まあ、自分が人間未満って感じるのも分かるぜ。」
オオバ:「……。」
大火:「こんな事言われても納得できないのも、分かる。なんならこっちの方が嫌ってほど分かる。
……けどよ。”ちゃんと見てないのに高値扱いされる人間”は、堪ったもんじゃないと思うぜ。」
オオバ:「それは、どういう意味ですか……?」
大火:「なるべくちゃんと見てもらいたいもんだろ誰だって。
オオバだって、ちゃんと”人間失格扱い”されたかったんだろ。」
オオバ:「……ッ」
大火:「蔑みでも無く、哀れみでも無く、ただ、事実として。」
オオバ:「……。」
みどり:「事実、適切な位置が近づけば、”分かる”までのハードルが下がりますしね!」
オオバ:「コバヤシさん……。」
みどり:「わたしは、多分ヨウゾウさんとは真逆な性格で、
”分からないから突き進む!”の精神でした。
だけどそれはそれで、沢山失敗して、沢山恥をかいてきました。
勿論、何もかも失敗した訳では無く、時には思い通りになったり、大成功したり……。
アプローチは逆ですが、ヨウゾウさんも、そうですよね。」
オオバ:「……そうですね。
私の選択は間違いで、それ故に恥の多い生涯を送って来ました。
それでも、全てが全て間違いという訳ではなかったと思います。」
プレラーティ:「むつかしいよねぇ人間って。
画一的なマニュアル本なんてアテにならないし、
故にヨウゾウみたいに一線どころか三味線を弾くくらいの対応も、オレは支持するよ。」
みどり:「わたしかヨウゾウさんの極端な選択では無く、
自身の失敗、恥を回想して、自分を解装して、徐々に新たに改装していく。
そうやって塩梅の、適応の幅を広げるのが成長ですからね!」
オオバ:「……でも、その結果──」
みどり:「改装の結果、改良になるか改悪になるかは、その人それぞれですけどね!」
オオバ:「えぇ、でも、改悪してしまってはまずいんじゃ……」
みどり:「改悪しちゃった部分も”味”です!」
オオバ:「あ、あじ……」
みどり:「わたし、面接とかでよく使われる”短所は長所”っていうの好きなんですよね!
だって長所、短所。改良、改悪なんて、使いどころ選びでしかありませんから!」
大火:「まあな。
長所だ短所だなんていうのは実はマヤカシで、ただの”特性”ってだけだからな。」
プレラーティ:「え~?じゃあワタシの殺人教唆能力も~?」
大火:「投獄されろ。」
みどり:「その知識で事件解決の糸口に出来ます!」
オオバ:「…………。
コバヤシさんは凄いですね。
私が、改装した結果、改悪で、それで人を傷つけた……。
それを”味”と済ますワケには行かないと思います。」
みどり:「いいえ。それも味です。」
オオバ:「……え?」
みどり:「”味”というのは、美味しいものばかりではありません。
まずいのも苦いのも、味です。」
オオバ:「じゃあ、それでふんぞり返って良いって事ですか。」
みどり:「逆です。その不味さ、その苦味を”知っておく為”、”忘れない為”、”伝える為”。
誰かとの適切な距離を保つ為の、”自戒の味”です。」
オオバ:「…………。」
みどり:「ヨウゾウさんの”人間失格”は、自身の不味さを伝える為の”標識”なのだと思いますね!」
オオバ:「標識……。」
(プレラーティ、淡々と拍手する。)
大火:「……。」
みどり:「……。」
オオバ:「……。」
(プレラーティ、口を開くまでずっと拍手している。)
プレラーティ:「いいね。最初よりもヨウゾウの表情が明るくなった。
それで?どうやって脱出するんだい?」
一拍。
プレラーティ:「いや何。なんかヨウゾウの悩みが晴れて、
それで良かったねーハッピーで終わりそうな空気だったからさ。
いやいや、ゴールはここからの脱出でしょ?って思い出してもらおうと思ってさ。」
みどり:「……これが、”味”ですねっ。」
オオバ:「なるほど……理解です。」
大火:「だがプレラーティが言っている事も最もだ。
部屋の変化は──……」
みどり:「……壁、床、天井、変化無し!です!」
大火:「強いて言うなら心の扉が開けたかもな。」
プレラーティ:「別に上手くないよ~」
オオバ:「すいません。お役に立てなくて……。」
プレラーティ:「いやいや、謝ることじゃないよ。
疑問を持ったって確証を得たって、加点も減点も出来やしないってだけ。
そもそも0点スタートの加点方式なんだし。」
みどり:「最初にも言いましたが、”変化が無い”というのも大事な情報です!」
プレラーティ:「じゃ。かてーん。3ぽいんつ。」
オオバ:「あ、ありがとうございます……。」
(プレラーティ、机にだらんと身体を預ける。)
プレラーティ:「じゃあじゃあ、どうすんのー?探偵ごっこズ~?」
大火:「そうだな。」
みどり:「でしたら!」
プレラーティ:「お?」
オオバ:「?」
みどり:「”語るべき時”が来た、という事ですよ。」
プレラーティ:「ん。あ。ああ、ヨウゾウの名前に関する事ね。」
大火:「そうだ。」
オオバ:「……。」
みどり:「いままでのヨウゾウさんとの会話で、わたしもタイガさんも同じ推論が立っているのだと思います。」
大火:「故に、先んじて刺しておく。
俺は別にオオバが嘘を吐いているだとかは思っちゃいねぇ。」
プレラーティ:「ふむふむ。オレから見ても、嘘の挙動は無かった、と思うね。」
みどり:「改めて整理します。」
一拍。
みどり:「見たところ、扉とかは特に無く。
あるのは、わたしたちが座っていた椅子と円形の机、机の上のコップ、水。」
大火:「現状、力技での解決は見込み無し。
脱出ゲームの要領で何か謎解きがある様子も無い。」
プレラーティ:「……分かっている情報は、オレたちという存在だけ。」
みどり:「その上で、一つだけ、高確率で確かな事があるんです。」
大火:「アンタが”大庭 葉蔵(おおば ようぞう)”では無いって事だ。」
オオバ:「っ!!」
プレラーティ:「な、なんだってー!!」
みどり:「ヨウゾウさんの発言から、”太宰治(だざいおさむ)”作『人間失格』の登場人物、
大正末期から昭和初期を生きた”大庭 葉蔵(おおば ようぞう)”を”象っている”のは違いないと思います。」
大火:「しかし、オオバ以外の”俺たちという存在”の正確性は低い。
”天犬 大火(あまいぬ たいが)”、”小林(こばやし) みどり”、”プレラーティ”。
俺たち三人は確かめる術を持たない。まあ、プレラーティに関しちゃ思い当たりそうなモンがあるが、一旦保留だ。」
プレラーティ:「……なるほどね。
我々四人は皆、同じ様な年代と思われる服装。
そして、大正末期から昭和初期と現代とじゃ、大した差はないとも思うが、
それでも、言語感覚の齟齬が無さ過ぎる。」
オオバ:「故に、”少なくとも、私が大庭 葉蔵(おおば ようぞう)である事に齟齬が生じる。”」
大火:「その通りだ。」
プレラーティ:「その上で、” 別にオオバが嘘を吐いているだとかは思っちゃいねぇ”と思う理由も分かったよ。
だってボクたち自身が自分を”本人”だと認識しているから、だね。」
オオバ:「つまり、私たちは誰かを羽織らされたまた別の”誰か”の可能性がある?」
みどり:「なので、本当は”全員自身が名乗った存在ではない”可能性は孕んでいます。
それでも、ヨウゾウさんに関しては、わたしとタイガさんが共通して”違う”と言える材料がありました。」
大火:「一歩進ませた上で、俺たちの今回の”解決”は”脱出”だ。
脱出の為に、この事実は一歩、前へ進めるぜ。」
一拍。
大火:「アンタは、なんで”オオバ ヨウゾウ”なんだ?」
オオバ:「…………。」
間。
オオバ:「なんで、私は”オオバ ヨウゾウ”じゃないのに、そうだと思ったんだ……?」
プレラーティ:「とりあえず始まりは必要だったから、だろうね。」
みどり:「直感でも打算でも、続ける上での理由は”必要”。
では何が必要なのでしょうか。」
オオバ:「…………”ここから抜け出す為”?」
大火:「”ここ”とは、”どこ”なんだろうな。」
オオバ:「……分からない。分かりません。」
みどり:「では、”解決”の道を改めてみましょう。」
プレラーティ:「なるほど。”解決”のハードルを一旦下げるんだね。
次の階層へ進む為に、道順の再構築。」
みどり:「ヨウゾウさん。貴方が最も、まず”解決”したい事は、なんですか?」
オオバ:「…………。」
間。
オオバ:「私が人間の形をした異物である事を認識してもらえた。」
大火:「……。」
オオバ:「”人間失格”の烙印の熱は冷まされた。」
みどり:「……。」
オオバ:「……私は、これからどうすれば良いと思いますか?」
プレラーティ:「決まってるじゃないか。比較と省察だよ。」
オオバ:「比較と省察。」
プレラーティ:「そう。君は比較から”人間”というものを落第したんじゃあない。
ただただそうだと思い込んだに過ぎない。
それは省察に非ず、被害妄想さ。」
みどり:「自身が深く傷付かない為の盾ですね。」
大火:「誰かを傷つけない為の鞘でもあるな。」
プレラーティ:「さあ、ヨウゾウ。君の過去から省察して、自分と比較してみるんだ。
そしてその時にこそ、君の”分からない”への解が、道しるべが見えてくる。」
オオバ:「………………分かりません。」
オオバ:「だって、」
オオバ:「過去の私は、人間を”遥か雲の上の存在”と”高値に置いていたから”、
私の中の”人間の価値”が、”私が人間失格でいられる要因”を、棚上(たなうえ)に置いていたから。」
プレラーティ:「そうだね……。だからこそ、”人間”も、つまり周りの人たちも君と同様に”ちゃんと見ていなかった”。」
みどり:「……ああ。だから、”大庭 葉蔵(おおば ようぞう)”なんですね。」
大火:「……”大庭 葉蔵(おおば ようぞう)”は『人間失格』の登場人物。
だが、”人間”たちが見ているのは、”太宰治(だざいおさむ)が書いた『人間失格』”という外面(そとづら)で、
”大庭 葉蔵(おおば ようぞう)の生涯”、”『人間失格』の物語”という中身を見ちゃいない、か……。」
オオバ:「……『大庭 葉蔵(にんげんしっかく)』を、”高尚な文学”と”高値に置いていたから”、
”人間”たちも見ていなかった。読んでいなかった。」
プレラーティ:「だけど、それも是非もない事。事実、ワタシも『人間失格』を知らなかった。」
みどり:「『人間失格』と聞いて、作者を思い浮かべる人は多いですが、中身に言及する人は多くないですもんね。」
大火:「しかし、中身を見せる程の”熱量”は無く、それでも生きる為に、」
みどり:「わたしは──」
大火:「俺は──」
プレラーティ:「君は?」
オオバ:「私は、”道化の外面(おおば ようぞう)”を借りて羽織った。」
プレラーティ:「……うん。当然だけれど、それは決して悪いことじゃない。
正当な”生存戦略”だよ。」
みどり:「もしかしたら、その外面から興味を持って中身を見てくれるかもしれないですしね!
むしろ、そういう人をこそ大事にすると良いし、大事にしてくれる事が多いと思いますね!」
大火:「そもそも、人ってのは思いの外、悪意無く”俺たち(こころ)”を軽んじるモンだ。しゃーないしゃーない。」
オオバ:「フフフ……ですが、”しゃーない”で停まっては、ダメですよね。」
大火:「ダメってこたぁねぇよ。
でもダメだって思ったんなら、」
オオバ:「学ぼうとしないと、知ろうとしないと、ですよね。」
みどり:「そうですそうです!でもたまの休息を忘れてはならないですよ!」
オオバ:「はい。水でも1杯飲んで、気持ちを落ち着けます。」
間。
プレラーティ:「……フフフ。であれば、君がするべき事は?」
オオバ:「私の今、これから省察して、自分と比較する事。」
大火:「んじゃあ、その為に捨てるべきもの……いや、”下ろす”べきものは?」
オオバ:「”大庭 葉蔵(おおば ようぞう)”という羽織った役。」
みどり:「では、そうする為には?」
間。
オオバ:「──────。」
(誰かが手を叩く音が響く。)
プレラーティ:舞台が、暗転する。閉じた狭間は開かれる。
間。
大火:恥の多い生涯を送ってきた。
みどり:恥の多い人生を送ってきました!
プレラーティ:「恥の多い生涯だった?」
オオバ:恥の多い生涯を送ってきました。
間。
大火:が、人間相応の生き方ってのは往々にそういうもんだろう。
みどり:でも!それを人間成長の糧として沢山のことを学びました!
プレラーティ:「人間、相対的な生き物だし。目を開けて、比べてみようよ。」
間。
オオバ:と……いまは自分には、幸福も不幸も”分かりません”。
オオバ:「だって────」
間。
(どこか遠くで、朝の気配が鳴る。)
間。
(■■、目を覚ます。数刻、ぼーっとしている。)
間。
(■■、気持ちよさそうに伸びをして、深呼吸をする。)
間。
(■■、起き上がる。)
間。
(誰かが手を叩く音が響く。)
───────────────────────────────────────
END