[台本] 1+8001379...
・明詰 草司(あかつめ そうじ)
男性
・神指 広葉(かんざし こうよう)
男性
明詰 草司 ♂:
神指 広葉 ♂:
※男性サシの本編ですが、不問という事で扱いで構いません。
↓これより下が台本本編です。
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草司:「広葉(こうよう)………………お、俺……ひ、人殺しちゃった…………」
間。
広葉:「…………ん?」
(草司、膝から崩れ落ちる。)
広葉:「……。」
広葉:十年来の友人、明詰 草司(あかつめ そうじ)の家を訪ねに行ったら、
突然そう告げられた。
広葉:「えー……っとー……誰殺したの?一人?」
(草司、顔を広葉の方へ向ける。)
草司:「ぇ……?あ……一人……え、えっと……俺の、上司……」
広葉:「へぇ~ヤな奴だったの?」
草司:「えぇ?あ、う、うん……い、嫌な人ではあったと思う……」
広葉:「で、うぜー!ってぶっ殺したわけ?」
草司:「ちっ!違う!違うんだっ!…………違う……こ……殺す気は……なッ、な、無かったんだ……」
(草司、再び蹲る。)
広葉:「…………。」
草司:「あの人が……横領、していたんだ……
そ、それを、あの人の家行って、指摘、したら……全部俺の所為にするって……ッ」
(草司、ぽつりぽつりと喋り出す。次第に震え出す。)
草司:「じ、自分は信用されているから……ッ、積み重ねがあるから……ッ!
けどッ俺はまだ平社員だしッ、し、仕事がロクに出来ない木偶だからってッ!
罪を押し付けてもッ、周りは何も無い俺の言う事を聞かないってッ!!」
(草司、気が動転し始める。)
草司:「あッあああああアイツッ!笑ってたッ!
俺の事を犯罪者扱いして……ッ!お、おれオレ俺ッ!何もしてないのにッ!!
俺は何も悪くないのにッ!!!!」
(草司、血の気が引く。)
草司:「…………………………その場にあった灰皿で、殴っちゃったんだ……」
(草司、項垂れる。)
草司:「どうして……こんな事に…………
俺……本当に犯罪者になっちゃった……」
(草司、啜り泣く。)
広葉:「……。」
間。(広葉、草司に目線を合わせる様にしゃがむ。)
広葉:「で?」
草司:「…………えぇ……?」
広葉:「ソウジはどうしたいんだ?」
草司:「……どう、したい……?」
広葉:「自首する?」
草司:「………………こわい……怖いよ……
自首したら……どうなっちゃうんだ俺……
こわい……こわい……」
広葉:「……自首する意志は無し、と。」
(広葉、立ち上がる。)
草司:「……コウヨウ……?」
広葉:「その殺した奴の家ってどこ?」
草司:「え……?」
広葉:「そいつん家で殺しちゃったんでしょ?
一軒家?マンション?一人暮らし?」
草司:「えっと、一軒家で、一人暮らし、だと思う……。」
広葉:「お~それは好都合~」
草司:「コウヨウ……?」
広葉:「いや~いつもだったら徒歩だったけど、たまたま車で来てて良かったわ~」
草司:「……。」
広葉:「なーにぼさっとしてんのさ。ほら、行くぞ。」
草司:「……何処に?」
広葉:「海!」
草司:「えぇ……?」
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広葉:「っえーい!一丁上がりィ!!」
草司:「えぇ……」
広葉:「家の方の指紋も隅々拭き取ったし、飛沫した血とか、ソウジの唾とか体液も残ってない。
死体はぁー……まあ、上がってこない事を祈る他無いな。
ちゃんとセメント漬けにはしたけれど、もしかしたらもしかするし、油断は出来ないよなぁ。」
草司:「何考えてんのコウヨウ……?
てか、なんでお前の車ん中、ブルーシートとか軍手とか……なんか……その、そういうのに特化したモンが乗せてあんの……?」
広葉:「んー?」
(広葉、海の方を見る。)
広葉:「僕ってさ。用意周到だよね。」
草司:「…………ん?あ、ああ。うん。」
広葉:「その一環だよ。」
草司:「……?」
広葉:「有意義な使い道が出来て良かった。」
草司:「それは──」
広葉:声を掛けられた。
僕たちは声の方へ意識を向ける。
草司:狼狽する年配の男性。
嗚呼。見られたんだ。俺たちがやった一部始終を見られたんだ。
広葉:「あ~しゃーねーかー」
草司:「え?」
広葉:「本当にごめんなさいねってッ!!」
(広葉、お爺さんの後頭部を鉄パイプで横薙ぎに殴る。)
草司:「コウヨウッ!?!?!?」
広葉:「…………うん。ちゃんと死んでる。
本当に申し訳ない。」
草司:「な…………何やってんの!!!!!何考えてんの!!!!!!!!!!!!!!!」
広葉:「ん。僕らのやっている事を見られてしまったんだ。口封じするしか無いでしょ。
それはそれとして本当に申し訳ないと思っている。」
草司:「そんな軽い感じで済まして良い事じゃないだろ!?」
広葉:「そんな事言われてもな。
やってしまったものはもうどうしようもない。
騒いだって時間は戻らない。」
草司:「……そりゃ!…………そう……だけど……」
広葉:「さて、どうしたものか。」
間。
広葉:「どこ行きたい?ソウジ?」
草司:「えぇ?」
広葉:「申し訳ないが、僕と一緒に逃亡生活だ!」
草司:「…………えぇ……?」
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広葉:「このトルタンタロンってやつ旨いな!」
草司:「……初めて海外来た……。」
広葉:「あそうなんだ。
……いやーまさかソウジが南国行ってみたいって言い出すとは思わなかったなー」
草司:「……うん。なんか、コウヨウにどこ行きたいか聞かれた時、そう思ったってか、口をついて出た……。」
広葉:「へぇ~」
(広葉、トルタンタロンを食べる。)
草司:「…………なあ、コウヨウ。」
広葉:「ん~?」
草司:「何を考えてるんだ……?」
広葉:「お前と一緒の旅、楽しいなって考えてる。」
草司:「……。」(唖然としている。)
(草司、広葉にだけ聞こえる声で喋りかける。)
草司:「なんでその過程で何人か殺したんだよ……」
広葉:「何人かじゃない。8人だ。」
草司:「殺す必要無かったろ……?!」
広葉:「ああ。本当に申し訳ないと思っている。」
草司:「………………。」
(広葉、スマホを見る。)
広葉:「……。」
草司:「どうしたんだコウヨウ。」
広葉:「んー?僕たち関連の事、ニュースになってないか調べてる。
まだ大っぴらにニュースだのなんだのってのは無いね。」
草司:「……そっか。」
広葉:「……ほっとした?」
草司:「全く、全然。
……俺のやらかした事が、こんなに人を巻き込むだなんて思っていなかった……。」
広葉:「…………後悔してる?」
草司:「当たり前だろ。」
広葉:「……そうだよな~」
草司:「俺たち……これからどうなるんだ……?」
広葉:「…………。」
間。
広葉:「まあ、今後色んな所転々としながら、いつかは自国に戻れると良いな。」
草司:「良いなって……」
広葉:「少なくとも、暫くは逃亡生活ってのは変わらない。
一応、有り金全部下ろしてきて換金しているけれど、果たしてどれくらい保つか。」
草司:「……。」
広葉:「もしもの時は日銭稼ぎだな。
安心してよ。ちゃんと二人分稼ぐから。」
草司:「何言ってんだよ。俺だってやるよ……。」
広葉:「そう?」
草司:「なんでお前ばっかりに大変な思いさせないといけないんだよ。」
広葉:「大変?言っている意味が分からないな。」
草司:「……はぁ。」
広葉:「ちょっとトイレ行ってくる。」
草司:「おう。」
(広葉、去る。)
草司:「…………本当にこれからどうなるんだろう……。」
(草司、自分のスマホを取ろうとポケットに手を突っ込む。)
草司:「…………ん?あれ……?
俺のスマホ…………あっ」
(草司、椅子に身を預ける。)
草司:「コウヨウに置いていけって言われたんだった。
…………自分はちゃっかり持ってきてるのに……。」
間。
草司:「……俺たち……どうなるんだろう……
……コウヨウは、何を考えてるんだろう……
…………俺は、どうすれば良いんだ……。」
(草司、項垂れる。)
草司:「…………え?なんですか?
……あー……すいません、日本語かロシア語しか分からなくて……」
間。
(広葉、戻る。)
広葉:「ただいまー」
間。
広葉:「……ソウジ?」
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~どこか~
草司:「はぁー……まさかまさかだ……」
(草司、両手両足を縛られて目隠しもされている。)
草司:よく分からないけれど、誘拐されてしまった。
草司:「なんで?」
(草司、喋りかけられる。)
草司:「あ、すいません。本当に日本語とロシア語以外分からないんです……
……強いて言えばアイヌ語ならば……」
間。
草司:「……何処か行っちゃった。
……なんで?」
間。(草司、身体を動かしてみるが、無駄だと悟る。)
草司:「……駄目か。」
間。
草司:なんでこんな事に……
間。
草司:………………。
間。
草司:…………。
間。
草司:……。
間。
草司:嗚呼。これが報いなのかもしれない。
間。
草司:「……え?何?」
草司:悲鳴が聞こえる。銃声も聞こえる。破壊音も聞こえる。
間。
草司:「…………よく分からないけれど、
俺の一生、これで終わりなんだろうな。」
間。
草司:悲鳴が近付いて来る。銃声が近付いて来る。破壊音が近付いて来る。
広葉:「ソウジ!!!!!」
間。
草司:「…………え?」
広葉:「大丈夫かソウジ!怪我は?!意識はしっかりしてるか!!!」
草司:「こ……コウヨウ……?」
広葉:「今縄外すからな……!」
草司:「……え、あ、お、おう……。」
(広葉、草司の縄を解く。)
草司:「あ、ありがとうコウヨウ……な、なあ、何が──」
広葉:「待て。」
草司:「え?」
広葉:「……目隠し……は……ずっとしとけ……」
草司:「はあ?なんでだよ。」
広葉:「あっ」
(草司、目隠しの布を取る。)
草司:「………………え?」
広葉:「……。」
草司:唖然とした。
死屍累々。その言葉の意味そのままの景色が辺りに広がっていた。
視覚を通して脳が状況を飲み込み始める。
嗅覚が働き始める。鉄とメチオニンの臭い、血肉の臭い。焦げ付く臭い、硝煙の臭い。
嗚呼。理解した。
草司:「…………コウヨウ、これ、お前がやったのか?」
広葉:「……。」
草司:耳が痛い。手汗が止まらない。
コウヨウが何を言うのかと、唾を飲む。
広葉:「……本当に申し訳ないと思っている。」
草司:「…………はぁ……?は?はあ?な、何言ってるんだ……?」
広葉:「ソウジを怖い目に合わせて申し訳ない。」
草司:「…………な、何が、あったんだ……?
てか!お、お前!!コウヨウは大丈夫なのかよ!そっ、そんな!血塗れで!!」
広葉:「大丈夫。これ全部返り血だから。
何があったかはすがらに話すから。とにかく、ここから出よう。」
草司:「あ、ああ……。」
間。
草司:「……なんで?」
広葉:「分かんない。
分かんないけれど、ソウジはこいつらに拐われた。」
草司:「地元のマフィアに????」
広葉:「うん。ソウジを探す過程で分かった。
外国人をよく拐ってるらしいよコイツら。
ただ理由は分かんない。だから怖かった。何されるか分からなくて。」
草司:「…………コウヨウ……なんで、そこまで──」
広葉:「友達だからだよ。」
草司:「………………それだけで……?」
広葉:「それだけだよ。」
草司:「それは、俺以外であってもそうできるって事?」
広葉:「そうとも。
これがお前じゃなくても、葵(あおい)でも、釣鐘(つりがね)でも、笛張(ふえばり)でも、土耳古(どみこ)でも。
友達であれば僕はこの状況から助け出す。」
草司:「…………お前、凄いな。」
広葉:「それだけ大事なんだよ、お前たちの事が。」
草司:「……。」
間。(広葉、立ち止まる。)
広葉:「それだけ大事だから。」
草司:「え、なに。どうしたんだよ。」
(広葉、草司に鞄を渡す。)
広葉:「この鞄の中に僕の全財産が入ってる。」
草司:「……は?」
広葉:「あと、これも。
僕のスマホ。これ持って、ここに行って。」
草司:「え。」
広葉:「僕の知り合いが居る。
あいつを頼れば、元の生活に……戻れる、とは……完全にとはならないけれど、多分どうにかしてくれるから。」
草司:「ど、どういうこと????」
広葉:「何も考えずに南国でこの国を選んだってワケじゃないって事。」
草司:「ちょっちょっと待って何?」
広葉:「僕は用意周到ってハナシ。」
草司:「だから待てって!!!!」
間。
草司:「……コウヨウ。どういう事?何考えてるんだ?」
間。
広葉:「早いけどさ。」
広葉:「お別れだ、ソウジ。」
(広葉、寂しそうに笑う。)
間。
草司:「……は?なんで?」
広葉:「僕さ。このマフィアの人ら皆殺しにしたんだけどさ。
それで、なんか幹部っぽい人が言ってたんだよね。」
広葉:「“お前の事は全世界の仲間たちに通達した。お前は死ぬまで地獄が続く。”」
広葉:「ってさ。
多分、この人たちが言ってた事は本当なんだよね。
調べる過程でさ。ちゃんとヤバい奴らでさ、バンデラ・アラ……なんとかみたいな奴らの傘下みたいなのでさ。
……ちょっとちゃんとヤバそうなんだよね。」
草司:「……。」
広葉:「僕の地獄に、ソウジが付き合う必要は無いよ。」
間。
草司:「なんだよそれ。」
広葉:「……本当に申し訳ないと思っている。
正直、こんな大立ち回りしないといけない事になるなんて思わなかった。
本当は、もっと楽というか、ソウジが落ち着ける時間を作りたかったのに。」
間。
広葉:「悪かったな、ソウジ。」
(広葉、去ろうとする。広葉の手を握る。)
草司:「待てよ。お前はどうなるんだよ。」
広葉:「ん?
……さあ。」
草司:「さあ、って……」
広葉:「なに。別に死ぬ気は無いよ。
今回、銃火器持った集団相手にしたって死ななかったんだ。
どうにかなるさ。」
草司:「……その鉄パイプで……一体……」
広葉:「78人。全員殺した。」
草司:「78人…………?
お前……ずっと数えてたのか……?」
広葉:「別に意識的に数えてた訳じゃないよ。
なんか、自然と数えてた。」
草司:「…………。」
広葉:「……じゃ。ま。そういう事だから。」
(草司、広葉の手を離さない。)
広葉:「…………ソウジ。離して。」
草司:「…………。」
広葉:「……ソウジ。この手を離せば元の生活に戻れるかも知れないんだよ。」
草司:「戻れねぇよ。」
広葉:「どうして?」
草司:「コウヨウの言う“元の生活”にはお前は居ないんだろ。」
広葉:「…………。」
草司:「だったらそれは元の生活なんかじゃねぇよ。」
広葉:「……でも、この先は──」
草司:「でもじゃねぇよ!!!」
広葉:「──ッ」
草司:「お前が言ったんだろうが!“僕と一緒に逃亡生活だ”って!!
“僕の地獄”だァ?!
違うだろう?!?!元々は“俺の地獄”だった筈だろ!!!!
それを!お前は!!お前はッ!!!!」
広葉:「…………。」
草司:「……………………連れて行け。」
広葉:「……え?」
草司:「俺も行く。その地獄とやらに。」
広葉:「……なんで。」
草司:「これは、」
間。
草司:「俺が始めてしまった。
……始めた。」
間。
草司:「“俺たちの地獄”なんだから。」
間。
広葉:「ソウジ、頭おかしいね。」
草司:「はあ?お前には言われたくねぇよ。」
広葉:「本当に申し訳ないと思っている。」
草司:「そればっかりだな。
……これからどうする。」
広葉:「本当に、僕と一緒に行くの?」
草司:「そうだって言ってんだろ。」
広葉:「…………そっか。」
間。
広葉:「じゃあ、頑張って生きるか、この地獄を。」
草司:「おう。」
草司:それからの日々は本当に地獄だった。
突然命を狙われた。沢山怪我をした。眠れない夜を過ごした。
広葉:降りかかる火の粉を払う様に、鉄パイプを振り回す。
その度に殺した。その度に殺した。その度に殺した。
時には1人を、時には10人を、時には100人を。
草司:俺たちに、安寧は無い。安心は無い、安定は無い。
広葉:僕たちはいつまで生きていられるだろうか。
草司:俺たちはいつまで続けられるだろうか。
広葉:僕は、いつ、報いを受けるのだろうか。
草司:俺は、いつ、本当の地獄に堕ちるのだろうか。
間。
広葉:それでも。
草司:それでも。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~どこか~
(草司と広葉、何処かの廃ビルの屋上。)
草司:「俺たち、まだ生きてるな。」
広葉:「うん。まだ続けられてるね。」
間。
広葉:「いっぱい殺しちゃったなぁ。」
草司:「…………。」
広葉:「800万1379人、か。」
草司:「……。」
広葉:「地獄どころか、大地獄だろうなぁ。」
草司:「よくそんなに数えてられるな。」
広葉:「数えなきゃ。僕の都合で殺したんだから。」
間。
草司:「怪我、大丈夫なのかよ。」
広葉:「怪我?してないけど?」
草司:「もうそういうの良いから。」
広葉:「…………まあ、うん。
大丈夫。そんな大したこと無いから。」
草司:「そっか。なら。良い。」
広葉:「そっちこそ、僕以外の人怖くなくなった?ちゃんと。」
草司:「……………………いや。ちょっと、暫くは目合わせるの怖いかも。」
広葉:「んははははは。」
草司:「笑い事じゃないんだが。」
広葉:「本当に申し訳ないと思っている。」
草司:「……。」
間。
草司:「なあ、コウヨウ。」
広葉:「なに?」
草司:「なんでそんなに沢山人殺したんだ。」
広葉:「成り行き?」
草司:「そんな曖昧な理由じゃないだろ。」
広葉:「なんでそう思う。」
草司:「そんな曖昧なやつが殺した数を正確に覚えてるかよ。」
広葉:「そういうサイコパスなのかもよ?」
草司:「そういうやつじゃないだろ。お前。」
広葉:「……。」
草司:「コウヨウ。お前、人を殺す度に言ってたよな。
“本当に申し訳ないと思っている”ってさ。」
広葉:「…………。」
草司:「あれ。軽く言ってる風だったけどさ。
その都度、本当に、本気で思ってたんだろ?」
広葉:「………………。」
草司:「……嫌なのに、本当に申し訳ないと思っているのに、
なんで人を殺し続けたんだ。」
広葉:「……………………。」
草司:「………………。」
広葉:「…………。」
草司:「……。」
広葉:「……嫌いな教訓話があるんだ。」
草司:「…………ん?うん。うん?」
広葉:「二人の罪人が居た。
二人は同時に死に、二人は一緒に天国と地獄の分かれ道に立っていた。
そこに天使が降りてきてこう言うんだ。
“二人のうちどちらか一方を地獄に落とし、一方を天国へ連れて行きましょう。”
すると片方の罪人が言った。まあ、分かりやすくこっちをAと呼称するか。
“であれば私ではなく彼を天国へ連れて行ってください。”
そしてもう片方の罪人Bは、Aに感謝を述べるんだ。」
間。
広葉:「それで天使はどっちを天国に連れて行ったと思う?
…………Aの方なんだよね。
理由は単純明快。ドングリの背比べながらも、Aの方が善性を示したから。」
間。
広葉:「この話、どう思った。」
草司:「…………正直何も。」
広葉:「……。
僕は、最悪だなって思ったんだ。
AはBを助けたかったのに、結局Bは助けられなくて、
Bからの感謝の気持ちも、Aの善性も蔑ろにする。」
間。
広葉:「でも、この世は割とそういう世界だ。
きっとあの世もそういう世界なんだろうなって思う。」
草司:「………………は?」
間。
草司:「それで、人を殺し続けてたのか?」
広葉:「うん。
僕たちは罪人だ。その一点では相違は無い。
けれど、
1人を殺した罪人。
800万1379人を殺した罪人。」
間。
広葉:「どちらが地獄へ行くべきかは、明白でしょ。」
草司:「………………。」
広葉:「始まりはソウジだったかもしれない。
けれど、800万1379人も殺したのは、誰かのせいでも無く、僕の意志だ。僕の行動だ。僕の罪だ。僕の悪性だ。」
間。
広葉:「何度でも言うよ。
……いいや、そういえば、言った事無かったかも。」
間。
広葉:「ソウジ。僕はね。友達には幸せで居てほしいんだよ。
その為なら、80億の人間だって犠牲にする。」
草司:「……その場にお前は居ないんだろ。」
広葉:「うん。度外視してる。」
草司:「そんなんで幸せになれるわけないだろ。」
広葉:「時間が経てば忘れるよ。人を殺してしまった事も。僕の事も。」
草司:「忘れられるわけ無いだろ。」
広葉:「忘れて欲しい。」
間。
広葉:「少なくとも、世界はソウジの事を忘れてる。」
草司:「…………どういうこと?」
広葉:「あれから毎日、ソウジ関連のニュースを探し続けてた。
けれど、いままで一度たりともヒットしない。
それどころかソウジの上司の横領が明るみになって、上司が行方を晦ました事になってる。
………誰もソウジが殺しただなんて思ってないよ。」
草司:「…………。」
間。
広葉:「ソウジ。お前は地獄から抜け出せるんだよ。」
草司:「……。」
広葉:「……。」
草司:「……何度も言わせるなよ。
これは俺とお前の地獄だ。
抜け出すんだったらコウヨウも一緒にだ。」
広葉:「無理だよ。僕は既に、もう僕自身の地獄を作っている。」
草司:「…………。」
広葉:「……笑ってくれよ。喜んでくれよ。」
草司:「…………はぁー……」
間。
草司:「無理に決まってんだろ。」
(草司、広葉の方を見る。)
草司:「俺は、あの時、お前に縋ったのを後悔してる。
コウヨウを地獄に付き合わせてしまったって後悔している。」
間。
草司:「けれど、それと同じくらい、感謝してる。」
広葉:「え?」
草司:「こんな俺を見限らないで居てくれてありがとう。」
広葉:「…………。」
草司:「俺、あの時、正直怖かったんだ。
お前が急に来て……最初は言うつもりは無かった。
けど……何故か言っちゃった……。
多分、俺一人じゃ抱えきれなかったんだと思う。」
広葉:「……僕じゃなくても言ってたかもしれない?」
草司:「…………どうだろう。
……。
…………あー……とりあえず葵(あおい)とか土耳古(どみこ)には言えないな……。
笛張(ふえばり)と釣鐘(つりがね)さんは巻き込みたくないな……。」
広葉:「……。」
草司:「…………お前は、友達なら手を差し出せたのかもしれないけれど、
多分俺は、お前にしか手を伸ばせなかった。」
間。
草司:「ごめんな。」
草司:「ありがとう。」
草司:「俺の手をとってくれて。」
広葉:「………………。」
間。
広葉:「本当に申し訳ないと思ってる。」
草司:「それは、こっちの台詞。
本当に申し訳ないと思ってる。」
広葉:「違う、そうじゃない。そうじゃないんだ。」
草司:「?」
広葉:「…………なんかさ。今の。僕の理由さ。
凄く、“貴方の為に”って感じが全面に出てしまってた気がする。」
草司:「……?」
広葉:「……ソウジが僕に“人を殺した”って言った時、思ったんだ。
“あー殺人って懲役最低どれくらいだっけ?5年とか?
でももしかしたら無期懲役とか死刑とか……まあ人一人殺したくらいでそんなことには……”って。」
草司:「……。」
広葉:「まあ、総合的に言うならば、結論を言うならば、
“ソウジに会えなくなるの、嫌だなー”
って思ったんだ。」
草司:「え……?」
広葉:「だから、自首する事に後ろ向きで良かったって思ったんだ。
……友人であれば、自首する事を、正道を歩ける方を、清算する様に、促すべきなんだろうけれど、
僕はしなかった。僕が“君に会えないのが嫌”だから。」
間。
広葉:「ソウジの為の行動が出来なくて、本当に申し訳ない。ごめん。」
間。
草司:「ははは……俺たち、どうしようもなく地獄が似合っているな。」
広葉:「…………そうかもね。」
間。(草司と広葉、立ち上がる。)
草司:「コウヨウ。何処へ行く。」
広葉:「とりあえず、本当の地獄まで生きようか。」
草司:「おう。」
広葉:僕たちに、安寧は無い。安心は無い、安定は無い。
草司:俺たちはいつまで生きていられるだろうか。
広葉:僕たちはいつまで続けられるだろうか。
草司:俺は、いつ、報いを受けるのだろうか。
広葉:僕は、いつ、本当の地獄に堕ちるのだろうか。
間。
広葉:それでも。
草司:それでも。
間。
広葉:いつか。
草司:いつまでも。
間。
草司:コウヨウが地獄から抜け出す方法を模索する。
広葉:ソウジが地獄から離れる日を待つ。
間。(※これより下の台詞は自由に使ってください。)
:「地獄は、まだまだ遠い。」
───────────────────────────────────────
END