ハドロン・原子核グループのホームページへようこそ。
本グループでは、『強い力』が創発する原子核・ハドロン・クォークの量子多体系の物理を研究しています。
現代的なハドロン・原子核物理の研究対象は多岐に渡っています。低エネルギーに限定しても原子核には安定核から不安定核、ハイパー核といった多様な対象があり、これらの包括的理解は核融合、宇宙の元素合成、中性子星の内部構造の研究に欠かせないものです。もう少し高エネルギーではハドロン物理の世界があり、ここでは既存の理論的枠組みの範疇に収まらないエキゾティックハドロンが次々に発見されており、その内部構造、反応機構の系統的な解析が待たれます。クォークレベルの議論では、QCDの真空構造、超高温・高密度におけるQCD物性、超新星爆発や中性子星合体などの天体現象、高い空間的・時間的分解能で見えてくるハドロン内部の新しい秩序、といった、素粒子論、凝縮系物理、天体核物理の複数分野に跨る実に学際的な研究トピックがあります。
以上のように『強い力』が創発する物理には豊富なものがあり大変魅力的な研究対象です。力が強いためにその解析は容易ではありませんが、実験・観測と理論が緊密な連携を保つことで我々の理解は着実に深まってきています。今後も世界各国で重要な実験プログラムが計画されており、そこでは数多くの新しい発見があることでしょう。
研究のフロンティアにおいて若手研究者の力は大変重要です。当理論センターは、総研大の大学院教育を通じて、次世代リーダーの育成を目指しています。
(上図)軽いクォークが、強い相互作用が引き起こす「カイラル対称性の破れ」を通じて「有効質量」を獲得し、さらに「カラーの閉じ込め」を通じて核子(陽子・中性子)の一部として閉じ込められ、その核子が核力を通じて原子核になる様子。「ハドロン質量の起源」と「カラーの閉じ込め機構」の解明は、今日に至るまで重要な問題である。
(下図左)宇宙の歴史を遡れば、熱い初期宇宙ではクォークとグルーオンがハドロンから解き放たれたクォーク・グルーオン・プラズマ (QGP) が実現していた。QGP は実験室で創り出すことが可能(!)であり、その性質は詳細に調べられている。
(下図右)その後宇宙が冷えるにつれ、クォークとグルーオンは核子やπ中間子の中へと閉じ込められていった。一方、冷えた宇宙には、中性子星と呼ばれる超高密度な星が存在する。観測によれば半径10km程度にも関わらず、太陽と同程度の質量を持つ(!)。星の中心部では、核子同士が重なるくらい物質は超圧縮されており、そこではクォークが核子から解き放たれてクォーク物質となっていると予想されている。