1990年代頃からいわゆる「オープン大会」と呼ばれる有志によるクイズ大会が多数行われてきました(参考文章)。大会は主に「一心精進」というサイトで告知され、90年代から今に至るまでの記録が多数残っております。
90年代よりクイズ大会はいわゆる負けたら終わりの「勝ち上がり式」が主流であり、「早押しクイズ」参加の機会均等化は長く大きな課題だったと考えています。これを解決すべく、過去には、多部屋・複数早押し機を使って実力分けをし機会の均等を確保したり、「過去のクイズ大会で予選を通過した経験がない人」「決勝進出経験がない人」など大会の実績をベースに参加資格を限定した大会を開いたり、といった取り組みが行われてきました。
しかし、近年早押しクイズを行う人口は大幅に増え、また競技レベルも大幅に向上しています。全員が早押しをやれるような大会の需要は高く、300人規模でも20分程度でエントリーが埋まる印象です。こういった大会では大会内で実力分けをしていくことが可能ですが、大会内で適切な実力分けをするにはある程度大規模な大会である必要あり、ボランティアで支えることが難しくなっているのが現状です。
一方で、「過去の大会成績」をベースに出場資格を絞ったりクラス分けをしたりするにあたり、大会の結果の価値が統一されていないことが問題となります。たとえば、特に「1990年代の大会の筆記通過者」と「2020年代の筆記通過者」が「同じ基準」として判定されるのはいささか無理がある状態です。「新人」という枠組み(クイズ大会に出て〇年以内など)も長く使われてきましたが、「2年でトップクラスまで強くなる」人がいる一方で、新人の枠を外れた「クイズ歴10年だが、今後ものんびりクイズをしたい」「昔はクイズをしていたが、久々にクイズに行きたいと思う」といった人が気軽に行けるクイズイベントはかなり限られる印象です。これは、「新人の枠組みを離れた方や、新人同士の実力を適切に評価し、出場資格やクラスを決める仕組みが、今のクイズの世界にほぼ存在しない」ことが要因と考えています。
これらの課題を解決すべく動き出すのがこの「QRIP(クリップ・クイズレーティングインプリメントプロジェクト)」です。
現時点で上記課題を解決できる「レーティング機能」はクイズの世界にはありません。趣旨を理解する皆で協力して、課題を解決するための適切なレーティングの仕組みを作っていこう、という有志プロジェクトになります。オンラインゲームの世界では、一対一のレーティングシステムである「イロレーティング」「グリコレーティング」、複数人対戦を対象にした「trueskill(Microsoftが特許を持つため利用にライセンスが必要)」「openskill(ライセンスフリーなオープンソースとして開発)」など、レーティングのアルゴリズムは複数存在しております。また、クイズの世界においてもそれらを適用するだけでも十分なのか、あるいはクイズならではの工夫が必要なのか、など、検討余地は複数あると考えております。それらの検討を行う上で欠かせないのが「実際の対戦データ」の収集になります。
ただし、本プロジェクト協力者の殆どは仕事や学業をメインに生活しており、本プロジェクトにはボランティアという形で参加しています。よって、過大な期待はしないでください。日進月歩で進めていきたいと考えておりますので、宜しお願い致します。
QRIPリーダー
市川尚志