[台本]間合いを計る。
○徒花 トジ(あだばな とじ)
男性
○時和 青空(ときわ そら)
女性
徒花 トジ♂:
時和 青空♀:
↓これより下が台本本編です。
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~居酒屋~
トジ:「まあ、僕が殺意を覚えた時ですかね。」
間。
青空:「ん?」
トジ:「ん?」
青空:「…………私、そんな物騒な返答が来るような質問しましたっけ。」
トジ:「場合によってはありえるかと。
そして、僕の場合ありえたワケです。」
青空:「……この質問、割とナチュラル且つそれなりに仲良くなったり、
適当な雑談のお題として定番だと思ってたんですけど、適当では無かったですかね?」
トジ:「適当かどうかはさておき、適当には答えられない話題だとは思います。」
青空:「カタブツですねぇ~
流石トジくん。想定よりも五十垓倍物騒でしたけれど。」
間。(トジ、酒を飲む。)
トジ:「で、何故、“どこからが浮気なんですか?”と聞いてきたんですか、時和(ときわ)さん。」
青空:「ただの興味本位ですよ。
先ほども言った通り、それなりに仲良くなったと──」
トジ:「僕はそんなに仲良いと思ってませんけど。」
青空:「──思いますので、適当な雑談のお題として。」
トジ:「そうですか。」
青空:「ちなみにですけども、“僕が殺意を覚えた時”というのはどういう時なんですか?」
トジ:「え?まあ、不愉快に思ったりした時ですかね。」
青空:「曖昧ですねぇ。
あれですか?これといった明確なライン自体は無い的な感じです?」
トジ:「まあ、そんな感じでしょうか。
僕、誰かと付き合った事無いので──」
青空:「ぷぷっ」
トジ:「殺意覚えました。」
青空:「私浮気したって事ですか????」
トジ:「僕はトキワさんとは絶対恋仲になりたくないですね。」
青空:「でも殺意覚えたんですよね?
じゃあ浮気認定ですよね??
であれば逆説的に私たちは恋仲では無いですか???」
トジ:「そんな屁理屈通じませんよ。」
青空:「ですがトジくんの主張的にはこうなり兼ねなくないです?」
トジ:「前提を曖昧にしているからでしょう。
今回の場合、“僕の恋人の行為”に対しての感情の行方、の筈です。」
間。(トジ、酒を飲む。)
トジ:「つまり、イカれた酒カスに対しての殺意は該当しません。」
青空:「あら~」
間。(青空、酒を飲む。)
青空:「ちゃんと罵倒されました。
びっくりびっくり。
私を地の果てまで追いかけてくる編集さんでももっとオブラートに包んでくれますよ。」
トジ:「僕は貴女の編集さんでは無いので。」
青空:「まあ、閑話休題。話を戻しまして。
仮にトジくんに恋人がぷふっ……居てぇ、他の男の人と目が合ったら?」
トジ:「…………………………別に良いですよそれくらい。」
青空:「“別に”がつくタイプの返答じゃなかったですよ今の熟考具合。
何がダメなんですか?」
トジ:「良いって言ったじゃないですか。」
青空:「そういうのいいですから。」
トジ:「……まあ、普通に嫌じゃないですか?
自分以外の男と目ぇ合わされるの。」
青空:「え~?
目が合うとか何も考えてなくても起こるじゃないですか~」
トジ:「でも目を合わせ続ける事は無いでしょ。」
青空:「んー……まあー……そう、ですかね?
私は電車で座ってたら向かい側の人としばらく目が合うことありますよ?」
トジ:「なぜ?」
青空:「なななななぜ????
何に疑問を?」
トジ:「いや、合わないでしょ。」
青空:「そんな事言われてもなぁ。」
間。(青空、酒を飲む。)
青空:「合うんですもん。」
トジ:「…………………………ま、トキワさん一応美人さんですもんね。」
青空:「わあ。褒められちゃいました。」
トジ:「ちなみにトキワさんはどうなんですか。」
青空:「浮気のラインですか?
ん~……」
間。
青空:「ん~……」
トジ:「あ、すいませーん。梅酒、お湯割りでお願いします。」
青空:「ん~……」
間。
青空:「ん~……」
間。
トジ:「ありがとうございます。」
青空:「ん~……」
トジ:「もう良いですよ。
特に思いつかないんですね。」
青空:「てへへのへ。」
トジ:「ま、緩そうですもんね。そういう方向性。」
青空:「え~?そんな事は無いですよ~?
私だって嫌だなぁって思うことはあったりしますからねぇ。
ただ、それを浮気!ってしてしまうのはなぁ……」
間。
青空:「いつか自分の首を締める事になりそうで。」
トジ:「クズ痴女。」
青空:「ノンデリが過ぎる。
ま、言われても仕方が無いのは事実ですが。」
トジ:「というか、僕たちでこの話題に広がり無いでしょう。」
青空:「でもでもぉ、私はトジくんともっと仲良くなりたいのでぇ、もっと広げて行きたいですねぇ。」
トジ:「……。」
間。
トジ:「ま、なんでも良いですけどね。」(酒を飲む。)
青空:「?
では、彼女さん(空想)が──」
トジ:「(空想)とか付けなくて良いので」
青空:「──複数の人間、男女混合、と遊びに行く、或いはご飯に行く、はどうです?」
トジ:「……えぇ?」
青空:「眉間に皺寄りすぎでしょ。」
トジ:「その場に僕は居ますか。」
青空:「いません。」
トジ:「………………。」
青空:「目つき悪すぎでしょ。」
トジ:「22時までに、帰る、なら、まあ。」
青空:「22時って……子供じゃないんですから~」
トジ:「いいえ、許せませんね。
せめて0時回る前に帰ってきてもらえないと辺り一帯を火の海にしてしまいます。」
青空:「無理でしょ。」
トジ:「やりますよ。」
青空:「……謎に凄みがありますねぇ。」
間。(青空、酒を飲む。)
青空:「……トジくんの彼女になる人、大変そ~」
トジ:「貴女の恋人になる人も大変でしょうね。」
青空:「それは全く持って否定出来ませんのでぇ~」
トジ:「じゃあ、逆に。
トキワさんは、貴女の恋人が異性と目が合ったらどうしますか?」
青空:「構いませんよ。」
トジ:「複数の人間、男女混合と遊びに行く、或いはご飯に行く、且つ22時より後に帰る。」
青空:「なんなら朝帰りでも良いですよ。」
トジ:「えぇ……?」
青空:「そんな信じられないって顔します?」
トジ:「えぇ、僕には信じられませんからね。」
青空:「なんなら異性と二人きりでもなんにも言いませんよ。」
トジ:「どうかしてる……トキワさんは相手の事を本当に好いているのですか???」
青空:「仮定の話なのに深刻になりすぎでは?
それはそれとしてちゃんと好いていると思いますよ。」
トジ:「そうだと良いんですけどね。」
間。
青空:「やはりトジくんは、意中の人には自分だけを見てて欲しいタイプです?」
トジ:「そりゃあ……まあ、当たり前でしょう。」
青空:「……であれば、まあ。」
間。(青空、酒を飲む。)
青空:「トジくんの恋人さんは幸せ者なのかもしれないですねぇ。」
トジ:「……な、なんですか急に。」
青空:「だってそうじゃないですかぁ?
浮気して欲しくないって思われる程、想われるって、多分私、そんな風に想われた事無いですもん。」
トジ:「…………。」
青空:「くすくすくす。」
トジ:「何笑ってんですか。」
青空:「トジくんが難しい顔してるなぁ~って思って。
難しく考えなくて良いんですよぉ~私はそういう人間ってだけですから。」
トジ:「あまり自分を卑下するものでは無いです。」
青空:「あら。」
トジ:「自分の価値とは、誰が何を言おうと、結局は自分の言動こそが決めるものです。
故に、自身を貶める言動は、自信の喪失に繋がり、畢竟(ひっきょう)自分の価値を下げる事になります。」
青空:「お~中々良い事言いますねぇ~
今度私の作品で使っても良いですかー?」
トジ:「ご勝手に。
とにかく、辞めてくださいね。」
青空:「はいはい。」
間。(青空、酒を飲む。)
青空:「いやはや、まさか、トジくんに慰められる時が来るとは。」
トジ:「そういうつもりはないです。
ただ悄気ている人やニヒリズム決め込んでる人を見てるのが腹立たしいだけです。」
青空:「そうですか。
でもでもぉ、実は実はぁ~私に、ホ、の字なんじゃないんですか~?」
トジ:「は?」
青空:「そんなマジトーンで返さなくても。」
トジ:「誰が貴女の様な貞操観念がイカれてる女と付き合いたいと思うものですか。」
青空:「トジくんがガチガチに硬すぎるだけですぅ。
私は割と普通寄りの価値観だと思いますぅ。」
トジ:「自分の価値観とは、誰が何を言おうと、結局は──」
青空:「さっき言った自分の良い言葉、そうも濫用するのは良くないと思います。」
間。
トジ:「すいません。高清水、熱燗で。」
青空:「私はカシスオレンジでぇ。」
トジ:「はい、以上で。よろしくお願いします。」
間。
青空:「あーあ。話題ミスりましたねぇ~
まさかここまで話が広がらないとは思わなんだです。」
トジ:「分かりきっていた事でしょうに。」
青空:「じゃあじゃあ、トジくんから何か話題振ってくださいよぉ。」
トジ:「え~……」
間。
トジ:「ん~~~……」
間。
トジ:「ん~……」
青空:「あ、すいませーん。この、フライドポテトののり味、お願いしますー」
トジ:「ん~……」
間。
トジ:「ん~……」
間。
青空:「ありがとうございますー」
トジ:「ん~……」
青空:「もう良いですよ。
特に思いつかないんですね。」
トジ:「話題作りとは、こうも難しい物なのか……」
青空:「もっとフランクな感じで良いんですよ~
なんか、私について気になった事を聞いてみたり~自分の中で気になってる事を言ってみたり~」
トジ:「じゃあ……」
間。
トジ:「今日はトキワさんのお仕事の締切日だと聞いておりましたが、
ちゃんと終わらせてきたんですか?」
青空:「モチのロンですよぉ」
トジ:「偉い。」
青空:「ふふん。私、仕事面は割とちゃんとしてるんですよぉ。
基本的にはブッチなんてしませんもの、ビッチですけど。」
トジ:「でも時たま、貴女の編集さんから泣き付かれるんですけど、
それはどうしてですか?」
青空:「まあ、私が殺意を覚えたからですかね。」
間。
トジ:「ん?」
青空:「ん?」
トジ:「…………僕、そんな物騒な返答が来るような質問しましたっけ。」
青空:「場合によってはありえるかと。
そして、私の場合ありえたワケです。」
トジ:「…………………………へぇー……」
トジ:この時、いつも濁って光のないトキワさんの目の奥に、闇を感じた。
絶対にこの人を本気で怒らせる事はしない様にしようと、心に決めた僕であった。
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END