[台本]無音を遊(すさ)む。
○徒花 トジ(あだばな とじ)
男性
○時和 青空(ときわ そら)
女性
徒花 トジ♂:
時和 青空♀:
↓これより下が台本本編です。
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トジ:「……。」
青空:『……。』
間。(トジと青空、通話を繋げながら別々の作業をしている。)
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
間。
青空:『……トジくん。』
トジ:「なんですか時和(ときわ)さん。」
青空:『今更ですが、”さぎょーつーわ”という物に付き合って下さり感謝します。』
トジ:「いえいえ。どうせあんまり喋らないのですから、些事です。」
青空:『本当に助かっています。
もう1週間くらい缶詰状態で、頭がおかしくなりそうで……』
トジ:「部屋の掃除くらいすれば良いじゃないですか。」
青空:『いえ、私の部屋が汚くて鼻がもぎ取れそうとかそういう話ではなくて。
ずっと執筆ばかりで人間と会話出来てなくてどうにかなりそうだったんですよ。』
トジ:「新しい編集の人……えーっと、”九地(くじ)”さんとか来るんじゃないですか。」
青空:『いやいや、仕事での会話って人間との会話って感じじゃなくないです?』
トジ:「酷いことを仰る。」
青空:『だってだってぇ~
”すずらん”ちゃんって冷たくてぇ~』
トジ:「…………………”九地(くじ) すずらん”さんってそんな冷たい人でしたっけ。
旦那さんの方はぶっきらぼうだった覚えはありますが……」
青空:『あら?トジくんってイチカ先生とお知り合いだったんですか?』
トジ:「ええ、まあ。編集の”クジ”さんに頼まれて旦那さんの漫画を手伝いをした事があったんです。
背景の。」
青空:『ああ~~なるほど~~”すずらん”ちゃんってば相変わらず目ざといんですから~』
トジ:「……で、編集さんはどう冷たいんですか。」
青空:『聞いてくださいよトジく~ん~
”すずらん”ちゃんってば、原稿が終わるまでお酒禁止って言うんですよ?!』
トジ:「…………。」
青空:『しかもしかも!お財布も取られちゃってぇ、何かお買い物する時は事前に言わないとでぇ、嘘を吐いて別のものを買ったら没収されちゃうんですよ~』
トジ:「……それは、トキワさんが金使い荒くてすぐスカンピンにして、人から借金するからでは?」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『スゥーーーーーーーーーーーーーー……』
トジ:「僕に借りっぱのお金、ちゃんと帳簿に付けてますからね。」
青空:『スゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……』
トジ:「早く返してくださいね。」
青空:『今回の原稿料で必ずや……』
トジ:「録音もしましたからね。」
青空:『スゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……』
トジ:「冗談です。」
青空:『……ほっ』
トジ:「ほっ、じゃありませんよ、さっさと返してくださいよ。」
青空:『はい……。』
間。(トジと青空、作業に集中する。)
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
間。
青空:『……トジくん。』
トジ:「なんですかトキワさん。」
青空:『トジくんは、作業なにをやってるんですか?』
トジ:「…………絵を、描いてます。」(集中を途切れない様に)
青空:『いいですね。』
トジ:「はい。」
青空:『がんばってください。』
トジ:「ありがとうございます。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
青空:『…………と……トジくん。』
トジ:「なんですかトキワさん。」
青空:『わ、私、ウザくないですか?』
トジ:「何を今更。」
青空:『い……今更、ですか。』
トジ:「トキワさんが、ウザいのは、今に始まった事じゃないでしょう。」
青空:『…………じゃあ、どうして、作業通話、付き合ってくれてるんですか?』
トジ:「え……?」
間。
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「切りたいんですか?」
青空:『いえ!いえいえ、いえいえ、そういうワケでは無く……。』
トジ:「…………。」
間。
トジ:「これは、お互いが、お互いを緩く監視している状態なんです。」
青空:『え?』
トジ:「僕は今、かなり集中を要する作業をやっています。
なるべく、今、今日中に、次のステップに進まないと、完成しない気がします。」
青空:『……。』
トジ:「トキワさんも、今やっている執筆が終わらないと、お酒飲めないんでしょ。」
青空:『はい……。』
トジ:「だったら……だから、お互い、だらけたり、作業を辞めてしまわない様に、監視し合うんです。」
間。
トジ:「筆は進んでますか。」
青空:『……ええ。』
トジ:「それは良かった。」
青空:『…………フフフ。』
間。(トジと青空、作業に集中する。)
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
間。
青空:『……トジくん。』
トジ:「なんですかトキワさん。」
青空:『今日、お互い、黙りこくっていますが、
”ちゃんと居るんですね。”』
トジ:「……ええ。」
青空:『無言なのに、トジくんを聞いています。』
トジ:「そうですか。」
青空:『…………。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「僕も。」
青空:『っ。』
トジ:「無言を、口遊んでいます。」
青空:『ふふふ……なんですかそれ。』
トジ:「そんな事言ってないで、手を動かしてください。」
青空:『…………はい……。』
間。(トジと青空、作業に集中する。)
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
間。
青空:『……トジくん。』
トジ:「なんですかトキワさん。」
青空:『……やっぱり、トジくんも私の事嫌いですか。』
トジ:「な……なんですか急に。」
青空:『だって、私ってばだらしなくてクズですし……』
トジ:「……。」
青空:『お金も返さないし……』
トジ:「それは本当に早く返して頂きたく思います。」
青空:『あぅ……
……まあ、妥当ですよね……。
…………全人類、うっすらと私の事、嫌いなんですよね。
けれど、嫌いになる足る理由はいくらでもあって、
私と近しい人は、より、確かな理由を持って嫌いになるんです。
…………どれもこれも、自業自得なんですけどね……。』
間。
トジ:「……どうしたんですかトキワさん。自己嫌悪なんて貴女らしくも無い。」
青空:『……そうですか?
私って結構、根暗な方ですよ……?』
トジ:「…………あー……僕がよく見ているのって酔っ払ったトキワさんですもんね。」
青空:『ハハハ……それはあるかもしれませんね……
私って、お酒が入ると愉快になりますからねぇ。
あと、執筆に行き詰まっていると、どうしても、こうなっちゃって……ごめんなさい、トジくん……。』
トジ:「…………。」
青空:『…………なんか、初めてトジくんに会った時の事を思い出しますね……。』
トジ:「え?」
青空:『ほら、トジくん言っていたじゃないですか。
” 自棄酒は酒好きがやる事では無い”って。』
トジ:「……あ~~~~……なんか、言った気がします。」
青空:『お酒は好きなんですけどね、大好きです。
…………それでも、自棄酒したくなる程に私という存在が、大っ嫌いなんです。』
トジ:「…………。」
青空:『……。』
間。(トジと青空、作業に集中する。)
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「……。」
青空:『……。』
トジ:「トキワさん。」
青空:『は、はい。なんですか?トジくん。』
トジ:「僕はトキワさんの事、好きじゃないです。」
青空:『え…………。』
トジ:「僕のお気に入りの服にゲロぶちまけましたし、製作中の作品でジャグリングして壊すし、臭いし、」
青空:『うぅ……私ってば、クズ……』
トジ:「ええ、クズです。金も返せないクズです。
これでひっそりと人気のある作家だなんて、うわって思います。」
青空:『………………。』
トジ:「………………けど、喋るのは、嫌じゃないです。」
間。
青空:『……え?』
トジ:「一緒にお酒の飲むのも、嫌じゃないです。」
青空:『……。』
トジ:「僕は、別に、嫌いでは無いですよ、貴女の事。」
青空:『~~~~~~!!
ト~~~~ジ~~~~く~~~~ん~~~~!!!』
トジ:「うわ、うるさっ」
青空:『トジくん!トジくんトジくんトジくんトジく~~~~~ん!!!』
トジ:「うるさいですね通話切りますよ。」
青空:『あっ!えっ!そんな!トジ──』
(トジ、通話を切る。)
トジ:「…………ふぅ。
さ、続き続き、と。」
間。(トジ、作業を再開する。)
トジ:「……。」
間。(スマホが鳴り響く。)
トジ:「……。」
間。(スマホが鳴り響く。)
トジ:「……ちっ」
(トジ、スマホをサイレントモードにする。)
トジ:「………………。」
間。(トジ、作業を再開する。)
トジ:「……。」
間。
トジ:「……。」
間。
トジ:「……。」
間。
トジ:「……はぁー……」
(トジ、スマホを手に取る。)
トジ:「もう鬱陶しいですねぇ貴女は!!」
青空:『ト゛ジ゛く゛~~~~~ん゛!゛!゛!゛』(泣き声)
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END