[台本]紅遠風財が泣き喚く
世界設定、場面情景
これは作家もどきと愉快な仲間たちのお話その3。
登場人物
〇紅遠 風財(くおん ふざい)
年齢不詳、性別不問(笑)
誰かにとっての最優にして、理想の作家、脚本家。
ウエスタンっぽい服を着ている長髪の女性っぽい恰好をしている。
事務所というか、執筆部屋を持っている。名前はペンネーム。
〇御鳥 喜梨香(おどり きりか)
年齢不詳、女性
紅遠風財の執筆部屋に時たま現れる女性。
編集者っぽい感じの事をしているけれど全然そんなんじゃない。
良い人。
○碧延 宝千(へきえん ほうち)
24歳、男性
紅遠風財の執筆部屋に入り浸っている一人称が“拙(せつ)”の男性。
紅遠 風財をよく知っていると自負しており、よくからかっている。
悪い人じゃないけど良い人じゃない。名前はペンネームらしい。
紅遠 風財♀:
御鳥 喜梨香♀:
碧延 宝千♂:
これより下から台本本編です。
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(風財、難しい顔しながら執筆している。)
風財:「…………。」
(宝千、ソファーを持ち上げている。)
宝千:「ふっ……!」
喜梨香:「オーライ、オーライ、オーライ。
ストーップ。」
宝千:「よいっしょ……と……!」
(宝千、ソファーを降ろす。)
喜梨香:「うんうん、良い感じじゃないですかー?」
宝千:「もう動かせないですよ。拙(せつ)、疲れましたので。」
喜梨香:「大丈夫ですよ~お手伝い、ありがとうございます。ホウセンさん。」
宝千:「宝千(ほうち)です。
それにしても、このソファーどうしたんですか?」
喜梨香:「くおんちゃんがェエメゾーンしたらしいですよ?」
宝千:「ほう、あの地べた族の風財(ふざい)センセーが。
てっきり御鳥(おどり)さんの私物かと思いましたよ。」
喜梨香:「いやいや、流石の私もそんなことしませんよー」
宝千:「あの机もあのテレビも、プレステ1から5まで置いていって勝手に光回線通した方がなんかいってらっしゃる。」
喜梨香:「行く行くはこの部屋、このマンションの賃貸人になろうと思ってます!」
宝千:「突然の狂気。」
喜梨香:「そんなー急に褒められても~」
宝千:「褒めてませんよ。」
喜梨香:「うふふふふ~~~」
宝千:「はははははー」
風財:「うんち~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」(泣きながら)
喜梨香:「くおんちゃん!?!?」 ※同時に。
宝千:「フザイセンセー!?!?」 ※同時に。
風財:「うんちうんちうんち~~~~~~~~~~!!!!!」
宝千:「どどどどどうなされたのですかフザイセンセー!?」
喜梨香:「トイレ行きたいの?!良いんだよ!?ここはくおんちゃんのお部屋なんだから誰かの許可なんていらないよ?!」
風財:「うんちなんだ~~~~~~~~~~~~!!!」
宝千:「どんな状況でも“センセーと呼ぶな!”と飛ばしていたのにその余裕すら無いとは……」
喜梨香:「疲れてるのかな。」
風財:「うんち~~~~~~」
宝千:「疲れてますね。」
喜梨香:「最近仕事から帰宅するの0時回るのがストレスって言ってたもんねー」
宝千:「そうでなくともこのストレス社会、生きているだけで自ずと疲れが貯まりますからね。」
喜梨香:「ああ~~~ヨシヨシ~~~疲れたよね~くおんちゃん~
世の中はクソ、うんちだもんね。そりゃうんちうんちになっちゃうよねー」
風財:「うんち~~~~」
宝千:「仮にも女性の容姿と女性が揃いも揃ってうんちうんち連呼するの辞めてくださいよ。」
喜梨香:「じゃあ男の人は良いんですか?!
それってジェンダー差別ってやつじゃないですか!?」
宝千:「その方向でポリコレ振りかざす人初めて見ました。」
風財:「あ~~~~~なんでボクはこんな話を書いてるんだ~~~~~」
宝千:「やっとまともな言語を発してくださった。」
風財:「うっうぅ……最低なのはボクだ……ボクなんだぁ……」
喜梨香:「あ~あ~あ~~まーた書いてる話の登場人物に影響されてる。
次に出る話はうんち連呼する人が出るのかなー?」
宝千:「フザイセンセーの作風的に無いと思いますよ。無いですよね?????」
風財:「センセーと呼ぶな~~~」(泣きながら)
喜梨香:「くおんちゃんずーっと泣いてる~かわいそうかわいいー」
宝千:「ふむ、いままでも突然ヒステリックになる事はありましたが、ここまでのは初めてですね。
フザイセンセー、少し拝見しても?」
風財:「うんち~~~~~~」
喜梨香:「良いって言ってらしゃいます。」
宝千:「意思疎通成功させないでください。」
間。
宝千:「どれどれ……」
間。
宝千:「なんだ、いつも通りじゃないですか。」
喜梨香:「いつもどおり?」
宝千:「いつも通り、哀れな人を書いてます。」
喜梨香:「いつもどおりですねぇ。」
風財:「うっう……そう……また人を不幸にしてる……
作中の子に自分の事を“最低”って言わせてるけれど、こんなんばっかり書いてるボクこそ最低なんだ……
うんちなんだ~~~~~~~~~~~~~~」
宝千:「…………一体何が……。」
喜梨香:「ずっとそういうの書いてたから、そういう感情が、うんちが溜まっちゃったんだね……」
宝千:「それは意味が変わるので辞めていただけますか。」
風財:「ハッピーな話を書きたいよ~~~~」
喜梨香:「くおんちゃん、それずっと言ってるもんねー」
宝千:「とは言え、フザイセンセーの作品は基本的にハッピーエンドです。
過程は悲惨だったりするかもしれませんが、最後は丸く収めてるじゃないですか。」
風財:「終始ハッピーしたい。」
宝千:「フザイセンセーにそれは無理です。」
風財:「そんな~~~~~~~~」
喜梨香:「くおんちゃんが100%コメディで一切暗くない話って思ってる自作とかも、世間的にはシリアス入ってる扱い受けますもんねー
うん。くおんちゃんには無理だよ。」
風財:「そんな~~~~~~~~~~~」
宝千:「根っこの暗い部分がどうしても出ちゃうんですね。」
風財:「性根とは……どんなに隠しても……石の下からミミズのように這い出てくる……!」
喜梨香:「イタリアのギャングみたいな事言い出しちゃった。」
風財:「あ~~~~んボクはうんちなんだ~~~~~!」
喜梨香:「くおんちゃんの髪も服装も全体的に茶色だもんねぇ。」
風財:「あ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」
喜梨香:「更に泣いちゃった。」
宝千:「当然でしょう。」
喜梨香:「くおんちゃんはもうお話書きたくないの?」
風財:「あ゛~~~~~~ッ────」(ピタっと泣き止む。)
間。
風財:「いや、そんな事はない。」
喜梨香:「そんな事はないんだ。」
宝千:「そんな事はないんですか。」
風財:「ボクはこの苦しみの後に──」
宝千:「執筆作業を苦しみと評さないでください。」
風財:「──独特の開放感や、その後の登場人物達の幸福を知っているから、書く手を止めるわけにはいかない。」
喜梨香:「滅茶苦茶キリリとしてる。」
宝千:「さっきまで泣き喚いていたのに。」
喜梨香:「それはそれとして偉いよ~~~~~くおんちゃん~~~~~~」
風財:「ふふふ。
これがボクの唯一の娯楽ですからね。」
喜梨香:「かわいそう。」
風財:「ので、書くのです。
いつか、彼らの幸福な日々を書くためにも頑張ります!」
宝千:「素晴らしい。その意気です。」
喜梨香:「でも今のところ全然彼らの幸福な日々とか書いてなくない?」
風財:「あ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!」
宝千:「また泣いてしまわれた。」
喜梨香:「ありゃりゃりゃ……」
風財:「やっぱりボクはうんちだ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!」
宝千:「またうんち言い出してしまった……」
喜梨香:「今日はそういう日ですね。」
宝千:「そうですね。」
喜梨香:「いつもはくおんちゃんがお夕飯作ってくれるけれど、今日は私が作りますね。」
宝千:「おや、忝ない。」
喜梨香:「ホウセンさんには作りません。」
宝千:「ホウチです。
で、何を作られるのですか?」
喜梨香:「ん~~~まだ買い出し行ってないので何とも言えないですけども、
そうですねー……」
間。
喜梨香:「カレーな気分です!」
宝千:「最悪。」
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END