[台本]鼻を擤む。
○徒花 トジ(あだばな とじ)
男性
無愛想で発言にデリカシーが無いが誠実。
○時和 青空(ときわ そら)
女性
美人だけど行動が壊滅的、食べる事とお酒が好き。
徒花 トジ♂:
時和 青空♀:
↓これより下が台本本編です。
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~何処かのファミレス~
青空:「モグモグ。」
トジ:「……。」
青空:「モグモグ。」
トジ:「……。」
青空:「ごくん……いやはや、それにしても珍しいですね。
トジくんから奢ってくれると言うなんて。」
トジ:「奢るとは言ってないです。」
青空:「え。」
トジ:「“相談に乗ってくれ”と頼んだら時和(ときわ)さんが勝手にファミレス入って注文しだしただけです。」
青空:「……。」
間。
青空:「……まあ、それはそれ、これはこれ。
それで、相談ってなんですか、トジくん。」
トジ:「はい…………好きな人がいて……」
青空:「え?」(食事の手が止まる。)
トジ:「告白をしようと……思っていまして……」
青空:「………………はいぃ?」
トジ:「二度言わせないでください。」
青空:「スゥーーーーーーーーーーーーーーー……」
間。
青空:「ははん、そういうことですか。
いやはや、私としてはもっとロマンティックなシチュエーションが……
というか、私の事が好きならもっと──」
トジ:「トキワさんの事は別に好きじゃないです。」
青空:「え?」
トジ:「そもそも好きになるワケ無いじゃないですか。」
青空:「そ、そうですか?」
トジ:「未だに前回、前々回の飲みのお金返してもらってないですし、
この間、
“お前トキワのツレ?”
って怖い人たちに囲まれて泥酔したトキワさんの介抱を押し付けられましたし、
気が付いたら何処かへ行ってますし。」
青空:「え……」
トジ:「あと部屋が滅茶苦茶汚いし臭い。
ああ、あと、僕の画材をブーメランにして投げて壊したの忘れてないですからね?」
青空:「ちょ、ちょっと……と、と、トイレに行ってきます。」
トジ:「はい。」
間。
青空:「お待たせしました。」
トジ:「おかえりなさい……なんか目元赤くないです?」
青空:「ちょっと化粧を変えてきました。
そんなことより、そのー……トジくんの好きな人ってどんな人なんです?」
トジ:「えー……っと……その……」
間。
トジ:「年齢は……よく分かんないですけど、多分僕よりは年上で……」
青空:「ほう。」(少し元気になる。)
トジ:「眼鏡を掛けていて……」
青空:「ほう。」(眼鏡をくいっとする。)
トジ:「曰く……物書きらしいです……。」
青空:「それってやっぱり私じゃないです?」
トジ:「いえ、全く。」
青空:「そう……」
間。
青空:「では、その人のどういうところを好きになったんですか?」
トジ:「え…………あ…………っ///」
青空:「そんな少女漫画的赤面しないでくださいよ。」
トジ:「えっと……その……実は、その人とは、ちょっと……いえ、凄く運命的な出会いをしまして……」
青空:「やっぱり私ですよね????
私との邂逅もかなり運命的だったじゃないですか!」
トジ:「僕はあれをしつこくまとわりつく呪いだと思っておりますよ。」
青空:「うぅ……!」
トジ:「DestinyというよりはFateって感じです。」
青空:「何もそこまで言わなくても良いでは無いですか……」
トジ:「まあ……ともかく……一目惚れ……だったんです……」
青空:「それはそれは……熱烈ですね。
で、告白するに辺り、何を相談しようと言うのですか?
トジくんの性質を考えると、そのまま実直に、素直に行きそうなものですが。」
トジ:「……その……まあ、普通に恥ずかしいので、何か贈り物と一緒に、と。」
青空:「ほう……では、その人は私も知る人物なのですね。」
トジ:「あぁ……まあ、その、知ってるんじゃないですかね。」
青空:「……?ちなみにお名前は?」
トジ:「秘密です。」
青空:「ヒミツさんですか。」
トジ:「はい、秘密です。」
青空:「で、そのヒミツさんはどんなものが好きなんですか。」
トジ:「分からないです。」
青空:「えー?」
トジ:「だからこそ、根底こそ違うものの、似通ったものを持つトキワさんに聞いてるんです。」
青空:「それ、とても複雑なのですが。」
トジ:「僕としては単純明快です。」
青空:「……まあ、良いでしょう。
他でも無いトジくんからの相談です。
役に立って見せましょう。」
トジ:「よろしくお願い致します。」
青空:「ん~~~~やはり、酒、ですかね。
私は日本酒が特に好きですが、甘いカクテルとかも好きですよ。」
トジ:「あ、酒は無しで。」
青空:「え゛。」
間。
青空:「成人したらお酒以外贈られても唾吐かれますよ?」
トジ:「そんなワケ無いじゃないですか。」
青空:「ですが私、お酒以外はそんなに……」
トジ:「はぁー……であれば他の人に相談した方が良いですかね……」
青空:「ジョークですよジョーク。」
トジ:「トキワさんの場合、本当そうだから困ります。」
青空:「それはそれとして、その人の傾向をもっと狭めておきたいので、
どんな人か、もっと教えてくださいませんか?」
トジ:「………………。」
間。(トジ、窓を見ながら考える。)
トジ:「そうですねー……」
青空:「滅茶苦茶勿体振りますね。」
トジ:「……あ、よく食べますね。」
青空:「やっぱりお酒……」
間。(トジ、立ち上がる。)
青空:「──じゃなくて、何が特に好きそうですか。」
トジ:「んー……なんなんでしょう。」
青空:「ふむ……では、手料理はしそうですか?」
トジ:「え?」
青空:「もしも手料理をしそうであれば、調理器具とか良いんじゃないですか。
まあ、私はしないんですけど。」
トジ:「あー……じゃあ、しなさそうなので無しですね。」
青空:「あらあら、それはそれは。
…………あ、そうだ、髪の毛はどうです。」
トジ:「髪の毛?」
青空:「髪の毛に付けるものですよ。髪留めとか、髪飾り……帽子とかもありですねぇ。」
間。(トジ、青空の帽子を見る。)
トジ:「あー……なるほど……」
青空:「髪の長さ、どれくらいなんですか。」
トジ:「え。」
青空:「ん?」
トジ:「んー……トキワさんと同じくらい?」
青空:「なるほど、ではどうです?髪飾り。」
トジ:「…………そうですね……。」
青空:「……?あまり納得してなさそうですね。」
トジ:「え?そうですかね。」
青空:「そうです。
私の事を舐めないでください。
そも、私とトジくん、長い付き合いじゃないですか。」
トジ:「せいぜい二ヶ月そこらでしょ。」
青空:「……………………。」
トジ:「……。」
青空:「少しお手洗いに。」
トジ:「はい。」
間。
青空:「お待たせしました。」(鼻声)
トジ:「おかえりなさい……なんか鼻声じゃないですか。」
間。(青空、鼻をかむ。)
青空:「はてさて、何のことだか。
ではでは……そういえば、物書きらしいですね。」
トジ:「!
はい、そうなんです。」
青空:「その人の作品とか──」
トジ:「秘密です。」
青空:「ヒミツさん著・『秘密』ですか。」
トジ:「はい、秘密です。」
青空:「では、紙派ですか、デジタル派ですか。」
トジ:「確かぁ……両方?」
青空:「…………珍しいですね。」
トジ:「トキワさんも両方じゃないですか。」
青空:「いやまあ、そうなんですけど。」
トジ:「あ、てかそうか。
トキワさん。」
青空:「え、はい。」
トジ:「トキワさんが欲しいモノを聞けば良いんじゃないですか。」
青空:「そういう話じゃなかったんですか。」
トジ:「…………そういえばそうでした。」
青空:「……?」
トジ:「ちょっとお手洗いに。」
青空:「いってらっしゃい。」
間。
トジ:「戻りました。」
青空:「おかえりなさいまし……おや、頬が……」
トジ:「風邪気味かもしれません。」
青空:「あらあら、大変じゃないですか。」
トジ:「お気になさらず。」
青空:「……で、先程の話の続きですが、
“ペン”なんかどうですか。」
トジ:「ふむふむ、やはり良いペンが良いですか。」
青空:「良い、ペン……まあ、そうですね。
悪いペンを渡されるよりはそっちの方が絶対に良いです。」
トジ:「ふむ、であれば、トキワさんは良いペンで無くてもって感じですか。」
青空:「はい。
メインは飽くまでもパソコンで書いているので。
紙に書くときは手元にパソコン無くて衝動的に思いついた時や、
シンプルにメモの時、ですかね。」
トジ:「あー……であれば耐久性、でしょうか。」
青空:「確かに、耐久性、持続性とかあると良いですねぇ。」
間。
青空:「あ、すいません。」(店員に向かって。)
トジ:「え。」
青空:「抹茶パフェをお願いします。」
トジ:「……あ、僕は大丈夫です。」
青空:「じゃあ、これで以上です。……はい、お願いします。」
間。
トジ:「奢りじゃないですからね。」
青空:「分かってますよ。」
トジ:「……。」
トジ:「トキワさんって、よく食べますよね。」
青空:「ええ、私は考える事が多いのでカロリーを沢山消費するのです。」
トジ:「…………。
やはり、お酒が欲しくなります?」
青空:「それは勿論。
先程頼んだ抹茶パフェには日本酒なんか良いんじゃないんですかねぇ。
あ、でも敢えてカルーアのカクテルで甘いもの×甘いものも乙なものかもですねぇ。」
トジ:「本当にお酒好きなんですね。」
青空:「はい。大好きですよ。」
トジ:「……あ、というか、まだお金貸してもらって──」
青空:「今お金返したらまたここで借りる事になってしまいます。」
トジ:「クズ。」
青空:「次の原稿料で払いますよ。」
トジ:「言いましたからね。」
青空:「言いましたとも。
それにしても、トジくんは毎度絵とか彫刻とか作っててそれこそお金無くなりそうなモノですが、
お金に困ってる風なの見た事無いですね。」
トジ:「働いてますからね。」
青空:「あら偉い。」
トジ:「トキワさんもお仕事されてるじゃないですか。」
青空:「稀に逃げますけどね。」
トジ:「稀?」
青空:「四割で逃げてます。」
トジ:「ですよね。」
青空:「ふふふん。」
トジ:「得意げにならないでください。
僕からは逃げないでくださいね。」
青空:「逃げませんよ。
ええ、逃げませんとも。」
間。
青空:「……やはり、その、トジくんの……ヒミツ……さん、は、
素敵な方ですか。」
トジ:「……。
ええ、素敵な人、ですよ。」
青空:「では仮に私を1点として。」
トジ:「個人的には-50点くらいですけどね。」
青空:「10点としまして。」
トジ:「10倍されてるんですけど。」
青空:「どれくらいすて……
あ、ありがとうございます。(店員さんに向かって。)」
トジ:「……。」
青空:「モグモグ。」
トジ:「……。」
青空:「モグモグ。」
トジ:「……。」
青空:「ごくん……。
……あれ、何の話でしたっけ。」
トジ:「-50点。」
青空:「あら、あと20点減点されたら赤点ですね。」
トジ:「差し引いたワケではなく最終評価点が-50点なんですよ。」
青空:「手厳しい。」
トジ:「まあ……せいぜい二ヶ月ですが、色々ありましたね。」
青空:「いろいろ?」
トジ:「ええ、勿論一緒に飲みに行ったのが多かったですが。
キャッチボールしたり。」
青空:「トジくんが悩んでた時ですね。」
トジ:「映画を見たり。」
青空:「それもトジくんが悩んでた時ですね。」
トジ:「…………そうですね。
そう考えると、悩んでばかりなのかもしれません。」
青空:「人間ですからね。そういうモノです。
とはいえ、トジくんは人間臭く悩んでいるのに、どうにも非人間的だったので、
正直ホッとしています。」
トジ:「……え?」
青空:「言い遅れましたが、正直、今回の相談というか、悩みも、
何処か第三者視点的なモノなんだろうなって思っていたので、
“恋”の悩みをされるとは露(つゆ)程にも思っていませんでした。」
トジ:「…………。」
青空:「余裕が、生まれたのですね。トジくん。」
トジ:「……そう、かもしれません。」
青空:「それはそれは──」
間。
青空:「本当に良かったです。」(心のそこからの笑顔を見せる。)
トジ:「……っ」
青空:「なんか、そう考えると色々と吹っ切れました。」
トジ:「え。」
青空:「いい加減に真面目にお手伝いして差し上げようと思いまして。」
トジ:「いままでふざけてたんですか。」
青空:「そういうワケではありませんが、ほんのちょっぴり話半分、集中できてなかったので。」
トジ:「そうですか。」
間。
トジ:「そうだ。」
間。(トジ、カバンから綺麗に包装された箱を出す。)
青空:「え?」
トジ:「差し上げます。トキワさんが言ったみたいな耐久性も持続性もあるヤツです。」
青空:「……。」(受け取る。)
間。
青空:「え?」
トジ:「ああ、あと先程言っていた“トキワさんじゃない”とか“好きになるワケない”はほとんど嘘です。」
青空:「え?」
トジ:「お酒は別で用意するので。」
青空:「え?」
トジ:「今回は特別に会計済ませておくので、では。」
青空:「え?」
トジ:「青空(そら)さん、また今度、改めて。」
青空:「い、今……そ、ソラって……!」
トジ:「あ、お金はちゃんと返してくださいね。ソラさん。」
(トジ、去る。)
青空:「……。」
間。
トジ:「あ。」
青空:「わっ!」
トジ:「……………………なるべくロマンチックなの考えておきます。じゃ。」
(トジ、去る。)
間。
青空:「……えぇ……?」
間。
青空:「………………え゜?゜……ず……ずるでは……?」
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END